商品開発室

【vol.40】隠れヒット商品「クイックスウィングバット」が高校野球に旋風を起こす!?

【vol.40】隠れヒット商品「クイックス...

2026.05.28

 数あるフィールドフォースの商品の中で、まだ発売数カ月ながら“隠れたベストセラー”とでも呼ぶべき商品がある。「クイックスウィングバット」FQSB-8480。メインユーザーは高校生。ネットでの販売は多くなく、売り上げは主に学校単位の直接注文。名門校監督との忘れられない出会いから生まれたバットがもたらす変革とは…。   ホームページに寄せられた一通のメール  2023年の秋。はじまりは、ホームページの問い合わせフォームから届いた、一通のメールだった。 差出人は、関西の強豪高校野球部監督。「最初は、いたずらかと思いました」 フィールドフォース社長・吉村尚記が笑いながら回想する。「しかし、メールを読み進めると、ウチの商品をよく使ってくれていること、ホームページもご覧いただいていて、商品開発の姿勢に共感いただいていることなどが丁寧に書かれていたんです。早速、私からも連絡を取らせていただいて」 実際に電話で話すと、まるで旧知の間柄であるかのように会話が弾んだ。「『こんなのありますか?』『こんな商品はどうでしょうか』…。そんなやり取りが続いた後、『一度、グラウンドにお邪魔させてください』という話になって」 当時、フィールドフォースは中学、高校、大学の野球部を訪問し、先方の要望を聞き、商品を試してもらいながらプレゼンテーションと商談を行う「外商」にも力を入れて取り組み始めていた。「(外商を担当している)成田雄馬、井口大也と一緒に、ハイエースに商品を積み込んで、関西に向かったんです」   フリー打撃で使える軽いバットのリクエスト  こうしてグラウンドを訪問したフィールドフォース一行。「あらかじめ、試したいとリクエストをいただいていたのはフォースマシン(FFMC-100M)やメディシンボール(FMB-1000、2000)、モンスターウォール(FKMP-2116BLK)などでした。それらは実際に練習で使っていただき、予想以上の高評価をいただいたんです。その場でオーダーまでいただいて」 と吉村。「ネット裏で選手たちの練習を見ながら、監督と雑談する中で話題になったのが、『実打できる軽い金属バットは作れませんか』という話だったんです」 下半身や体幹を強化するために行う、普段よりも重いバットを使った練習はポピュラーだが、この学校では逆に、軽いバットを使ったフリー打撃が行われていた。「普段よりも軽いバットで打つことで、体にキレが出るんです、という話でした」 吉村が振り返る。 思い当たるフシはあった。 フィールドフォースには、スウィングスピードアップバット(FSUB-8041)という商品がある。普段よりも軽いバットを振り、筋肉にスピードを覚えさせることで、スイング速度を上げようというものだ。陸上のスプリントで、下り坂を走る練習を取り入れるのと同じ発想である。  ただ、FSUB-8041は軟式選手向けの木製バットで、素振りとトスバッティング程度の使用しか想定していない。フリー打撃での実打、それも硬式球でとなると、商品に求められる強度レベルはグッと上がる。「FSUB-8041を開発するときに考えていたのは素振りだけで、実打はまったく頭になかったんです。ただ、確かに、実際に打つときに素振りと同じスイングスピードは出せませんよね。必ず速度が落ちる。実打できれば、より実戦的な練習になるのは確かです」 発想自体は近しいものの、アウトプットとしては「似て非なるもの」だったのだ。   軽さと強度は両立できるのか!?  件の野球部では普段、その練習のために中学硬式用のバットを使っていた。 高校野球で決められたバットの重さは900グラム以上。それに対し、その練習のための理想は800グラム程度。中学用ならばこの重さのバットがある。ただし、重さを規準に選ぶと、少し短いものになってしまう。「それまでは、長さは妥協して、82センチ800グラムの中学生用で練習してたそうです。ただ、長さと同時に、強度の問題もあったんです。高校生のパワーで中学生用のバットを使って実打を繰り返すと、やはり強度が足りずに割れてしまうというんですね」 と吉村。 そこから、実打できる軽量バットの開発がスタートした。  課題は、中学生用バットの使用で明らかになっていた、軽さと強度の両立だ。「太さはそこまでこだわらないと言っていただいたので、少し細くすることでクリアできるのではないかと思い、早速、試作にとりかかりました」 2024年から高校野球で採用されている、いわゆる「低反発バット」といわれる新基準適合バットは、最大径が64ミリ未満と定められている。クイックスウィングバットは直径を62ミリと、それよりもやや細く設定した。 細くすることで軽量化する一方で、強度を確保するため、素材である超ジュラルミンの肉厚はやや厚くした。狙い通りに、84センチの長さで約800グラムという一本が完成した。 次に、これを実際に使ってもらう。「最初の試作品でいただいた意見は、打球音についてでした。細いとその分、金属特有の共鳴によって、金属バットの『カキン』という打球音が大きくなってしまうんです。それで、発泡体を注入するなどの対策をしました」 もともと、公式戦での使用は想定していないため、そのあたりは自由が利く。修正に加えて、スイングの軌道を意識させるため、半面を黒、半面をシルバーのツートンカラーとした。 3度の試作を行い、その都度、3カ月ほど繰り返して使う強度テストを経て、実打可能、かつ軽量なバットが出来上がったのだった。   口コミと、飛び込み営業と  こうして完成し、今年1月に発売を開始したクイックスウィングバットFQSB-8480。 もちろん、ホームページに掲載し、ネットでも販売してはいるが、ターゲットユーザーは硬式野球で金属バットを使うカテゴリー…つまり、ほぼ高校野球に限られる。それも、個人よりはチーム単位での導入がメインとなるため、ここでの売れ行きは爆発的とはいかない。 ところがその一方で、結構な頻度で吉村に直接、注文の電話が入るのだという。「開発のきっかけになった高校の監督が絶賛してくれていて、練習試合に来た他校の監督さんに薦めてくれるんです。そんなこんなで、トータルだと、結構な数が売れています」 と吉村。「最初は、その都度、『先方に吉村さんの連絡先を教えていいか』という確認が入っていたのですが、途中からは『どんどん教えてもらって大丈夫ですよ』とお伝えしたほどです」 恐るべし、高校野球界の横のつながり。もちろん、甲子園出場経験も豊富な強豪校による発信、というのもあるだろう。また、発売から数カ月がたち、このバットを使った練習の効果が徐々に実戦で表れているのかもしれない。  また、それとは別に、野球部のグラウンドに直接出向く、外商でも人気商品となっている。 成田が話す。「高校での外商には、必ず持っていくようにしています。結構な数の学校で導入していただいてますね」 販売総数で考えれば、個人向け商品ほど売れているわけではない。それでもフィールドフォースの商品らしい、「かゆいところに手が届く」アイテムであることは確か。加えていえば、このバットでしかできない練習を生み出しているのも事実だ。 静かなブームの兆しを見せている、クイックスウィングバット。決して少なくない高校野球部で、練習メニューに変革をもたらしているのだと考えると、実は画期的な商品といえるのではないか──。

【vol.39】シンプル構造で驚きの効果! パラシュートボールが練習を変える!?

【vol.39】シンプル構造で驚きの効果!...

2026.05.14

 6月に発売予定の新商品「パラシュートボール」FPRCB-4040。製品名通り、ボールにパラシュートをつけた簡単構造の練習ギアだが、そこはフィールドフォース。納得の商品哲学がある。そして、使ってみてわかる、計り知れないポテンシャル。ひょっとして、初心者の練習風景が変わるかも…。   キャッチボールを「ボールを捕る」練習と考えると… 「パラシュート」+「ボール」。それ以外には何も使っていない。シンプルこの上ないこのギアが、使ってみると、かなり楽しい。空に向かって思い切り投げたボールがゆっくりと落ちてくるさまは、想像はつくものの、それ以上のワクワク感だ。「キャッチボールって、練習の基本って言われますよね」 フィールドフォース社長・吉村尚記がそう切り出した。「初心者向けの野球教室なんかをみても、講師の皆さんはそんな言葉を子どもたちに投げかけています」 キャッチボールはすべての基本。しっかりステップして、相手の胸に向かって投げよう──。野球教室では聞き慣れた言葉だ。「でも、捕る側の初心者にとっては、自分の胸に向かってくるボールって恐怖心がありますよね」 そうなのだ。胸の前でボールを捕るとき、グラブの使い方は基本的に逆手になる。まだグラブに慣れない子どもたちにとっては、決して簡単ではないのだ。「あるとき、多賀少年野球クラブの辻正人監督が言ってたんです。相手に正対する体勢ではなく、たとえ捕れなくてもボールが体に当たらない、半身の形で構えて捕るようにすればいいと」 そこで、ハタと気づく。 そもそも、われわれはキャッチボールを「投げる練習」と捉えがちで、「捕る側」の視点では、そこまで深く考えていなかったかもしれない。「そうなんです。でも、“キャッチ”ボールなんですから。捕る練習であるという考えを、もう少し進めると…」 吉村が続けた。「フライを捕る練習が先にあってもいいんじゃないだろうか、と思ったんですよね」   フライを恐怖心なく捕るためには  フライ練習を、キャッチボールよりも先に…。 これには、吉村なりの根拠があった。「空間認知能力ってありますよね」 最近では基礎トレーニングのさまざまなメニューにも組み込まれ、その強化が重要とされている空間認知能力。ネットで調べてみると、対象物の形や、自分との相対的関係を3次元的に把握する力──という定義になるらしい。「フライを捕るという動作は、落下点を予測し、そこまで移動し、捕球する、という一連の作業になります。空間認知能力を高めるための練習にもなるんです」 そして、空間認知能力は野球や他のスポーツにとどまらず、日常生活においても重要であり、子どもの時期にこそ伸ばしたい能力とされる。「そう考えると、フライを捕る練習には、大きな意味があると思いませんか? ひょっとしたら、キャッチボールより先にあってもいいかもしれません」 なかなかの説得力である。「ですが、野球を始めたばかりの子にとっては、やはり自分に向かって飛んでくるボールって怖いんです」 物理的に考えれば、真上に投げたボールは、高く投げるほど速いスピードで落ちてくるわけで、初心者にとって、結構な恐怖になるのは確かだろう。小さな子に向かってボールを投げるときには、やさしい下投げでゆっくり、捕りそこなっても手前に落ちる位置に投げるのが普通だ。「フライを捕る恐怖心を、なんとか取り除けないかと考えた結果、思いついたのがパラシュートだったんです。ボールにパラシュートを取り付けることで、ゆっくりと落ちてくるようにできれば、恐怖心なく捕りにいくことができるだろうと」   発想の転換は、新幹線がヒントに  こうしてたどり着いた、パラシュートボールのアイデア。しかし、これを形にするまでには、結構な時間を要した。「最初の試作品は、これです」 と吉村。  ボールに、小さなパラシュートをつけた、文字通りのパラシュートボールだ。「これでたしかに、ボールは遅くなります。ただ、投げたとたんに大きく減速してしまって、あまり飛ばず、近い距離でポトリと落ちてしまうだけでした」 この課題を抱えたまま、数カ月が過ぎた。「ずうっと考えていたんですけど、なかなか思いつかなかったんですよね」 吉村が振り返る。「ところが、ある出張の時、不意に新幹線を見て思ったんです。これだ、って」 「新幹線って、ノーズが流線型になってるから、あれだけのスピードが出せるんですよね。いかに空気抵抗を減らすか、という話です」 しかし、パラシュートボールはそもそも、空気抵抗を増やすことでボールを遅くしようと開発が始まったギア。まったく逆の機能と同居できるのか。「パラシュートの裾に、ボールと結び付ける形で絹のような、なめらかな布を付ければ、飛び出しの空気抵抗を減らせるんじゃないかと思ったんです。そして、ある程度飛んでスピードが落ち始めたところでパラシュートが開いて、一気にスピードが落ちる、と」 放物線の頂点でうまくパラシュートが開くように、布地はポリエステルのメッシュ素材を選んだ。 ここからは、多少、奇跡的である。 メッシュ素材が相性バッチリで、最初は勢いよく飛んでくれるうえに、イメージ通りに中間地点からパラシュートが開き、急ブレーキがかかるようになったのだった。「布地の選択もバッチリでしたし、パラシュートの大きさは、広げて直径40センチとしたのですが、これもちょうど良く、修正なしでそのままいけたんです」 すべて“目分量”。きわめてアナログな、経験と直感だけで正解を出してしまうところが、いかにも吉村らしい。   新たな練習シーンを創り出すことができるか!?  こうして完成したパラシュートボール。試作品からの変更点は、パラシュート本体の色と、ボール取り付け部の補強布の大型化程度だった。 付属するのは、重さ55グラムのフォースマシン用ホワイトボール。フライを投げたときに落ちてくる速度が緩やかで恐怖心なく捕りにいける、絶妙な重さだ。もちろん、体に当たったとしても痛くない。 ボール取り付け部は、2本の幅広ゴムバンドを十字に配置。ボールは取り換えられるため、付属のホワイトボールだけでなく、もっと軽量な穴あきボールから、重量のある軟式球まで、様々なボールを使うことができる。 グラブを使う必要もなく、遊び感覚で使えるパラシュートボール。高く放り投げるフライの練習以外に、山なりに投げるキャッチボールなどにも、恐怖心なく取り組めるはずだ。 グラブがなくてもOK。キャッチボール・デビューの前に、パラシュートボールで捕球練習を──。そう呼びかけたくなる、気軽さと楽しさを備えた、初心者向けの練習ギアだ。

【vol.38】シンプルな中にも遊び心満載。エアーティーで打ち込みを!

【vol.38】シンプルな中にも遊び心満載...

2026.04.30

 またしても、フィールドフォースを象徴するような商品が登場する。上市予定は6月ながら、フィールドフォース社長・吉村尚記のSNSに登場するや、話題となっている「エアーティー」FBT-900。遊び心満載、しかしフィールドフォースの商品開発において満たすべき機能をすべて備えた、スターター向けの練習ギアだ。   ブリキのおもちゃ!? いえ、ティー台なんです  今は懐かしい、ブリキのおもちゃのロボットのような外観だ。プロトタイプを一見し、そんな感想を伝えると、吉村は「でしょ。でも、れっきとした練習ギアなんですよ」 と言い、ニヤリと笑った。「発想は海外のおもしろ動画からなんです。ドライヤーの風でピンポン玉を浮かせて遊んでいる動画です。それを見て、『あっ、これだ』となったんです」 6月に発売予定の新商品「エアーティー」FBT-900は、上部の吹き出し口からの送風により、ピンポン玉と同じ大きさのEVA樹脂製ボール「ミートポイントボール」を浮かせ、バッティング練習を行うためのマシンだ。 通常のティーバッティングにおけるティー(tee=球座)の役割を空気(air)が担うことから、この商品名となった。   スターター用に特化、「はじめの一歩」にもぜひ!  このマシンには、いくつかの特徴がある。そして、それは後述する商品開発の経緯とも大きくリンクしている。「まずひとつは、このエアーティーは野球を始めて間もないスターター、子どもたちに向けた商品であるということです」 吉村が解説する。「ティースタンドを使った置きティーって、どうしてもボールを置くティー台にバットが当たります。ボールをちゃんと飛ばそうとすると、ボールの中心よりも下を打つ必要があるわけですから、正しいスイングをすれば、必然的にバットがボール受けに当たることになる。ただ、これは野球を始めたばかりの子どもたちにとっては特に、結構なストレスになるんです」 スイングの軌道が少し下にずれ、ティー台を倒してしまおうものなら、なおさらだ。しかし、それを避け、ボールだけにバットを当てようとすると、正しくないスイングを繰り返すことになり、かえって悪癖をつけてしまう結果になりかねない。「実は以前から、このストレスを子どもたちに与えることなく、ストレスフリーで取り組めるティーバッティングのためのギアを作れないかな、とは考えていたんです。エアーティーの開発を思いついたときに、最初に考えたのは、これでクリアできるんじゃないかということだったんです」 吉村はそう言い、うなずいた。   室内使用に特化。カーテンに向かって打つべし!  もう一つの特徴とは…。吉村が続ける。「室内での使用に限る、ということです。屋外で使うと、どうしても風の影響を受けてしまうためです」 空気の力でボールを保持する仕組みなのだから、当然ではある。 スターター向けであること、室内での使用という2つの条件を決めたことで、使用するボールも、おのずと決まった。「室内で安全に、勝手良く使えるミートポイントボールです」 EVA樹脂製で直径40ミリ、重さ約3グラムのミートポイントボールは、壁や家具に当たっても、それらを傷つける恐れがなく、室内でも思い切り使えるため、小さな子どもにはもってこいの選択といえる。 これまでに販売されたミートポイントボール使用ギアには、「インドアバッティングマシン」FPM-103(現在は廃番)、「ミートポイントボール・トスマシン」FTM-401ADがある。  軽いために室内でも思い切り打つことができる一方で、しっかりと芯はあり、打感もあるミートポイントボール。室内で気軽に取り組める練習のバリエーションが増えることは、スターターにとっては朗報といえるだろう。「すでにマシンなんかをお持ちで、ミートポイントボールを使っている方にも、とっつきやすい商品だと思いますよ」 さらに加えるなら、飛んでくるボールを打つこれまでのマシンよりも、止まっているボールを打つエアーティーの方が難易度は低い。野球未経験者の「最初の一歩」として考えてもいいかもしれない。   とことんシンプルに、コスパにもこだわりあり  上記の使用条件を早い段階で設定したこともあり、試作から始まる商品開発はかなりスムーズに運んだ。 たとえば、「ボールを浮かす」という命題を比較的容易にクリアできたのは、軽いミートポイントボールを使うことに決めていたからにほかならない。「ボールが軽いこともあって、うまい具合に浮いてくれたのももちろんですが、空気がボールを包むように流れることで、最初から、思っていた以上にボールが安定したんです」 と吉村。スタート地点でミートポイントボールに限定せずに進めていたら…。「大きなボールを使っても可能でしょうが、その分、かなり大掛かりなものになったはずです。時間もコストも大変なことになっていたでしょうね…」  ボールの高さについては、風量を調整することにより、自分で調整できる仕様も考えたというが、早々にボツにしたという。「最終的には、ボールは吹き出し口から40センチ弱の高さで落ち着いたのですが、これくらいが一番、安定するんです。風量を増やすことで、これより高めに設定することはできますが、ブレが大きくなるなど、安定しません」 そこで考えついたのが、電気に頼らず、3段で伸びる2本の脚の伸縮により高さを調節する仕組み。内部のバネの強さとパイプ同士の摩擦により、ネジなどを使わず無段階で伸縮できる、「フォースティー」FBT-333の仕組みを流用した。「脚を伸縮することで、吹き出し口が約26~51センチの間で調整できます。ボールの高さでいうと約65~90センチ、といったところでしょうか」 さらに原始的だが、それ以上に高く設定したければ、下に台などを置けばよい。こうして高さ調整をすべて手動にしたことで、電源周りはON/OFFスイッチだけとなった。また、室内での使用に限定したことにより、電池駆動の考えを切り捨て、電源も家庭用コンセントを使う、付属のACアダプタのみとした。   室内練習はフィールドフォース発の文化なのです  簡単、安定を突き詰め、とことんシンプルに。「動作の安定ももちろんですし、コスト面でもかなり詰めることができました」 と吉村。 予定価格は9,900円(税込み)。物価高騰のこの時期だからこそ、コストパフォーマンスにもこだわった価格設定とした。「ミートポイントボールを使い、カーテンに向かって思い切り打つ。言ってみれば、この練習はフィールドフォースの創り出した文化ともいえるものだと思っています。その系譜を受け継ぐマシンでもあるわけです」 その仕組みから、一見、複雑そうに感じられるエアーティーだが、機械的な調整はなく、ユーザーが操作するのは電源のオン・オフと、脚の伸縮のみ。 至ってシンプルで、導入のハードルも低い。それでいて、フィールドフォースが商品開発の指針にしている6つのキーワード「簡単組み立て」「楽々移動」「省スペース」「パートナー不要」「実戦感覚」「繰り返し練習」の全てを併せ持っているエアーティー。ストレスなく、楽しんで取り組めるティー打撃を試してみてはいかがだろうか。

【vol.37】「からくり」の面白さだけにあらず! 自分と向き合う「ハンズフリーティー」

【vol.37】「からくり」の面白さだけに...

