【2023注目の逸材】
武田真珠
たけだ・ましろ
※投球動画→こちら
【所属】岡山・岡山庭瀬シャークス
【学年】6年
【ポジション】投手、三塁手
【主な打順】一番、三番、四番
【投打】右投右打
【身長体重】157㎝44㎏
【好きなプロ野球選手】吉田正尚(レッドソックス)
※2023年4月24日現在
持ち味のコントロールは全国優勝をかけた昨年末の大一番でも乱れず。「長谷川康生さん(2016年全日本学童出場時のエースで現・三菱自動車倉敷)以上になりたいです!」
2022年の学童野球のとりを飾ったのは、当時5年生の右腕だった。岡山庭瀬シャークスの武田真珠だ。
ライブ配信や動画でチェックした人も多いことだろう。昨年12月18日、東京・神宮球場でのポップアスリートカップの全国ファイナル決勝。庭瀬が大阪・長曽根ストロングスを7対6で下し、初優勝を飾った。
全日本学童で史上最多7度の優勝を誇る長曽根は、1回表に5得点。しかし、庭瀬はその裏、押し出し四球をはさむ6連打などで6対5と一気に逆転する。この6連打の5本目、ボテボテの投ゴロながら快足を飛ばして内野安打としてみせたのが、八番・三塁の武田だった。
「50m走は7.5秒くらい。サードも楽しいですけど、打つのが一番好き。広角に打てるのが自分の良いところです」
バットは短く持ち、足を大きく上げるフォームから広角に鋭いライナーを放つ
スタメンのほか8人は6年生の中で、正三塁手だった武田は身のこなしと正確なスローイング、シャープなバットスイングと足の速さで1回戦から目立っていた。そして決勝では大逆転直後の2回表から、より魅力的な顔をのぞかせたのである。
「次(新チーム)のエースになってもらわんといけん選手」と、中西隆志監督から救援のマウンドに送られた。すると、一番から始まった猛打の相手打線から2奪三振の3者凡退で斬ってみせた。そしてそのまま最後まで投げ切って胴上げ投手に。6回まで打者18人に対して、被安打2に四死球0の1失点。5回に失った1点は失策絡みで自責点は0だ。
何より図抜けていたのが、コントロールだった。内外の投げ分けに加えて、アウトコースの出し入れも自在。たとえボール球が先行しても、必ず並行カウントまで持ち込む。けん制も巧みで、つけ入るスキを相手にほぼ与えなかった。
三塁守備では、猫科の動物が獲物を追うときのような俊敏な動作と正確な送球が光る
「普段はシャイな子なのに、相手が強くなるほど燃えてくるタイプ」とは、庭瀬の都築慎一朗事務局長の武田評。オール6年生の全国区の強敵との大一番でも、真価を発揮したメンタルは、今後もチームと自身を助けてくれることだろう。
むろん、タフなハートは相応の努力の上に成り立っている。チームの活動は週末のみで、平日5日間は2歳上の兄と自主トレに2時間あまり励む。坂道ダッシュに始まり、キャッチボール、守備の動作確認とティー打撃までがルーティン。時期や状態によって、投球練習もしているという。
再び、神宮のマウンドへ
しなやかなテイクバックと、ややスリークォーター気味のフォームは、コーチの指導も受けながら身に着けた。球のスピードは驚くほどではないが、狙った場所へきれいに伸びていくフォーシームだ。打者のタイミングを狂わす抜いた球でも、投球フォームは大きく変わらない。
「神宮(全国決勝)のマウンドは投げやすかったですし、まぁ、楽しかったですね。日ごろからしっかり練習しているから、ああいうピッチングもできたと思います。今年は夏に神宮(全日本学童大会)に戻ってこられるように。それとしっかり活躍できるように、がんばりたいです」
取材中は取り巻く仲間に冷やかされながらも、にこやかに自分の言葉を紡いだ。昨秋の新人戦は県大会の準決勝で敗退。そこからどれだけの上積みができているのか、自身もチームも間もなく始まる全国予選で試されることとなる。
正捕手の高永晧平(右)とのバッテリーで、今夏の全国舞台に登場なるか
武田はチームに複数枚いる投手陣を引っ張る大黒柱であるのは間違いない。ただし、指揮官は誰か一人に頼り切るチームづくりはしておらず、武田については攻撃力も高く評価している。
「武田クンはライナーとか、打球が速いのと足が速いのも特徴。去年から『しっかり前で振れ!』というのは言ってきとったけど、あとは彼に限らんと、面白くしっかりと基礎を教えていくだけ。そこから先は、人それぞれ個性が出てくるものやから」
目先の勝利だけに走らない。出色のコントロールも、こういう指揮官の下でこそ育まれるのだろう。投攻守走、何がどれだけ伸びてくるのか、おそらくは本人も指導陣にも不明。ノーリミットだ。
(大久保克哉)