2023注目戦士

名将の薫陶受け、関東Vに導いた司令塔
【2023注目の逸材】 よこやま・たすく 横山 輔 ※プレー動画→こちら 【所属】千葉・磯辺シャークス 【学年】6年 【ポジション】捕手 【主な打順】一番 【投打】右投右打 【身長体重】155㎝48㎏ 【好きなプロ野球選手】松川虎生(ロッテ) ※2023年9月25日現在 いったいどういう育成や練習をすれば、小6でここまでの捕手が育つのか。初めて見て、そういう疑問を抱く指導者も少なくないだろう。 本人によると、野球を始めたのは1年生の秋。チーム練習の中で、捕手のイロハから学んできたという。率いる小池貴昭監督は2013年に全国8強入り。2人の息子を含めて後の甲子園球児も複数輩出しており、バッテリーの育成にも定評のある名将だ。現6年生たちは4年時からの3年計画で、直接の指導を受けてきている。 「野球をしていたお父さんのススメで1年生の11月に野球を始めました。野球の全部が大好きです」(横山) 「自主練習もお父さんとずっとやっていますけど、ティーとかバッティングがほとんどです」 磯辺シャークスの横山輔は、扇の要に立つ姿からして凛々しい。きりっとした目で敵味方のベンチや打者・走者から瞬時に情報を入れ、先を読んでフィールドの仲間へ指示を送って動かす。 捕手の動作はどれも基本に忠実。頭の回転も速く、多岐にわたるプレーもクールにこなす その高くて響く声はまだ子ども特有のものだが、キャッチングとストッピングの技能は中高でも上のレベルに入りそう。驚くほどの強肩ではないが、送球動作もスムーズ。打球への反応と動き出し、一塁ベースのバックアップ、走者へのタッグ、本塁フォースプレーからの転送や偽投など、捕手に必要な動きをあまねく習得していて、どれも精度が高い。 ただし、「千葉県No.1」と評することができないのは、県内にもう一人、同様に突出した捕手がいるからだ。八日市場中央スポーツ少年団の伊藤瑠生(※選手紹介記事→こちら)。 大一番の惜敗を経て 夏の全日本学童大会出場をかけた6月の県予選決勝で両チームは激突し、横山がマスクをかぶる磯辺はスミイチの0対1で惜敗した。ぬるくはない名将の下、スキルも戦術も磨き抜いてきた磯辺ナインは号泣。背番号10の横山も涙を流しつつ、一人だけ報道陣に対応した。 「悔しいです。勝ちたい気持ちが1点の差だったと思います。もうちょっと、打つほうで力を出せたら…。切り替えて、これから他の大会は全部優勝できるようにがんばります」 名将・小池監督(右)は横山の人間性も高く評価。「主将として4年生からよくついてきてくれましたね。ボクの厳しい指導に(笑)」 何より打撃が好きだという一番・横山は、自ら打って出て打線に火をつけるのが役目。1週間前の県準決勝は、屈指の好投手からいきなり逆方向へ三塁打など3打数2安打1打点2得点の働きだった。しかし、決勝は大型右腕を前に2打数で音なし。チーム全体でも散発の2安打に終わり、三塁も踏ませてもらえなかった。...
名将の薫陶受け、関東Vに導いた司令塔

夏一番スラッガー!夢舞台でも3本のアーチ
【2023注目の逸材】 小原快斗 おばら・かいと ※全国第3号HRほか、打撃動画→→こちら 【所属】東京・不動パイレーツ 【学年】6年 【ポジション】遊撃手、捕手、投手 【主な打順】三番 【投打】右投右打 【身長体重】154㎝42㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(エンゼルス) ※2023年8月11日現在 今夏の日本で最も輝いた、小6の右スラッガーだろう。東京第2代表で出場した全日本学童大会では、大会最多タイとなる3本のサク越え本塁打をマークするなど投手陣を強力援護。6連戦5連勝での銀メダル獲得に大きく貢献した。 いずれもレフト方向への一発は、価値のあるものだった。1回戦と2回戦は、第1打席で先制アーチ。2回戦は優勝候補にも挙げられていた常磐軟式野球スポーツ少年団(福島)が相手で、好右腕の珍しい失投を逃さなかった。「打ったのはほぼ真ん中です」。終わってみれば、その1点が両軍通じて唯一の得点だった。 小刻みな2ステップから瞬間的に一本足に。その勢いと着地の地面反力も利してバットが振り出されていく 「大会中にあと1、2本は打ちたいです」 その野望を叶えたのが準決勝の3回だった。160㎝超の本格派右腕が投じた85㎞の遅球をドンピシャのタイミングでバット一閃。舞い上がった白球は70mの特設フェンスを軽く越えていった。 リードを2点に広げる中押し弾に続く第3打席は、外角球を中前にはじき返してダメ押しの2点タイムリー。一人3打点の活躍で、東京勢初となる決勝進出の立役者となった。 全日本学童準決勝で大会3号アーチ。球の緩急を苦にしないのは体幹の強さと日々の自主練の成果だろう 「一昨日(3打席凡退)と昨日(先制二塁打1本)はちょっと力み過ぎていたので、今日はリラックスして打席に入りました」 天性におぼれぬ努力家 「身長も伸びてきたし、本能型なので球の速さも関係なく打てる」 永井丈史監督からそう評される小原快斗は、確かに遊撃守備もダイナミックで、持って生まれた野性味のようなものも感じさせる。男3兄弟の末っ子で、3歳上と6歳上の兄たちも不動パイレーツの卒団生。幼いころから、その兄たちの背中を追いかけてきたとあって、小1でチームに入る以前から、ボールを投げることや打つことは当たり前にできたという。 捕手と投手は急造ながら強肩を活かし、全国舞台でも無難にこなした。「打撃を磨いて将来はプロ選手になりたいです」 強肩を買われ、6年生になって捕手や投手を急に任されても無難にこなせているのは「兄たちがやっていたのも見ていたので」。幼少期から脳裏に刻まれたイメージもあるというが、やはり、それだけではなかった。...
夏一番スラッガー!夢舞台でも3本のアーチ

