学童野球選手向けに特化し、開発されたフィールドフォースのキャッチャープロテクター&レガース、FCP-380 &FRG-310が堅調な売り上げを記録している。JSBB(全日本軟式野球連盟)公認用具。公式戦で使える、一見、オーソドックスなキャッチャー防具だが、これもフィールドフォース製らしく、「かゆいところに手が届く」商品となっている。
定番商品にも不満あり!?
キャッチャーの防具といえば、どのチームも複数持っている、定番中の定番といっていい野球用具。おそらく、多くのプレーヤーは細かなところを気にすることなく、「こういうもの」という認識で、疑問に持つこともないまま使っているはずだ。
しかし、こと学童野球、少年野球のための道具として、あらためて見直してみると、改善の余地は少なくない、ということになる。定番商品も、新規開発商品と同じように足りない部分が見えてくるのだ。
学童野球選手に適したキャッチャー防具とは
控え捕手なのか、低学年の小さな選手がチームの備品であろう、体に合っていない、大きめのプロテクターとレガースを身に着けてグラウンド内を走る姿はほほえましいもの。が、実際の試合でのプレーとなると話は別だ。
「もう10年ほども前になるでしょうか。多賀少年野球クラブさんが主催されている、小学3年生以下の『多賀グリーンカップ』を見たときだったか、地元の低学年大会を見たときだったか……」
フィールドフォース社長の吉村尚記が振り返る。
「それまで、低学年以下の、小さな選手たちの試合をしっかり見たことがなかったんです。ですが、あらためて、じっくりその年代の試合を見ていると、選手みんなが体に合わない、重くて動きにくそうな防具をつけてプレーしている。走る力なんて、大きすぎるプロテクターやレガースのせいで、完全に阻害されてしまっている。「これじゃあ、子どもたちに『キャッチャーはやりたくない』なんて言われるわけだよなあ……と思いながら見ていたのを覚えています」 このときの思いがきっかけとなり、学童野球選手専用のキャッチャー防具の開発が始まったのだった。
一般的に世に出回っている、少年用のプロテクターやレガースは、大人サイズの一般用をサイズダウンしたものがほとんど。が、当然、部品数や接続部の仕様などは変わらないために、重く、動きを妨げる結果となっていることが多いのだ。
「学童野球選手の体にフィットし、動きを妨げることなく、軽量なプロテクターやレガースを作る。キャッチャーが走るのを阻害しないものがいい。『ダッシュできるキャッチャーギア』。ウチの出番じゃないですか」
吉村はそう言い、笑った。
軽量化+動きやすさ イメージを形に!
思い立った吉村は、すぐに商品イメージをイラストにした。
「まずは樹脂の部分を減らそうと思ったんです。削れる部分は部品も減らして、面積も減らそうと」
レガースは膝上にあるガードを省き、通常、くるぶしまであるスネ当て部分を短くすることにした。
「あれ(スネ当て)が長すぎるので、足首の動きを邪魔してしまい、走ったりすることができないんですよね」
足首部分を覆うフットガードは、一般用のレガースでは使われない、面ファスナーで取り付ける構造とし、その面積を縦方向に広げることで、面ファスナーの取り付け位置により、ヒザ下の長さに合わせて調節できる設計とした。また、スネ当てを装着するためのゴムベルトも、通常の4本から3本に減らし、装着もシンプルな形に。その一方で、フィット感を増すために、ふくらはぎガードを追加した。
プロテクターも脇部分のクッション材を省き、首まわりをすっきりさせたデザインとし、密着度を高めるために、背面はゴムバンドを一般的な「T字」の形ではなく、クロスで留める設計に。すべて装着しやすさと動きやすさにこだわった。
イラスト化したそれらのアイデアを形にするべく、吉村は国内の工場に持ち込んで製作を依頼した。
「もともと面識があった程度の会社なのですが、突然電話をして、ほとんど飛び込みのような形でお願いしたんです。それでも、ありがたいことに、ウチの会社のことを知っていていただいて、子どもたちのために、という思いを理解していただき、快く製作を引き受けていただいたんです」
それほど時間をおかずに、出来上がってきたサンプルは、ほぼイメージ通りだったという。
「もうそのまま、売り出せるんじゃないかというくらいでした。思いがそのまま。、形になっていた。その後にお願いしたのは、カラーとサイズの微調整、それくらいだったんじゃないでしょうか」
こうしてサンプルが完成し、JSBBの公認を取得するべく、全日本軟式野球連盟に持ち込んだのだった。
発売後の評判は上々、この先の展開は…
JSBBの公認を取得するためのやり取りや手続きは、思いのほか長い時間を要した。商品の発想から実に5年半、やっとのことでJSBBの公認を取り、今季、シーズン前に発売を開始した。
最終的に、FCP-380/FRG-310は、従来品と比べ、プロテクターとレガースを合わせ、約400グラム軽量になった姿で、市場に送り出された。その評判は……。
「発売前から、SNSなどで告知をしていたんですよね。ありがたいことに、多賀少年野球クラブさんが、自分のところで試した様子を『つけたままでダッシュできる!』なんて発信してくれて、それに対する反応もあったりして……」
まだ発売から数カ月ながら、すでに追加発注をかけるほど、好調な滑り出しを見せている。ありがたいことに、開発の動機がそのまま商品の評価につながっており、多く寄せられているのは「軽くて使いやすい」「動きやすく、プレーの妨げにならない」といった、既存品と比べての好評価だ。先日、高円宮賜杯第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントで前人未到の8度目制覇を果たした長曽根ストロングスも、当初からのユーザーだ。
試合でも使える公認用具なので当然だが、フィールドフォース製品にしては珍しく、真正面から開発に取り組んだ商品である。とはいえ、これだけ多くのメーカーが同じ用途で作っている用具でも、やはりフィールドフォースが手がけるものは、「かゆいところに手が届く」仕様になるのだ。
こうして誕生した新定番商品。しかし、吉村の構想は、これでは終わっていない。
「現在、ネイビーとブラックの2色展開なのですが、よく『レッドはないの?』『ブルーは?』といった、問い合わせをよく受けます。ありがたい反応ですね。ゆくゆくは、オーダーグラブのように、多色展開ができたらいいですよね」
これもまた、フィールドフォースらしい展開。もちろん、どんな商品も、野球少年たちに寄り添う姿勢にブレはない。