【2024注目の逸材】
なんば・いち難波 壱
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【所属】不動パイレーツ/東京
【学年】6年
【ポジション】投手、三塁手、中堅手
【主な打順】三番
【投打】右投左打
【身長体重】149㎝45㎏
【好きなプロ野球選手】大谷翔平(ドジャース)
※2024年2月25日現在
120㎞を投げる小学生もそうそういないが、鮮やかにそれを打ち返せる小学生はもっと珍しいかもしれない。
昨年7月、5年生にして東京都大会の決勝(都知事杯)という大一番の最終回に、それをやってのけた難波壱は、激しくレアな秀逸の打者に違いない。1ストライクからの2球目を、左打席から右中間へ運んで三塁打としてみせた。
2023年都知事杯決勝、4回の第2打席には中越え2ランを放っていた
「気持ちで打ちました」
その打席はまた、この少年のパーソナリティを物語ってもいた。直前の5回裏、左翼を守っていた難波はピンチで打球を後逸し、4対5と試合をひっくり返される痛恨のタイムリーエラーをしてしまっていた。
ところが、それで消沈するどころか、直後の6回表に回ってきた第3打席で、初球からフルスイング(空振り)。そして前述のように、2球目を引っ張って三塁打に。
マウンドにいた1学年上の左腕・藤森一生(レッドサンズ)は、最速が当時120㎞。対する難波は約1カ月前の全日本学童都大会の決勝でも、この怪物級サウスポーから左前打を放っていた。
世代随一の左腕とも言えた1学年上の藤森(下写真左)から、右中間三塁打を放つ(2023年7月17日、上柚木公園野球場)
「とにかく、速いボールに合わせておけば、緩いボールも打てると思っています。外角の球だったらレフト、真ん中だったらセンター、内角だったら腰の回転で打つ感じです。芯でとらえれば、あとは(打球の角度が」上がればホームラン、低かったらライナーになる」
昨年は17本塁打を放ち、夏の全日本学童大会マクドナルド・トーナメントで準優勝したチームの年間本塁打王に。正確にカウントはしていないが、就学前から不動パイレーツで野球を始めて以来、通算で70本以上はホームランを打っているという。
これだけのバッターだから、地元の東京界隈ではマークも厳しい。体幹もひと回り大きくなって迎えた2024年は、四球で歩くケースが増えている。
昨夏の全国大会は全6試合、左翼でスタメン出場。打率.231、準々決勝ではあわやサク越えの中越え二塁打(写真下)
「もっと勝負してほしい? それはありますけど、ストライクを打つだけです」
そんな難波の支えは、学年チームの背番号29で、ヘッドコーチとして一緒に繰り上がってきた父・良剛さんの存在だろう。最近はこのように説かれているという。
「ボール球に手を出しても打てないし、フォアボールも立派な出塁。がっかりとか、悔しい気持ちは押し殺して、しっかりと走塁をしなさい!」
まずは今夏も全国へ
高校まで軟式球でプレーした良剛さんは、長男として生まれてきた難波を幼少期から近所の公園に連れ出して、よく遊んだという。
「カラーボールとカラーバットを持って行って…野球ですね。昔はこっちが誘わないとやらないときもあったけど、今は暇を見つけると『キャッチボールしよう!』とか『素振りを見てくれ!』とか。好きでやっているようなので、そこは良かったなと思っています」(良剛さん)
昨夏の全国大会もベンチ入りした父・良剛コーチ(写真上)。「真夏の6連戦の経験は大きい。チームに還元できればと思っています」
平日は自主練習を欠かしていない。素振りをしたり、シャドーピンチングをしたり。そこに父の姿はないが、同じチームで野球を始めた1年生(新2年生)の弟を誘って走るときもあるという。
「自主練はやっているうちに時が過ぎていく感じで、時間は決めてないですけど、だいたい1時間くらいはやっていると思います」
今年の第一目標は、8月の全日本学童大会出場。昨秋の新人戦は都大会の3回戦で惜敗した。その後、新たな戦力も加わり、都内の強豪が参戦している新年のナガセケンコー杯は8強まで駒を進めてきている。
2023年8月9日、全日本学童の決勝進出を決めた不動ナイン(大田スタジアム)
「今年のチームは走塁がいいので、さらに向上させることと、守備では簡単なアウトを1個ずつ取っていくこと。ファインプレーもいいんですけど、取れるアウトが取れないとピッチャーのダメージが大きいので」
経験値も断トツの難波にかかる期待は大きいが、過度な重圧は感じていないという。日本一を決める全国決勝まで、真夏の6連戦を経験していることはプラスでしかないようだ。
昨夏の全国大会は全試合スタメン出場し、計13打数3安打3打点の打率.231。準々決勝では中越えのエンタイトル二塁打、決勝では新家スターズ(大阪)のエース・山本琥太郎から右前打を放っている。
「全国のピッチャーは緩いボールの使い方とか、同じストレートでもスピードに段階があったり。そういうのが結構、すごいなと思いましたし、今年は自分もピッチャーをやるので参考にしています」
バットスイングと同様、ボールを手にした右腕の振りもやはり力強い。センターを守れば、打者走者を一塁でアウトにすることもある。
身長は150㎝に満たないが体幹が強く、打つにも投げるにも大地の反動を利している
球速は大半が100㎞を超えており、最速は107㎞。アベレージで110㎞を目指しているという。登板時以外はシフトに応じて、中堅のほか内野の三塁や二塁を守る。
「将来の夢? まずプロ野球選手になって、メジャーリーガーになることです」
年末のNPB12球団ジュニアトーナメント出場が、第二目標だ。父と歩んできた学童野球のラストイヤー。腕試しのナガセケンコー杯を経て、3月の全日本学童予選区大会から、いよいよ真の勝負が始まる。
(動画&写真&文=大久保克哉)