気付けば二刀流の旗印。「ワクワク」の全国へ
【2023注目の逸材】 中根裕貴 なかね・ゆうき ※投球・打撃の動画→→こちら 【所属】茨城・茎崎ファイターズ 【学年】6年 【ポジション】投手、一塁手、左翼手 【主な打順】四番 【投打】左投左打 【身長体重】150㎝36㎏ 【好きなプロ野球選手】柳田悠岐(ソフトバンク) ※2023年7月25日現在 コンパクトに畳まれた左の腕が、しなりながら振られていく。速球も遅球も安定したコントロールは、被弾やバックに失策があっても乱れない。この2年あまりで左打席からサク越えを6本。軽やかな身のこなしと50m走7.2秒のスピードは、外野守備での決定的な美技にもつながっている。 2年ぶり10回目の全日本学童大会出場を決めている茎崎ファイターズの、さすがはエースで四番。粒ぞろいの6年生6人の中でも、中根裕貴は頭ひとつ抜けている感がある。 全国出場を決めた県大会決勝は、4回途中のピンチから救援して胴上げ投手に ところが、吉田祐司監督は「今年のチームはホントに力がない」とやや渋い顔。看板選手の中根についても「もともと、そんなにすごい選手ではなかったんですよ」と、思わぬことを口にする。2019年には全国準Vの実直な指揮官の言葉にはいつも嘘がないから、実際にそうだったのだろう。 「ヘタに背伸びせず、身の丈に合ったピッチングができるのが中根の良いところですね」(同監督) 5年生を前にいばらの道へ 父は元球児で、母は元バレーボール選手。姉に続く長男として生まれた中根は、就学前の年長から野球を始めた。「楽しいだけでした」。 それが一変したのは4年生の終わり。全国に名の通るこのチームにやってきてからだった。野球のレベルも知識も、個々の能力も意識も段違いのなかで、相当に揉まれたようだ。 「覚えることとかいろいろあって、みんなに教えてもらったりしたけど、かなり大変でした」 自らも望んだ道を引き返すわけにはいかない。中根は覚悟を決めて、一人で自主練習に励むようになったという。素振り、壁当て、シャドーピッチングなど平日は毎日約1時間。「エースになりたい! 勝ちたい! という気持ちでずっとやっきてました」。 驚くような球速はないが、緩急と左右に散らす技巧で冷静にアウトを重ねる。きれいなフォームは自主練の賜物だ 本格的に投手になったのは5年秋の新チームになってから。積み重ねてきた努力が実を結び、エース格として新人戦の県大会優勝、さらに関東大会準優勝を遂げた。 「野球の魅力? みんなで協力して勝ったときの喜び」 6年生になって迎えた勝負の6月。左腕は絶対的なエースとして、また勝負強い四番打者として、全国予選の県大会優勝に大きく貢献した。...
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幼児から名門で成長。ピアノも奏でる万能戦士
【2023注目の逸材】 境 翔太 さかい・しょうた ※送球・投球・打撃・盗塁の動画→こちら 【所属】愛知・北名古屋ドリームス 【学年】6年 【ポジション】捕手、投手、遊撃手 【主な打順】二番、三番 【投打】右投右打 【身長体重】153㎝43㎏ 【好きなプロ野球選手】岡林勇希(中日) ※2023年6月25日現在 ヒトは幼児期から10歳までに、身のこなしなどの神経系が著しく発達する。トップアスリートはこの時期に、運動の基礎能力の絶対値が引き上がっていたケースが多いという。 未就学児にも門戸を開いている北名古屋ドリームスで、年長から野球をしている境翔太にも、そういう傾向を見て取ることができる。 捕手、投手、遊撃手をそつなくこなす。打席では球速やコースを問わず、鋭く振り抜くバットの芯でストライク球をとらえてみせる。 「抜群の身体能力で、何でもできる」と評するのは、2021年の全日本学童大会でチームを準優勝に導いた岡秀信監督。小学生にしてオールラウンドの逸材だからこそ、あえて役割を限定せずに可能性を広げている側面もあるようだ。 「攻撃に関しても足が速くて一番も打てるし、三番も打てるし、勝負強さもあるので四番も打てる。だからあえて、二番バッターという、ちょっと変わった使い方をしています」 北名古屋打線のキーになる二番打者。ヒザから上の重心移動でタイミングをとりつつ、速球も遅球もピシャリと打ち抜いていく 今夏の全日本学童出場を決めた大一番。愛知大会の決勝では、境の三塁打で入った先制点が、そのまま決勝点に。「試合がちょっとこう着した中で、みんなが勇気をもらった一打でしたね。境に限らず、ウチは伝統的に二番バッターを重要視しているんですよ」(同監督)。 本人も最大のセールスポイントは打撃だという。「打ちだしたら止まらないタイプで、頼れるバッターというか…。ココというときには、初球から打ちにいこうとしているから、良い結果につながっていると思います」 野球より早く夢中に 野球経験者の父と、名古屋ドームで中日対楽天のオープン戦を見たことが、チーに入ったきっかけだという。 チーム事情もあって最上級生となってから捕手に初トライ。持ち前の吸収力にコーチの専門的な指導もあって、県No.1捕手に成長している 「キッズ(2年生以下)ではみんな楽しく笑顔でやっていたので、土曜日の野球がまた楽しみだなと。それしかありませんでした」 ただし、より早く始めていたのが水曜日のピアノと、金曜日の水泳。どちらも自らの希望で始めて、今なお夢中だという。「ピアノの発表会は年中から毎年出ていて、今年は菅田将暉の『虹』を練習しています。一番の目標はプロ野球選手なので、ピアニストの夢はないです。ピアノの集中力とか、水泳の肩の動きとか、野球に生きている面もたくさんあります」。 自分の考えを自分の言葉で、これだけ冷静に話せるのは、フィールド外の経験も生きているせいかもしれない。チームの活動は週末と祝祭日のみで、木曜日はバッティングセンターで、ほかの平日も時間があるときには自宅内の大部屋で打撃練習に励んでいるという。...
幼児から名門で成長。ピアノも奏でる万能戦士

全国予選で千葉二冠の秀逸バッテリー
【2023注目の逸材】 富永孝太郎 とみなが・こうたろう ※投球・打撃の動画→こちら 【所属】千葉・八日市場中央スポーツ少年団 【学年】6年 【ポジション】投手、遊撃手 【主な打順】二番 【投打】右投右打 【身長体重】162㎝62㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(エンゼルス) ※2023年7月9日現在 【2023注目の逸材】 伊藤瑠生 いとう・るい ※捕球送球・打撃の動画→こちら 【所属】千葉・八日市場中央スポーツ少年団 【学年】6年 【ポジション】捕手 【主な打順】四番 【投打】右投右打 【身長体重】153㎝44㎏ 【好きなプロ野球選手】山本由伸(オリックス) ※2023年7月9日現在 ...
全国予選で千葉二冠の秀逸バッテリー

