フィールドフォースの“顔”たるトスマシン・オートリターン以外にも、そのピッチングマシン/トスマシンのラインアップには、「ひとり練習」にピッタリな個性派商品がずらり。いずれも“らしさ”満載、唯一無二の存在感で、発売以来、ヒットを続けている。数ある中で、あなたのひとり練習にぴったりなのは、どのマシン?
実球を打てるトスマシンを!
穴あきボール、ウレタンハードボールを使うトスマシン・オートリターンは、少年野球に新たな練習方法を提示した、画期的でありながら手軽、気軽なフィールドフォースの看板商品。それでも続けて練習に使ううちに、こんな風に感じる人は多いだろう。
「実際に軟式や硬式のボールを打てたらいいのに」──。
そんな素朴な欲求に応え、開発が始まったのが硬式・軟式トスマシン。その初号機であるFTM-230の開発の歴史は古く、穴あきボール用の最初の(オートリターンではない)トスマシンFTM-251の商品化から間もない時期に始まっている。
やがて開発と試作、トライ&エラーの時期を経て、「待望のマシン」として登場したFTM-230は、ボール発射部に板バネを使うことで安定性と耐久性を両立させることに成功したもので、2016年の発売と同時にヒット商品となった。発射角度の高低を調整することで、硬式ボールにも、軟式ボールにも対応。マシンの発売から1カ月後には、FTM-261用のオートリターンネットをベースに、フレームの強度やネット自体の素材などを見直して開発された、専用のオートリターン用ネットも登場し、こちらもヒット商品となった。
しかし、FTM-230はその特徴である、板バネの使用がウィークポイントにもなっていた。ボール発射時に、かなり大きな甲高い金属音が響くという、克服すべき課題があったのだ。
改良が重ねられ、1年後には(FTM-230は変わらずヒット商品であったが)、板バネからFTM-261同様のコイルスプリングに変更し、静音化と省電力化に成功したFTM-240が登場する。バネの張力を4段階で調整できるようにし、硬式球と軟式球の両方に対応。専用のオートリターン用ネットも発売された。
現在はさらにバージョンアップされた、FTM-242が販売されている。オートリターンネット・軟式/硬式FTM-242ARとともに使うことで、オートリターン化が可能。少しずつ進化しながら、定番商品となっている。
小さなボールが大ヒット!
ミートポイントボールFMB-50(50個入りパッケージの商品型番)は、直径40ミリの小さなボール。大ヒット商品となった、穴あきボールFBB-20の派生商品として誕生した。
FMB-50では、バットの芯で捉えるために高い集中力が必要となる、小さなボールを打つことで、動体視力を養い、バットコントロールの精度を上げよう、という練習法を提示した。発泡素材・EVAで作られたボールは表面がソフトで、家の中で使っても壁などを傷つける恐れがない。加えて、その軽さゆえ、力いっぱい打っても飛距離が出ない。風の影響を受けやすいため、屋外での使用は難しかったが、逆に、屋内での使用に特化したことで、あっという間に人気商品となった。
FMB-50には青、黄色、ピンクなど、色分けされたボールが入っている。これは「ピンクが来たら引っ張り、青が来たら逆方向へ」などという具合に、色によって打ち分けるといった使用法を提案するため。ミートポイントボールは屋内での新たな練習を可能にするギアとして、少年野球の「自宅練習」に新たな光を当てることとなった。
社長の吉村尚記が振り返る。
「このボールは練習用として発売当初からヒットし、いまもよく売れているんですが、これを自動で飛ばすマシンが欲しい、という要望も多かったんですよね」
例によって、短い時間の中で膨大な量のテストと試行錯誤を繰り返した上で、世に送り出されたのが、FPM-103とFTM-401という、ふたつのマシンであった。
推察どおり、F「P」M-103はピッチングマシン、F「T」M-401はトスマシンである。
前回のFIELD VOICEで取り上げた、すべてのピッチング/トスマシンの祖となったFPM-151(穴あきボールを使うピッチングマシン)は、使用にそれなりの広いスペースを必要とすることもあって、使い勝手の点で課題が残り、残念ながらヒット商品にはならなかった。
しかし、新たに登場したFPM-103は、トスマシンよりは広さを必要とするものの、ミートポイントボールの特性ゆえ、専用のネットなどなくとも、「カーテンに向かって打て!」でOK。家の中でも比較的自由に使えるとあって、発売と同時に人気商品となった。
「もうひとつ、売れた理由があるんです」
吉村が解説する。
「ミートポイントボールは、軽いために、手投げでコントロールをつけることがわりと難しい。マシンのほうが圧倒的に、ボールの挙動が安定するんです」
FPM-103はボールの発射角度を調整できるほか、カメラなどで使う三脚に乗せて使うことも可能となっている。左右のウィールからはじき出されるように、約5秒ごとに発射されるミートポイントボールはかなりの速度。4~7メートルという短い距離もあり、ちょっと驚くほどだ。
家の中で、安全な練習でありながら、このスピード感。バットを振るまでのスペースはなくても、スイングの要領でボールをキャッチしたり、バントの練習をしたりと、工夫次第で有効なトレーニングをすることができる。FPM-103は平日練習を有意義にする相棒として、売り上げを伸ばしていった。
最小スペースでの打撃練習
一方、FTM-401はミートポイントボールを使ったオーソドックスなトスマシンで、専用のオートリターン用ネットと組み合わせた、FTM-401ARも用意されている。このネットは、脚の部分が観音開きになっており、使わないときは折りたたんで、ネット1枚分のスペースで収容可能なコンパクトモデル。ネットの素材も40ミリ径のボールサイズに合わせて、より目の細かなメッシュ状のものが使われている。
このオートリターンセットで提唱しているのは、最小スペースでの打撃練習。もちろん、普段使っているバットでも問題ないが、片手トレーニングバットFTM-401ARあたりと組み合わせれば、他のオートリターンマシンを使った練習とも違う、新たな学びが得られるかもしれない──。
こうして人気となった、ミートポイントボール使用の2機種。特徴的なのは、FPM-103、FTM-401のどちらも、大きくモデルチェンジすることなくヒットを続けていることだろう。これはフィールドフォースの商品、とくにトス/ピッチングマシンとしては珍しい。
なお、40ミリ径のボールとしては、FBB-4020という、FBB-20をサイズダウンした蛍光イエローの小さな穴あきボールもラインアップされており、こちらも打撃練習用の小型ボールとしてヒット商品になっている。このFBB-4020はトスマシンFTM-401では使用できるものの、ピッチングマシンFPM-103では、発射部分の構造上、使用することができない。
シャトルマシン、登場!
