【2023注目の逸材】
郡司 啓
ぐんじ・ひろむ
※投球&打撃の動画→こちら
【所属】栃木・簗瀬スポーツ
【学年】6年
【ポジション】投手兼遊撃手
【主な打順】一番、二番
【投打】左投左打
【身長体重】151㎝39㎏
【好きなプロ野球選手】佐々木朗希(ロッテ)
※2023年5月23日現在
投・守・打・走。どれも目を奪われてしまう一番の理由は、身のこなしがスムーズで軽やかなことだろう。もっと端的に言えば、動作が美しいのだ。
それが左投左打、生粋のサウスポーだから余計に目立つのかもしれない。「守」は、遊撃手と中堅手も抜群にこなすので“五刀流”とも言えるが、郡司啓はそこまでお調子者ではないようだ。
「夢は投打の二刀流でプロ野球選手になることです」
投げては「参考にしている」と言うロッテ・佐々木朗希のように片足を高く引き上げても、きれいに直立。そして、頭上に掲げたグラブで程よくブレーキをかけながら踏み出していく。左腕は最後に振られるまでは肩の後ろで折り畳まれており、打者には「球の出所が見えにくい」フォームとなっている。
平日の火曜は学習塾で、水・木(室内)・金曜はチーム練習。ストレッチは日々やっており、肘肩のケガは一度もないという
ミート力が際立つ左打席では、前足の裏を投手に見せながらのテイクバックから振り抜きまでの動作がシンプルでムダがない。外野手の頭上や間へ鋭いライナーを飛ばしてからの、ダイヤモンドを疾走する様がまた人々の目をクギ付けにする。さらに次の打席ではセーフティバントを決めるなど、対戦相手には厄介なことこの上ない。
父は元ラガーマンで、母は元ソフトボールの選手。生まれ持った身体能力を何に生かそうか、小1までは決まらずに遊んでいたという。
5年時の50m走タイムは7秒9。3月の地元の交流大会のイベント、対抗リレーではアンカーを務めてトップでゴール
「サッカーか野球か、かなり迷いましたけど、お父さんから『自分で決めろ!』と言われていて、2年生の途中から野球のチームに入りました」
最後の決め手となったのは、小2の5月。春の宇都宮市大会の決勝を父親と観戦し、地元・簗瀬(やなせ)スポーツの優勝を目の当たりにしたことだったという。それから4年後のこの5月、チームは春の市王者に返り咲いて全日本学童栃木大会への出場も決めている(市内上位6チーム参加)。
5年時の最速は93㎞/h。2023年は未計測だが、105km/hには達しているはず。「全国大会で110は出したいです」
「何か運命的なものを感じたというか、感慨深いものがありましたね」と語る父・理さんはチームの代表も務める。背番号1の長男はMVP級の働きだった。
2回戦から決勝までの全5試合に一番・投手で先発。決勝では左中間への先頭打者本塁打を含む1試合2発など、大会で計5本塁打を放っている。「最近はバッティングが良くなってきて、二塁打があればサイクル安打という試合もありました」(郡司)。
盗塁も当然のように毎試合決めて、投げては決勝は6回二死まで1失点。球数が規定の70球に達して大会初完投は逃したものの、「自分たちの代では初優勝(昨秋は準V)なので最高にうれしかったですし、ウワーッとみんなで盛り上がりました」
計画的かつ効率的な練習で
44チームが加盟する宇都宮市の学童野球はレベルが高く、過去の全国大会出場チームは片手で数えきれない。中でも今年は、簗瀬スポーツの個の能力と打力が突出している。投手陣は柱となる郡司を含めて5枚。一様に低いライナーを放つ打線は切れ目がなく、手堅く1点をもぎ取る術も備えている。
少し余して握るバットで、広角に鋭いライナーを放つ。「家でお父さんとティー打撃もやっています」
「今年は全国大会に行けるように頑張っています」と語る松本裕功監督は、強豪・国学院栃木高と国学院大でもプレーしたが経験則に固執せず、フェアプレー精神の模範にもなっている。冬場は個々のスイング力を底上げし、春からは最速120km/hのスピードボールから手投げのスローボールまで打ち込んで、実戦に向けてアジャストしてきた。5カ所で一斉に打ち込む(※下の動画参照)など効率的な練習の中で、郡司のスイングも磨かれてきたのだろう。
⇩強打を育む「5カ所同時打撃」練習2min
「一番バッターはめっちゃ緊張しますけど、プラスな言葉を自分に与えて打席に向かうようにしています。まずはホームランを打ってチームを盛り上げて、自分のピッチングにもつなげたい。みんなで全国に行くことを目標にしてきましたし、今はやれる自信があります」
全日本学童の最終予選となる栃木大会は5月28日に開幕。各地域代表32チームによるトーナメントの覇者は、6月11日に決まる予定となっている。
(大久保克哉)
(一部写真提供/簗瀬スポーツ)