夏の全国でベール脱ぐ?両投両打の異端球児
【2023注目の逸材】 原 悠翔 はら・ゆうと ※投球・打撃の動画→こちら 【所属】東京・船橋フェニックス 【学年】6年 【ポジション】投手、中堅手、三塁手、遊撃手 【主な打順】三番 【投打】両投両打 【身長体重】160㎝52㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(エンゼルス) ※2023年6月17日現在 四刀流か、五刀流か。いや、器用さとマルチなプレーもここまでくると「阿修羅(あしゅら)」と表現したほうがいいのかもしれない。腕が6本ある戦いの神、阿修羅像のイメージを地でいく小学6年生が東京にいる。 今夏の全日本学童大会に初出場を決めている船橋フェニックスの背番号1、原悠翔だ。同大会の東京予選3位決定戦(※リポート→こちら)では、最速118㎞/hをマークしたエース右腕。三番打者として左打席から4打数3安打5打点、2盗塁、第4打席では中越えのサク越え3ランを放っている。この投打だけでも十分に全国クラスにあるが、実は左投げと右打ちもできるという。要するに「両投両打」の金の卵なのだ。 「右打ちはまだ練習試合でやり始めたくらいですけど、投手の左投げは公式戦でもいけると思います。自分でも(両投両打の)四刀流いけるんじゃね? というか、これからも挑戦してみたい気持ちが強いです」 左ヒザを抱き込むようにしながらのヒールアップから投じる速球は最速120km/h超(自宅で計測)。全国予選の都大会3位決定戦では118km/hをマーク この6月半ば、一家でボールパーク柏の葉(千葉県)へ練習に訪れていた際に、左投げの投球も見せてもらった(動作参照)。即興のフォームや素人投げでないのは明らかで、同施設のスピードガンはコンスタントに100km/h以上を表示。 左投げを始めたのは4年生で、右ヒジを痛めたことによる2カ月のノースロー期間がきっかけだという。「もともと左でも投げられる感じがあったんです。1年生のときのソフトボール投げで、右が25m、左で15m。意外と投げられるなというのがそのころから…」 父との特訓後。屋内練習場の人工芝に座って原が話し始めると、それまではネット越しに見学していた妹や弟たちが入ってきて戯れだした。ドッグランに開放されて、はしゃぎまくる利口な犬のように、われ先にと逆立ち歩きで行ったり来たりしながらカラカラと笑っている。この曲芸団のような一家は何なんだ? 両投げの長男(原)も激レアだが、妹たちの奔放な身のこなしとバランス感覚といったら…。 「原クンもあんな逆立ち歩きできるの? はい、余裕でできますけど、弟たちのほうがレベルが上ですね」 言葉を失いかける取材者に、補足で説明してくれたのが笑顔のやさしい母だった。「ウチの子たちは幼児体育を採り入れている保育園に通っているんです。園児たちは全員、逆立ちはできると思います」。 セットポジションやクイック投法でも腕の振りが変わらず、コントロールが安定している 原が野球を始めたのは年長のときの、父とのプロ野球観戦がきっかけ。「日本ハムの大谷翔平(現エンゼルス)のホームランを見て、やりたくなりました。(すでに当時)跳び箱を15段とか跳んでいた僕に、お父さんはサッカーをやらせたかったらしいんですけど、5分観戦して(約束の)ジュースをもらって帰りました(笑)」 自宅内外での平日練習から熱心にサポートしてくれる父は元サッカー少年で、高校は野球部でプレーしたという。 「何でもできる」 地区大会クラスのチームなら、現状の左投げでもエースになれるだろう。球威、球速、制球、いずれも上回る右投げの投球は、完成度の高さと幅の広さに目を見張るものがある。...
夏の全国でベール脱ぐ?両投両打の異端球児

全国王者にリベンジを期すバッテリー
【2023注目の逸材】 山本愛葉 やまもと・まなは ※投球・打撃の動画→こちら 【所属】石川・館野学童野球クラブ 【学年】6年 【ポジション】投手、一塁手 【主な打順】二番、七番 【投打】左投左打 【身長体重】147㎝34㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(エンゼルス) ※2023年6月6日現在 【2023注目の逸材】 中村颯真 なかむら・そうま ※送球・打撃の動画→こちら 【所属】石川・館野学童野球クラブ 【学年】6年 【ポジション】捕手 【主な打順】四番 【投打】右投左打 【身長体重】150㎝56㎏ 【好きなプロ野球選手】村上宗隆(ヤクルト) ※2023年6月6日現在...
全国王者にリベンジを期すバッテリー

伝統にプラスαを象徴、超名門の攻守の要
【2023注目の逸材】 本多希光 ほんだ・のぞみ ※捕球・送球・打撃の動画→こちら 【所属】福島・常磐軟式野球スポーツ少年団 【学年】6年 【ポジション】捕手 【主な打順】四番 【投打】右投右打 【身長体重】146㎝41㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(エンゼルス)、吉田正尚(レッドソックス) ※2023年5月28日現在 「小学生の甲子園」とも言われる夏の全日本学童大会で、史上最多の出場記録(22回)を更新中の常磐軟式野球スポーツ少年団(福島)。堅固な守りと巧みな走塁が代名詞でもあるが、創立から40年という節目にある2023年度は趣がいくぶんか異なる。 6年生10人を中心に、個々の打力が相当に高いレベルにあるのだ。OBコーチが投じる、少なくとも110km/hはあろうかというスピードボールも難なく打ち返してみせる。また山なりのスローボールは、手元まで引き寄せてからのフルスイングで外野へ鋭く弾き返していく。 速球に負けないスイング力に、遅球で崩されない体幹と術も。余して持ったバットで状況に応じた打撃を披露する 「冬の間は、階段ダッシュやソフトボール打ちや素振りなど、基礎的なトレーニングをしてきました。今年は守備とか走塁も標準より高いと思うんですけど、バッティングが一番自信があります。1人が打ち始めると、どんどん乗ってくる感じです」 チームをこう評する本多希光主将は、攻守の要だ。正捕手として4人の投手陣を自分でリードし、強打者が並ぶ打線では四番を張る。 「自分はチャンスで打席が回ってくることが多くて、そこで結果を残せているのが一番の持ち味です」 左右の強打者が並ぶ打線にあって四番に鎮座。自他ともに認める勝負強さが最大のセールスポイントだ 天井正之監督もその勝負強さを高く評価している。「必ずしも良い当たりでなくても、得点につながるようなポイントゲッターの役目を果たしてくれているし、そこをこれからも期待しています」 本多は5年時からレギュラーで、昨夏の全日本学童1回戦(対北北海道・旭稜野球少年団)は六番・中堅で先発出場した。試合は4対9で敗れたものの、第2打席にチーム初タイムリーとなる中越え二塁打を放っている(下写真)。 「外野がヘタッピになってきて、どこもできねえからキャッチャーにしたんです」と指揮官は冗談めかして言うが、そこは堅守のキーになるポジション。理路整然とした話しぶりからもうかがええるように、経験豊富な本多の勝負度胸や頭の回転力もすっかり見抜いた上で、扇の要に据えたのだろう。 「キャッチャーは配球とかカバーリングとか、やることも多くて大変ですけど楽しいです。ピッチャーとのコミュニケーションを大切にして、ピッチャーが気持ち良く投げられるようなキャッチング、ストッピングを意識しています」(本多) 配球面もほぼ任されている。「ピッチャーはみんな持ち味が違うので、それぞれにリードしています」 週6日はチーム練習がある中で、唯一のフリーとなる水曜日も自主練に励む。捕手のステップワークや素振りや柔軟体操など、己を磨いているという。...
伝統にプラスαを象徴、超名門の攻守の要

