【2023注目の逸材】
筒井遙大
つつい・ようだい
※投打の動画→こちら
【所属】滋賀・多賀少年野球クラブ
【学年】6年
【ポジション】主に投手、遊撃手
【主な打順】一番、二番
【投打】右投左打
【身長体重】154㎝48㎏
【好きなプロ野球選手】大谷翔平(エンゼルス)
※2023年5月10日現在
多くの注目を集めた、昨夏の全日本学童大会の2回戦(対大阪・長曽根ストロングス)。多賀少年野球クラブは1対4で迎えた最終6回裏に、一死からソロアーチが飛び出して2点差に迫る。なお、二死一塁。ここで左打席へ向かおうとした筒井遙大は、ベンチ前で辻正人監督から呼び止められた。
「ええか、ひと振りでフェンスオーバーを狙ってこい!」
チームは過去に連覇も達成している全国屈指の名門。打線はこの試合でもサク越え弾を2発放っていた。筒井は5年生(当時)ながら、その四番である。指揮官の檄はハッタリでも気休めでもなかった。同点2ランをリアルに描いていたのだ、きっと。
昨夏の全日本学童2回戦の6回裏。一発なら同点となる打席を前に指揮官から「フェンスオーバーを狙え!」(上)。だが、結果は二飛(下)でゲームセット
3球ファウルもあってフルカウントからの8球目。投球にタイミングは合っていた。が、フルスイングで放った白球は二塁手の頭上高くへ。試合はそのまま決着した。
「6年生に申し訳ないな」
直後は涙も出た最終打者だが、引きずらずにこう切り替えたという。
「終わったことは終わったことやし、来年またここで頑張ろう」
誓いを果たすのはこれからになるが、まずはその夢舞台に今夏も立てることが決まった。先の大型連休中に滋賀県大会を制し、6大会連続16回目の全日本学童出場を決めたのだ。
「接戦もありましたけど、チームのみんなで協力し合って粘り強く勝つことができました」
誰か一人に頼り切らないのがチームの伝統で、投手陣は筒井ら5枚の継投で4試合を乗り切った。ケガ人もあったりで打線では二番に入った筒井は、準々決勝の同点で迎えた最終回に決勝ソロを放っている。
5年生から70mのフェンスオーバーも頻繁に。逆方向へも長打、巧打がある。夏の全国では2年連続で二塁打を放っている
「全国ではとにかく0点で抑えたい!」
優勝や日本一という言葉ではなく、自分の役割を自覚した上で、抱負を具体的に語る。実は全日本学童大会の1回戦で2年続けて先発しているのが、この右腕。一昨年の4年時は一死も奪えずに降板したが、昨年はゲームをつくり、冒頭の2回戦でも先発するなど2試合で計5回2/3を投げた。打者28人に対して被安打5、4奪三振、3四死球で自責点は5。
「3年連続で全国1回戦の先発マウンドに送りたいですね」と、辻監督は早くも予告する。もちろん、本人も意欲満々。加えて、最後の試合(決勝)も最後までマウンドに立ち続けて喜ぶ自分をイメージしているという。そのためにも「0点で抑える」ことが必要なのだ。
本格派投手へ急成長中
「練習効率が良くて、ここならうまくなれるなと思いました」
筒井が体験練習を経て、多賀少年野球クラブの門を叩いたのは1年生の冬だった。落ち着きと賢さはピカイチで、野球の知識も基礎技術もどんどん自分のものに。3年生大会(グリーンカップ)ではMVPにも輝いている。そして4年生からは全国出場と、踏んできた場数とそのレベルは全国の6年生の中でも随一と言えるだろう。指揮官もまた「選手の信頼度No.1」と、太鼓判を押している。
投手と遊撃手がメインだが、捕手も含めて全ポジションを公式戦でもこなせる
「打つのも投げるのも好きです。大谷翔平選手に憧れています」
広角に鋭い打球を飛ばす打撃は、頼もしい限り。夏の全国舞台では一発こそまだないが、2年連続で二塁打を放っている(計4試合12打数3安打)。投球はスローボールが中心で、勝負どころで投じる速球とコントロールが生命線だった。それが、この春前あたりから本格派投手へと変貌してきているという。辻監督がこう語る。
「一言で言うなら『バネ投げ』ですね。スピードがぐんぐん速くなっている。力んで投げている感じに見えないのに、バチーンとものすごいボールがいくので、初めての打者は圧倒されると思います」
今年1月、東京での交流大会では持ち前の状況判断と制球力で、頭脳的なピッチングを披露した
自分でもまだ制御しきれないほどの球速アップ。きっかけは専門家の動作レッスンにあった。チームは2月から兵庫県のBBMC(ベースボールメディカルセンター)と提携。選手たちは月イチでやってきてくれる、BBMCの相澤一幸代表ら専門スタッフに動作の確認や改善指導を受けつつ、個々に課題をもらって取り組んでいる。筒井はその効果と新たな楽しみを実感しているという。
「体重移動とか体の使い方を教えてもらって、前より投げ方もきれいになったと自分でも思います。スピードが上がっているのは、その結果だと思います」
今夏の全日本学童大会1回戦。多賀少年野球クラブの先発右腕は果たして、どういうフォームから、どれだけのボールを投じるのか。楽しみは3カ月後にやってくる。
(大久保克哉)