2026.04.23

 「かゆいところに手が届く、マニアックで変態的な商品」。これぞフィールドフォース! そう言いたくなる新商品が、まもなく登場する。4月末に予約開始予定の「ハンズフリーティー」FBT-800。電気を使わず、からくり仕掛けでティースタンドにボールをセット。ティー打撃が楽しくなるだけでなく、なぜかそこには「自分と向き合う」練習のための、絶妙な「間」も感じられて…。   発想の起点は自転車のブレーキ!  奇才・吉村尚記の真骨頂といっていいかもしれない。「ずっとね、すごいよなあと思っていたんです」 ハンズフリーティー最大の特徴である、足元のフットペダルを見ながらフィールドフォース社長・吉村が語る。「自転車のブレーキです。手でレバーを握るだけで、前輪・後輪が止まる。当たり前に使っていますけど、これってすごくないですか。意思を伝える役割を持つのは、1本のワイヤーです。この仕組み、いつか使えないかなあと思っていたんです」  フットペダルを踏み込むと、ワイヤーにより連動するボールストッパーが外れ、雨どいのようなレールをボールが転がり落ちる。その先にあるのは、跳ね上げ式の樹脂製レーン。このレーンを伝わり、ボールがボール受けにセットされると、ボールの重さから解放されたレーンは、根元のウエイトにより、再び自動的に跳ね上がり、ティー台にボールがセットされた状態に。あとは通常の置きティーと同様に、ボールを打つだけだ。   伝統(!?)の「鹿威し」の仕組みも 「ギミック」よりは「からくり」と呼びたい、どこか「和」を感じるメカニズム。跳ね上げ式のレーンの動きに、その理由があるのだろうか。「連続ティー(FBT-500RT)と同じ、『鹿威し(ししおどし)』をヒントにした原理を使ってるんです」 吉村が解説する。  まさしく鹿威し。そして、おそらくそれは、動作原理だけではない。 竹筒に流れ落ちた水がたまり、重さで傾いて水が一気に流出、跳ね上がった竹筒の底が石に当たって音を出す──。 鹿威しに感じる風流は、その「間」にある。ハンズフリーティーにも、それに似た趣があるのだ。 ハンズフリーティーを使い、ひとりで取り組むティー打撃。おそらくそこには「パートナー不要」という、フィールドフォースの商品開発理念だけでなく、自分と向き合い、気持ちを整えるのに具合のいい「間」も感じられるはず。そんなところにも、この練習の意義を見出せるのではないだろうか。「ボールを拾い上げ、ティー台にセットする。ひとりで取り組む置きティーは、この準備作業により、一連の打撃動作が一旦、リセットされます。これって、動きが中断させられるだけではなく、気持ちも途切れてしまうんですよね」 と吉村。ブレーキワイヤーの応用による全自動化によりもたらされるのは、利便性だけでなく、練習の質でもあったのだ。   発想→開発→設計はすべてアナログで  もうひとつ、吉村ならでは、と思わされる部分がある。 発想から設計、デザインの段階で、コンピュータの力を全く使っていないところだ。ベースになっているのは、吉村自身の手によるフリーハンドのイラストと、これまで彼が商品開発で培ってきた経験値だけである。 吉村が普段、手にするのは紙と鉛筆、そして巻き尺、直尺、ノギス。PCはほぼ、連絡と画像確認のためのツールに過ぎない。 たとえば、樹脂製(この素材選択も経験値によるところが大きい)のレールと、ボール受けの関係。レール先端、ボールをリリースするため円形に加工された輪の部分の内径は、硬式球の大きさに1センチほどをプラスした85ミリほど。レールとボール受けのどちらに大きな“あそび”やブレ、変形があってもボールはうまくセットされないが、これが実にうまい具合に、ピタリとセットされるのだ。 「輪っかの先の部分にボールを止めるストッパーをつけ、ボール受けも少し高めにすることで、落ちてくるボールを受け止めるのではなく、ボールが自然にボール受けに乗る形にすることで、うまくセットされるようになりました」 もうひとつ、ポイントがある。「支柱の安定性ですね。メインの支柱とボール受けの支柱、この2本がしっかり固定できていないと、レールとボール受けの位置関係にズレが生じてしまいますから、ボールはうまくセットされません」 土台はスチール製の3本の角パイプが「H」字状に組み合わされている。メイン支柱とボール受け支柱は、土台の2辺に平行ではなく「はすかい」な位置で取り付けられているが、当初、支柱を取り付ける土台の2辺をつなぐ長い角パイプは、ボール受け支柱の軸部分に取り付けられていた。「ただ、これだとメインの支柱が安定しない。それで、横パイプをずらして、メイン支柱の根元に取り付けるようにしたんです。これで安定しました」  さらに、両方の支柱はただ土台に取り付けるだけでなく、根元部分を三角形の鉄板で補強している。これも当初の試作品からの仕様変更である。「あ、この構造は、これまでの商品設計の経験というよりは、練習場施工の土台作りがヒントになってるんです」 それってもはや…。「建築仕事ですね」 吉村はそう言って笑うのだった。 いずれも決して簡単な課題ではないが、過去の経験から、即座に改善案を形にして提示し、解決している。最初のラフスケッチから、わずか3度の試作で製品化レベルまでブラッシュアップしたというから、そのスピード感にも驚かされる。   独創的発想の商品で「類似品」を凌駕するのだ  話はややそれるが…。 このコーナー「FIELD VOICE」は、これまでフィールドフォースが開発・製作を手掛けてきた用具や練習ギアなどの開発目的や開発経緯を深堀りし、アーカイブとして残すことを大きな目的のひとつとしている。「vol.1」で取り上げているのは、フィールドフォースが創業間もなく手掛けた商品である「穴あきボール」と「持ち運びできる防球ネット」。それまで世になかった、新たな視点で作られたオリジナルアイテムである。 いずれも大ヒットし、フィールドフォースの代名詞ともいえる商品となった。 その一方で、ヒット商品として広く知られるようになったことにより、コピーされ、類似品が出回る事態に。ボールやネット類など、一般的なカテゴリーの商品であったがゆえに、その数も多く、20年ほど前には存在すらしていなかった「穴あきボール」も「モバイルネット」も、今では一般名詞と言っていいほどに普及している。同時に、もはやフィールドフォースの代名詞と呼ぶには、類似品が出回りすぎているというのが現状だ。 さらにいえば、最近では、穴あきボールやネット類に限らず、かなり特徴のある練習ギアでさえ、類似品が出回り始めている。 とはいえ、このハンズフリーティーの開発経緯に見られるように、吉村による「超アナログ」でありながら、驚くべき精密さでイメージを具現化する工程は簡単に真似できるものではない。さすがにここまで「独創的」かつ「変態的」なギアは容易にコピーされることもない…ように思われるのだが、どうだろうか。   「間」を感じとることで、自分と向き合う練習を  閑話休題。 ハンズフリーティーは、これまでに開発・販売された「からくり」商品、「落下ティー」FBT-500、「落下ティー電動」FBT-500DC、「連続ティー・テニスボール専用」FBT-500RTなどの流れも受け継いでいる。「それらの開発経験は当然、土台になっていますね」 と吉村。 いずれもボールが落ちるまでの「間」を生かすことで、ひとり練習で「集中力を高める」プラス要素も期待できる。 レールを転がるボールに集中し、「自分と向き合う」ひとり練習。「哲学的」ともいえる練習時間を重ねることで、新たな気づきを得られるかもしれない。 ◇      ◇  考え得るアイデア「全部入り」のハンズフリーティー。これは「落下系」「からくり系」練習ギアの集大成といっていいのではないか。「いえ。ブレーキワイヤーを使った仕組みは、まだ発展性があると思ってるんですよねえ」 と吉村。 そうだ。フィールドフォースの商品開発に、ゴールはないのだった。

【vol.35】チーム向けギアに新たなヒット商品誕生!? - フィールドフォース

【vol.35】チーム向けギアに新たなヒッ...

2026.04.02

 以前、多くをまとめて紹介した、チーム向け商品(⇒こちらとこちら)だが、その後もフィールドフォースは、より「痒いところに手が届く」新規商品の開発と、既存商品の改良に余念がない。現場にアンテナを張り、ユーザーの要望に耳を傾ければ、その需要は膨大。新商品も次々と生まれている。   じわじわとヒットの予感「塁ベース・ガッチリ君」  2月に発売開始した新商品「塁ベース・ガッチリ君」FBASE-3838GKが好評価を得ている。ベースの裏に、四隅にねじ込み式の固定ピンを取り付けた金属製のプレートをはめ込み、ピンが地面を“噛む”ことで動きにくくなる、という塁ベースだ。 学童野球ではよく見かける光景だが、小学校の校庭など野球専用でないグラウンドや、大人用のグラウンドで学童野球サイズのダイヤモンドをつくった時には、一、二、三塁の塁ベースが“置いただけ”の状態になることが多い。すると、練習や試合の最中には、走者の側も、守る野手側も、触塁のたびに頻繁にベースが動いてしまうのだ。  フィールドフォース社長の吉村尚記が解説する。「試合では、ベースが動くたびに審判がタイムをかけ、正しい位置に戻すことになります。そのたびに試合がストップし、守備や攻撃の“流れ”まで妨げられてしまう、なんていうこともよくありますよね」 低学年の選手などの場合は、塁上の選手がベースが本来ある場所にいるべきか、あるいは動いてしまったベースの上にいるべきか分からず、右往左往…なんて場面に遭遇することもある。「そんなシーン、なくしたいですよね。審判も同じ気持ちのはずです」 そんな風に、ベースが動いてしまうことで、地味に募るイライラを解消してくれるのがガッチリ君なのだ。  滑り込みなどでベースが動いてしまうことが減る一方で、固定ベースのように完全固定にもなっていない。これにはベースが動く余地も残しておくことで、衝突などによる選手のケガを予防する狙いもある。 ガッチリ君のセットには、短いピンと、長めのピンの2種類が付属している。短いピンは人工芝のグラウンド用、長いピンは土のグラウンドで使うときのためのものだ。 どちらも効果は大きく、ベースの位置直しのイライラ低減に役立ってくれているようだ。新たな定番商品誕生、となりそうな予感だ。   同じアイデアで作られた、もう一つのベストセラー 「実は『ガッチリ君』のアイデアはこの商品から来ているんです」 吉村がある商品を指さした。「ピッチプレート」FPP-1046。発売から6年以上になるが、フィールドフォースの商品には珍しく、これまで一度もモデルチェンジをしたことがないロングセラーだ。  何もない土や人工芝のグラウンドに置いて使う、簡易版ピッチャープレート。少年軟式サイズ、51×13センチのプレートと、クッション性のある人工芝、スチール板の3層構造になっており、4辺の端を90度に折り曲げたスチール版がガッチリと地面に食い込むことで、動きにくい構造になっている。圧倒的に使いやすく安定性も高い、ベストセラーだ。「野球は併進運動が多い。ピッチプレートはスチールのエッジが利いているので、体重がかかれば、プレート自体は動かずに安定するんです。通常は長いペグを打ち込んでプレートを固定しグラウンドづくりをしますが、これなら置くだけでいい。使い勝手は最高です」 吉村が説明する。  野球用ではないグラウンドで試合や練習を行うときには、通常のピッチャープレートとして使うことも可能。大人サイズのグラウンドの場合は、大人のプレートの手前、ホームベースから16メートル地点に置いて臨時の学童野球用プレートとすることもできる。 人工芝もクッション性が高く、スパイクのまま使うことができる点も評判が高い。もちろん、試合前や、ブルペンがないグラウンドでのリリーフ登板前の投球練習用にも最適とあって、備品として持ち運び、使用しているチームは多い。 「この『ピッチプレート』には、バリエーションもあるんです」「室内用ピッチプレート」FSPP-1561は、「ピッチプレート」の最下層のスチール板を、質量のあるゴム板に替えた構造となっている。「冬場は雪に埋もれ、外で練習ができない北海道で、体育館の床の上に置いて使えるプレートがあったら…という声に応えて商品化したんです」 厚いゴムマットにより、体育館の床の上を傷つけることなく、しっかりと踏ん張って動かないピッチャープレートが誕生したのだった。   チームとのつながりが新たな着想に  チーム向けの商品は、たとえベストセラーであっても、個人向けのヒット商品ほど数が売れるわけではない。それでも、それ以上にプラスがあるのだと吉村は言う。「商品を通して、チームの指導者とつながることができることですね」 現在ではSNSの普及もあり、ネットを通じてユーザーの声に接することも増えたとはいえ、やはり“生の声”を聞き、会話の中から新たな問題点や、その解決の糸口を見つける作業は欠かせないのだという。「やはり現場の意見の方が情報量は多いですからね。ネットでの発信と、そのレスポンスではどうしても、一方通行の言葉の連続になりがちです。一方、対面で相手の意見を聞きながらのやりとりには発展性があります。ひとつの商品の感想にとどまらない会話から、新たな製品のアイデアが生まれることも少なくありません」 2019年、学童野球のルール変更で、投手に「一人1日70球」の投球制限が課せられて以来、多くの学童野球の現場で使われてきた「投球カウンター」FTC-1500Aは今年に入り、リニューアルした。 一見、これまでの投球カウンターと大きな違いは感じない。マイナーチェンジだ。それでも、素材変更により軽くなり、持ち運びが楽になっていたり、風でめくれにくくなった数字シートに変わっていたり、3本の脚を「Y字」に配置することで、左右に並んで座り作業をするときに邪魔にならないように変わっていたりと、実際に使ってみると、使いづらかった部分が、きっちりと改良されている。これもまた、小さくはあるが、確かな進化ではある。   まだまだ便利になりそうです  チーム向けギアの定番である防球ネットの多くもモデルチェンジし、タイヤ付きのタイプにリニューアルが進んでいる。「圧倒的に、この方が便利ですからね」 と吉村。各ボールパークで使っているネット類は、今ではすべてタイヤ付き。ネットをこまごまと移動させて使うことが多い室内練習場の運用では、その利便性の高さを実感している。 こうして、新商品開発も、既存商品のリニューアルも、着々と進むチーム向けギア。このほか、「簡易版バッティングケージ9m」FBN-933や「全方位集球ネット-360°」FZHSN-360など、大型のチーム向け商品にも魅力的なものは多い。ぜひ使ってみてほしい。  

【vol.33】使い方はユーザーが決める! ロングヒットのスウィングスタンド、そして… - フィールドフォース

【vol.33】使い方はユーザーが決める!...