“五刀流”サウスポー、全国デビューなるか!?
【2023注目の逸材】 郡司 啓 ぐんじ・ひろむ ※投球&打撃の動画→こちら 【所属】栃木・簗瀬スポーツ 【学年】6年 【ポジション】投手兼遊撃手 【主な打順】一番、二番 【投打】左投左打 【身長体重】151㎝39㎏ 【好きなプロ野球選手】佐々木朗希(ロッテ) ※2023年5月23日現在 投・守・打・走。どれも目を奪われてしまう一番の理由は、身のこなしがスムーズで軽やかなことだろう。もっと端的に言えば、動作が美しいのだ。 それが左投左打、生粋のサウスポーだから余計に目立つのかもしれない。「守」は、遊撃手と中堅手も抜群にこなすので“五刀流”とも言えるが、郡司啓はそこまでお調子者ではないようだ。 「夢は投打の二刀流でプロ野球選手になることです」 投げては「参考にしている」と言うロッテ・佐々木朗希のように片足を高く引き上げても、きれいに直立。そして、頭上に掲げたグラブで程よくブレーキをかけながら踏み出していく。左腕は最後に振られるまでは肩の後ろで折り畳まれており、打者には「球の出所が見えにくい」フォームとなっている。 平日の火曜は学習塾で、水・木(室内)・金曜はチーム練習。ストレッチは日々やっており、肘肩のケガは一度もないという ミート力が際立つ左打席では、前足の裏を投手に見せながらのテイクバックから振り抜きまでの動作がシンプルでムダがない。外野手の頭上や間へ鋭いライナーを飛ばしてからの、ダイヤモンドを疾走する様がまた人々の目をクギ付けにする。さらに次の打席ではセーフティバントを決めるなど、対戦相手には厄介なことこの上ない。 父は元ラガーマンで、母は元ソフトボールの選手。生まれ持った身体能力を何に生かそうか、小1までは決まらずに遊んでいたという。 5年時の50m走タイムは7秒9。3月の地元の交流大会のイベント、対抗リレーではアンカーを務めてトップでゴール 「サッカーか野球か、かなり迷いましたけど、お父さんから『自分で決めろ!』と言われていて、2年生の途中から野球のチームに入りました」 最後の決め手となったのは、小2の5月。春の宇都宮市大会の決勝を父親と観戦し、地元・簗瀬(やなせ)スポーツの優勝を目の当たりにしたことだったという。それから4年後のこの5月、チームは春の市王者に返り咲いて全日本学童栃木大会への出場も決めている(市内上位6チーム参加)。 5年時の最速は93㎞/h。2023年は未計測だが、105km/hには達しているはず。「全国大会で110は出したいです」 「何か運命的なものを感じたというか、感慨深いものがありましたね」と語る父・理さんはチームの代表も務める。背番号1の長男はMVP級の働きだった。 2回戦から決勝までの全5試合に一番・投手で先発。決勝では左中間への先頭打者本塁打を含む1試合2発など、大会で計5本塁打を放っている。「最近はバッティングが良くなってきて、二塁打があればサイクル安打という試合もありました」(郡司)。...
“五刀流”サウスポー、全国デビューなるか!?

昨夏に続く全国登板へ。現代っ子版“YOSSY”
【2023注目の逸材】 杉山璃空 すぎやま・りく ※投球&打撃の動画→こちら 【所属】千葉・大和田タイガース 【学年】6年 【ポジション】投手兼遊撃手 【主な打順】一番、三番 【投打】右投右打 【身長体重】153㎝39㎏ 【好きなプロ野球選手】山本由伸(オリックス)、源田壮亮(西武) ※2023年5月14日現在 関東でも2枠。全国スポーツ少年団軟式野球交流大会が「夢のまた夢」と言われるゆえんは、競争倍率の高さにある。都道府県大会に続き、最終予選のブロック大会が待っているのだ(一部ブロック除く)。千葉県の大和田タイガースは昨年、県大会から関東大会までを勝ち続けて最終2枠に初めて入ってみせた。 8月に奈良県で開催された全国大会は1回戦で散ったが、当時5年生の杉山璃空は三番・遊撃でスタメン出場していた。1回裏に犠打を決めて2点先取に貢献。2対2とされた2回表に救援のマウンドへ。相手打線の勢いを止められず、一発も浴びるなど2対10とされて降板した。そして2対14で迎えた4回裏に試合時間が既定の90分を超え、二死から内野ゴロに終わった杉山が最後の打者となった。 筋肉の緊張ではなく、間接でバランスをとりつつ、左右対称の「割り」動作から右腕が力強く振られていく 途中から三塁の守備に入った従弟の杉山燎(当時5年)とともに、夢舞台のハイレベルを肌感で得たことは、当人たちにもチームにとっても大きな財産となったようだ。 「今年は全国制覇したいです!」 その至難さを人より知る2人が、堂々と口をそろえるのは6年生10人の現チームに手応えを感じているからだろう。杉山コンビが攻守の肝だが、ほか8人の能力も総じて平均より高く、個性的で役割を個々に心得ている。とりわけ心強いのは、多士済々の4枚の投手陣だ。 「自分の一番良いところ? コントロールです」 こう語る杉山は、右本格派のエース。たとえ3ボールになっても、ファウルで粘られようとも、涼し気な顔でストライクを投じてみせる。今年の全国予選となる県大会1回戦では、圧巻の奪三振ショーを披露した。先頭から5者連続で空振り三振に。スローボールを初めて投じたのは2回で、二死から遊撃内野安打を許したものの、ペースも制球もまるで乱れず。結局、3回まで投げて打者10人に対して1安打8三振、四死球と失点が0という完璧に近い投球で、味方打線の得点も導いた。 最速108㎞/h。けん制もクイックモーションも巧み。毎週木曜は地元・千葉ロッテのマリーンズアカデミーで動作も学んでいる 「先発のときは、良いリズムで守って攻撃につなげられるように心掛けています」 つまり、奪三振は結果に過ぎず、ワンマンショーを演じる気はないのだという。父親でもある杉山正明監督は「4年生から5年生の春あたりまでは、態度が悪い時期もありました」と振り返るが、多くの少年は生意気や勘違いも経験しながら社会性を身につけていくのだ。 「打つほうはランナーがいなければ、低いライナーを。ランナーがいたら、サインとか状況に応じたバッティングを心掛けています」(杉山) 打線では昨夏の全国では三番、今年は主に一番を任される。スラッガーとしても将来性十分 先発投手として流れを呼び込み、一番打者として打線に勢いや勇気を与えるのが役目。先頭打者ホームランも過去に複数本放っているという。...
昨夏に続く全国登板へ。現代っ子版“YOSSY”

新人戦で東北準V。頼れる四番は激レア捕手
【2023注目の逸材】 菊地洸佑 きくち・こうすけ ※打撃と送球・バックアップの動画→こちら 【所属】福島・南相馬野球スポーツ少年団 【学年】6年 【ポジション】捕手 【主な打順】四番 【投打】右投右打 【身長体重】157㎝50㎏ 【好きなプロ野球選手】岡本和真(巨人) ※2023年5月10日現在 中学生でもここまで確実に、また根気よく、バックアップができる捕手はそう多くはないだろう。学童野球では全国レベルでも、間違いなくレアケースだ。 走者なし、または走者一塁。相手の打球が内野に転がるや、菊地洸佑はマスクを飛ばしながら一塁方向へスタートを切る。160㎝に迫る大柄のパワー自慢とはいえ、レガースもプロテクターもヘルメットもミットも着けたまま、1試合をやり切るだけでも骨が折れるはず。さすがに試合終盤にはスピードが鈍ってくるものの、序盤は打者走者を追い越しそうな場面すらある。 「カバーリングとバックアップは毎年、徹底しているんですよ」 こう語る佐藤英雅監督は、昨秋の新人戦で5年生(現6年生)6人のチームを福島大会優勝、さらに東北大会準優勝まで導いた。「菊地もよくやっていると思いますけど、まだ満足はしていません」。 当然のバックアップを当たり前にやり続ける捕手。「ピンチで自分からタイムを取ってマウンドに行くとか、そいういのを実行できていないのが課題です」(菊地) 学童の軟式野球は学校の校庭や河川敷など、フェンスに囲まれた球場以外での試合も多々。そして公式戦になると、ベンチ裏から外野のファウルエリアにかけて、ボールデットとなる境界線が引かれたりする。 そういう環境下で、守備時のオフ・ザ・ボールの動きの必要性や意図を小学生が理解し、マスターするのは容易ではない。だが、上のカテゴリーでは必須だ。また、フェンスのある球場で行われる都道府県大会や全国大会では、バックアップで防げたはずの失点も珍しくない。 「自分がバックアップに入れば、内野手が思い切って投げられる。(ライトゴロを狙った)悪送球を自分が捕って、走者を二塁に行かせなかったこともあります」 こう語る菊地は、外野手から捕手に転じてまだ1年強。しかも、野球を始めたのが4年生の春だというから驚きだ。おまけに、投打以外はすべてが左利き、と聞かされて開いた口がふさがらなくなる。 4年生の春から野球を始めて、5年生で四番・捕手となって秋の東北大会準優勝。学童野球では規格外の特大アーチや場外弾も放つ 「3年生までは特に何もせず、学校から帰ったら友達と普通に遊んでました」 そんな菊地が野球をしている父親に感化され、チームに入ってきた当時を指揮官はよく覚えている。「野球を知らないし、何もできなかったですね、最初は。左利きなのに右投げ右打ちで、あまりにもぎこちないので、彼の父親にも『本当にいいの?』と何度も確認しました」(佐藤監督) 本人によると、右投右打は特にこだわりがあったわけではなく、自然な成り行きだという。レアな4年生。その後の成長ぶりは目を見張るものがあった、とも指揮官は語る。 「吸収が早くて、野球に染まるのも早かったですね。性格が真面目で、他の子が遊んでしまうようなときでも黙々とやるタイプ。5年生でキャッチャーをやらせたときも、時間がかかるかなと思ったけど、すぐに試合でも守れるように…」...
新人戦で東北準V。頼れる四番は激レア捕手

