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HR&毎試合安打で全国8強入り。“ばり”勝ち気&根気の三刀流

2026.02.13注目戦士
HR&毎試合安打で全国8強入り。“ばり”勝ち気&根気の三刀流

【2026注目の逸材】

ながしま・りひと

永嶋璃陽斗

 [福岡/新6年]

こやのせ

木屋瀬バンブーズ

※プレー動画➡こちら

【ポジション】投手、三塁手

【主な打順】三番

【投打】右投左打

【身長体重】158㎝44㎏

【好きなプロ野球選手】門脇誠(巨人)

※2026年2月10日現在

夢舞台でメモリアル

 新潟県で開催された昨夏の全国大会(全日本学童マクドナルド・トーナメント)で、最も輝いた5年生と言えるだろう。初出場でベスト8入りした木屋瀬バンブーズ(福岡)の一番・三塁、永嶋璃陽斗だ。

 エコスタ新潟での1回戦、永嶋は第3打席にライトへサク越え2ランを放った。これでダメを押したチームは、7対2で全国1勝を挙げている。

「インコースに来たので思い切り引っ張りました。気持ち良かったです」

 一般用の複合型バットの使用が禁止となり、本塁打数が半減した大会にあって、両翼70mの特設フェンスの向こうへアーチをかけた5年生は2人のみ。その希少性にも増して、永嶋にはメモリアルな1本でもあった。

「憧れの巨人の門脇(誠)選手も、あそこ(エコスタ新潟)でプロ1号を打っているんですよ。自分も初めてのサク越えで、めっちゃうれしかったです」

 夢舞台での活躍は、その一発に留まらなかった。「自分は長打力はそんなになくて、アベレージのタイプ。一番バッターで出塁することが大切なので、明日からも出塁してみんなと勝ち上がっていきたいです」。

 1回戦を終えての談話どおり、打率は5割超をマーク(成績表参照)。しかも右前打、中前打、中前打、右前打と、1回戦から準々決勝まで全試合で先頭打者ヒットで出塁した。勝ち進むにつれて、相手投手のレベルも上がるなかで、これだけコンスタントに確実に打ち続けた5年生はほかにいない。

全国初打席は、痛烈な右前打だった(下)

 また、ノーエラーを貫いたチームの堅守を象徴していたのが、三塁を守る永嶋でもあった。

 絶対的な安心感のようなオーラを常に漂わせている。打たせて取る右腕の森下結心(現6年)が、大会唯一の完封勝利を挙げた3回戦では、4者連続の三塁ゴロを捌くなど、6回18アウトのうち7アウトに絡んでいた。

突出したDNA

「全国大会でいろいろやれたことは自分の力になれたと思うので、その経験と自信を生かして今、がんばっています」

 夏の夢舞台から約3カ月後の週末。チームの拠点、福岡県の北九州市立木屋瀬小の校庭を訪ねると、永嶋は「気合い!!」の丸刈り頭で迎えてくれた。野球イコール、坊主頭――これは大の巨人ファンで、一人っ子の永嶋の野球生活も手厚くサポートする祖父の美学だそうだ。

 孫と祖父を中心とする、永嶋家の野球命とジャイアンツ愛。そのあまりの熱量に、チームを率いて33年になる中川芳生監督もすっかり感服している様子だった。

「永嶋は一言でいうなら『野球バカ』。お爺ちゃんも熱心で、野球にものすごく厳しいけど、どこで試合をしても必ず見に来てくれる。福岡では珍しく、一家で巨人ファンで夏休みは東京ドームへ観戦に行ったり。それも毎年ですよ(※5年時は全国出場のため中止に)」

母は高校時代に、やり投げで40m以上を投げていた。そのDNAを継ぐ永嶋は球速は未計測ながら「100㎞くらいは出ている(5年秋時点)」と中川監督

 永嶋のなかで最も古い野球の記憶は、母とボール投げをして遊んでいた2つか、3つのころ。その母は高校時代は陸上競技のやり投げ選手で、インターハイに2年連続出場。俊足も自慢で、小学5年時の50m走は息子(7秒7)より速かったという。

「野球の技術面とかは私はぜんぜん分からないので、息子にいろいろ授けてくれたのは父(祖父)です。チームでは指導者の方々にしっかりと教えていただけていますし、家では時間さえあれば練習している感じですね」(母・咲花さん)

活動拠点の木屋瀬小(上)は生徒約600人のマンモス校。取材当日は中川監督の70歳の誕生日で、サプライズのプレゼント贈呈も(下)

 アスリートのDNAも継承した永嶋は、就学前から野球スクールへ。すると、みるみる上達して界隈では名の通るチビッ子になっていったそうだ。「年中、年長だったか。野球ができるけん、一番楽しかったです。自分で成長がしっかり感じられたっす」(永嶋)。

 すごいチビッ子のウワサは、中川監督の耳にも届いていたという。以下、同監督の回想。

「永嶋は園児のころに、もうスーパースターだったんですよ。直方市(北九州市の隣)の子で、近いというのもあって1年生でウチに来てくれたんですけど、最初からズバ抜けて良かったですね」

 永嶋は3年生になると、6年生主体のAチームで「九番・三塁」のレギュラーに。そして年間115勝15敗、数々のタイトル獲得に貢献した。「選球眼を覚えてきて、四死球が増えて5割は出塁するし、バントもできた。4年生になるとバッティングもすごく良くなって、二番を任せたり」(中川監督)