2026.03.12

 2017年の発売以来、マイナーチェンジを繰り返しながら売れ続けているロングセラー、「スウィングスタンド」(現行品はFSWS-2746MT)。前回取り上げた「ホームベース・ワイド」「アローベース」(⇒こちら)同様、こちらもシンプルながら、使い勝手の良い商品だ。そして、ユーザー側で工夫の余地が多くある点も、人気の秘密となっている。ロングセラーに歴史あり。当初の製作意図とは違った使われ方が一般的になっているのも、フィールドフォース製品の特徴なのかもしれない。   「紹介したい」1ユーザーがいまや大エースに 「2019年あたりのことでした」 フィールドフォース社長・吉村尚記が語り始めた。「長曽根ストロングスの辻本さんから、連絡がきたんです。吉村さんに紹介したい選手がいるんです、と」 全日本学童マクドナルド・トーナメントで8度優勝を誇る大阪の強豪学童野球チーム、長曽根ストロングスと、吉村との付き合いの始まりは、2015年にさかのぼる(⇒こちら)。その長曽根で当時、ヘッドコーチをしていた、現監督の辻本茂樹さんから、吉村のところに連絡があったというのだ。 「息子の直樹君(現在、ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツでプレーする辻本直樹選手)の駒大苫小牧高校時代の先輩で、当時、駒大苫小牧大でプレーしていた伊藤大海というピッチャーを紹介させてほしいと」 辻本さんを通して電話番号を伝えると、後日、吉村のところに伊藤投手から電話があったという。「結局、タイミングが合わずに、実際にお会いすることはできなかったんですけど、商品の感想などを聞かせてくれて。私からは、こんな練習ギアがあれば、なんていうリクエストや悩みがあれば、いつでも連絡をしてほしい、と話したんですよね」 その伊藤投手がいまや、日本ハムの絶対的エースとして活躍しているのはご存じのとおりだ。 このときのやりとりが、吉村の脳裏に今も強く焼き付いているのは、伊藤投手が日本を代表する大投手になったから、ということばかりが理由ではない。「伊藤投手が使ってくれていたのが、このスウィングスタンドだったんです。彼は当然、ピッチングの練習に、これを使っていてくれたんですよね。スウィングスタンドって名付けられた商品なのに」 伊藤投手が独自のトレーニングを模索する中で、ピッチャーのための練習ギアとして、スウィングスタンドを選んでくれた、というところがポイントなのだ。   スウィングスタンドの開発経緯は…  もともと、スウィングスタンドは人気野球ユーチューバー・クーニンさんによる、フィールドフォースへの持ち込み企画として製作された経緯を持つ。 クーニンさんが自身のYouTubeチャンネルで中学硬式クラブチームの強豪「京葉ボーイズ」を訪れた際、同チームがバッティング練習の補助器具として使っていた、角度付きの足置き台を製品化できないだろうか、と吉村に依頼が来たものだった。「それまでも、段差のある場所や、台を使って軸足と踏み出し脚に高低差をつけ、バットを振るといった練習法は一般的に知られていましたが、角度をつけるという着眼点は新しい、と思いましたね」 吉村が当時を回想する。 軸足をこの台に置けば、傾斜があることにより、スムーズな体重移動ができると同時に、軸足側の膝や腰を開かずに打つ感覚を養うのに役立つ。踏み込み足をこの台に置くようにステップすれば、やはり開きを抑えて「壁」をつくり、力強いスウィングを体得するのに役立つ、というわけだ。  製品化のリクエストに対して、まず「そのまま作っても面白くない」と考えるところは、いかにも吉村らしい。フィールドフォースならではのアイデアを付け加えて製作されたのがスウィングスタンドなのだ。 まずは持ち運べること。スチール製の折り畳み式とすることで、手軽に移動できるようにした。スチール製にしたことによる適度な重みも、安定性を担保することに役立っている。底部はフラットな面ではなく、四隅にゴムのポイントを付けた。「面」ではなく「点」で接地させることにより荷重を集中させ、容易に動かないよう固定することに成功している。また、接地部をゴムにしたことにより、室内から屋外まで、場所を選ばずに使えることも大きなポイントだ。 また、組み立て時にストッパーを受ける溝を複数設けることで、角度を段階的に調整することが可能となり、ユーザーそれぞれに合った角度で使用できるようにもした。 こうして世に送り出されたのがスウィングスタンドだった。   いまだったら…「マルチスタンド」!?  スウィングスタンドは当初の発売時から、2度、モデルチェンジをしている。最初のリニューアル時には、当初、梨地塗装によりザラリとしていた表面の加工をなめらかな塗装面にし、アップシューズだけではなく、スパイクを履いていても使えるようにと、着脱式の人工芝のシート(別売り)を発売し、ぴったりと貼り付けられるようにした。 2度目の仕様変更は昨年。一回り小さく軽量になり、持ち運び用の取っ手として、ポリエチレン製のベルトが取り付けられたことで、持ち運びがより便利になった。  今では、オフィシャルホームページ上の商品紹介ページでも、ピッチング練習での使用が紹介されている(⇒こちら)。「いま、新たに開発して商品として発売するとしたら、『スウィングスタンド』ではなく、『マルチスタンド」とでも名付けていたかもしれません」 吉村が言う。「でも、この商品はスウィングスタンドとして、多くのユーザーがピッチング練習にも使ってくれている。すでに、この商品は独自の歴史を刻んでいるんです。だから、今後も商品名を変えたりはせず、スウィングスタンドはスウィングスタンドのままでいいのだと思っています」 逆説的に言うなら、「使い方はユーザーが決めるもの」ということだろうか。フィールドフォースの商品は、アイデアを具現化すべく開発されたものが多いだけに、その傾向がより強いのかもしれない。「これから先、まったく別の競技で、スウィングスタンドを練習に使ってもらえるケースだって、あり得ない話ではありませんからね」 吉村はそう言って笑うのだった。   ユーザーの声を製品開発に!  スウィングスタンドを発売した9年前、2017年は「インスタ映え」が流行語大賞を獲得した年でもある。今となっては「一昔前」の感覚もなくはないが、現在では、もはや流行ではなく、日常生活の一部としてSNSが存在する。 吉村は自身のインスタアカウントで、毎日のようにフィールドフォース製品に関する情報を発信している。最近ではむしろ、すでに発売中や新発売の商品よりも、開発中の商品について情報を出すことが多い。そうしてフォロワーや、投稿を見た人たちの反応を開発に取り入れることもある。「以前から多いのは、『ソフトボール用もお願いします』という意見です。防球ネット類など、以前は『軟式用』『硬式用』に分けたものがほとんどでしたが、新たに発売する製品については『硬式、軟式、ソフトボール兼用』というものを増やしています。これはそうした声に応えた商品の一例です」 と吉村が説明する。「マシン類については、ボールの大きさがネックになります。これまで硬式球、軟式球など、さほど大きさが違わず共通で使えていたものも、ソフトボール用をと考えると、1から作らなければならないものが多い。ハードルはそれなりに高いのですが、ソフトボールはアメリカでも人気があります。今後、商品化はしていきたいと思っているんです」 あらかじめユーザーの声を取り入れた商品開発、これもまた間違いなく、社是である『プレーヤーの真の力になる』という考えの、ひとつの形態と言ってよいのではないだろうか。

【vol.32】コントロール向上のため、ほかにも役立つシンプル2商品 - フィールドフォース

【vol.32】コントロール向上のため、ほ...

2026.03.05

 シンプルながら、いや、シンプルゆえに奥が深く、日々の練習に気軽に使え、しかも役立つ「ホームベース・ワイド」と新作「アローベース」の2商品。工夫して練習に取り入れ、ぜひコントロールアップにつなげてほしい。   学童野球のホームベース、だからこそ… 「全軟連(全日本軟式野球連盟=JSBB)の最近のルール変更の中でも、私、これだけは評価しているんですよ」 フィールドフォース社長の吉村尚記が冗談めかして笑う。「ホームベースの拡大です」 JSBBは2022年、それまで一回り小さな独自サイズだった学童野球のホームベースを、一般用と同じサイズに変更。この年は移行期間として全国大会のみ、全国一律は翌2023年からとされたが、実際には多くの大会で、この年から移行していた。 これにより、学童野球で使用するホームベースの幅は、それまでの38.1センチから、一般用と同じ43.2センチに拡大されることとなった。「学童野球のピッチャー、とくに始めたばかりの子なんかは、ただでさえコントロールには苦労するんです。当然ですよね」 と吉村。「それなのに、それまでホームベースは小さかったんです。逆だと思いませんか? コントロールがつかずにフォアボールで走者を出し、盗塁やパスボールで、自動的にランナー三塁。そんな試合じゃ、野球がつまらなくなるだけじゃありませんか…」   ストライクゾーンはこんなに広いのだ!  インパクトのある見た目ではないが、発売以来、コンスタントに売れている商品に「ホームベース・ワイド」FHB-84Wという商品がある。ダイビングやサーフィンで着用するウェットスーツなどに使われる、ネオプレーン素材のシートで、実物大のホームベースと、その両脇にオレンジとグレーの2本のラインがプリントされている。「ホームベースの幅は、おおよそボール6個分です。ただ、ストライクゾーンを考えるなら、ホームベースの一角をかすりさえすればいいわけで、ホームベースの幅にプラスして、左右にボール1個分、広がるんです」 吉村が説明する。つまり、43.2センチの左右にそれぞれ約7センチを足した、57センチほどがストライクゾーンと考えられることになる。「これがオレンジのラインです。さらに外側のグレーのラインは、あえてゾーンの外で勝負するときを考えた補助線。これらすべてを可視化した商品です。これだけでも、たとえば学童のピッチャーには『これだけの幅が使えるんだ』という安心材料になるんじゃないでしょうか」 確かに、子どもたちにとっては大きな安心感につながるはずだ。ネオプレーン素材で柔らかく、くるくると巻いて持ち運びできるため、チームだけでなく、個人でも気軽に使えることも、ヒットにつながっているようだ。  ホームベース・ワイドは商品開発時、学童野球選手向けとしか考えていなかったという。「それがうれしいことに、発売してみると学童野球のチームや選手だけでなく、中学、高校、さらに社会人野球と、あらゆる層に好評だったんです」 と吉村。現場に持ち出してのプレゼン時にも、常に好反応だ。「ぱっと広げたときの第一声は『そうそう、これなんです!』というものが多いんですよ。『これは何?』というような疑問の声は皆無ですね」 これまで頭の中にしかなかったゾーンが可視化されることで、実戦を意識したピッチング練習が具体的にイメージできるようだ。   ボウリングにヒントを得た「アローベース」  そして近頃、ホームベース・ワイドと組み合わせて使うのに最適なアイテムが、新商品としてラインアップされ、こちらもなかなか好調な滑り出しをみせている。「アローベース」FARWB-7560。同じネオプレーン素材の、5色に塗り分けられた長方形のシートだ。「マウンドとホームベースの間に敷いて目印とすることで、コントロールを安定させるための手助けとなるシートです」 吉村が解説する。「ヒントになったのはボウリングです。ボウリングはピンを倒すためにボールを投げますが、投げるときに狙うのはピン自体ではなく『スパット』と呼ばれる、レーンの手前にある三角形の目印。スパットを正確に通すことが、安定した投球につながると言われます。野球も同じではないかと」 では、このアローベース、どのように使うのが効果的なのか?「当初はこれ、ホームベース・ワイドを引き延ばすような形で1枚にして、新商品にしようと考えていたんです」 と吉村が説明する。ホームベース・ワイドを手前に伸ばしたデザインで、ホームベースの前にある5色のストライプの色を決めて狙うという使い方だ。  ところが、開発を進めるのと並行し、ヒアリングを続けるにつれて、使い方について様々な意見が出たのだという。「ホームベースよりずっと手前がいい、あるいはマウンドの先くらいでいいなど、どうやら、敷くべき場所に正解はなさそうだと。それならホームベースとは切り離して、単独で売り出そうとなったんです」   使い方いろいろ… アローベースを練習に取り入れるとしたら?  投手経験者は、この新商品をどこに敷き、どう使おうと考えるだろうか?「最初に考えたのは、マウンドのすぐ前あたりですね」 と話すのは、フィールドフォースの営業企画部長で、元甲子園球児の鎌田侑樹だ。「アローベースが近い位置にあれば、これを視界に入れ意識することで、リリースポイントが自動的に決まってきます。コントロールを安定させるためにまず大切なのは、リリースポイントを一定にすることですから」 リリースポイント自体を意識して修正するのはなかなか難しい。これは効果的な練習方法かもしれない。鎌田が続ける。「アローベースをキャッチャー側に移動させるほど、より実戦に近づき、コントロールという意味では難易度が上がると思います。徐々にキャッチャーに近づけていき、最後はベース前、という使い方もできるんじゃないでしょうか」 そうして段階を踏んで練習を重ねることで、最終的にはアローベースが使えない実戦でもコントロール良く投げられるように、となれば最高である。 ◇     ◇  企画開発課長で、女子野球日本代表経験もある小林夏希は「私はほとんど感覚だけで投げてますからね…」と考えながら、「こんな使い方かなぁ」とつぶやいた。「私、縦の変化球をよく使うんです。カーブと縦スラ。ショーバンしちゃうようなボールだとキャッチャーに申し訳ないから、キャッチャーを置かずネットスローにして、ホームベースの後ろ、本来キャッチャーがいる位置にアローベースを敷いておく。そして狙う色を決めて投げ込む。こんな使い方もありかもしれないですね」 鎌田とは全く別の使い方だ。もちろん、どちらも正解なのだろう。   シンプルだからこそ、アイデア次第で用途は無限!  シンプルだからこそイメージが広がる。ユーザー次第で、まだまだ使い方はありそうだ。ホームベース・ワイドもアローベースも同じように、使用者の側で工夫する余地が大きいところも人気の理由なのかもしれない。「アローベースはピッチングだけじゃなくて、野手の送球練習にも使えるな、とは思っていました。しっかりとステップして足を踏み出し、体を開かずに投げる練習です。ステップする足の目印として敷いておくんです」 と吉村。「そうしたら、先日またお客さんに言われたんですよ。今度は『吉村さん、これ、バッティング練習でも使えますよ』って。コース、つまり色によって打ち分ける意識づけをするんだそうです」 考えてみれば、投手と打者は同じ場面で立場を逆にした関係。だとすれば、ホームベース・ワイドにしろ、アローベースにしろ、逆の視点で考えることで、使い方の多くは打撃練習にも応用可能なのかもしれない。 使うほどに奥が深い、ネオプレーン2商品である。

【vol.31】作るぞ、軍手ボール! - フィールドフォース

【vol.31】作るぞ、軍手ボール!

2026.02.26

 軟式、硬式の練習球をはじめ、各種練習用やトレーニング用まで、これまでさまざまなボールを開発・販売してきたフィールドフォース。中でも、創業初期のオリジナル商品である「穴あきボール」はいまや、学童野球の多くの現場で、見かけないことがないほど定番の練習ギアとして定着している。さらに最近は、次なる練習用ボールを開発中で…。   練習風景変えた「穴あきボール」 「学童野球の練習風景を変えた」 そういってしまっても、過言ではないだろう。フィールドフォース創業初期のオリジナル商品、「穴あきボール」だ。正式な商品名は「バッティング練習ボール」。蛍光カラーが印象的な、「飛ばない」練習用ボールだ。 空気抵抗が大きいために飛距離が短く、つぶれても、踏んでもすぐに復元するほど、絶妙な柔らかさ。この柔らかさと軽さにより、オートリターンのトスマシンで使えば、室内でも使用可能となっている。 いまや野球練習の定番アイテムともいえるほど普及し、類似品も多く見かけるようになったが、フィールドフォース製の現行モデルには、おなじみのロゴマークが刻印されている。比べてみれば歴然とした柔らかさの違いも感じられるが、マシンで使うときには、フィールドフォース製のボール以外を使用しての故障は保証の対象外となるので、ご注意を──。     練習も試合前も、いたるところで…  河川敷のグラウンドでは、今ではこの穴あきボールを使って練習する学童野球チームを目にしないことがないほどだ。練習だけにとどまらず、最近では試合会場でも、穴あきボールを持ち込み、試合前などに打ち込むチームを多く見かける。 かつては、といっても十年以上も前にはなるが、試合前に外野部分でならと、軟式球を使った打撃練習が認められていたグラウンドも多かったように記憶している。それもいつしか、全面禁止に。外野でもバッティングはダメ、となったのは、いわゆる「飛ぶバット」の普及以降だっただろうか。 そんな場所でも、穴あきボールを使ってのバッティングは認められているケースが珍しくない。練習風景に限らず、あらゆる場面で見かけるようになった穴あきボール。これはもう、「小さな大発明」といえるのではないだろうか。   年明けの大阪で見た風景  学童野球の頂点を競う高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントにおいて、前人未到の8度優勝を果たした“常勝軍団”長曽根ストロングスが地元・大阪府で毎年1月に開催している「目指せ! 全国・スポ少2DAYs」。フィールドフォースは大会スポンサーとして協力しており、社長・吉村尚記も毎年、大会を訪れている(⇒こちら)。今年は吹田市の万博記念公園内で「2DAYs in SUITA」として開催された。 長曽根同様に、全国大会出場、さらにその先の全国制覇を目指す強豪チームが顔をそろえる大会で、吉村は各面で繰り広げられる熱戦を見て回りながら、途中である一角を指さした。「実は以前から、気になっていたんです」 試合が行われている面以外の空いたスペースでは、試合を待つチーム、試合を終えたチームが思い思いに練習をしている。「穴あきボール」も多く使われているが、それと同じくらいによく使われているのが、手作りの「軍手ボール」。軍手の指部分を内側に入れて丸め、ボール状にしたものだ。  この軍手ボール、穴あきボールの普及以前から見かけることはあった。当時は選手に数多く打たせるため、軟式球の代替品として使うことが多かった印象で、穴あきボールの普及とともに、見かけることが少なくなっていた。しかし、この大会の会場では現在も、多くのチームが使っている。 軍手ボールを使う理由を指導者たちに尋ねてみると、共通して返ってくる答えは「打感」。穴あきボールは、その軽さが利点でもある一方で、打感はそれほど得られない。そこで軍手ボール。ここでは軟式球の代わりなどではなく、「打感はあるが、あまり飛ばない」ことが長所と捉えられ、まぎれもなく「練習球」として軍手ボールが重宝されていたのだ。   山田西リトルウルフの「軍手ボール」  軍手ボールは手作りなので、その見た目もさまざま。多いのは、ビニールテープでぐるぐると巻いて球体にしたものだ。「ただ、これはビニールテープが擦り切れてしまって、わりとすぐにボロボロになってしまうんですよね」と吉村。そう、軍手ボールは手作りであるだけに、仕上がり具合によっては劣化も早く、ボロボロの状態で使われているものもよく見かける。 そんな中、随分と整った見た目の軍手ボールを使っているチームがあった。山田西リトルウルフ。昨年のこの大会で優勝した、大阪府の強豪だ。 ボールのひとつを手に取ってみると、軍手ボールであることは確かだが、表面の軍手がしっかりと縫い付けられており、既製品といわれても納得してしまうくらいに、完成度が高い。聞けば、裁縫が得意な棚原徹監督の奥様が手縫いで作られているとのこと。中身は軍手ではなく、廃棄衣類の端切れなどが詰めてあるのだという。「これはすごいな…」 山田西の軍手ボールを子細に観察し、吉村がつぶやいた。   発見、FF製軍手ボールのプロトタイプ!?  それから半月ほど後のことだ。吉村の手には、軍手ボールに似た「何か」があった。「これね、中国の『競技用お手玉』なんです」 見せてもらうと、確かに、軍手のように綿糸を編んだくるみで、ビーズ状の中身を包んだ球体。外見は軍手ボールに似ている。軟式J号よりも二回りくらい小さいか。「この中身を変えて、大きいサイズのものを作れば、軍手ボールが機械で作れることになりますよね」  吉村がお手玉を放り上げながら笑顔を見せる。フィールドフォース製「軍手ボール」の形が見えてきた。「これで、打ってもあまり飛ばず、柔らかくて危険が少なく、さらに打感もあるボールが作れそうです。穴あきボールの足りなかった部分を補完できる商品になるんじゃないでしょうか」 吉村はさらに続けた。「そして、このボールでもうひとつ、考えていることがあるんです」   グリーングラブの相棒としても◎  もうひとつ考えていることとは──。「小さな子どもたちに使ってもらうボールです。素手でも投げて捕れるし、『グリーングラブ』とも相性がいいと思うんです」 グリーングラブはこれから野球を始めようという、小さな子どもたちのために開発された、スターター向けのグラブだ。毎年、クリスマス時期にはプレゼント企画も行われている。吉村はこのグラブについて、考えていたことがあった。「グリーングラブで使うのに最適なボールが作れないだろうか、と」  グリーングラブの対象年齢は6~7歳。つまり幼稚園児向けだ。その下の年齢、3~5歳児向けの「グリーンマメグラブ」もある。ただ、これらのグラブに適したボールを考えると、軟式球ではJ号球はもちろん、一番小さなD号球でも、まだ大きすぎる。加えて、幼児が使うには硬すぎる。 初めてのキャッチボールで、ボールに対する恐怖心は与えたくない。ただ、柔らかな素材のボールというと、ウレタン製のものか、軟式テニスボールのような中空ゴムボールあたりが考えられるが、どちらも軽いうえに弾力がありすぎる。グラブを使ってキャッチしようとすると、グラブの中でボールが暴れてしまうことになる。「その点、軍手ボールなら当たっても痛くないし、弾まないから、キャッチボールで使っても、しっかりグラブに収まってくれる。適度な重さもあるので、グラブで捕る気持ち良さも感じられるはず。スターターのためのボールとして、最適だと思いませんか」 こちらも目からうろこ。グラブにぴったりと収まる大きさと重さで作れば、最初のキャッチボール用にバッチリではないか。 練習球としての軍手ボールと、初めてのボールとしての軍手ボール。遠からず、魅力的な商品が二つ、生まれそうな気配なのだ。

[vol.29] ジャイアント・ボール回収トンボ登場! 実は、これ… - フィールドフォース

[vol.29] ジャイアント・ボール回収...