3年連続の全国で集大成へ。信頼度No.1の二刀流
【2023注目の逸材】 筒井遙大 つつい・ようだい ※投打の動画→こちら 【所属】滋賀・多賀少年野球クラブ 【学年】6年 【ポジション】主に投手、遊撃手 【主な打順】一番、二番 【投打】右投左打 【身長体重】154㎝48㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(エンゼルス) ※2023年5月10日現在 多くの注目を集めた、昨夏の全日本学童大会の2回戦(対大阪・長曽根ストロングス)。多賀少年野球クラブは1対4で迎えた最終6回裏に、一死からソロアーチが飛び出して2点差に迫る。なお、二死一塁。ここで左打席へ向かおうとした筒井遙大は、ベンチ前で辻正人監督から呼び止められた。 「ええか、ひと振りでフェンスオーバーを狙ってこい!」 チームは過去に連覇も達成している全国屈指の名門。打線はこの試合でもサク越え弾を2発放っていた。筒井は5年生(当時)ながら、その四番である。指揮官の檄はハッタリでも気休めでもなかった。同点2ランをリアルに描いていたのだ、きっと。 昨夏の全日本学童2回戦の6回裏。一発なら同点となる打席を前に指揮官から「フェンスオーバーを狙え!」(上)。だが、結果は二飛(下)でゲームセット 3球ファウルもあってフルカウントからの8球目。投球にタイミングは合っていた。が、フルスイングで放った白球は二塁手の頭上高くへ。試合はそのまま決着した。 「6年生に申し訳ないな」 直後は涙も出た最終打者だが、引きずらずにこう切り替えたという。 「終わったことは終わったことやし、来年またここで頑張ろう」 誓いを果たすのはこれからになるが、まずはその夢舞台に今夏も立てることが決まった。先の大型連休中に滋賀県大会を制し、6大会連続16回目の全日本学童出場を決めたのだ。 「接戦もありましたけど、チームのみんなで協力し合って粘り強く勝つことができました」 誰か一人に頼り切らないのがチームの伝統で、投手陣は筒井ら5枚の継投で4試合を乗り切った。ケガ人もあったりで打線では二番に入った筒井は、準々決勝の同点で迎えた最終回に決勝ソロを放っている。 5年生から70mのフェンスオーバーも頻繁に。逆方向へも長打、巧打がある。夏の全国では2年連続で二塁打を放っている 「全国ではとにかく0点で抑えたい!」 優勝や日本一という言葉ではなく、自分の役割を自覚した上で、抱負を具体的に語る。実は全日本学童大会の1回戦で2年続けて先発しているのが、この右腕。一昨年の4年時は一死も奪えずに降板したが、昨年はゲームをつくり、冒頭の2回戦でも先発するなど2試合で計5回2/3を投げた。打者28人に対して被安打5、4奪三振、3四死球で自責点は5。...
3年連続の全国で集大成へ。信頼度No.1の二刀流

見るほど聞くほど、首ったけ“二刀流”
【2023注目の逸材】 柴坂奏斗 しばさか・かなと ※投打の動画→こちら 【所属】大阪・山田西リトルウルフ 【学年】4年 【ポジション】投手、遊撃手 【主な打順】一番、三番、四番 【投打】右投左打 【身長体重】146㎝34㎏ 【好きなプロ野球選手】大谷翔平(エンゼルス) ※2023年4月30日現在 まず、目につくのは6年生のような高身長と均整なフォーム。週2日は野球教室で投打のメカニクスも学んでいるという 数え年でようやく10歳。そんな少年少女をつかまえて「天才」だの「大器」だのと触れ回るのは、いかにも気が早いのかもしれない。身のこなしの巧みさなど、神経系や身体能力の絶対値もまだまだ上がる最中だ。 分かってはいても、見過ごせない4年生が大阪にいる。柴坂奏斗。全国に名立たるマンモス軍、山田西リトルウルフでプレーする二刀流の“金の卵”は、キャリア14年の指揮官をもうならせる。 「奏斗はホンマに純粋で、野球が大好きなんやというのもよう分かる。将来はいったい…。今までにないくらいの楽しみな感じがありますね」 4・5年生チームを受け持つ中濱賢明監督は、この春に進級した4年生たちを直に指導してまだ3カ月あまり。それでも柴坂には内心、期待や希望がどんどんふくらんでくるという。 4年生になったばかりでMAX93km/h。マウンドでは一人相撲もたっぷり経験してきた上で、徐々にゲームメークもできるエースへと成長中 すでに146㎝と、恵まれた体格を持て余していない。駆け足は学校でも学年トップだ。フィールドでは打っても投げても守っても際立つ。だからといって王様気取りもなく、一心不乱にプレーする様がただただ微笑ましい。会心の一打の後には拳を突き上げる。白い八重歯ものぞくスマイルは、見守る大人たちの清涼剤だ。加えて中濱監督が驚かされるのは、スポンジが水を吸うような理解力と対応能力だという。 「以前は力んで四球連発が多かったそうです。私が見ても目一杯で、あとはボールに聞いてくれ! みたいな感じなので70~80%で投げても大丈夫な状況や場面もあることを教えました。バットは大人用のレガシー(複合型バット)を目一杯に長く持っていて、長打もあるけど差し込まれがちやったので『ひと握り余して握っても何もカッコ悪いことない。日本一のチームもそれでホームランを打っとるんよ』と」 柴坂はその後、確実にゲームをつくるエース格へと成長しつつある。かつてはイニングに平均20球を要していたのが、最近は半数近くに。打撃では逆方向への長打も高い確率で生まれているという。 落ち着いて柔らかい物腰が、試合中はご覧の勝ち気や笑顔に 4兄弟姉妹の末っ子 父は身長186㎝の元球児で、母は169㎝の元バレーボール選手。中3の長姉は大阪選抜でプレーするほどの野球の腕前で、中2の兄も軟式野球部で今まさに伸び盛り。この2人に父はスパルタ的な指導を施したせいか、小5の姉は野球にはノータッチだという。 そんな4兄弟姉妹の末っ子、次男坊の奏斗は2年生の夏、迷わずに山田西の門を叩いた。兄も姉もプレーしていたこのチームに幼少時から帯同し、みんなに可愛がられてきたからだ。父・祥吾さんは受け身のサポートに徹しているという。 「上の子たちにやり過ぎたという反省もありまして。奏斗とは2歳くらいからボール遊びをしてきて、今は93㎞をほうってます。要因? 体幹がすごく強いのはあると思います」...
見るほど聞くほど、首ったけ“二刀流”

