【2024注目の逸材】
ひぐち・よしてる樋口芳輝
※プレー動画➡こちら
【所属】山野ガッツ/埼玉
【学年】6年
【ポジション】捕手、遊撃手
【主な打順】一番、二番
【投打】右投右打
【身長体重】150㎝43㎏
【好きなプロ野球選手】大谷翔平(ドジャース)
※2024年3月7日現在
2022年末のポップアスリートカップ全国ファイナルトーナメントに初出場。学年20人規模の山野(さんや)ガッツでは例年、専任の指導者たちの下から有能な選手が巣立っている。昨年秋の新人戦で埼玉大会準優勝を遂げた新チームはとりわけ、個々のポテンシャルも際立つ。
なかでもピカイチなのが、樋口芳輝だ。指導者歴15年の瀬端哲也監督も賛辞を惜しまない。
「打つほうも守るほうも野球の頭も、小学生のレベルを超えている。今までみてきた中でも間違いなく、3本の指に入りますね」
昨年9月の埼玉新人戦の最終日。二番に入って準決勝と決勝で4打数3安打、二塁打2本と打棒が目を引いた
満振りのファウルだけでも、いかほどのバッターなのか察しがつく。新人戦の準決勝では、右越えの二塁打と左前打に特大の中飛。決勝では右翼線へタイムリー二塁打と、広角に打ちまくった。
「甘いボールはミスショットをしない。ほとんどが1球で仕留めますよ」と瀬端監督。本人も一番のセールスポイントは打撃で、「特に逆方向に強く打ち返せること」だと語る。「ボールをできるだけ長く見て、ボールの内側を叩くことを、平日の打撃練習から意識しています」
マスクを被れば、打球への鋭い反応や機敏で強い二塁送球が目に留まる。ショートバウンドの捕球やバウンドストップも、新人戦から安定していた。だが試合後、「キャッチャーは経験も浅いし、まだぜんぜん。ずっとショートをやってきたので」と平然と打ち明けた。
新人戦では急造捕手とは思えないスキルを披露した。右は瀬端監督
その後も主に扇の要を守りながらスキルアップに励み、この2024年から背番号2に。遊撃守備でも確かな基本動作やハンドリングが光るが、指揮官が「正捕手です」と断言するまでに成長してきた。
「オーバーユースにならないように、球数の関係でショートも守らせますけど、相手の盗塁の抑止力にもなる樋口のキャッチャーと肩は外せない」(瀬端監督)
名立たる強豪チームとも対戦しているが、序盤に二盗を阻んで以降は盗塁企図もされないケースが多いという。逆に自分が一塁走者となれば、警戒されてもスチールを決めてみせる。
遊撃を守れば、基本動作と軽快な身のこなしも光る
50m走のタイムは7秒台の半ば。「そこまで爆発的な足の速さではないけど、投手の癖とかも自分で見抜いてスタートできる」(瀬端監督)。1月の大交流大会(東京)では、過去3回の日本一と高い盗塁阻止率を誇る、多賀少年野球クラブ(滋賀)からも二盗を決めてみせた(動画参照)。
2年越しの夢と
5年越しの無念
口数は多くないし、弁が立つほうでもない。プレーと背中で引っ張るタイプだ。地元のチームでプレーしていた3つ上の兄に続いて、小1で野球を始めたという。
「野球以外はずっと何もやっていません。このスポーツが自分に合っている」
状況によっては登板も。ダイナミックなフォームから力強い球を投じる
大きな転機となったのが昨年。3月の侍ジャパンのWBC優勝が、樋口の旺盛な向上心の火に油を注いだ。
「自分も強いチームに入って、もっとうまくなりたい!」
当時5年生ながら、NPBジュニアのセレクションにも挑戦。在京球団の一次選考をパスしたが、最終メンバーには残れず。もちろん、この最終イヤーは不退転の決意で再アタックする。
「プロ野球選手という夢はあるけど、まずは12球団ジュニアに入ること。そこから始まると思ってます」
右打ちだけではない。コースに応じて左方向へも鋭い打球を飛ばす
パフォーマンスを発揮して夏の全国出場に貢献することは、最初のその夢に近づくことにもなる。難関の越谷市の全国予選は、4月9日に始まる予定だ。
「今年のチームは打力が高いし、投手もたくさんいる。夏の全国大会(全日本学童マクドナルド・トーナメント)に出て、神宮(開会式)で行進するのが目標です」
山野は5年前の埼玉予選準決勝で、市選抜チームを相手に特別延長2イニングの末に抽選で敗退という憂き目に。当時のチームを率いていたのが瀬端監督だった。
チームと指揮官の5年越しの無念も晴らすべく、樋口がフィールドで躍動する。
(動画&写真&文=大久保克哉)