2026.02.05

 昨年5月の発売以降、人気商品となっている「ボール回収トンボ」。好評の一方で、専用グラウンドを持つチームなどからは、さらに大型のものはないか──とのリクエストも多かった。今回、その声にこたえる「ジャイアント・ボール回収トンボ」が登場。実はこれ、「ものづくり大国日本再生計画」ド真ん中の商品なのだ。   思わぬところで、次期商品が誕生!?  打撃練習で、グラウンドに点々と転がったボールを一気に回収できる、優れモノ商品「ボール回収トンボ」FBK-115T。好評を博す一方で、発売当時から根強くあった声が「もっと大きいのは作れませんか?」というものだった。 確かに、広い専用グラウンドに打撃用ケージを並べ、大量のボールを使って集中的に打撃練習を行うようなチームには、現行のFBK-115Tは物足りないだろう。ただ、現状ではFBK-115T自体、発売から間もないこともあり、今後、さらに寄せられるであろう意見や、使用する中で集まる改善点などを踏まえて、さらに大型の回収トンボも開発…という流れになるかと思いきや、思わぬところから、派生的に「ジャイアント」が生まれることとなったのだった。   一路、富山へ。タイアップを約束  フィールドフォース社長・吉村尚記が6月、インスタグラムで発信した「ものづくり大国日本再生計画」。この呼びかけに、いち早く反応したメーカーがあった。富山県魚津市に本社を置く、ビニフレーム工業株式会社。1962年創業の、老舗建材メーカーである。 メッセージの主は同社のクリエイト営業部・山本秋斗氏。金沢星稜大学まで硬式野球を続けていた、熱き野球人だ。山本氏の「こんなものは作れませんか?」という提案商品は、今回のジャイアント・トンボとは別のギアだったが、その情熱に打たれた吉村は、ボールパーク事業部部長の成田雄馬とともに、即座に富山へと向かったのだった。  ビニフレーム工業本社で出迎えてくれたのは、早くも発足していたプロジェクトチームのメンバー。各種機械が稼働中の工場をはじめ、社内をひと通り案内してもらい、吉村と成田は、持ち込んだフィールドフォース商品を一つひとつ、プレゼン形式で解説したのだった。 持ち込んだフィールドフォース製品の開発経緯や目的、使用法の説明を受けたビニフレーム工業の面々は、それらアイデアが詰まった商品群を称賛。ボール回収トンボについても、実際に手にして関心しきり。コラボレーションを約束し、この日の会議を終えたのだった。   富山発、建材から生まれた巨大トンボ 「大型のボール回収トンボを作る」というアイデアは、ビニフレーム工業とのタイアップにあたり、「こんなものは作れないだろうか?」という意見交換の中で、いくつか出たアイデアのうちのひとつだった。 山本氏から、千葉県柏市のフィールドフォース本社来社の打診があったのは、富山訪問からわずか1週間ほどのことだった。日程調整し、さらにその1週後、山本氏がフィールドフォース本社を訪れたときには、すでにジャイアント・トンボの設計図を携えていた。「ウチのあり型を使っただけなんですけど…」 それを見た吉村が返した。「いや、それがいいんですよ」 図面を見ながら修正点を話し合い、サイズや細かな形状が話し合われた。「現状の図面では、ここからボールがこぼれてしまいますね」「商品の輸送を考えると、現実的なサイズは…」 次に会うときには、試作品が出来上がっていそうな、具体的な話し合いだった。   試作品からの修正を経て、いよいよ…  実際に試作品が持ち込まれたのは、12月初旬だった。 ボールパークの人工芝エリアに持ち込み、組み立てて試用。「素晴らしい!」 吉村が声を上げた。FBK-115Tでは集めきれない量のボールが、一度の往復で集められるほどの大きさだった。「ただ、少し重さはありますね」 確認すると、重量は15キロを超えているとのこと。全体的にガッチリした作りは安定感もあったが、重量的にはオーバーしている。予算も予想をはるかに上回っていた。「もう少し、軽い素材はありませんか?」「ボールに当たる回収板の部分は、1枚でなくても、3枚くらいに分けて、少し隙間があるくらいでいいと思いますよ」 吉村が気になった部分をすべて伝えて、一緒に修正点を検討し、部品構成を見直すことにして、次の試作品を待つことになった。   製品化、決定!  年が明けた1月下旬の晴れた日に、修正された試作品が持ち込まれた。「この時期、富山は雪に埋もれていますよ…」 山本氏は笑いながら登場した。 第1弾からの変更点は、バルコニーの笠木に使われるアルミ建材が用いられていたメインフレームを、肉薄軽量の格子用アルミ材に置き換えたことと、同時にタイヤも一回り小型のものに改めた点。回収板も1枚板ではなく、3枚に分割された形に変わっている。全体的に一回りスリムになり、さらにその分、取り回しも楽になった。コスト面もクリアできている。 柄の部分は、第1弾から変わらず、階段に使われるアルミの手すり材。ほとんどが建材の利用で作り出された、「ジャイアント・ボール回収トンボ」FBKJ-290Wの完成だ。  すぐに対応できそうな軽微な修正点はあったものの、「そこだけ修正して、これで行きましょう」と吉村。「建材をそのまま利用してできたボール回収トンボ。そして、メード・イン・ジャパン。完璧なコラボじゃないですか」 最初にビニフレーム工業本社を訪問してから、まだ半年ほどしか経っていない。驚くべきスピードで、「ものづくり大国日本再生計画」をそのまま形にしたような、新商品が誕生したのだった。   ボール拾いのための3つのギア  もちろん、ジャイアント・ボール回収トンボ FBKJ-290W 発売後も、これまで好評のボール集めギアは継続販売される。 ひとつは「ボール拾いトンボ」FBHT-127。スポーク状のワイヤーで作られた、樽の形状をしたカゴを転がしてボールを拾い上げてゆく、楽しいメカニズムのボール拾い器具だ。  そして、ジャイアント開発のきっかけともなった「ボール回収トンボ」FBK-115T。ジャイアントまでは必要ない、小~中規模の練習場所では、使い勝手がよく便利だ。 どちらも発売以来、一定の人気がある商品。この2商品では、ボール拾いが追いつかないというチームや施設は、まもなく発売される「ジャイアント・ボール回収トンボ」FBKJ-290Wを使ってほしい。 聞けば、打っている間はボール拾いは一切行わない、というチームも多いという。そんなグラウンドでは、ジャイアント・ボール回収トンボが練習を一気に効率化してくれるはずだ。

[vol.28] できるか!? これまでにない革新的グラブ - フィールドフォース

[vol.28] できるか!? これまでに...

2026.01.22

 昨年12月に発売された「バントガード」FBGD-100TNKを皮切りに、着々と製品化への道のりが進む「ものづくり大国 日本再生プロジェクト」。ゴルフクラブのグリップで広く知られる株式会社IOMIC(本社:大阪市)とは、7月、フィールドフォース社長・吉村尚記の呼び掛けをきっかけに本社訪問を受けて以降、同社がグリップの素材として使用している、エラストマー樹脂を野球用品に生かせないかどうかを話し合っていて…。   ん!? このグラブは…  1月のある日、東京・足立区のグラブ工房から、千葉・柏市のフィールドフォース本社に、ひとつのグラブが持ち込まれた。レッドとブラック…最近多い、ツートンカラーのグラブだ。 …と思いきや、よく見ると、レッドの部分は通常の牛革製ながら、黒い部分はドット状の凹凸がある、ゴムのような素材が使われている。 このゴムのような素材は「エストラマー」という樹脂で、IOMICから提供を受けたもの。これを手にした吉村は「うん、うん…」と左手のグラブの装着感を確かめ、軟式ボールを右手で持つと、パシン、パシンとボールをたたきつけて感触を確かめ、「これはいい!」と快哉の声を上げたのだった。   IOMIC・北川本部長が来社  IOMICの北川直樹・営業本部長をフィールドフォース本社に迎えたのは7月半ばのこと。吉村がインスタグラムで呼びかけた「ものづくり大国 日本再生プロジェクト」に北川本部長が早速、反応。メールでのやり取りもそこそこに、この日の来社につながったのだった。 IOMICは、それまでゴム(ラバー)製がほとんどであった、ゴルフグラブのグリップにエストラマーという樹脂素材を用い、ゴルフ界に革命をもたらした。エストラマーに独自の改良を加え、新たに開発された新素材「IOMAX」を使ったゴルフグリップは、現在、松山英樹選手をはじめ、名だたるプロゴルファーが愛用する。ゴルフ界では広く知られた、トップブランドといっていい。   すでに商品化された野球用品もあるが…  すでに野球用にも、IOMICの新素材はバットのグリップとして製品化されている。 エストラマーはゴムと同じような弾性を持ちながら、撥水性能を有し、光線などによる劣化も極めて少ないという特性を持つ。バットのグリップで使った場合の利点は、素材自体のグリップ力が高いため、松ヤニなどの滑り止め材が不要であること、雨に強いことなどが挙げられる。 フィールドフォースを訪問した動機について、北川さんは「新しいバットのグリップを、といったようなことを考えていたわけではありません。具体的に何か商品が頭にあったわけではなく、吉村社長のインスタグラムを拝見して、ただ一緒に、これまでにないものづくりができたら、ということでお伺いしたんです」と説明。「実は私が、個人的に野球が大好き、っていうのもあるんですが…」 バットグリップなど、既存製品などの枠組みには捉われない、自由な発想で商品開発ができれば…と言うのだった。   この素材をグラブに!  そうした北川本部長の申し出に対して、吉村が提案したのは「この素材をグラブの捕球面に使えないですかね」というもの。「ゴムでできた軟式球で使うことを考えると、グリップ力がとにかくすごい。これを捕球面に使えたら、『落とさないグラブ』ができるんじゃないかと思うんです」 北川本部長が反応した。「それができたら…すごい。面白いですね」 フィールドフォースでは、かつて同じ発想で製品化したグラブがある。「Stage1」「Stage1 evolution」と名付けられた、現在の「グリーングラブ」が生まれる前のスターター向けグラブだ。「Stage1」は素材に牛の床革(皮の表層をすいた内側の革)を使用したもの。通常の牛革製よりも柔らかいことに加え、毛羽のある捕球面がうまくグリップ感を生み出していた。「evolution」はさらに、その捕球面にシリコンのドットを貼り付け、よりグリップを強くしたものだった。 いずれもグリップ感という意味では悪くなかったものの、床革のメンテナンス性の悪さと耐久性の低さ、加えてシリコンドットが取れてしまったり、シリコン自体の劣化が激しかったり…といった欠点があったため、長く使うには厳しく、廃番となったのだった。   このグラブが「突破口」になるのか!?  こうしたやり取りを経て、北川本部長から再度の訪問を受けた際には、シート状に加工されたエラストマーの提供を受け、皮革と同じように裁断、縫製し、今回の試作品を作成したのだった。 エストラマーを使用した今回の試作品は、「Stage1」「Stage1 evolution」の欠点や問題点をすべてクリアしていた。試作品は牛革を使用したが、「現在、グリーングラブで使っている豚革との相性はどうかなど、まだ試してみたい点はありますが、なんだか『突破口』が見えた気がするんですよね…」 吉村はそう言った。  製作に当たったグラブ工房の篠原智明工房長は「革と異素材MIXのグラブ製作は初めての経験でしたから、正直、不安はありましたが、とにかく形にすることができて、ホッとしています」と振り返る。「見た目がチープにならず、効果的な位置に樹脂を配置する…。実際に学童チームを訪問してグラブを見せてもらい、学童選手に共通する使い方の癖を参考にしたりもしました」。グラブ職人ならではの感性も、しっかりと盛り込まれているのだ。 この試作品では、グラブに手を入れたときに手のひらが当たる「平裏」の部分にもエストラマーを使用しているが、「これは私のアイデアなんです」と篠原工房長。「IOMICさんの素材を使ったバット用のグリップテープは以前、個人的に使ったことがあったんです。今回、サンプルを作る中でも感じたんですが、手が少し汗ばんだ状態で樹脂に触れると、手に張り付く感じが強くなり、よりグリップ力を感じるんです。これは積極的に取り入れるべきではないかと」。加えて、差し込んだそれぞれの指が、グラブの中でしっかりとグリップしている感覚も、これまでにないものではある。 再び吉村──。「グラブって、かなりの部分、“こういうもの”というイメージが出来上がってしまっていると思いませんか? でも、実のところ、ほかの用具に比べても、厳しい規制や決まりがあるわけではないし、もっと自由でもいいんじゃないか──と、ずっと考えていたんです。このグラブは、この試作品をスタートに、多方面に進化の可能性を持っている気がするんです」 さらに続けた。「やっぱり、スターター向けのグラブということになるでしょうが、これなら“捕って楽しい”グラブになるはずです。裁断と縫製をしっかりすることで、捕球面がしっかり立体的に仕上がっています。新素材を使用する位置や面積も工夫の余地があるし、もうポケットの位置を少し変えて作ることもできそう。この試作品は平裏もエストラマーを使っていますが、汗をかく夏場には、使い心地も変わってくるでしょう」 ◇     ◇  新素材を使うとなれば、値段も気になるところではあるが、「そこまでは上がらないはず。常識的な値段で収まると思いますよ」と吉村は話す。「できたら、ゴールデンウイークあたりまでに発売できないかなあ」。これまでの常識に一石を投じるグラブの登場が待ち遠しい。「キャッチボールが楽しくなる。そんなグラブができたら最高じゃないですか」

[vol.23]「フロントティー」が打撃練習の定番メニューになる日 - フィールドフォース

[vol.23]「フロントティー」が打撃練...