圧巻コントール!威風堂々、昨年末の胴上げ右腕
【2023注目の逸材】 武田真珠 たけだ・ましろ ※投球動画→こちら 【所属】岡山・岡山庭瀬シャークス 【学年】6年 【ポジション】投手、三塁手 【主な打順】一番、三番、四番 【投打】右投右打 【身長体重】157㎝44㎏ 【好きなプロ野球選手】吉田正尚(レッドソックス) ※2023年4月24日現在 持ち味のコントロールは全国優勝をかけた昨年末の大一番でも乱れず。「長谷川康生さん(2016年全日本学童出場時のエースで現・三菱自動車倉敷)以上になりたいです!」 2022年の学童野球のとりを飾ったのは、当時5年生の右腕だった。岡山庭瀬シャークスの武田真珠だ。 ライブ配信や動画でチェックした人も多いことだろう。昨年12月18日、東京・神宮球場でのポップアスリートカップの全国ファイナル決勝。庭瀬が大阪・長曽根ストロングスを7対6で下し、初優勝を飾った。 全日本学童で史上最多7度の優勝を誇る長曽根は、1回表に5得点。しかし、庭瀬はその裏、押し出し四球をはさむ6連打などで6対5と一気に逆転する。この6連打の5本目、ボテボテの投ゴロながら快足を飛ばして内野安打としてみせたのが、八番・三塁の武田だった。 「50m走は7.5秒くらい。サードも楽しいですけど、打つのが一番好き。広角に打てるのが自分の良いところです」 バットは短く持ち、足を大きく上げるフォームから広角に鋭いライナーを放つ スタメンのほか8人は6年生の中で、正三塁手だった武田は身のこなしと正確なスローイング、シャープなバットスイングと足の速さで1回戦から目立っていた。そして決勝では大逆転直後の2回表から、より魅力的な顔をのぞかせたのである。 「次(新チーム)のエースになってもらわんといけん選手」と、中西隆志監督から救援のマウンドに送られた。すると、一番から始まった猛打の相手打線から2奪三振の3者凡退で斬ってみせた。そしてそのまま最後まで投げ切って胴上げ投手に。6回まで打者18人に対して、被安打2に四死球0の1失点。5回に失った1点は失策絡みで自責点は0だ。 何より図抜けていたのが、コントロールだった。内外の投げ分けに加えて、アウトコースの出し入れも自在。たとえボール球が先行しても、必ず並行カウントまで持ち込む。けん制も巧みで、つけ入るスキを相手にほぼ与えなかった。 三塁守備では、猫科の動物が獲物を追うときのような俊敏な動作と正確な送球が光る 「普段はシャイな子なのに、相手が強くなるほど燃えてくるタイプ」とは、庭瀬の都築慎一朗事務局長の武田評。オール6年生の全国区の強敵との大一番でも、真価を発揮したメンタルは、今後もチームと自身を助けてくれることだろう。 むろん、タフなハートは相応の努力の上に成り立っている。チームの活動は週末のみで、平日5日間は2歳上の兄と自主トレに2時間あまり励む。坂道ダッシュに始まり、キャッチボール、守備の動作確認とティー打撃までがルーティン。時期や状態によって、投球練習もしているという。 再び、神宮のマウンドへ...
圧巻コントール!威風堂々、昨年末の胴上げ右腕

どよめきを全国でも!悲運も幸運に変える鉄砲肩
【2023注目の逸材】 櫻井日陽 さくらい・ひなた 【所属】栃木・豊岡Jスターズ 【学年】6年 【ポジション】投手、捕手、三塁手 【主な打順】三番、四番 【投打】右投右打 【身長体重】151㎝47㎏ 【好きなプロ野球選手】村上宗隆(ヤクルト) ※2023年4月24日現在 5年秋の県大会の球場表示で最速99km/h。現在は常時、110㎞/h前後と思われる 規格外。想定や予想をはるかに超えるものを目の当たりにしたとき、人は思わず声を挙げるものだ。 「オオ~ッ!!」 野球を見慣れている大人や相手ベンチの指導者さえも巻き込んで、そうしたどよめきを巻き起こす鉄砲肩の6年生が、栃木県の日光市にいる。 豊岡Jスターズの櫻井日陽だ。捕手と投手が本職だが、武器がより際立つのは三塁を守っているとき。あまり経験がないとあって、転がってくる打球へのアプローチや捕球体勢やステップなど、基礎動作には改善の余地あり。だが、そこからのギャップで人々はよりおののくのだ。地面を踏み締めながら振られた右腕から放たれ白球の、あまりのスピードやどこまでも真っすぐに進んでいきそうな軌道に。 現在は正捕手兼二番手投手の副主将。二塁送球も見せ場で、勝負どころではマウンドから剛速球を披露する 「小さいころからお父さんとボールで遊んだり、2年生でチームに入ってからは自主練で一緒によく遠投をしています。あとは専門の先生に体幹のトレーニングとか、体の使い方とかを教えてもらっています」 年長から1年生までは、地域のライオンズクラブが主催するスポンジボールの野球でルールや楽しさを知った。遠投の距離は5年生に進級したころが56mで、約1年後の現在は70m前後。学校でのソフトボール投げは5年生で44m、校内1位だったという。 父・将大コーチは、地元の鹿沼商工高まで主に投手としてプレーした。「遠投ができるほど球速も出るし、体の使い方なども自分なりに分かってくる」というのが経験則で、息子の投げ方(フォーム)そのものには、ほとんど手をつけていないという。 マウンドに立っても、明らかに人よりも速くて伸びのある球を投げている。計測はしていないが、コンスタントに110㎞/hは出ているのではないか。現在は正捕手で、イニング開始前の二塁送球を楽しみにしている人もチームの内外にいる。 外野の頭を超すパンチ力も秘める。本塁打も数えていないが、5年生の2月までに2ケタは超えているという 「ポジションはピッチャーが一番好きで、もっと好きなのはバッティングです。(理由?)ホームランとかサヨナラヒットを打ったときに、みんなから『良いバッティングだったね』とか言われるところです」 自宅の敷地には、ネットなどを張った祖父手作りの自主練習スペースがある。チームの平日練習や父との自主練習がない日は、一人でティー台のボールを打ち込んでいるという。 チームが吸収合併 個人の努力だけではどうにもならない、ということが人生にはある。櫻井は最上級生となる前に、仲間たちと悲運を受け入れた。所属してきたチームが春でなくなることが決まったのだ。...
どよめきを全国でも!悲運も幸運に変える鉄砲肩