ミートポイントボールを使うFPM-103、FTM-401と並び、長くヒットを続けているマシンがある。スピードシャトルマシン、FSSM-221。スピードシャトルFSS-6(6個入り)、FSS-405MK(40個入り)などを使用するマシンだ。ミートポイントボール同様、スピードシャトルが先行商品としてあり、それを自動的に発射できるマシンを──という要望に応えて誕生した。
野球練習のための専用小型シャトル
バドミントンのシャトルを使った「シャトル打ち」の練習は、少年野球選手が自宅でできる練習として、以前から比較的浸透していた。狭い場所でもでき、親に投げてもらうなど、手軽にできるのが理由だ。
フィールドフォースがまず取り組んだのは、野球練習用に特化したシャトルの製作。水鳥の羽根とコルクでできたバドミントン用シャトルに比べ、小さく軽く、耐久性に優れ、なおかつ安定した飛行性能を持つ──という目標を持って開発に当たった。そして、羽根部分をナイロン、コルク部分をミートポイントボールと同じEVAで成形することで、打撃練習にちょうどよいサイズ感と重量、耐久性、飛行性能を持ったものを完成させた。
具体的にいえば、羽根部分を小型化し、空気抵抗を減らしたことで、投げるときにはバドミントン用よりもよく飛び、コルクをEVAに置き換えて反発性を低く抑えたため、打球はバドミントン用よりも飛ばない、という特性を持たせることに成功したのだ。
この打撃練習用シャトルが、発売と同時に、爆発的なヒットを記録した。そして、このヒットを契機に、ユーザーからの待望論に応える形で、シャトルを自動的に発射してくれるマシンの開発・製造に取り組んだのだった。
当然ながら、シャトルは球体ではないため、これまでのピッチングマシンに比べても難易度ははるかに高い。それでも、EVA部分を左右ふたつのウィールで挟み、はじき出すことで、まっすぐに飛ばすことができる機構が完成。さらにいえば、手で投げるより安定した軌道で飛ばすことに成功した。
こうして誕生したのが最初のスピードシャトルマシン、FSSM-220。これも大ヒットを記録したが、2024年、発射間隔を2段階(約6秒間隔と約8秒間隔)で選べるようにし、後発商品であるLEDスピードシャトルFSSLED-5(シャトルの内部にLEDを内蔵し、夜間でも見えるようにしたヒット商品)に対応するなどしたFSSM-221にバージョンアップし、現在もヒットを続けている。
これからも「変態的」商品を!
フィールドフォース本社の商品開発室には、小さな横断幕が掲げられている。
いわく、
「パートナー不要 省スペースで最大限の練習効果を!
痒い所に手が届く マニアックで独創的な商品開発」
フィールドフォースの商品開発における姿勢を端的に表すテーマである。
が、記憶とは少し違っている。
当ホームページにある「社長あいさつ」の中に、その答えがあった。
「前例にとらわれずに『かゆいところに手が届くマニアックで変態的(独創的)な商品』を企画開発、リリースしていきたい」
そう。そして、かつては「(独創的)」もなく、単に「マニアックで変態的な商品」と言っていたはずである。
今回、取り上げたマシンたち、とりわけミートポイントボールとスピードシャトルを投げてくれるマシンは、「ピッチングマシン」というカテゴリーで考えるなら、かなり「変態的」な商品といっていいのではないだろうか。スピードシャトルなど、そもそも球体ですらないものを、コントロール良く投げてしまうのだから……。
そんなマシンたちだが、いずれ劣らぬ、フィールドフォースの看板商品に育ち、いまでは定番商品である。
今後も増えてゆくであろう、フィールドフォースの変態的な定番商品。ぜひ楽しみにしてほしい。