2025.11.13

   10月にリニューアルした「フロントティー専用マシン」FFRT-501Mが発売早々、人気になっている。先代となる、初代フロントティー専用マシンFFRT-500Mが発売されたのは2022年。3年の間に、練習としての「フロントティー」の認知度もかなり上がり、新型機は期待とともに迎えられたようだ。   社会人チームの練習で見たのは…  フィールドフォース社長・吉村尚記が「フロントティー・マシン」開発を思い立ったのは2019年。高校時代の同級生、飯塚智広さんが当時、監督を務めていた社会人野球チーム、NTT東日本の練習場に、頼まれていたネットの納品で訪れた時だった。 「フィールディングネット・イレギュラー(FPN-8086F)という商品がありました(現在はリニューアル版がFPN-8086F2として販売中)。弾性係数の異なる2枚のネットを重ね合わせた構造により、投げたボールを不規則な角度で跳ね返すという、守備練習のためのネットです。飯塚がこれを気に入ってくれて、市販品は軟式用だったのですが、硬式球での使用に耐える強度にしたものを作り、持って行ったんです。主にバント処理など、ピッチャーのフィールディングの練習で使ってもらっていたようで、翌年の都市対抗でNTT東日本が準優勝した時には、礼を言ってもらったんですよ」 吉村が当時を振り返る。   そうだよ、これなんだよ…  ネットの納品に訪れた練習場で、同野球部の練習を見ていた吉村の目に留まったのは、選手らが取り組んでいるティー打撃だった。通常、打者の斜め前から上げてもらったトスを打つことが多いこの練習を、NTT東日本野球部では、正面からのトス上げにより、行っていたのだ。 「この練習法は飯塚の考えによるものだったんですが、実は私も以前から、斜めからのトスによるティーバッティングには、少なからず疑問を持ってたんです」 正面の投手が投じる球を打つ実戦とは異なり、斜めから来るボールを、体の正面にあるネットに向かって打ち返すティーバッティング。ボールが来た方向とは違う方向に打ち返すことになり、姿勢や体の使い方、スウィング自体にも制限が生じるため、練習としては一考の余地あり、と感じていたというのだ。「特別な目的があるならばともかく、やはり基本となる練習は、前から来たボールを前に打ち返すことですよね。NTT東日本の練習を見て、『これだよ』『そうだよな』って、腑に落ちたんです」 NTT東日本の練習では、トス上げ役は、打者の正面7、8メートル先にあるネットの脇からトスを出し、さっとネットに隠れる動きを繰り返していた。投球速度は20~30キロといったところか…。その様子をスマートフォンで動画に収めながら、吉村は考えていた。 「社会人野球の選手がやる分には、なんということもない動きかもしれませんが、同じ練習を子どもがしようとすると、結構な危険性が出てきます。でも、そのトス出しをマシンでできたら、その心配はなくなるよな~、と」 会社に戻った吉村は早速、フロントティー・マシンの開発に取りかかったのだった。   試行錯誤の末に…  さかのぼること3年、2016年にフィールドフォースは個人練習用ギアとして、正面から短い距離のトスを上げてくれる、ネットと組み合わせることで「オートリターン」としても使用可能な、硬式・軟式用トスマシンFTM-230を開発、発売している。トスを上げる発射部の構造原理は、これと同じでいけるのではないか──。 「もちろん、参考にはしましたよ。ただ、上に向かってポーンと上げていたトスを、そこそこの距離、前に飛ばさなきゃいけない。そのためには、はるかに大きな出力のモーターを使わなければならず、それにつれて、全体的なサイズ感はかなりアップしてしまいます。あわせて、筐体の強度も上げないといけません。思った以上に苦戦しました」 動力機構としては個人向けトスマシンを参考にしたものの、マシン自体のサイズ感は、チーム向けの本格的ピッチングマシンに近い。ボールをためておけるバケット部と、そこから1球ずつ、供給する仕組みが必要なのも同じだ。とはいえ、ピッチングマシンと仕組みや部品が共用できるわけではなく、1からマシンを作り上げる必要があった。  何度も試作を重ね、徐々に形になっていったフロントティー・マシンだったが、「一番、苦労したのは、トスを安定させることでした」と吉村が振り返る。 ボールをためておくバケット部と、そこから一球ずつボールを落とし、発射部にセットする機構は出来上がったが、発射部にセットされたボールがしっかりと静止していないと、トスのコントロールが定まらないのだ。「連続でボールを供給するところまでは、うまくいったんです。ただ、最後の部分です。発射部に落ちたボールのカタカタというブレを、うまく止めることができない。ここでは、ボールの縫い目は『突起物』なんです。完全な球体ではないから、一球一球、同じような動きをしてくれないんですよね。それらを全て受け止め、ピタリと止めなければいけない」 たどり着いたのは、最終的にボールを受け止める役割も持つ、発射板に貼り付けたクッション材だった。 「発射板の表面にニードルフェルトという、フェルトをけば立たせたような素材を緩衝材として貼り付けるんです。厚みや、繊維の密度が違うニードルフェルトを、クッションの具合を観察しながらいくつも試し、ようやくボールのブレを止められる厚さのものが見つかったんです」 当初の予想以上の試行錯誤を重ね、初代フロントティー専用マシンが完成したのだった。   「フロントティー」は定番練習に!?  開発スタートから3年。ようやく発売にこぎつけたフロントティー・マシンは、チーム単位はもちろん、個人ユーザからも多くの引き合いがあり、順調な売れ行きを記録した。「チームと個人、半々くらいだったと思います。年齢的には、学童よりは上ですね。中学、高校、大学…。社会人チームにも結構、導入していただきました。とくに指導者の方などは、『フロントティー』の練習が、私と同じように、以前からなんとなく頭にあったんじゃないかと思うんですよ」  吉村はそう説明する。彼がNTT東日本野球部の練習を見て感じたのと同様に、フロントティー・マシンを見たときに「これだよ」と感じた人も多かったのだろう。 新たな練習の形を提示したのか、あるいは潜在的にあった練習法を具現化したのか──。いずれにせよ、FFRT-500Mが野球練習の風景を、少し変えたとはいえるかもしれない。   リニューアルで変わったのは…  そして、今回のリニューアルである。 全体がブラックに塗装され、見た目も変わった、新型フロントティー専用マシンFFRT-501Mでは、初代機ユーザーから寄せられた意見からのフィードバックがいくつかある。 バッターから見て一見して分かる違いは、ボール発射口の上部に、新たに開けられた切り欠きだろう。これはボールを待つ打者の準備のために開けられたもの。次のボール、さらにその次のボールの動きを把握できることで、打席での準備もできるように、と新たに加工されたものだ。これは「発射までのボールの動きがもう少し見えると、タイミングが取りやすい」というユーザーの声が反映されたものだ。初代では「空撃ち」状態になって初めて気づいたボール切れも、あらかじめ目視で確認できるようになった。  もうひとつ、初代は本体とバケット部が独立し、二つの箱を二本の柱でつないだような形だったが、新型は本体とバケット部が一体となったデザインに変わっている。 マシンが発射するトスの角度は、発射口の向きを変えることで調整する。初代では①支柱と本体をつないでいるネジを緩め、②本体を傾けて、③再びネジを締める、という三段階の作業が必要だったが、新型では本体後部にあるハンドルを回すことで直接、本体が傾く仕組みになっている。「細かな部分でいえば、発射部の下部に穴を開けました。ボールに砂がついたまま使い続けてしまうことで不調になることも多かったので、砂が落ちるようにでしたんです」  ...

[vol.22] チーム練習にも「痒いところに手が届く」商品を(下) - フィールドフォース

[vol.22] チーム練習にも「痒いとこ...

2025.11.06

「省スペースで、パートナーいらず」の商品づくりを追い求めるフィールドフォース。だが、それだけにはとどまらない。プレーヤー個人向けの商品だけではなく、チームに向けた「痒いところに手が届く」商品も作り続けている。その発想と哲学に迫る第2弾。「ネット」に絞って紹介した前回に続き、その他のチーム向け便利ギアを見てみると──。   投球練習のための救世主「ダミーくん」  2006年の創業から数年経ち、個人用練習ギア「トスマシン・オートリターン」や、チーム向けのネット類など、いくつかのヒット商品が生まれるようになった頃、フィールドフォースの専務だった現社長・吉村尚記のもとには、チームユーザーから、様々な声が届くようになっていたという。「こんな物が作れないか、なんていうリクエストもあれば、こんなことで悩んでいて…といった相談に近いものまで、内容は様々でした」 こうした声を拾い上げて、生まれてきた商品も数多い。「例えば、『ダミーくん』なんかはそうですね」 投球練習の際、打席に置いておくことで、打者を意識した要求練習ができるという、黒いメッシュ素材の“仮想打者”だ。 「とくにピッチャーになって間もない子などは、ただキャッチャーに向かって投げるピッチング練習と、実際にバッターボックスに打者が入っての投球の違いに戸惑うものです。かなり感覚が違いますからね。『バッターがいると、ストライク入らなくなっちゃう子がいてね…』なんていう話は、少年野球では、あるあるですよね」 バッターがいるホームに向かって投げる練習は、実際の打者でなくても、それに代わる人形があればできるはず──。そうして生まれたダミーくんだが、発売してみると、学童チームに限らず、社会人、ひいてはプロにまでと、その需要は予想以上。改良を重ね、4代目となった現在も、人気が続くロングセラーとなっている。   ノッカー思いのボールケースを 「フリー打撃の時のバッティングピッチャーや、守備練習のノッカーが使う、ボールを入れておくカゴやネットも、要望は多かったですね」 吉村が振り返る。「よくある風景は、ノッカーの足元に、ボールが入ったカゴが置いてあり、一球ごとにかがんでボールを取り出し、ノックする姿です。バッティングピッチャーも、かがんで何球かをつかみ、一球ずつ投げ、またかがんで…なんていう様子をよく見ます。まず、この『かがんでボールを取り出す』作業を何とかしたいと思ったんです」 そんな要望から生まれたのが「収納型ボールケース」FSBC-3B。「2012年ころだったか、もう少し後か…。ちょうどその頃、キャンプブームというか、キャンプが一気に市民権を得たような時期があったんですよね。キャップ用品って、コンパクトにして持ち運べる、便利な商品が多い。売り場を見て回るだけで、ヒントをもらうことが多かったですね。FSBC-3Bもその一つです」  3本の支柱の上半分にネットが張られており、支柱を開くだけで、自立する三角形のボールケースが出来上がる。グラウンドまで持ち運び、使う場所で脚を広げればすぐに使える、利便性の高いボールケースだ。「持ち運びの容易さを最優先したデザインです。これなら支柱をギュッとまとめるだけで、コンパクトになる。バットケースと似たようなサイズ感です。これなら自転車移動のときだって、気軽に持っていける」 吉村はうなずく。少年野球のチーム練習では、グラウンドまで自転車移動のチームも多い。「自転車移動のときにも持ち運べる」というサイズは、フィールドフォースの商品開発において、一つの基準となっている。 同じように、キャンプ用品からヒントを得て開発した商品には、フレームを「ポップアップテント」のように丸く折りたためるようにしたバッティングネット、「折りたたみ式バッティングネット」FBN-1819などがある(現在は廃番)。   選手には嫌われ者? 便利すぎる「吸水トンボ」 「かがまなくても作業できるシリーズ」の傑作商品の一つに、「吸水トンボ」FWT-1128がある。 誰しも経験があるであろう、雨の後の水たまりができたグラウンドを、プレーできる状態に復旧すべく、スポンジで水を吸い出す作業。指導者から選手から、ときには父母や大会役員まで、人員総出で行うこの作業の労力を軽減する目的で作られた商品だ。  トンボの柄の先にある、ローラー状のスポンジを使って水を楽々吸い取り、二股の柄を使って絞る。工程自体は当然は手作業と同じだが、立ったままできるため、作業はぐっと楽になる。こちらも発売以来、安定して売れている、新定番ともいえる商品だ。「グラウンド復旧作業が簡単になるので、『すぐに練習できるようになってしまう』と、学生の選手たちには嫌われていると噂の商品なんです」と吉村は笑う。  「吸水トンボ」とほぼ同時に発売された、「ボール拾いトンボ」FBHT-127も同じ発想で作られた。こちらはトンボの柄の先に、ワイヤーで作られた円柱状のカゴがついており、それを転がすことで、カゴにボールが収納される仕組みとなっている。これだけで、面倒なボール拾いは随分と楽になる。 こちらも堅調に売れ続けているが、「もっと大量のボールを集めたい」という声もあり、FBHT-127とは別に、「ボール回収トンボ」FBK-115Tも開発され、こちらも人気商品となっている。   スーパーのカートを参考に… 「大量のボールを使う練習というと…」 吉村が思い出したように、続けた。「スーパーによくある、カゴを載せて移動できるカートをヒントにして作った、これもありました」 と、ノートPCの画面に出したのは「折畳式ボールカート」FOBC-2P。 「まさに、スーパーのカートなんですが、そのままではカート自体がかさばりすぎて、持ち運びできませんし、置いておくにも場所をとる。これを折りたたみ式にして、持ち運んで運用できるようにしたんです」 大量のボールが運べ、使い勝手も良い。ただ、多量のボールを積載すると、土のグラウンドなどではタイヤが埋まってしまい、うまく動かなくなることも。「それならと生まれたのが、大きなタイヤのついた、これです」  大きなバギータイプの車輪を付けたカートは「ボールキャリーカート」FBCT-100US。このタイプであれば地面や床の種類を選ばずに使用でき、フレームもより頑丈になり、多くのボールを運べるようになった。ただし、こちらはFOBC-2Pのように折り畳むことはできないので、用途に応じて使い分けたいところではある。   失敗作は、ひとつもありません!  こうして、ユーザーからの声も参考に、次々と誕生するチーム向けのアイデア商品。発売当初からヒットする商品もあれば、改良されながら売れ続けている商品もある一方、思ったほど人気が出ず、廃番になった商品も…。「100点満点の商品はない」というのは吉村の信念だが、それでは逆に、「これは失敗だった」という低い点数の商品はなかったのか。「ありませんね」 吉村が即答し、言葉を選ぶように続けた。「本当にないんですよね…。なぜかって考えてみると、そもそも『万人受けする』商品を目指していない、っていうのがあります。誰にでもウケるものは、逆に考えれば、誰にでも思いつけるものでもあるわけで…」  万人受けよりも、それを望む誰かに、深く刺さる商品を。そうであった。フィールドフォースの商品開発テーマは『マニアックで独創的な商品を』なのだ。 だが、もちろん、それだけでは終わらない。今回、紹介した「収納型ボールケース」FSBC-3Bなどは、いまでは河川敷に行けば、当然のようにチームの練習風景の一部として存在する、「あって当たり前」の商品になっている。 穴あきボールしかり、各種トスマシンしかり。前回取り上げた、持ち運べるネット類もそうだろう。かつて「マニアックな商品」として世に出されたフィールドフォース製品の中には、いまでは類似品まで出回るほどの、いわばデファクト・スタンダードとして、広く受け入れられているものも少なくないのだ。中には、新たな練習スタイルを提示し、生み出している商品もある。「マニアックな商品づくり。そこはこれからも、ブレずに続けていきたいですね」 と吉村。次に常識を覆してくれるのは、一体、どんな商品だろうか。

[vol.21] チーム練習にも「痒いところに手が届く」商品を(上) - フィールドフォース

[vol.21] チーム練習にも「痒いとこ...

2025.10.30

「省スペースで、パートナーいらず」の商品づくりを追い求めるフィールドフォース。しかしもちろん、それだけにはとどまらない。プレーヤー個人ではなく、チームに向けた「痒いところに手が届く」商品も作り続けている。その発想と哲学に迫る第1弾は、チームを助けるネット類の開発だ。   河川敷で見かけた練習風景  主にプレーヤー個人に向けて、平日練習に役立つ練習ギアを主力商品としていたフィールドフォースが、最初に手掛けたチーム向け商品はバックネット5m×3mという商品だった。現在も改良を重ね、FBN-5030BNBとしてラインアップされている人気商品だ。 「河川敷のグラウンドを見回すと、バックネットどころか、何もないところで練習をしている選手も多い。ひとたびボールを逸らせば、延々と転がっていくばかり。これでは練習効率も何もありません」 社長の吉村尚記が当時を回想する。「かといって、大掛かりなバックネットを持ち運ぶなんて不可能。でも、分解できる構造にして、持ち運び、その都度組み立て、自立するバックネットを作れたら、その悩みは解決します」 フレームを分解組み立て式とし、ネットをフレームに面ファスナーで固定、フレームから延びたロープを張り、ペグ打ちをして固定すれば、簡易バックネットが完成する。練習後は分解し、バッグに収容することで、持ち運びも楽にできるように──。 こうして誕生したのが、バックネット5m×3m FBN-5030だった。「やがて、河川敷のグラウンドでも、FBN-5030をよく見かけるようになって、やはり需要はあったんだと、手応えを感じたのを覚えています」   バッティング練習でも使えるように  FBN-5030はヒット商品に。ただ、練習で使用される様子を見ていた吉村は、あることに気づいたのだった。「ネットに向かって、バッティングをしている子が多かったんです」 ただ後ろに転がってゆくボールを防ごうと、その利便性だけを考えてつくっただけに、ネットに向かっての打撃練習は、FBN-5030の使用法としては想定外だった。想定外ゆえに、ネットへの打ち込み禁止を呼びかけていたわけでもない。実際、そのように使えないこともない強度はあったが、バッティングネットとして使う選手たちの様子を見て、吉村は発想を逆転したのだった。「ならば、打撃練習で打ち込むことを前提とした作りにしよう、と考えたんです」  それまで、フレームにテンションをかけて、ぴんと張っていたネットに少しの「遊び」を持たせるために、固定用ロープをネットの角ではなく、少し内側から出す構造とし、ネットの下部は、地面に垂らす形のスカート状に。打球を「跳ね返す」のではなく、「受け止める」形にしたのだった。 こうしてバッティング練習で打ち込むことも前提に作られたバックネットは現在もヒットを続けており、さらに横幅を長くしたバックネット・ワイドFBN-7030BNも商品化されたのだった。   「裏方」だったネットが「主役級」に!  その頃すでに、個人向けの一人練習ギアとして、フィールドフォースの代名詞たる「トスマシン・オートリターン」はヒット商品として売れ続けていた。  オートリターンネットで重要なのは「打球を受け止める」こと。すでに、ここにFBN-5030の改良につながるヒントがあったのだ。「ボールを防ぐ」「ボールを跳ね返す」だけでなく、「ボールを受け止める」ための道具としてのネット。この発想により、従来、「防球ネット」として練習を補助するための、言ってみれば「裏方」的存在であったネットが、練習用のギアとして「主役級」に格上げされるための前段階に来ていたのだといえる。 この「ボールを受け止める」発想は、オートリターンネットのリニューアルにより、さらに進化する。 ネットを支えるフレームが、スチールからグラスファイバーに変更されたのだ。釣り竿や、棒高跳びのポールなどにも使われてきた、「しなり」による衝撃吸収を得意とするグラスファイバーポールと、フィールドフォースの衝撃吸収ネットが出会ったことで、その機能は、さらなる進化を遂げたのだった。   ボールを受け止めるためのネット  かつて吉村自らが社長コラムで説明しているが(→こちらとこちら)、西武ライオンズのために作成した「壁当て用の壁」も、ボールを跳ね返す壁という発想から逆転し、受け止めるための壁として作ったことから出来上がった傑作である。 さらに、重量のあるメディシンボールの壁当てをも可能にする「モンスターウォール」FKMP-2116BLKは、これらの機能を極めた、真骨頂ともいえる商品。ここでは、グラスファイバー製のフレームに加えて、ネット自体も網状のものに比べても、より衝撃吸収能力の高い、シート状のネットが採用されている。   「受け止める」ネットの集大成、全方位集球ネット  もうひとつ、「ボールを受け止める」ためのネットの機能を極めた商品がある。 「全方位集球ネット360°」FZHSN-360。ネットを十字状に重ねることで、360度、どの方向から来たボールも受け止めてしまおうという、画期的商品だ。 「思いつきは、練習でのフリーバッティングなんです」 吉村が、開発の経緯を説明する。「よく見るのは、フリー打撃の時に、セカンドベースあたりに防球ネットを一枚、置いておき、外野でボールを捕った人が、そのネットに向かってボールを転がしたり、ゆるく投げたり、という練習風景です。外野にいる人は、言ってみれば、ほとんどボール拾いのようなものです」 そこで登場するのが全方位集球ネットの考えだ。「その場所に、どこからのボールでも受け止めることができるネットがあれば、ボールを捕った外野手はネットに向かって投げることで、送球練習もできる。フリー打撃での守備が、ボール拾いから、意味のある守備練習に変わるんです」   使い方次第で、どんな練習も質が向上  FZHSN-360は一見、大掛かりな見た目に反して、組み立ては極めて容易。フレームはグラスファイバー製で、左右のテンションをほとんどかけずに下に垂らした、スカート状のネットがすべてボールの勢いを受け止めてくれる。さらにその下にあるシートはすり鉢状になっており、中央にはボールが落ちるための穴がある。トスマシンと組み合わせてオートリターンを可能にする、フィールドフォースのネットでは、おなじみの仕様だ。  言ってみれば、これまでフィールドフォースが各種ネットの開発で培ってきた構造の「全部入り」。これにより、どこから来たボールでも受け止め、下に置いたカゴに勝手に集めてくれる、万能ネットが出来上がったのだ。「これがチームに一つあるだけで、練習効率は一気にアップしますよ」 捕るだけのゴロノックが、送球練習までできる練習に。捕るだけの外野フライノックが、中継プレーを意識した送球までできる練習に。ホームベースに置けば、キャッチャーの役割さえこなすポテンシャルを持っているのだ。  低学年の練習などではとくに、受ける側を意識することなく、思い切った送球ができるために、選手たちがゲーム感覚で、楽しそうに練習に取り組む姿も多く見られる。 また、フィールドフォースが小学校の児童を対象に行っている「投げ方教室」では、児童の輪の中心に全方位集球ネットを置き、グループごとに色の違うボールをネットに向かい、玉入れのように投げ入れるゲームも好評だった。 構造はシンプルな、この全方位集球ネット。それでも、一台何役なのか分からないくらい、使い方次第で用途が広がる、傑作商品といえるのではないか──。

[vol.20] これぞ「ティーバッティング革命」! エンドレスティー新発売 - フィールドフォース

[vol.20] これぞ「ティーバッティン...