全国V2へ。胴上げ捕手よ、王道を行かん
【2023注目の逸材】 向 慶士郎 むかい・けいしろう 【所属】石川・中条ブルーインパルス 【学年】6年 【ポジション】捕手、投手 【主な打順】一番 【投打】右投左打 【身長体重】158㎝50㎏ 【好きなプロ野球選手】村上宗隆(ヤクルト) ※2023年3月19日現在 ※送球・打撃の縦向き動画→こちら 動画でチェック➡二塁送球、特大ファウルetc. 『優勝チームに名捕手あり』とは、故・野村克也氏の格言。同氏は捕手として打者として監督として解説者として、プロ野球をリードした大御所だが、冒頭の理論は学童野球にも当てはまる。 昨年の日本一、中条ブルーインパルス(石川)は怪物クラスの投打二刀流・服部成(星稜中に進学予定)が大車輪の活躍だった。ただし、当時5年生の正捕手・向慶士郎を抜きには、チームは全国出場すら危うかったかもしれない。 昨年の向は怖いものなしだった。全国予選で打ちまくり、全国準決勝の土壇場では二走としてトリックプレーを仕掛け、決勝のホームを踏んでいる。ワンプレーを見ただけでも、類まれな運動神経を推し量れるが、何より特筆したいのは捕手としてのテクニックと完成度の高さだ。 16m先から110km/h超のスピードで迫ってくるボール。これをミットに収めるか、地面に落ちれば体で止めて前に転がすか。全国舞台なら、どの捕手もある程度はできるが、精度の点で昨夏は向の右に出る選手がいただろうか。 サイズに頼っての力任せではない。野球知識、基礎技術、身体能力、経験値を伴う「世代No.1捕手」と言っていいだろう 昨年のV腕・服部は、1学年下の頼もしき女房についてこう評している。 「どんな球も絶対に止めてくれるので、いつも思い切り投げられていました。あとは、アウトにできるところを探してリードをしてくれるので、すごく良いキャッチャーでした」 リードは三振を奪うだけが狙いではない。中条の選手たちは野球の本質を学んでおり、状況に応じてどこでどういうアウトを奪いにいくのかを全員が理解して守っている。向はその上で、走者や打者も観察しながらエースにサインを出していた。そして全国3回戦では、完全試合をアシストしている。 捕球技術が高いから、握り替えもステップもスムーズで、二塁送球にリズムと力がある。小飛球やバント処理への反応と一歩目の鋭さに、また目を奪われる。 「アニメの『メジャー』を見て、1年生から野球を始めました」 3年生から投手と捕手を兼務するようになり、昨年の春から捕手にほぼ専念。「自分でもこのままキャッチャーでいきたい。打つほうが好きで、夢はプロ野球選手です」 昨夏の日本一以降は、打撃に悩む時期もあったという ...
全国V2へ。胴上げ捕手よ、王道を行かん

「杉並No.1」から「世界一」へ。進境著し...
【2023注目の逸材】 加賀陽翔 かが・はると 【所属】東京・西田野球クラブ 【学年】6年 【ポジション】投手、一塁手 【主な打順】三番、五番 【投打】右投右打 【身長体重】152㎝36㎏ 【好きなプロ野球選手】坂本勇人(巨人) ※2023年4月2日現在 動画でチェック➡投球2&打撃1 「プロ野球選手」という夢がこの春、さらに具体的になった。 「僕も日本を代表するピッチャーになって、あそこで投げてみたいです」 「あそこ」とは、世界最高峰の舞台、WBCだ。この2023年3月、14年ぶりに世界一に返り咲いた侍ジャパンの、全員一丸で盛り上げながら勝ち進む姿に、11歳の加賀陽翔は胸を躍らせたという。 「僕も、みんなで声を掛け合ってやる野球がとても楽しいです」 所属する西田野球クラブは、ちょうど創立50周年の大きな節目にある。2004年と06年には東京23区大会で優勝など、都大会常連の杉並区の老舗チームだ。23区大会の低学年の部では、2021年に8強まで進出。当時の4年生エースが、加賀だった。 球速は常時、110km/h前後。3年生からコーチ陣との二人三脚の努力で、現在の自然な形のスリークォーターに落ち着いたという 『昨日の自分に勝とう!そして今日より明日!』(山本修士監督)というスローガンを掲げる新チームは、山本真詩主将を中心に内外野の声掛けや個々の準備・対応力が際立っている。1月開幕の京葉首都圏江戸川大会はべスト8入り。加賀はこれにも投打で大きく貢献した。 長い手足を持て余すことなく、投げ込む速球は、コンスタントに110㎞/hあたり。随所でスローボールを交え、けん制もクイックも巧み。フィールディングやベースカバーもそつがない。そして進境著しいのが、マウンドさばきだ。 「正直、緊張したり、ちょっと悔しいとかいう時もありますけど、野球はチームプレーで成り立っているので、何かあっても切り替えて自分のピッチングをすることをいつも意識しています」 4月に入っての全国予選(区大会)では、これぞエースという内容の完投勝利もあった。不運なジャッジや味方にミスがあっても制球を乱さず(与四球1)。3点リードの最終回に2点を失い、なお二死三塁で迎えた三番打者に対しても、表情ひとつ変えることなく右腕を振って見逃し三振に。 「最後は自信を持って、思い切りストレートを投げられました」 肘肩とのケガと無縁。ひと際長いコンパスは、明るい未来を指し示すかのよう 周囲に聞けば、学力も優秀だという。黒縁のメガネにも増して、知性を裏付けるのが打席内での機微の目的を問うた際の答えだ。...
「杉並No.1」から「世界一」へ。進境著し...

