【2023注目の逸材】
富永孝太郎
とみなが・こうたろう
※投球・打撃の動画→こちら
【所属】千葉・八日市場中央スポーツ少年団
【学年】6年
【ポジション】投手、遊撃手
【主な打順】二番
【投打】右投右打
【身長体重】162㎝62㎏
【好きなプロ野球選手】大谷翔平(エンゼルス)
※2023年7月9日現在
【2023注目の逸材】
伊藤瑠生
いとう・るい
※捕球送球・打撃の動画→こちら
【所属】千葉・八日市場中央スポーツ少年団
【学年】6年
【ポジション】捕手
【主な打順】四番
【投打】右投右打
【身長体重】153㎝44㎏
【好きなプロ野球選手】山本由伸(オリックス)
※2023年7月9日現在
頼れる二刀流の主将
全日本学童と全国スポ少交流。夏の全国2大大会の各予選で千葉大会をダブルで制した八日市場中央スポーツ少年団には、秀逸なバッテリーがいる。
背番号10の富永孝太郎は「未来モンスター」とも言える投打二刀流だ。真っ先に目が行くのは162㎝62㎏の堂々たる体躯だが、サイズとパワーの優位性だけで有頂天になるようなタイプではない。
「マウンドでは緊張する」と語る富永主将だが、制球も心も乱れることのない絶対的なエースだ
「ピッチングは、ここは打たせて取るところ、ここは三振を取るところと、場面場面によって狙いがあります」
激しい打ち合いとなった全日本学童県予選の準決勝では、先頭打者の左越え二塁打と暴投で、いきなり無死三塁のピンチを背負うも、後続を空振り三振、右飛、空振り三振と3人でピシャリ。打者を早々に追い込んでからの勝負球、声を発しながらのストレートは明らかにスピードが増してくる。球速は計ったことがないというが、110km/hには達しているだろう。
ピッチングの全般で際立つのは、安定した制球力だ。本人も「自分の良いところはコントロールが良くて、どんどんストライクを取れるところ」と語る。同予選の決勝では相手打線の「待球作戦」にもまるで動じることなく、淡々とストライクを投じてアウトを積み上げ、投球リミットの70球で6回二死まで1安打無四球で無失点という快投で優勝に大きく寄与した。
「緊張したけど、練習でやってきたことを出せれば勝てると思っていました」
打者を早々に追い込み、勝負所では声を発しながらのストレートで圧倒する
背番号29のコーチでもある父・孝さんとボール遊びに興じるようになったのが5歳あたりで、年長からチームの一員に。5年生で正遊撃手兼二番手投手となり、同年秋の日本ハム旗県大会では1対0の完封勝利も経験している。
「打つほうが好きですけど、このまま(投打)二刀流でいきたい。夢はプロ野球選手になることです」
サク越え本塁打は3本放っているが、投球と同じく場面に応じた打撃が沁みついている。マウンドに立たないときには遊撃を守り、内外野の特に下級生たちを懸命に鼓舞する姿も印象的だ。
状況に応じて、チャンスメイクもポイントゲットもできる二番打者
「みんなで厳しい練習をしてきたので学年は関係なく、やれると信じています。誰かがエラーしても、焦らないように声を掛け合うことを意識しています」
投打以外でも頼りになる、チームに不可欠な大黒柱だ。
惚れ惚れキャッチング
160㎝超のエースが真上から投げ下ろすストレートは、球威も角度も相当なもの。経験の浅い小学生にとって、こうした球は打ちにくいだけではなく、捕るにもまた難儀する。それゆえ、怪物クラスの投手を擁して全国大会にやってくるチームには、決まって名捕手がいるものだ。
伊藤は捕手の基礎スキルをすべて満たす。中でも基本に忠実な捕球技術は全国トップクラスだろう
八日市場中央スポーツ少年団の正捕手・伊藤瑠生もその一人。柔らかなリストワークに正確無比なキャッチングは、見るだけで惚れ惚れする。エース右腕・富永の最大の持ち味であるコントロールも、伊藤のこのハイスキルに導かれている側面もあるかもしれない。
手首をしっかり返してミットの捕球面を投手に正対させ、ボールが投手の指先を離れるやコースに応じて瞬時に左腕が動いてミットの向きが変わる。そして待ち構えたミットの芯で確実に捕球する(※動画参照)。即座の返球はすべてがストライクとはいかないが、流れるようなミニマムの動きでここまでを繰り返すから、投手は自ずとリズムに乗りやすい。
たかが捕球、されど捕球、をここまで訴えてくる6年生も珍しい。そのあたりを含めて宇野貴雄監督に水を向けると、ニンマリとしてこんな言葉が返ってきた。
「自分と(富永)コーチがキャッチャー出身ということもありまして、キャッチャーの伊藤にはきっと一番厳しく指導してきたと思います」
ファウルボールへの反応と身のこなしからも、高い身体能力がうかがえる
3年ほど前、チームで三盗の練習をしていた際に、たまたま捕手役を務めていた3年生の非凡な動きが指導陣の目に留まった。それが伊藤だったという。
「最初はそんなにやりたくなかったんですけど、今はもうキャッチャーだけ、これからもやっていきたい。夢はプロ野球選手です」
2歳上の兄に続いてチームに入ったのが1年生。木曜から日曜まではチームの練習があるが、それ以外の月曜から水曜までは父と兄との3人で自主練習をしているという。
1対0で勝利した全日本学童県予選の決勝では終盤、相手の唯一の二盗を冷静に阻んでいる
「リード面は今は自分で考えています。送球のコツは、体の近くで捕球してすぐに握り替えること。気持ちが焦ったりしてミットを前に突き出して捕ると、逆に握り替えが遅くなる」
基礎スキルの中でも、とりわけ努力してきたキャッチングには自信もある。だがそれで満足することなく、送球時は下半身主導のステップを意識するなど、試合ごとに自らテーマを立てて実践しているという。
「バッティングは最近はそんなに打ててないですけど、自分の役割(四番打者)はわかっています。全国大会ではまず、初戦を突破して、そこから(目指すところが)見えてくると思います。キャッチャーとして、みんなへの声掛けをよくしていきたいです」
打撃もコースに逆らわず、広角に打ち返していく
マスクの奥。トレードマークでもあるメガネの装着もあまりにスムーズで、スタンドや遠目からでは気付かない人も多いことだろう。
「(メガネはたいへん?)いえ、ぜんぜん、たいへんじゃないです!」
90年代のプロ野球で大活躍した、裸眼ではない名捕手も同様のセリフを吐いたことがあるのかもしれない。
(写真&文=大久保克哉)