かねこ・るい
金子 塁
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【所属】埼玉・西埼玉少年野球
【学年】新6年(現5年)
【ポジション】投手兼一塁手
【主な打順】三番
【投打】左投左打
【身長体重】155㎝55㎏
【好きなプロ野球選手】岡本和真(巨人)、藤川球児(元阪神ほか)
※2024年1月5日現在
年末恒例のNPB12球団ジュニアトーナメントは、学童球児の夢の祭典。この舞台の経験者が毎年のようにドラフト指名されており、今では1球団16人のメンバー入りがひとつのステイタスにもなっている。
西埼玉少年野球は先日の2023年大会まで、4年連続でNPBジュニア選手を輩出中。さらにこの2024年で「5年連続」に更新される可能性も高い。
三番の金子塁と、四番の白垣大耀(下写真)。世代でも抜けた存在の、左打者ふたりがいるからだ。チームは昨秋の新人戦で埼玉大会を制覇(4年ぶり2回目)。続く関東大会は、銀メダルに輝いている。
金子と並んで埼玉屈指の左スラッガー・白垣大耀
ふたりが大車輪の活躍を遂げたことは言うまでもない。ところが、その年末になって、綿貫康監督に対して金子がこう直訴してきたという。
「ボクはNPBジュニアのセレクションを受けるつもりはないので、来年もキャプテンをやらせてください」
背番号10の自負と覚悟が、金子を突き動かしたのだろうと指揮官は語る。
「驚きましたよね。チームを引っ張って夏の全国大会に行くんだという並々ならぬ決意であり、試合に出られないメンバーの思いも汲んでの責任感もあるんだ思います。新6年生だけでも13人いますからね」(綿貫監督)
金子は左投左打の二刀流。際立つのは体幹の安定とバランスだ。左腕もバットもよく振れている上に、投じる球もスイングも精度が高い。
「岡本和真選手(巨人)が好きです」
打ってはサク越えアーチが20本以上、ランニングホームランも加えると通算30本塁打は超えているという。昨秋の県大会では、逆方向の左中間深くへのエンタイトル二塁打もあった。
投げるほうの憧れは“火の玉ストレート”を武器に、阪神やMLBで活躍した藤川球児氏だ。
「ボクもああいうストレートを投げられるようになりたいです」
昨秋の関東大会での最速は99㎞(球場表示)。スローイング指導にも定評のある指揮官の下、クセのないフォームをすでに自分のものとしており、100㎞超えは秒読みといったところだろう。
昨秋の関東大会は4回コールド勝ちの準決勝で完投。同日の決勝は球数規定の限界まで1イニングを投げたが、勝利はできなかった(写真は埼玉大会)
昨年6月の悪夢を払拭
2016年に「精明スワローズ」から改名して新たに船出したチームは、2022年のポップアスリートカップ全国ファイナル出場など近年の躍進が目覚ましい。「小学生の甲子園」こと夏の全日本学童大会についても、埼玉県予選は参加の6割以上が地域選抜チームという中で、昨年は4強まで進出と初の夢舞台へも肉薄してきている。
その敗れた県大会準決勝(昨年6月)は、6対1と5点リードの5回裏に大逆転された。この引き金にもなってしまったのが、五番・左翼でスタメン出場していた金子だった。記録は本塁打だが「大ピンチでフライを落としました」とミスを潔く認めている。
その3カ月後、県新人戦の決勝・準決勝の舞台が6月と同じ東松山市営球場だった。「あのとき(落球)のイメージがすごくあったので嫌でした」と振り返った金子だが、準決勝では4回無安打無失点の快投に、2安打で勝利に貢献した。
チームで唯一、5年生からレギュラーで逆方向へも長打を放てる
迎えた県決勝は両軍で3回計19四死球という異例の大乱戦の中、仲間を励まし続ける姿が印象的だった。そしてこれを制して優勝。3カ月前の悪夢のような記憶を完全に打ち払った。
「ボクのあのエラーで負けたときは6年生(1学年上)や監督が『オマエのせいじゃない』と言ってくれたんですけど、これで(新人戦優勝)でやっと少し恩返しできたかなと思います」(金子)
歓喜のナインの中で一人、涙した。そんな背番号10を綿貫監督はこう評していた。
「人一倍、和を大切にするヤツなんです。打つのがすごい、投げるのもすごい、だけではない。人間性もすごく良いんです」
NPBジュニアのセレクション辞退の申し出については、指揮官は否定も肯定もしていない。本人に下駄を預けたままだが、この学童ラストイヤーとチームにかける意気込みがハンパないことは十分に伝わっているという。
チームの夏の全国初出場と、個人のNPBジュニア入り。ダブルで決まったところで何ら不思議はないし、それをやってのける資質も可能性も金子にはある。
(動画&写真&文=大久保克哉)