2025.10.23

 またしても、ひとり練習にうれしいギアが、フィールドフォースから発売された。「エンドレスティー」FBT-700。大量のボールも、ネットも不要。パートナーいらずで、省スペースでもティー打撃ができるスグレモノ。単調になりがちなひとり練習をレベルアップしてくれる、頼れるパートナーの登場だ。   スウィングパートナー×ティー打撃=?  ゴム仕掛けでつるされたボールと、三角形のネットが印象深い、新発売のFBT-700。正面を目がけて、正しくバットを振り抜けば、フィールドフォースのロゴが印刷されたシートに「バシッ」と小気味よい音が響く。このシート自体も、単なるロゴ掲出だけでなく、しっかりと音が出るように考えられた機能を持っているのだ。スウィングが不安定だったり、うまくミートできていないときには、打ち込んだボールがネットに届かなかったり、当たりが弱かったりするので、いい音を鳴らすことができない。しっかりスウィングできているかを判断する、ひとつの指標になる。  ひとりで思う存分、「置きティー」に代わる打撃練習に取り組むことができるという、革命的商品。これまでにフィールドフォースがリリースしてきた、「スウィングパートナー」の延長線にある練習ギアでもある。「そうなんです」。社長の吉村尚記が解説する。「ひとつには、スウィングパートナー同様、一人で気軽にできる練習の代表ともいえる“素振り”に、明確な目的と意識を持って取り組むための手助けをしてくれるギア、ということもできます」。もちろん、実際にボールを打つことができるという意味では、それ以上の付加価値もあわせ持っている。「いかにストレスフリーで、バットを気兼ねなく振ることができるか。それを追求した結果でもあります」   打球はネットを越えてしまうもの、なのか?  エンドレスティーFBT-700を開発する直接のきっかけになったのは、ある家庭で、高さ3メートルのネットを庭に設置したい、という施工を請け負ったことだったという。「3メートルといえば、結構な高さになります。ただ、それだけの高さがあっても、やはり打球によっては越えてしまうんです」 かといって、ボールの飛び出しを防ぐために、天井まで設置するとなると、もはや「壁」ではなく「ケージ」状になるため、今度はそれ自体が風で飛ばされたりといった心配も出てくる。これも安易に取り組むことはできないのだ。 「そんな制約なく、思いきりバットを振れるギアは作れないか、というのがスタートだったんです」 そこからエンドレスティーの仕組みに思い至るところが、吉村ならでは、としか言いようがないのだが、ともあれ、こうしてプロジェクトがスタートしたのだった。 目指す仕組みは、ティーバッティング形式のスウィングパートナー。打ってもボールが元の場所に戻ってくるように、ゴム紐でつるす仕組みにすればいい──。では、ゴムの太さ、強さは? すぐに切れてしまわないか? 思いきりスウィングできるものにするためには、その衝撃に耐える強度と、耐久性も必要では…? アイデアを次々と形にし、試作を繰り返した。上下のゴム紐だけでボールを支える仕組みでは、打った後に長い間、ボールのブレが止まらないため、横方向にもゴム紐を張り、短時間でボールが元の位置に戻り、止まるように調整。支柱やガイドとゴム紐が接する部分には、滑車を付けるなどして、できる限りゴムの擦れを軽減する機構に。その都度、試作品に向かって社員が交代で打ち込むなど、耐久試験も繰り返し、やがて、商品化のゴーサインを出せるまでに、耐久性は高められたのだった。   自宅練習、ひとり練習も全力で!  考えてみれば、自宅で、あるいは一人でする練習は、ほとんどの場合、何らかの制約があり、力をセーブしているのではないだろうか? 前述のネットの高さもそうだろう(そもそも、3メートルの高さのネットを設置できる家もそうそうないと思われるが…)。スペースもしかり。フィールドフォースの代名詞でもある、オートリターンシリーズは、限られたスペースで、少ない球数でも打ち続けることができる、ひとり練習の救世主のような練習ギアではあるが、それですら、決まった大きさのネットに打ち返すことが前提になっている。 「だからこそ、制限なくフルスウィングできるエンドレスティーを商品化する必要性を感じていたんです」 と吉村。これまで世にない商品を創り出す──。フィールドフォースの使命である。そして、それがひとり練習における、新たな練習法を生み出すことになるのであれば、それこそが、いかにもフィールドフォース製品、ということになる。   力いっぱいフライを打ち上げる!  三角ネットの中央正面にあるフィールドフォースのロゴを目がけて打つ、と冒頭で説明した。これが基本的な使用法となるが、少し違った練習もできる。 これまで説明してきたとおり、通常のティー打撃であれば、正面の防球ネットを越えてしまうような大飛球であっても、思い切り打てるのがエンドレスティーの存在理由。であれば、思う存分、フライを打ち上げるのも有効な練習になりそうだ。バットの芯で捉え、三角ネットの頂点あたりに向かって打ち込めば、ちょうど、いわゆる「バレルゾーン」になるだろうか。 「そういえば、3メートルのネットのほかに、もう一つ、開発のきっかけになった出来事がありました」と吉村が言う。「花巻東高校です」 甲子園常連の強豪校、岩手・花巻東高校野球部の佐々木洋監督は、吉村と同じ昭和50年組。元NTT東日本野球部監督の飯塚智広さんも同級生だ(⇒こちらを参照)。その縁で、あるときに花巻東高の指導に行く機会があった飯塚さんが、同校のグラウンドにあった、フライを打ち込むための背が高く、打者側に傾斜したネットの写真を後日、吉村に見せてくれたのだという。「ちょうど佐々木監督の息子さん、佐々木麟太郎選手がいた年です。角度をつけてボールを打つ練習に使っていたんですね」。思いきりフライを打つ練習は、エンドレスティー開発当初から、使い方の一つとして織り込み済みだったのだ。   基本コンセプトは「素振りを意味ある練習に」!  エンドレスティーは、上下の支柱にある、ゴム紐の両端の取り付け位置を変えることで、ボールの高さを段階的に調整することが可能になっている。当然、打球を飛ばしたい方向や、打つべきボールの内外角コースから逆算し、自分の立つ位置や、体の向きを変えることで、ボールの打ち分けや、苦手コースの克服を目指す練習もできる。 使用者の意識次第で、練習の幅も広がる。これもまた、フィールドフォース製品の特徴といっていいだろう。「打撃の、とくに基本練習で重要なのは、スウィングの再現性を高めることですよね。自分のリズムで、目的意識をはっきりと持って繰り返し、振る。大切な練習だと思うんです」と吉村が言う。「『素振りを意味ある練習に』というのは、ずっと、フィールドフォースの商品開発の大きなテーマの一つですからね。これからもどんどん、追及していきたいと思っているんです」 吉村はそう続け、意味ありげな笑みを浮かべた。 あるいはひょっとしたら、次なる新製品の青写真は、すでに彼の頭の中にあるのかもしれない──。

[vol.18]「置きティー」の新機軸! バーティカルティー登場 - フィールドフォース

[vol.18]「置きティー」の新機軸! ...

2025.10.02

 ティースタンドにセットしたボールを打つ、いわゆる「置きティー」は野球を始めたばかりの少年野球選手から、プロ野球選手までが取り組む、バッティングの基本練習。フィールドフォースのティー打撃用ラインアップに、新たに加わった「バーティカルティー」は、ワンランク上の練習ができる、新発想のティースタンドだ。   レジェンドトレーナーが来社!  9月某日──。フィールドフォース本社の企画開発室には、長身痩躯、長髪の渋い男性と談笑する社長・吉村尚記の姿があった。会話の相手は、NPB球団初の「コンディショニングコーチ」立花龍司さん。日本の野球界で初めて「コンディショニング」の重要性を説き、トレーニングの在り方を激変させた、革命児だ。現在もトレーニングジムのプロデュース、大学、社会人野球チームのコーチをするなど、多方面でご活躍中。その立花さんがフィールドフォースの商品や取り組みに関心を持たれ、今回の訪問となったのだった。  立花さんは「するスポーツ」「見るスポーツ」とともに「支えるスポーツ」も大切、と言い、フィールドフォースのものづくりやサービスを評価。同じ野球人として、ともに「これまでにない」道を進み続けてきた者同士の共感もあるのか、これまでの会社の歴史から、まだ世に出ていない開発中の商品説明まで、吉村との会話は止まらない様子だ。   大谷選手のバッティングフォームって!?  ほどなく、立花さんが今年4月に上梓された『大谷翔平のバッティング解剖図鑑』(エクスナレッジ)の話題に。体の使い方やトレーニングはもちろん、動作解析にも造詣が深い立花さんがドジャース・大谷翔平選手のバッティングを分かりやすく解説した良書だ。立花さんは実際に大谷選手の打撃フォームを説明した上で、現在は一般的に「緩やかなアッパースウィングがベスト」とされているのだと教えてくれた。 同書によると、大谷選手のスウィングは日本ハム時代とドジャース入団後で大きく変わっており、最大の違いは主運動が「水平回転」メインから「垂直回転」メインになったこと(この2つはどちらかだけが正しいという関係ではない、とも)。「垂直回転」とは、体軸に対して、腕やバットを90度の角度で振ることで、これにより「大谷選手は」「正しいアッパースウィングになり、振り幅も大きくなった」のだという。 同書で、立花さんは伝統的な日米の教え方の違いについても言及している。「わきを締めて、ボールに対して最短距離でバットを出す」という、長く日本で主流の教えは、飛距離よりもミート率を求める、つまりチームの勝利を優先する教えであり、対して「ボールを遠くへかっ飛ばす」ことを大切にするアメリカの教えも、どちらが正しく、どちらが間違っているわけではない、と解説している。   多様なスウィングに対応するティースタンドが登場  前置きが長くなったが、フィールドフォースが9月に満を持して発売した「バーティカルティー」FBT-600VTLは、一般的な「置きティー」で、そんな一歩踏み込んだ練習法に応える商品だ。 コの字型になった上部フレームは、空いた一辺の両端に筒状のラバーが付けられ、そのラバーでボールを挟み込んで保持する仕組みになっている。そして、フレーム自体もネジ留めで自由に角度調整ができるようになっており、どんな角度のスウィングに対しても、挟みこみラバーを90度にセットすることが可能。多様なスウィングに対応できるのが特徴のティースタンドなのだ。  一般的なティースタンドを使った練習では「ティー台にボールをセットし、自分で理想のスウィングをイメージしながらボールを打つ」という練習だが、FBT-600VTLを使った場合は「理想のスウィングをイメージしながらFBT-600VTLを調節してボールをセットし、打ちながらスウィングの精度も確認できる」といったところだろうか。「商品を開発するときに、心がけていることがあるんです」 吉村が言う。「説明がなくても、商品を使ってみるだけで、そのトレーニングに必要な動きが自然とできていたり、おのずとその効果が分かる、ということです」。FBT-600VTLは、本体を調節し、ボールをセットした段階で、必要とされる動きが明確になる。分かりやすくはあるが、その分、通常の置きティーに比べると、使う側にとっては、一段、高いレベルが要求される練習でもある。   「置きティー」バリエーションにも歴史あり 「パートナー不要、省スペースで最大限の練習効果を!」をコンセプトに、練習ギアの開発、販売を続けるフィールドフォースにとって、ティーバッティングは大きなテーマのひとつ。数種類あるティースタンドだけではなく、スウィングパートナー(⇒進化が止まらない!スウィングパートナーが魅力的なリニューアル!)などもそのバリエーションだ。 いまは廃番となった商品だが、スウィングパートナー・バックスピン FBT-300/301という商品があった。ボールをゴム製のボール受けにはめ込み、上からつるす形のティースタンドだ。なぜボールをつるす形にしたのかといえば、理由は明白で、ボールの芯より下を打つことでバックスピンをかけ、飛距離を出そうというバッティングのため。通常のティースタンドでは、芯の下を打とうとすると、どうしてもボール受け部分を叩くことになってしまうため、ストレスに感じることも多かったのだ。 これもまた、目的がはっきりした商品ではあり、使ってみれば、その意図するところはおのずと明らかになっている。 よく見る置きティーの光景は、コーチがパートナーとなってボールをセットし、そのボールを打つたびにコーチがアドバイスを送る、というもの。これは通常の置きティーの場合、練習自体がシンプルであるがゆえに、目的や、目的の達成度の評価などが、使う側にゆだねられているからに他ならない。   すべてを受け入れ、前進あるのみ  ティーバッティングひとつを取ってみても、そのためのギアにはかなりの開発の歴史と、商品のバリエーションがあるフィールドフォース。これはもちろん、「プレーヤーの真の力になる」ためであり、「パートナー不要、省スペースで最大限の練習効果を!」というコンセプトを常に考えているから、でもある。「ほかにも、理由はあるんですよ」と吉村。「バッティングの理論や方法論、練習法などって、次から次へと新しいものが出てきますよね。流行もある」 そうなのだ。前出の立花さんの著書にもある通り、どれかが正しく、ほかは間違っている、というようなものではないのがバッティング理論。その時々で好成績を残している選手の方法論が正しいとされる、結果論的な部分も大きいのだ。「フィールドフォースは、そのどれをも否定するつもりはありません。あえていうなら、ユーザーそれぞれが、その中で自分に合ったものを見つけてくれればいい。そのためにも、フィールドフォースは、どんどん新しいものをつくり出し、世に問うていこうと思っているんです」 そうしておそらく、今後も次々とティーバッティングを改革する商品が生まれてくるのだ、きっと。

[vol.17] 中型/小型ピッチングマシンに見る「フィールドフォースらしさ」 - フィールドフォース

[vol.17] 中型/小型ピッチングマシ...

