本家・高校野球の甲子園でも、「小学生のの甲子園」でも、準々決勝は実力伯仲で盛り上がることが多い。メイン球場のHARD OFF ECOスタジアム新潟での第2試合、木屋瀬バンブーズ(福岡)と旭スポーツ少年団(新潟)の初出場対決も、緊迫の好勝負に。開始から主導権を奪ったのは木屋瀬。対する旭は、二番手の大型右腕が劣勢の流れを断ち切り、バッテリーを組む四番打者のバットが勝利を引き寄せた。
(写真=福地和男/文=鈴木秀樹)
■準々決勝/エコスタ新潟
◇8月16日▽第2試合
[福岡]初出場
木屋瀬バンブース
010000=1
00300x=3
旭スポーツ少年団
[新潟]初出場
【木】森下、藤田-但馬、森下
【旭】小林、小柳有-今井
二塁打/塚田(旭)石井(木)
【評】先制は木屋瀬。2回表に2四球などで一死一、二塁とし、井上雄陽が左前適時打を放った。旭スポ少は3回裏、四球と塚田晄人主将の安打、さらに重盗でチャンスを広げると、暴投で追いつき、今井咲太郎の2点適時打で勝ち越しに成功した。その後、旭スポ少は走者を出しながらもあと1本が出ず、追加点は奪えなかったものの、3回からマウンドに上がった小柳有生が6回までの4イニングを1安打無失点で投げ抜き、ベスト4進出を決めた。(了)
1回表裏は双方の先頭が出る。木屋瀬・永嶋璃陽斗(5年)は右前打(上)。旭スポ少の塚田主将は左越え二塁打(下)
2回表、木屋瀬は四球、飯田航平の犠打(上)、吉武楽人の四球(下)で一死一、二塁に
2回表、一死一、二塁から木屋瀬・井上の左前打(上)で、二走・森下結心が生還して先制(下)
先制された旭スポ少は直後の2回裏、藤田七音の中前打(上)と藤田侑汰(5年)の右前打(下)で一死一、二塁に
木屋瀬は2回裏一死一、二塁のピンチで、捕手・但馬愛飛(上)が二塁けん制で刺す(下)など、無失点で切り抜ける
3回表から登板した旭スポ少の小柳有(上)は、相手打線を手玉に。そして3回裏、先頭の小林楓(5年)が四球を選んで(下)反撃に転じる
3回裏、重盗を決めて一死二、三塁とした旭スポ少は、暴投で三走・塚田主将がかえり1対1に(上)。さらに四番・今井が中前へ勝ち越しの2点タイムリー(下)
3回から沈黙の木屋瀬打線は6回表二死から、四番・石井爽介が右へエンタイトル二塁打(上)。だが、マウンドの小柳有は最後の打者を左邪飛に打ち取り終了(下)
―Close-up Winner―
「ギリギリ勝負」で3勝。6年生7人を中心にメダルを確定
あさひ
旭スポーツ少年団
[新潟]
初出場の旭スポーツ少年団が、強敵・木屋瀬バンブースを破り4強入り。これまでの新潟県勢最高位に並ぶ大躍進で、地元・HARD OFF ECOスタジアム新潟のスタンドを沸かせた。
「新潟の過去最高位、ベスト4に並んだ。うれしいです。3試合勝ったので、このままの勢いで、次の準決勝も勝ちたい」。チームを引っ張る塚田晄人主将は声を弾ませた。
塚田主将は3打数3安打2盗塁、3回に同点のホームを踏んだ(上)。大型右腕の小柳有は3回から圧巻の投球で流れを引き寄せ、高畑監督とグータッチ(下)
2回、木屋瀬に先制を許すも、3回以降はリリーフのマウンドに上がった小柳有生が木屋瀬打線をピシャリ。3回裏には、安打に四死球も加わった好機を逃すことなく、同点に追いつき、なおも一死二、三塁の場面で四番・今井咲太郎が「センター返しを意識して、練習通りに打てました」と、中前タイムリーで2点を勝ち越した。
「初出場なので、レベルも何も、分からない中での戦いなんですが…」。10年以上、チームの指揮を執り続ける高畑哲也監督がここまでの戦いを総括する。
「楽な試合はひとつもありませんね…。すべてがギリギリの勝負です。1点を積み重ねて、守備で食らいつくだけです。選手たちには、ここまで連れてきてくれてありがとう、と。それしかありませんね」
2回表には一死一、二塁から左前打で先制されるも、返球を受けた捕手・今井が三塁転送(上)で、一走をタッチアウト(下)など堅守も光った
もともと、選手の人数は多くない。「平均すれば、毎年、1学年4、5人といったところでしょうか。4、5、6年生全員でチームを組んでいる年が多いですね」と高畑監督。「今年はたまたま、6年生が7人と、ウチにしては多い。その6年生が活躍し、チームを引っ張ってくれています」
ワンチャンスでしっかりと試合をひっくり返した打線の勢い、快速球で強打の木屋瀬打線を3回以降、1安打に抑えた小柳有生の投球もさることながら、この日は失策ゼロの守備も光る。
「打つべき人が打って、しっかり守る。これしかありませんからね」
メダルを確定し、過去最多優勝の長曽根ストロングス(大阪)との対戦に臨む。
「相手は大会常連の名門。胸を借りるつもりで戦うだけです。自分たちの野球ができれば、いい試合ができるんじゃないかとは思っているんです」
次も気負わず、自分たちの野球をするだけ──。地元応援団の声援が、彼らの背中を押してくれるはずだ。