 5年生での活躍は、先述の全国大会に限らない。四番・中堅の石井爽介(現6年=「2025注目戦士⑳」➡こちら)が、ソフトバンクJr.に選ばれて夏以降はほぼ不在のなか、チームは数々の大会を制し、11月の九州大会(王貞治杯)は準優勝。永嶋は変わらず、多くの勝利に寄与したという。

チームの活動は週末のみ。「月曜は完全休養で、火水木金は主に自宅周辺の田んぼの周りを走ってから、素振りとか羽根打ちとかをしています」(永嶋)

開花させる環境

 小学生になっても“スーパー”であり続けながら、奢ったようなところは微塵もなし。チームの誰もが口をそろえた上で、永嶋の人物評を聞かせてくれた。

「野球が終わると楽しい友だちです。月に何回かはウチの家に遊びに来て、クッションを投げ合ったり、2階の部屋でドッジボールしたり。外で素振りしたり」(船川塁=新6年)

「負けん気もすごい。低学年のころから、先輩を見て追いつこうという努力がすごかった」(中川監督)

「元気があって、良いプレーをして先輩にもよく声を掛けてくれる。超頼もしいヤツ」(藤田海智主将=現6年)

 筆者もまた、北九州市での大会取材で間近に見えてきた永嶋のパーソナリティに、ほとほと頭が下がる思いだった。6年生主体の公式戦で、木屋瀬は全国で完封勝ちの森下が先発。三塁を守る永嶋は開始から、投球1球ごとにマウンドへ2、3歩距離を詰めては声を掛けていた。

「いいよ、ユウシンくん(森下)!」「ナイスボール、ユウシンくん!」「ユウシンくん、良いボールいってるよ、大丈夫!」…。

 ピンチであろうと、なかろうと関係なし。とうとう最後の1球まで、そうしてマウンドの先輩を励まし通した。中川監督によれば、それも毎試合のことだそう。見上げた根気ではないか。

 また声掛けに続いて、やはり1球ずつ必ずやっていたのが、守備の予備動作。左ヒザとグラブを大地に着けた体勢から、徐々に体を起こしながら左足を踏み出し、打者のインパクトあたりで着地する(※動画参照)。このルーティンは、5年生から自分で始めたという。

「身長が伸びてきたけ、腰高にならんように、低い位置から(インパクトに)合わせていく。これだと速い打球にも対応しやすいし、後ろにそらさないためにも一歩目が大事やけ、必ず準備して」(永嶋)

 昨夏の全国大会でも見られた、打席での独特なルーティンは進化していた。バットで天を指すように頭上へ掲げてから、脱力するようにストンとグリップを落とし、狭いスタンスで構える。これもやはり、「打ちやすさ」を求めて自ら試行錯誤した結果。きっかけは、指揮官からの「最近、バットがちょっと下から出過ぎている」との指摘だった。

構えのグリップの位置は夏よりやや高くなったが、トップの体勢は変わらない。「今のほうがトップに自然に入りやすい」(永嶋)

 社会人軟式でも長らくプレーしてきた中川監督は、己の勝ちたい欲だけで突っ走るタイプではない。昨年で50周年を迎えたチームの活動は一貫して、週末と祝祭日のみ。指導は肩書きと経験則頼みのゴリ押しではないからこそ、永嶋のルーティンに象徴されるような独創性も育まれるのだろう。

懸命と克己心

 意外にも、低学年時代は相当な苦しみを抱えていたと、永嶋は打ち明ける。試合での大抜擢と活躍とは裏腹に――。

「3年生のときはまだ小さかったけ、6年生がデカく見えるだけですごいと感じるし、サードの打球が速くて怖かった…」

 それを克服するには、練習あるのみ。そして結果として、対処法が身体に刷り込まれてきて世代屈指のホットコーナーに。

「速い打球が怖くても、何とか体で止めることから始めて。送球も苦手だったので、ステップをしっかりして落ち着いて投げることを教えてもらって、その練習も家で繰り返したり。先輩についていくのが精一杯だったけん、泥くさくやってきたつもりです」

 迎えた学童ラストイヤーでも、永嶋は新境地を開拓中だ。4年時から学年キャプテンのまま、新チームでも主将に。同時に、投手に本腰を入れ始めた。

 昨秋はまだ「真ん中を狙ってストライクを投げる段階」(中川監督)で、本人も「自分の持ち味は、バッティングのアベレージとサードの守備なので正直、ピッチャーはあまりやりたくない」と漏らしていた。それが現在は、大半の試合で先発登板し、ゲームをつくれるようになっているという。

「今年も絶対に夏の全国に行って、チームを勝たせることを考えながら、仲間とプレーしていきたい。自分が不調だったりしても、とにかくチームのために一生懸命、泥くさくやる!」

 マウンドで懸命に腕を振るのも、その決意の証し。将来については、高校での甲子園出場とプロ入りという夢を描きつつ、イメージを膨らませている。

「甲子園で活躍して、大好きなジャイアンツからドラフト指名されて入りたい!」

 元アスリートの母は、仕事に没頭する毎日。勤務時間が長くて不規則で、家事の多くは祖父母に頼りきりだそうだが、その働く懸命な背中にも永嶋は感化されているに違いない。

「あの子はキュキュッとした性格で、自分でこうと決めたら曲げない子。私は私でがんばるので、あの子も自分のやりたいことをそのまま突き進んで、やりたいところまでやってもらえたらなと思っています」(母・咲花さん)

(動画&写真&文=大久保克哉)

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