2025.09.26

 パートナー不要、一人でもできる練習用ギアなどが中心となるフィールドフォースの商品ラインアップにあって、飛びぬけて高価な中型/小型ピッチングマシン。当初、チーム単位での使用を念頭に置いて開発されたこれらの商品は、一見、異質な存在にも映るが、深堀りをしてみれば、これらもまた、フィールドフォースらしさが詰まった商品なのだ。   アーム式マシンへのこだわり  中型アーム式ピッチングマシンFKAM-1501が66万円、小型アーム式ピッチングマシンFKAM-1001が55万円(いずれも税込み)と、他の商品とは一ケタ違う値付けが目を引く2商品。重厚感のある見た目だけでなく、性能も本格的な、これらの商品開発をさかのぼると、その源流はフィールドフォースがボールパークの運営を始めた、2016年にたどり着く。 ピッチングマシンは大きく分けて、大きな2つのホイールでボールを挟むようにして、回転でボールを押し出し発射する「ホイール式(ウィール式)」と、金属製のアームでボールを保持して投げる「アーム式」の2つの種類に分けられる。ともに得手、不得手や、それぞれの利点、欠点はあるが、フィールドフォースがこだわったのは、実際に投手のボールを打つ感覚に近い、アーム式。ボールパーク第1号の足立ボールパーク1には、オープン当初、硬式用、軟式用合わせ4台のアーム式ピッチングマシン設置され、フル稼働していた。 これは他社製の据え置き型マシンだったが、これらを使い込むうちに生じてきたのが、「もっと手軽に購入し、使えるマシンができるのではないか?」という疑問。これがFKAM-1001、FKAM-1501へとつながるマシン開発の起点だった。   1、2号機は多賀少年野球クラブへ  2年の開発期間を経て、2018年11月にリリースされたのは小型のFKAM-1000。学童野球チームを主なターゲットに設定し、時速70~110kmのボールを安定したコントロールで投げてくれるアーム式マシンとして発売された。マシンの全高を120cmに抑えたことで、大人が2人いれば、分解などすることなく、ワゴン車にそのまま積み込める大きさもウリだった。 FKAM-1000の1、2号機は、マシンが発売された2018年に高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントで初優勝した、滋賀県の多賀少年野球クラブに、同クラブ出身の楽天・則本昂大投手からのプレゼントとして贈られたのだった。そして、現在も元気に同クラブの練習で活躍している。 中型マシンFKAM-1500が発売されたのは、その1年3か月後の2020年1月。FKAM-1000よりも一回りサイズアップしたのは、球速を上げるため。こちらは90~140km/hの速度設定が可能になった。小型に比べ大きくなったとはいえ、こちらもハイルーフのワンボックス車であれば、倒さずにそのまま積載できるサイズにとどめている。   低価格、でも適正価格  このFKAM-1000と1500における、フィールドフォースらしさとは何かといえば、価格設定にほかならない。 用途と性能を考えれば、FKAM-1000の44万円、FKAM-1500の60万5000円(いずれも税込み、当時)という価格は、同レベルの性能を持つ一般的な商品の市場価格を考えれば、半額に近かった。そして、これが商品の売れ行きにも影響した。単に販売台数や売り上げ額の話ではなく、当初の狙い以上に、個人で購入するユーザーが多かったのだ。 FKAM-1000、1500とも、当初、ターゲットに設定していたチームユーザーと比べても、個人ユーザーの比率が高く、その割合は50:50といったところだった。値段とコストパフォーマンスを天秤にかけ、個人練習の用途でも購入に値すると判断したユーザーが多かったということになる。「FKAM-1000や1500は、ほかの同程度のマシンと比べれば安く感じるかもしれませんが、製品自体はウチの利益も考えに入れた価格設定です」 フィールドフォース社長・吉村尚記が説明する。「これまでの製品は、製造業者から卸し業者、代理店と、ユーザーの手元に届くまでの中間マージンが何重にも発生していたために、結果的に高価格になっていたにすぎません」   価格設定が引き起こした“練習革命” FKAM-1001は150球、FKAM-1501は200球のボールを連続で打つことができる  これを経済的観点から“価格破壊”と説明することもできるだろう。が、吉村はこう続ける。「むしろ、ユーザー、プレーヤーの目線で考えたいですね。これまでチーム単位で購入し、全体練習でしか利用できなかったような機器が、個人でも手が届く価格になった、と。これって、ひとりでできる練習の幅が、かなり広がりますよね」 大きくはないかもしれないが、新たな市場を開拓すると同時に、プレーヤーの練習のあり方にも影響を与えるほどの価格設定。自宅でも本格的ピッチングマシンを使えるとなれば、これは“練習革命”といってもいいのではないか──。「そう考えると、まさにフィールドフォースらしい商品だと思いませんか?」   パーツ単位で繰り返したバージョンアップ ↓↓ ストッパー部分は可動式に変更された ↓↓  こうして、FKAM-1000、FKAM-1500とも好調な売れ行きを見せていたが、1から開発した商品だったことに加え、中国の製造工場にとっても、初めて手がける大型機器だっただけに、発売間もない頃にはトラブルもあった。「単純に、工作精度が低かったというのもあります」 当時から修理工房でマシン修理にあたっている、営業企画部係長の井口大也が説明する。「マシンの初期不良もありましたし、溶接部分が折れてしまった、なんていうレベルのトラブルもあったんです」 これまで手掛けた商品とは比べ物にならないほどの、強度が求められるマシンだっただけに、改善すべき点も予想以上に多かったのだ。 とはいえ、部品単位の交換により解決できる問題点も多く、その都度、FKAM-1000、1500はマイナーバージョンアップを繰り返すことで、完成度を高めていった。「初期のマシンから比べると、変わらずに残っているパーツは、ほとんどないかもしれませんね」 ただ、中には構造上の問題と認められた問題点もあった。ひとつはボール供給部のストッパー金具。「アーム部分にずれや、ボールが当たって生じたゆがみなどがあると、この金具にアームが当たって、金具自体が変形したり、動きがおかしくなったりしてたんです」 これはストッパー部分の構造を見直すことにより解決した。金具を固定せず、バネにより可動とすることで、アームが当たったときに、衝撃をいなす構造に変更した。 当初は土台部分のフレームの形状にも問題があった。FKAM-1000、1500はボールの発射角度を調節できる仕組みにより、ゴロやフライを飛ばすことができ、守備練習にも使える、というのも特徴だったのだが、前面を一番下まで下げてゴロを発射する設定にすると、アームが前方のフレームに接触してしまっていたのだ。これは前方部分のフレームを一段、低く加工することにより、クリアランスを確保した。 ↓↓ スピード調整のバネ連結部は「あそび」のある形に変更 ↓↓  さらにもうひとつ、スピード調整用のバネを伸縮させるための調整ハンドルだ。このハンドルを回してバネの長さを調節、反発の強弱をコントロールすることで、スピードを変化させる仕組みになっているのだが、バネが強力なために、ハンドル周辺の破損が多かったのだ。これはハンドル自体を上下に動かせる「あそび」をつくる構造に変え、問題なく調整できるようになった。 致命的とはいえないまでも改善が望まれた、これら構造上の弱点をクリアし、FKAM-1000はFKAM-1001へ、FKAM-1500はFKAM=1501へと、それぞれフルモデルチェンジしたのだった。   部品交換方法を動画で共有  マシンの成熟度が高くなったとはいえ、練習の現場において、多ければ一日に何千球と投げ続けるマシンだけに、消耗品交換も含めたメンテナンスの需要は多い。 価格設定にも影響した、販売経路のシンプルさは、ここでも役立った。ユーザーとフィールドフォースとのホットラインを設定することにより、タイムラグの少ない連絡と対応が可能になったのだ。「マシンの構造を理解してしまえば、仕組みはそれほど複雑ではありません。修理というよりも、メンテナンスや部品交換で済むケースが少なくないんです」 井口が説明する。「そして、部品交換については、ほとんどの手順が動画にしてあります。それを見れば、多くの場合、こちらからは部品だけをお送りして、お客様自身で対処していただけるようになっています」 これはユーザー側から見ても、時間がかからず、無用な「訪問修理費」もかからない、悪くない選択肢となっている。 もちろん、それでもトラブル対応やメンテナンス需要は後を絶たず、井口は文字通り、日本中を飛び回る毎日ではある。「危険度のある、電気系を含む修理などは、私の方で直接、受ける以外にないですしね」。修理をし、なおマシンの問題点があれば中国の工場とやりとりをする、多忙極まる日々を送っている。   「らしからぬ」が「らしさ」に  その後、小型/中型アーム式マシンは、SNSなどによる、口コミやユーザー自身による発信も手伝い、商品開発段階では想定になかった、高校や社会人チームでの使用も増えている。「いろいろな意味で、われわれの販路を広げてくれた商品でもあります」。吉村がうなずく。「より幅広い層のユーザーの皆さまにお使いいただくことで、メンテナンスなど、対面でのやり取りの頻度も必然的に増します。そのために、学校や企業チームのグラウンドを訪問する機会が増えたんですよね」 いまでは、ネット販売などと並んで、直接、グラウンドなどに訪問しての「外商」も、フィールドフォースの販路の柱のひとつとなっている。「考えてみれば、小型、中型マシンの存在があったからこそ、現在の状況になっているんでしょうね」 一見、フィールドフォース「らしからぬ」商品が、思いがけぬ結果を生み、結果として「らしい」状態を作り出している。決して、結果オーライではない。これもまた、挑戦を続けることで生み出された、必然なのだろう。

[vol.16] 進化が止まらない!スウィングパートナーが魅力的なリニューアル! - フィールドフォース

[vol.16] 進化が止まらない!スウィ...

2025.09.18

 フィールドフォースの商品ラインアップで定番のロングセラー、「スウィングパートナー」がリニューアルされる。2021年に発売された、現行モデルのFBT-360発売から4年。今回、新発売されるFBT-370は、フルモデルチェンジといってよいほどのアップデートとなっている。いま、あらためてスウィングパートナーに注目したい。   素振りを意味ある練習に  打撃練習の基本中の基本である「素振り」。バットを振る力をつける、打撃フォームの習得、安定した動作の再現性を高める、といった体力、技術的な目的はもちろん、集中力を高めるといった意味合いまで、様々な効果が期待できる“深い”練習だ。 しかし、単純であるがゆえに、とくに低年齢選手の場合、気づけば回数をこなすことが目的になってしまったり、漫然と、ただバットを振っていた、などというケースが少なくない。そんな、ともすれば単調になりがちな素振りを脱し、一本一本のスウィングに明確な「意味」と「目的」を持たせてくれるのがスウィングパートナー。ひとり練習の頼れる相棒だ。  初代のスウィングパートナー、FBT-300が発売されたのは2009年。フィールドフォース創業の2006年から、3年後のことである。 ティーバッティングで使うスタンドの土台をホームベース型にし、その中心に取り付けられた支柱の上部には、接続部分がジャバラ形状で、先端の白く丸いターゲットが特徴的な、ゴム製のダミーボールが差し込まれている。ちなみに、ダミーボールは素材に多少の変更こそあれ、現行モデルまで変わっていない。ダミーボールを取り外してボール受けに付け替え、ティースタンドとして使える構造も不変だ。  ダミーボールを使うことで、実球を打つティーバッティングのように防球ネットは必要なく、単なる素振りに比べ、明確なターゲットに向かってバットを振ることができる商品として売り出された。「ただ、このFBT-300は短命でした。間もなく、よりバリエーションに富んだスウィングに対応すべく改良した、FBT-350を出したからなんです」 社長の吉村尚記がが当時を回想する。   改良を加えながら、長く愛されるベストセラーに  ほどなくリリースされたFBT-350は、形としては現行のFBT-360に近い。ホームベース型の土台に付けたL字型の支柱にも脚を付け、2点で支持する形に変更したことで、安定度を増している。また、土台の中央を支点として、L字支柱を360度、円を描くように動かせるようにし、ダミーボールをインコース、アウトコースと、好みのコースに設定することができるようになった。また、支柱自体も伸縮できるようにし、高さも設定できるようにした。 基本的には、このFBT-350で、現行商品と同じ機能が備わったことになる。「ですが、このFBT-350も短命でしたね。すぐに改良型を出しました」 と吉村。基本的な機能はそのまま、ほどなく、より使いやすく改良したFBT-351を発売したのだ。  FBT-350では土台と支柱にいくつかの小さな穴をあけ、そこにストッパーをかませて高さとコースを設定することにより、多段階調整を可能にしていた。FBT-351では、それをすべて締め付けパーツで固定する構造に変更し、コースも高さも、無段階で調整できるようにしたのだった。 FBT-351は長らくモデルチェンジすることなく、9年間にわたって販売され、累計7万台以上を売り上げる、大ベストセラーとなった。   9年間売れ続けたFBT-351  が、もちろん、「100点満点の商品はない」フィールドフォースにとって、FBT-351が最終形ということはない。「もちろん、改良すべき点もあったのですが、このときのモデルチェンジは、それ以外の要因もあったんですよね」 改良点は、高さの設定だ。FBT-351は75cmから115cmまでの高さで無段階調整を可能にしていたが、メインユーザーは学童野球選手。低年齢層の選手にとっては、最低設定の75cmでも“低め”とは言い難い高さなのだ。もっと低い位置まで調整できれば……との声が寄せられていたのだった。「そうしたユーザーの方々の中には、レンガなどを台にして、自分が一段高いところに上がって構えることで、ヒザ元のボールの対策をしてるんです、というような声をいただいたんです」 そのため、FBT-351には、低め専用の支柱をオプションで用意するなどして対応を進めていたが、新たに開発したFBT-360では、本体だけで55cmの低めから調節できるように改良したのだった。 そしてもうひとつ。改良点以外で、リニューアルを促した要因というのは、原材料価格の高騰である。 2021年。コロナ禍による、あらゆる物の供給不足と原油高に、円安も重なり、世間では商品の値上げラッシュが続いていた時期だ。「現状の価格維持が難しくなっていたんですよね。それもあって、商品改良による新型の開発が進んだのです」   原点に返ったFBT-360  新たに登場したFBT-360は、原点に返って構造を見直し、できるだけシンプルな作りにした。部品数を少なくしたことで、世の中のあらゆる製品が値上げする中、FBT-351よりも低い価格設定で売り出すことができたのだ。 販売期間が違うため、9年間売れ続けたFBT-351には及ばないものの、これも現在まで販売好調が続く、ロングセラーとなっている。 とはいえ、気になる点も……。「本末転倒と言ってしまえばそれまでなのですが、シンプルな構造にしたがゆえに、本体が軽くなったんです。これが災いし、安定性が下がってしまった」 重量4.5kgのFBT-351に対し、FBT-360は3.5kg。ダミーボールの中心を外してスウィングすると、本体が容易に動いてしまうのだ。 また、低めに対応できる設定にした影響で、高めの最高設定が88センチと、10cm以上も下がってしまった。「学童野球選手がメインのターゲットとはいえ、中学、高校生から大人まで、対応はできた方が良いですからね」 こうして、5代目のスウィングパートナーとなる、新型FBT-370開発の機運が高まったのだった。   新登場の“関節”がスウィングパートナーを変える!?  吉村には、歴代のスウィングパートナーの開発や、ユーザーの声を踏まえて、長い間、実装したいメカニズムがあった。「支柱に、関節をつけたかったんです」 支柱が関節のように、自由に折れる仕組みを取り入れたかったのだ。「これまでのダミーボールでは──ダミーボールじゃなくて、実球が打てる「ボール置き」に付け替えても、それは同じなんですが──ゴム部品の根元部分1点に力がかかるために、根元部分が破損してしまったり、締め付け金具で固定していても、外れてしまったり。支柱に関節をつけることができれば、ダミーボールやボール受けが受ける衝撃は、かなり低減できると思ったんですよね」  こうして、適度な力で支柱が折れるような関節構造が取り入れられることになった。「問題は、折れた支柱が自力で元に戻ることを可能にする構造でした」 試行錯誤の末にたどり着いた答えは、バネなどではなく「ゴム紐」だった。「これが一番、自然で丈夫。ビニールのパイプで覆うようにしてやれば、表面の劣化もかなり抑えることができます」 試作を重ね、満足できる強度と耐久性を持つ“関節”が出来上がった。関節が衝撃を受け止めてくれることで、ダミーボールにかかる負担が少なくなり、固定金具なしでも、ダミーボールが支柱から外れることもなくなった。 また、支柱をこれまでの中空のスチール角材からソリッドの鉄板に変更し、重量も5.5kgと、FBT-360から2kg増えて安定感が増した。   まだ開発は続く……  関節による衝撃緩和により、ターゲットを外して振ってしまった場合も本体は安定を保っており、本体が動いてしまうようなストレスは軽減される。新たに関節を設けたことによる一番の恩恵はこれか──と考えていたのだが、吉村の狙いは別のところにあった。「関節は一方向にしか折れてくれません。つまり、狙った角度でバットを振り出し、正しくダミーボールにヒットしなければ、関節が機能しないんです」 関節の向きもダミーボールの向きも、無段階で調節が可能。つまり、バットがボールに当たる角度も計算に入れ、ボールを飛ばしたい方向に関節を固定し、ダミーボールをセットすることで、「インコースのボールを引っ張る/流す」「アウトコースのボールを引っ張る/流す」といったように、自分で状況設定して、練習に取り組むことができるという仕掛けだ。  機材としての安定度は増しつつ、使用者には、より精度の高いスウィングを要求する仕様変更。単なる素振りでは、なかなか頭でイメージしづらい状況まで簡単にセットでき、そのコースと高さ、そして自分のスウィング軌道まで想定して、練習に取り組むことができるようになったということだ。 もはや、単なる“素振りの補助機器”からは、かなり進化したところまで来た感があるスウィングパートナー。それでも、これが完成形ではないと、吉村は言い切る。「バッティング、スウィングに関しては、次々と新しい理論が出てきます。流行のようなものもあり、正解というか、ゴールはないと思うんです。だから、スウィングパートナーも、そのときどきに合わせて進化していく必要がある、と考えています」 定番にして、定番にあらず。シンプルだからこそ奥が深い、スウィングパートナーの進化なのだ。

[vol.13] フィールドフォース流「かゆいところに手が届く」キャッチャー用具、好評です! - フィールドフォース

[vol.13] フィールドフォース流「か...

2025.08.21

 学童野球選手向けに特化し、開発されたフィールドフォースのキャッチャープロテクター&レガース、FCP-380 &FRG-310が堅調な売り上げを記録している。JSBB(全日本軟式野球連盟)公認用具。公式戦で使える、一見、オーソドックスなキャッチャー防具だが、これもフィールドフォース製らしく、「かゆいところに手が届く」商品となっている。   定番商品にも不満あり!?  キャッチャーの防具といえば、どのチームも複数持っている、定番中の定番といっていい野球用具。おそらく、多くのプレーヤーは細かなところを気にすることなく、「こういうもの」という認識で、疑問に持つこともないまま使っているはずだ。 しかし、こと学童野球、少年野球のための道具として、あらためて見直してみると、改善の余地は少なくない、ということになる。定番商品も、新規開発商品と同じように足りない部分が見えてくるのだ。   学童野球選手に適したキャッチャー防具とは  控え捕手なのか、低学年の小さな選手がチームの備品であろう、体に合っていない、大きめのプロテクターとレガースを身に着けてグラウンド内を走る姿はほほえましいもの。が、実際の試合でのプレーとなると話は別だ。「もう10年ほども前になるでしょうか。多賀少年野球クラブさんが主催されている、小学3年生以下の『多賀グリーンカップ』を見たときだったか、地元の低学年大会を見たときだったか……」 フィールドフォース社長の吉村尚記が振り返る。「それまで、低学年以下の、小さな選手たちの試合をしっかり見たことがなかったんです。ですが、あらためて、じっくりその年代の試合を見ていると、選手みんなが体に合わない、重くて動きにくそうな防具をつけてプレーしている。走る力なんて、大きすぎるプロテクターやレガースのせいで、完全に阻害されてしまっている。「これじゃあ、子どもたちに『キャッチャーはやりたくない』なんて言われるわけだよなあ……と思いながら見ていたのを覚えています」 このときの思いがきっかけとなり、学童野球選手専用のキャッチャー防具の開発が始まったのだった。  一般的に世に出回っている、少年用のプロテクターやレガースは、大人サイズの一般用をサイズダウンしたものがほとんど。が、当然、部品数や接続部の仕様などは変わらないために、重く、動きを妨げる結果となっていることが多いのだ。「学童野球選手の体にフィットし、動きを妨げることなく、軽量なプロテクターやレガースを作る。キャッチャーが走るのを阻害しないものがいい。『ダッシュできるキャッチャーギア』。ウチの出番じゃないですか」 吉村はそう言い、笑った。   軽量化+動きやすさ イメージを形に!  思い立った吉村は、すぐに商品イメージをイラストにした。「まずは樹脂の部分を減らそうと思ったんです。削れる部分は部品も減らして、面積も減らそうと」 レガースは膝上にあるガードを省き、通常、くるぶしまであるスネ当て部分を短くすることにした。「あれ(スネ当て)が長すぎるので、足首の動きを邪魔してしまい、走ったりすることができないんですよね」 足首部分を覆うフットガードは、一般用のレガースでは使われない、面ファスナーで取り付ける構造とし、その面積を縦方向に広げることで、面ファスナーの取り付け位置により、ヒザ下の長さに合わせて調節できる設計とした。また、スネ当てを装着するためのゴムベルトも、通常の4本から3本に減らし、装着もシンプルな形に。その一方で、フィット感を増すために、ふくらはぎガードを追加した。 プロテクターも脇部分のクッション材を省き、首まわりをすっきりさせたデザインとし、密着度を高めるために、背面はゴムバンドを一般的な「T字」の形ではなく、クロスで留める設計に。すべて装着しやすさと動きやすさにこだわった。 イラスト化したそれらのアイデアを形にするべく、吉村は国内の工場に持ち込んで製作を依頼した。 「もともと面識があった程度の会社なのですが、突然電話をして、ほとんど飛び込みのような形でお願いしたんです。それでも、ありがたいことに、ウチの会社のことを知っていていただいて、子どもたちのために、という思いを理解していただき、快く製作を引き受けていただいたんです」 それほど時間をおかずに、出来上がってきたサンプルは、ほぼイメージ通りだったという。「もうそのまま、売り出せるんじゃないかというくらいでした。思いがそのまま。、形になっていた。その後にお願いしたのは、カラーとサイズの微調整、それくらいだったんじゃないでしょうか」 こうしてサンプルが完成し、JSBBの公認を取得するべく、全日本軟式野球連盟に持ち込んだのだった。   発売後の評判は上々、この先の展開は…  JSBBの公認を取得するためのやり取りや手続きは、思いのほか長い時間を要した。商品の発想から実に5年半、やっとのことでJSBBの公認を取り、今季、シーズン前に発売を開始した。 最終的に、FCP-380/FRG-310は、従来品と比べ、プロテクターとレガースを合わせ、約400グラム軽量になった姿で、市場に送り出された。その評判は……。「発売前から、SNSなどで告知をしていたんですよね。ありがたいことに、多賀少年野球クラブさんが、自分のところで試した様子を『つけたままでダッシュできる!』なんて発信してくれて、それに対する反応もあったりして……」 まだ発売から数カ月ながら、すでに追加発注をかけるほど、好調な滑り出しを見せている。ありがたいことに、開発の動機がそのまま商品の評価につながっており、多く寄せられているのは「軽くて使いやすい」「動きやすく、プレーの妨げにならない」といった、既存品と比べての好評価だ。先日、高円宮賜杯第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントで前人未到の8度目制覇を果たした長曽根ストロングスも、当初からのユーザーだ。 試合でも使える公認用具なので当然だが、フィールドフォース製品にしては珍しく、真正面から開発に取り組んだ商品である。とはいえ、これだけ多くのメーカーが同じ用途で作っている用具でも、やはりフィールドフォースが手がけるものは、「かゆいところに手が届く」仕様になるのだ。  こうして誕生した新定番商品。しかし、吉村の構想は、これでは終わっていない。「現在、ネイビーとブラックの2色展開なのですが、よく『レッドはないの?』『ブルーは?』といった、問い合わせをよく受けます。ありがたい反応ですね。ゆくゆくは、オーダーグラブのように、多色展開ができたらいいですよね」 これもまた、フィールドフォースらしい展開。もちろん、どんな商品も、野球少年たちに寄り添う姿勢にブレはない。

[vol.11] 発売以来、続く大ヒット! フォースマシンの魅力とは!? - フィールドフォース

[vol.11] 発売以来、続く大ヒット!...