新4年生の“野球の申し娘”。願いよ、夢よ、...
【2023注目の逸材】 石井心結 いしい・みゆう 【所属】東京・カバラホークス 【学年】4年 【ポジション】すべて(主に遊撃手・投手) 【主な打順】二番 【投打】右投右打 【身長体重】135㎝30㎏ 【好きなプロ野球選手】今宮健太(ソフトバンク) ※2023年3月26日現在 陽光を跳ね返すサングラスがなじんでいた。クリアな視界にフィールドの仲間をとらえつつ、次の展開や打球を描いて指示を送る。投手がモーションに入ると動き出せる体勢をとり、打者のスイングに合わせて必ず軽く反応する。 一塁を守れば、右足の触塁まで基本どおりで、味方からの難しい送球もグラブに収めるか、体で止めるか。遊撃を守れば、声掛けの範囲と頻度はさらに増し、強い当たりも吸い込むような捕球からステップを踏んで一塁へダイレクトで投げる。 「守るのはどのポジションもできますけど、自分でやりたいと思っているのはピッチャーとキャッチャーです」 新4年生にして全ポジションをそつなくこなせる。視野が広く、仲間に掛ける言葉も適格だ 3年生にしてオールラウンダーの34番(2022年度)。チームでは無二の背番号を全員で共有しており、石井心結は「10」ではないが、低学年チームのキャプテンだ。昨年は1学年上の世代に混じって東京23区大会でもプレー。知識と基礎技術も群を抜いており、チーム事情や対戦相手や状況などによってポジションが変わる。どこを守ってもベンチの信頼を損なうことがなく、仲間には頼もしいリーダーであり続ける。 「いつも意識しているのはチームをまとめることで、試合中はチームが勝つことを考えて動いています。野球で一番好きなのはバッティングです。センター返しを意識しています」 不動の二番打者は打席に入る前から、ベンチのサインも指示もお見通しの様子 二番打者として送るべき場面では確実に送り、出るべき場面ではストライクを初球からいく。一塁に出れば二盗は朝めし前という感じで、相手のスキを逃さず進むので得点率も異常に高い。そしてベンチに戻れば誰に指示されるでもなく、打ち終わりやネスクトの打者にアドバイスをしたり、鼓舞したり。 野球が楽しくて楽しくて、好きで好きでたまらない。1試合を見ただけでも、そんな思いの丈が伝わってくる。7つ上の兄と5つ上の姉をもつ3兄妹の末っ子で、父・弘さんは背番号29のコーチ。もの心ついたときから、兄とのキャッチボールや練習の手伝いが遊びであり、石井家は「野球」でより深く結びついている。 しかし、姉はチームに属していないように、すべては本人次第。野球も練習も親からの強制では決してない、と母・園江さんは語る。「心結(みゆう)も、幼いころからボールを投げて遊んではいましたけど、そんなに野球に興味がある感じでもなくて、チームに入るとは思っていませんでしたね」。 すべて自分の意志で 一気にハマったのは小1の12月だ。友人に誘われて兄が所属したカバラホークスの体験会へ。帰宅するなり「楽しかった!」と漏らした次女の“申し子”的な野球生活が、その日から始まった。 チーム練習は週末と祝日で、低学年は半日のみ。石井は平日でも「ボールやバットに触らない日はないですね」と母が語るように、ネットを張った自宅の駐車場で羽根打ち、近所の空き地でピッチングなど自主練習に励む。兄が高校球児となってからは生活サイクルが異なるため、父と朝練習をしているという。 「朝は寒いので体を温めてから、キャッチボール、ゴロ捕り、羽根打ちが基本の流れ。親から見ても野球への思いが純粋な子ですし、チームでも自主練でも主体的にやるタイプですね」(父・弘さん)...
新4年生の“野球の申し娘”。願いよ、夢よ、...

神宮でキラリ!二芸に秀でた北の原石
【2023注目の逸材】 宮崎煌大 みやざき・こうだい 【所属】北海道・星置レッドソックス 【学年】6年 【ポジション】投手※全ポジション可能 【主な打順】二番、三番 【投打】左投左打 【身長体重】155㎝48㎏ 【好きなプロ野球選手】杉内俊哉(元巨人ほか)、大谷翔平(エンゼルス) ※2023年3月8日現在 閃光とまではいかなくとも、冬の神宮球場で間違いなく光った、北の二刀流だ。2022年暮れのポップアスリートカップ全国ファイナルトーナメント。至難の北海道予選を制して2年連続3回目の出場を果たした星置レッドソックスは、6年生(当時)4人の若いチームながら、同トーナメント初白星を挙げた。左投げにして遊撃も守った宮崎煌大(当時5年)は、続く準々決勝で先発のマウンドへ。 「去年の全国(同トーナメント)は、僕は試合に出られなかったので、今年は自分が出て投げて1勝しよう、と」 「下半身をもっと使えるようになれば、伸びしろがさらに広がるはず」。投手育成に定評のある渡辺監督の期待値も高い 1対2の惜敗で思いは叶わなかった。しかし、打者と駆け引きしながらの緩急のピッチングは経験値の高さを、巧みなターンと連係による二塁けん制は練習の量を物語るようだった。打順は三番に入り、左打席から鮮やかなクリーンヒットも放ってみせた。 「宮崎の一番良いところは、物怖じしないところ。実はコロナ感染後の自宅待機が明けたばかりで、ボールに触れたのは10日ぶりくらい。いきなりの実戦だったんですよ」 試合後にそう明かしてくれた渡辺敦監督は、6年生卒団後の新チームでも宮崎をあらゆるポジションで意図的に起用しているという。「捕手もやらせました。もちろん、投手の柱は宮崎なんですけど、一枚だけでは大会を勝ち抜けませんし、何より彼には視野を広げてもらいたいんですよね」。 打線でもキーマン、相手や狙いによって二番か三番を任される。「バッターでは大谷選手が好きです」 仲間6人と描く夢 投げると打つで十分に秀でている。それだけに、野球をより深く理解して状況を読んだり、次の一手も考えて動けるようになってくると輝きはさらに増す、と指揮官は踏んでいるのだ。宮崎自身はセールスポイントをこう語る。...
神宮でキラリ!二芸に秀でた北の原石

数年後の甲子園出場を期す、埼玉の新人戦V腕
【2023注目の逸材】 髙橋隼太 たかはし・はやた ※投球・打撃の動画→こちら 【 所属】埼玉・泉ホワイトイーグルス 【学年】6年 【ポジション】投手、三塁手 【主な打順】四番 【投打】右投右打 【身長体重】150㎝43㎏→153㎝44㎏ 【好きなプロ野球選手】柳田悠岐(ソフトバンク) ※2023年3月8日現在→7月15日更新 プロ野球選手という遠い夢を漠然と描いているクチではない。新6年生の髙橋隼太の夢は、もっと近くて具体的だった。 「甲子園に出ることです!」 気負いもなく平然と語るのは、かつて東海大相模高(神奈川)でプレーして聖地の土を踏んでいる父親へのリスペクトもあるからだろう。5つ上の兄(現・埼玉栄高)が小1で泉ホワイトイーグルスに入団したときから、グラウンドを週末の主な遊び場とし、白球や年長者らと戯れてきたせいもあるのだろう。 そんな彼の投打をフィールドで目の当たりにして、本人より大きな夢や期待を抱いてしまう大人も少なくないようだ。筆者もそのひとり。 小5秋の関東大会で最速107㎞/hをマーク。体全体を使った、安定感のあるフォームは明るい未来を暗示するかのよう この2023年、1月最初の週末に東京・板橋区で行われた大交流大会では、滋賀県の強豪・多賀少年野球クラブを相手に左越えホームランを1本。勝負には敗れたものの、マウンドではクセのない美しい投球フォームと速球を披露した。 「僕は右打ちですけど、柳田悠岐選手(ソフトバンク)のバッティングを参考にしています。どちからと言えば、打つより投げるほうが好きです」 20年ぶり全国へ エースで四番打者、背番号10(主将)の髙橋ら新6年生10人を中心とする新チームは昨秋、埼玉県大会を制して関東大会まで進出した。1回戦で逆転負けはしたが、この2月の卒団式を経て最上級生となった10人は「全国で一番になりたい」と異口同音に語ったという。 就任12年目の井上貴徳監督は、その目標を踏まえて週末に指導をしているが、平日は努力の強制をしていない。 「やるもやらないも本人たち次第。毎年の目標は選手が自分たちで決めて、平日は各自で考えてやってください、というのがチームの方針です。そこでどれだけやってきのか、彼らの本気度も週末の動きでだいたいわかります」 パンチ力も秘めた右のスラッガー。写真はこの1月に多賀少年野球クラブ(滋賀)との一戦で放った左越えの本塁打 「当たり前を当たり前にやれる人間になってほしい。そのためには自分から積み重ねることが大切で、それを学んでもらえれば」と、育成理念を語る指揮官の新主将評はこうだ。...