2025.08.07

 「フォースマシン」FFMC-100Mが大ヒットしている。5月の発売以降、入荷待ちの予約状態が続いていたほど。手軽さと本格的性能を両立させたこのマシンは、フィールドフォースのラインアップの中でも、これまでにない路線の商品なのだ。マシンやギアを通して、効果的な練習法を提案してきたフィールドフォースの商品群の中でも、際立った存在感を放っている。   既存ラインアップの『中間』  フィールドフォースの代表的マシンといえば、穴あきボールや、径の小さなミートポイントボール、専用シャトルを使うトスマシンやバッティングマシン──。これら個人練習向けのマシンに加え、路線としては対極にある、チーム練習向けの本格アーム式ピッチングマシンも好評を博している。 前者、個人練習向けのマシンは、室内やガレージなど、省スペースで本格的練習を実現することを目指して開発されており、アーム式マシンは日常のチーム練習、つまりグラウンドで使用することが前提となっている。 フォースマシンは、いってみれば、その2系統の中間といったところだろうか。トスマシン系よりも広いスペースを必要とし、パートナーも不要とはいかないが、より本格的な練習が可能で、個人練習でも、チーム練習でも力を発揮してくれる。より手軽に、より実践的な練習ができるマシン、ということになろう。   守備練習でも使えるマシンにしよう  2つのウィール(ホイール)を使ってボールを発射する機構は、本格的なピッチングマシンでは一般的。バッティングセンターで多いのは、この方式のマシンだ。それとは違い、フォースマシンは、ひとつのウィールでボールを飛ばす1ウィール方式。この構造のマシンも、フォースマシン以前から、すでに存在している。大きくて重く、常設して使用されることが多い2ウィール式に比べ、比較的軽く、持ち運べるサイズのものが多いのが特徴だ。 フィールドフォースが、フォースマシンを製作するにあたってこだわったのは、1ウィールマシンの手軽さを生かしながら、その機動力をさらに追及して、もっとバリエーションに富んだ使い方ができないものか、という点だ。「当初から考えていたのは、『このマシンの仕組みなら、守備練習にも使えるんじゃないか』ということなんです」 社長の吉村尚記がフォースマシンの着想に至った経緯を説明する。「フィールドフォースは、どこかと同じものを作る会社ではありません。常に新しいものを作って、それを世の中に提示していきたい。フォースマシンを作るにあたっても、単なるピッチングマシンではなく、守備練習にも使えるのだという部分を形にしたい、と思ったんです」   アカデミーコーチ陣が絶賛  ピッチングマシンとしての1ウィール式は、バックスピンがかかったボールが発射される。ボールに対して上向きの回転で、いわゆる「伸びる」軌道のボールだ。 フォースマシンを守備練習に使うことを考えると、マシンを上向きにセットして発射したボールは、ボールの下側をたたいたり、こすりあげた、バックスピン回転のフライと同じ球筋になる。「実はこれ、NPB球団のアカデミーで試してもらったときに、絶賛されたんです」 吉村が説明する。「マシンを傾けて、一塁側、三塁側に向けてフライを発射すると、実際の打球と同じように、ファウル側に向かって曲がっていく軌道のボールを飛ばせるんです。この曲がり方、ほとんど回転のかかっていないボールを打つノックでは、再現が難しいそうなんです。このマシンを使えば、より実戦に近い形のフライを捕球する練習ができる。『これは使えますね』となったんですよ」   マシンを反転させてトランスフォーム!  加えて特筆すべきは、マシンを取り外したり、組み直したりすることなく、ゴロ捕球の練習にも応用できる仕組みを形にしたことだろう。 実戦で飛んでくるゴロは、ボールの上側をたたき、トップスピンの回転がかかった打球がほとんど。ボールの下向きにスピンがかかるので、フラットな打球よりは、バウンド後に高く弾み、勢いを増す挙動を見せることになる。「これを再現するには、マシンを逆さにすればいい」 吉村はそう説明する。とはいえ、それもなかなかの難問だとは思うが……。「関節的な構造を入れることで、実現できないかなと考えたんです」 マシンをくるりと下向きに反転させるべく、マシンの取り付け部分を反転可能な関節にし、支柱にクランプのような「コの字」部分を作ることで、そのためのスペースを作り出す。これでマシンを取り外すことなく下向きにし、ゴロ練習用にトランスフォームできる仕組みを作り上げたのだった。「このマシンで使えるのは、ウレタン製の専用ボール。なので、捕った後のスローイングまでは難しいのですが、少なくとも、捕球までの動きは、かなり実戦的な練習ができるようになりました」 こうして、特徴的な形の「脚」を持つ、高機能マシンが完成したのだった。   絶妙な大きさ+バーゲンプライス  もちろん、ピッチングマシンの性能を満たしていることは大前提だ。フォースマシンは重さの違う、2種類のボールを用意することで、スピードや変化球の球筋にもバリエーションを持たすことに成功している。 ただ、使用者の側にも、多少の注文が付く。発射後、ウィールを動かすモーターの回転数が安定するまでの一定の時間、7~10秒の投球間隔が必要なのだ。そのため、ユーザーには「投球ごとの間隔は約10秒以上必要です」といった注意点を各所で提示し、アナウンスしている。また、ボールを投入するときに落とし入れるか、勢いをつけて投げ入れるかでも、発射されるボールの挙動は変わってしまう。「もちろん、モーターとウィール自体を大きく、パワフルなものにすれば、その誤差は気にならないほど小さくできるし、間隔を空けずに、続けて使えるようにもできます。ただ、その分、マシン自体が大きく重くなり、何より、価格が大きく変わってしまう。サイズ感と価格面を考えると、これがベストなんですよね」   専用レール発売で、より便利に  とはいえ、実際に使い始めると、ユーザーとしては無意識のうちに、ついついペースを早くしてしまうもの。それに対するベストな解が、最近、発売された「専用自動“供球”レール」FMC-100RAILを使用することだ。あらかじめ、専用レールにボールをセットしておくことで、自動的に8秒間隔でボールを供給口に落としてくれる、というものだ。6球までセットできるレール2つが同梱されており、連結して使うことで、12球までを自動的に発射してくれる。これなら、間隔を気にしなくても、機械に任せてボールを待てばよい。専用レールは今後、単品での発売予定もあり、4つまで連結可能、つまり24球まで自動供給が可能となっている。   実はまだ、最終形ではない……!?  この専用供給レールは電動だが、レールについたACアダプタの差し込み口は、あらかじめフォースマシンについている。レールが発売されるまでは、使い道がなかった差し込み口だ。つまり、マシンが完成した段階で、すでにレールを追加で発売することを想定していた、ということになる。「そうですね。同時には出せませんでしたが、専用レールも開発は進んでいたんですよ」と吉村が明かす。とすれば、今後も、何かしらバージョンアップのための追加パーツなどが出てくる可能性はあるのだろうか。「もちろん、より便利に使っていただけるような追加商品を出していければ、とは思っています」 大人気のフォースマシン、最終形は一体、どんなものになるのだろうか──?

[vol.8] 唯一無二の商品を! フィールドフォースの商品開発(下) - フィールドフォース

[vol.8] 唯一無二の商品を! フィー...

2025.07.10

 毎月、次々と新規アイテムの発売を続けるフィールドフォース。そこまで頑張らなくても……と思わなくもないのだが、そこにこそ、この会社の信念と哲学がある。熱量のあるプレゼンテーションと忌憚のない議論により、無から有を生み出し、それを形づくる。新商品を生み出す過程の中にも、フィールドフォースらしさが詰まっている。 ボールパークの「離れ」では……  東京都足立区にあるボールパーク足立1、2の敷地に、事務所用の「離れ」がある。現在は「プリント工房」としてオーダーTシャツの制作などのために稼働しているが、ボールパーク開業当時は、フィールドフォースのアンテナショップ兼ボールパークのレジカウンターだった。 その「離れ」の2階は、現在は事務所兼スタッフ控室になっているが、かつて学習塾だったことがある。「個別指導学院Hero's(ヒーローズ)竹ノ塚校」は外部学習塾への場所貸しではなく、フィールドフォースが直接、運営にあたっていた。講師は全員、フィールドフォースの社員。現在も社員が講師を務める野球教室「エースフォー」はあるが、かつては野球だけでなく、勉強も教えていたのだ。 かなり特殊な状況ではあるが、フィールドフォースらしいといえば、らしい。とにかくNGはなく「やってみなはれ」の世界である。 フィールドフォースは建設屋!?  現在は千葉県柏市にあるフィールドフォース本社。エントランスで目を引くのは、社長・吉村尚記の名前の建築業許可証だ(練習場の施工時に必要)。「初めて入ってきたお客さんが、『フィールドフォースって、建設屋さんなんですか?』って。なんの会社かと思われますよね」 ボールパーク事業部長の成田雄馬が笑う。彼は北海道で札幌と旭川のボールパークを立ち上げたときの初代店長だ。 「北海道のボールパークのオープン当時は、会社の名前もほとんど知られていませんでしたし、多くのお客さんにとって、フィールドフォースは、練習場の運営会社という認識しかなかったみたいですね」 もちろん、間違いではない。むしろ、考えれば考えるほど、正解である。「『いえ、野球用品や、野球のトレーニングギアなんかを作ってるメーカーなんですよ』とは答えてましたけど、考えてみれば、普通のメーカーでは、あまりないことでしょうね。かつては僕もヒーローズの講師をやってましたし、とにかくフィールドフォースは会社の間口が広いというか、いろんなことをやっている」 そして、続けた。「いろいろやってるから、ユーザーとの距離も近くて、現場の声もたくさん届く。横のつながりも幅広くて、それらがすべてつながっているというか。とにかくボールパークでは、いろんなアイデアをもらいます。そして、自分が動くことで反応があり、何かが生まれる。『自分たちが動いていこう』っていうのはもう、社風なんでしょうね」 成田はそう言って、うなずくのだった。 NGなき商品企画開発  次々と世に送り出される、フィールドフォースの商品は、こんな土壌だからこそ生み出されているのだろう。 企画開発会議の初期からのメンバーである、今泉翔太が回想する。「バランスハット(FBHT-8M)という商品があります。自分がプレーヤーとして、練習するときに意識していたことなんですけど、バッティングでも守備でも、頭の位置を動かさないっていうのがあって。それを形にしてみようと思ったんです。頭の上に、水を入れたたらいを乗せていろんなことをする、お笑いの動画を見せてプレゼンしたんですよね。そしたら、『それ行こう』ってなって。即決でした。われながら衝撃でした」 企画開発会議の中心メンバーである、企画開発課課長の小林夏希の元には、彼女の親しみやすい性格が引き寄せるのか、多くのアイデアが集まるようだ。「スイングの時に『トップハンド』と『ボトムハンド』で別のグリップを持って振る、トップハンドグリップ(FTHG-2212)が生まれたのは、私の高校、大学時代の恩師で、いまは履正社高校女子野球部の監督をされている、橘田(恵)さんのアイデアからです。スローイングパートナー(FSLP-18)や、くるくる巻いて持ち運べる、どこでもホームベース(FDH-43N)もそうかな。彼女のアイデアは、いろんな商品になってるんです」 それだけではない。「ノックラケット(FKR-5325)は、ボールパークに子どもと一緒に来ていた、お母さんとの会話から誕生しました。いろんな方から、新商品のヒントがもらえるんですよね」 あらゆる方面にアンテナを張って、それが有用となれば、商品化の方向で話が進む。「よし、それで行こう」。そうして、フィールドフォースの新商品は次々と製品化されてゆく。  成田はこんな考えを口にする。「新商品も、まったく新しいものを作り出すパターンと、これまであるものを改良したり、変化をつけて形にする方向性がありますよね。僕は縦軸、横軸って考えてます。そして、中には、そのどちらかだけとも限らなくて、アイデアを掛け合わせることによって、また新たなものが生まれることもあるんだなあって、実感するときがあるんです」 成田の試打がきっかけで生まれたという、モンスターウォール(FKMP-2116BLK)と同じ素材を使ったオートリターン・投打ネット(FTM-280ARTAN)をはじめ、ネットやマシン類には、そうして生まれた商品も多そうだ。 人とのつながりが、さらに人を呼んで……  人と人とのつながりが、さらなるつながりを呼ぶのだろう、フィールドフォースの名はなかなかのスピードで広まっているようで、企画開発会議がスタートした当時と比べても、高校や大学などの野球部、さらに社会人チームやプロ野球球団まで、幅広い分野のチーム、選手からの声が掛かることが増えた。さらにいえば、野球ではない他分野のスポーツ関係者からも……。「商品の購入だけでなく、『こんなものないでしょうか』というリクエストや、新商品のご提案までいただきます。ありがたい限りです」 吉村はそう感謝する。 また、フィールドフォースとパートナーシップを結んでいる井端弘和さんは、侍ジャパンの監督となった現在も、忙しい時間を縫ってボールパークを訪れ、開発中の商品に対して感想や、アドバイスを送り続けてくれている。ほかにも、井端さんの盟友でもある、元NTT東日本監督の飯塚智広さんをはじめ、前沢力さん、相澤一幸さん、緑川大陸さんなど、いまでは多くの外部の方々の提案から、新たな商品が生まれている。「創業当時には、想像もしてなかった状況です。振り返ればやはり、多くの人たちとの出会いと、その思いに必死に応えてきた結果なのかなと思います」 吉村はそう言い、続けた。「これも創業当時、われわれの思いに応え、フィールドフォースの商品を大々的に展開してくれたスポーツ量販店さんの決断が最初にあったから。そして商品開発にしろ、販売にしろ、われわれの軸足は常に、学童・少年野球にあるということ。そうした恩だったり、基本だったりを忘れることなく、続けていくことが大切なんだと思います」 エアフライの場合  すでに定番化しているジュニア用のスポーツサングラス・エアフライのラインアップに、つい最近、新たに2種類のミラータイプが加わった(FAF-101JBK-GMとFAF-101JBK-BL)。 数あるフィールドフォースの商品ラインアップの中でも、エアフライの取り扱いは特殊だ。そもそも、自社製造商品ではなく、フィールドフォースは商品販売に徹しているのだ。 この関係性は、すでに商品化されていた大人用の実物を見た吉村が、製造元であるジゴスペック社に連絡を取ったことから始まった。「とある売り場で、大人用のエアフライを見たんです。一目ぼれでした。このサングラスの特長は、ノーズパッドがなく、頬骨の上のサイドパッドで固定する仕組み。これは画期的だと。ボールが顔面を直撃する可能性もある野球には、これ以上ない構造だと思えたんです」 当時、エアフライがメインに打ち出していたのは、大人のランニング用だった。「そのときはまだ、学童野球でも試合中のサングラス着用は認められていませんでしたが、子どもたちの目の健康を考えたら、有効なのは間違いない。これはエアフライの特許を持つジゴスペックさんにお願いして、野球、それもジュニアのカテゴリーについては、ウチの独占販売にしてもらえないでしょうか、と」 思いは通じ、野球用、ジュニアカテゴリーの商品はフィールドフォースの独占販売となり、前述通り、現在は定番商品となっている。 壮大な名の計画の行方は……  吉村の発言が起点となったという点では、さらに新しい動きの兆しもある。 フォロワー1万3000人超えのインスタグラム上で、吉村が「ものつくり大国日本再生計画」なる呼びかけを行ったのだ。随分、壮大である。「フィールドフォースはこれまで、日本で企画・開発した商品を、主に中国の工場で作って、販売してきました。それが当たり前になってしまって、知らないうちに、何かバリアみたいなものが出来上がってしまっていたのかもしれない。外部からも、そんな風に思われているんじゃないかと」 しかし、これは本意ではない。これまで見てきたように、フィールドフォースの活動にNGはなく、むしろ、他者(他社)との関わりの中で生まれたり、発展、改良されてきた商品やサービスも多いのだ。 吉村が続ける。「いろんな方と知り合う中で、あらためて日本の『ものづくり』のすごさを実感しているんです。この国には、ものすごいポテンシャルを持つ会社や工場、町工場も多い。そういうところとつながることができれば、いま以上のものを作り出すことが可能なんじゃないかと思うんです。だから、バリアはすべて取り払って、そうした“思い”のある方たちとつながっていけないものかと思ったんです」 すると、それを見たという数社から、早々にメッセージが届いたのだという。「びっくりしました。まずは僕がいろんな会社に連絡して、足を運んで……なんてイメージしていたんですが、逆にこちらに、熱い思いを送ってくれた方がいたんです」 もちろん、一も二もなく、吉村からはこれに返信。助走期間もなく、計画が動き出してしまったのだった。 もちろん、受け身だけではない。「当初の計画どおりに、こちらからもいろんなアイデアを持って、様々な方とのつながりを求めていきたいですね。こんな会社があってもいいですよね?」 また新しい「何か」が生まれようとしている。