第18回ポップアスリートカップくら寿司トーナメントには、全国から1590チームの参加があった。その頂点を決する「冬の神宮」での全国ファイナルは、9ブックの代表13チームと前年王者によるトーナメントを2日間で消化。『学童野球メディア』は全13試合を取材した中から、特筆したいゲームをピックアップ。まずは守備のファインプレーの応酬で、0対0のまま特別延長戦に突入した1回戦から。オールドルーキーの記者が、ここにデビューする。
(写真&文=井口大也)
浜松ブラッツ少年野球団(静岡)
0000006=6
0000002=2
木屋瀬バンブーズ(福岡)
※特別延長7回
【浜】藤原、戸塚、藤原-鈴木
【木】生島、岡部、井上-大町
本塁打/藤原(浜)
三塁打/柳本(浜)
序盤からハイレベルな守備の応酬で、両軍ともにノーエラー。積み上げてきた練習の日々が垣間見えるような、非常に引き締まった好ゲームであった。
バットを振る木屋瀬・中川芳生監督(上)は指導歴30年超。外野陣は矢のような本塁送球を戦前から披露していた
まず魅せたのは、試合前のシートノックで素晴らしい仕上がりを見せていた、木屋瀬(こやのせ)バンブーズだった。
1回表、浜松ブラッツ少年野球団の三番・戸塚琉空が、一死一塁から右中間を破ろうかという痛烈な当たりを放つ。これを中堅手の川原叶太が快足を飛ばしてダイレクトキャッチ。飛び出していた一塁走者を刺して、併殺を完成させた。
木屋瀬の先発右腕・生島侑樹(=下写真)はこれで波に乗り、2回には3者連続三振を奪う。そしてそのまま既定の70球で6回を投げ切り、被安打1の無失点という快投を演じた。
一方の浜松も冒頭から守備のファインプレーがあり、投げては藤原星之介-戸塚とつないで6回までゼロを並べていくことに。この流れを呼んだのがマスクを被る鈴木笙馬だった。
1回裏、木屋瀬は一番・川原の右前打と、続く永嶋璃陽斗(4年)のバントで一死二塁とする。しかし、続く三番打者の意表を突くバントが小飛球となるや、捕手の鈴木が素早く反応して刺殺(刺殺:フライをキャッチするなど、その選手が直接アウトを取ること)。さらにそのまま二塁へ転送し、スタートを切っていた二走もアウトにしてみせた。
2回以降も双方の守備でファインプレーが続発した。木屋瀬は4回に6-4-3の併殺を決めたほか、遊撃の山本瑞己主将や右翼の藤田海智(5年)がヒット性の当たりを好捕。浜松は小栗篤登が2回にライトゴロを決め、途中で左翼から三塁へ回った柳本琴音は適切な打球処理で内野安打も許さなかった。
0対0で保たれた均衡は、無死満塁で始まる特別延長でまさしく「ブレーク」した。引き金を引いたのは浜松の二番・藤原だ。7回表、先頭で打席に立つと、フルカウントからの6球目をジャストミートし、左中間を大きく破る満塁ランニングホームランに。一気に4点を入れた浜松はなおも、柳本の適時三塁打やスクイズで6対0とした。
浜松の山下孝平監督(=下写真)は息子の卒団を機に指揮官となって14年目で、仕事の都合で6年生たちとともにユニフォームを脱ぐことになっている。その指揮官から「お祭り男」と評される藤原は、7回裏に四球と内野ゴロで2点を失ったところで再登板。そして2者連続の奪三振で締め、記念すべき全国1勝を恩師にプレゼントした。
〇浜松ブラッツ少年野球団・山下孝平監督「粘って粘って我慢比べして、最後に点を取って勝つのがチームのスタイル。個々の能力は相手が上でしたが、スタイル通りの試合展開に持ち込むことができました」
●木屋瀬バンブーズ・中川芳生監督「初回のバントエンドラン失敗(併殺でチェンジ)が痛かったですけど、子どもたちはよく戦いました。全国の舞台になると、ワンプレーで試合が決まる。5年生のレベルが高く(スタメン4人)、6年生は後半に代打攻勢で出場してもらいました。また(全国の舞台に)戻ってきたいです」
――Hero❶――
最大の見せ場で決めた「お祭り男」
藤原星之介
[浜松6年/投手]
しなやかでバランスの取れたフォームから、際どいコースに淡々と投げ込むサウスポー。
先発して3回無失点。打っては0対0で迎えた7回表、タイブレークの先頭打者で殊勲の一発を放った。
山下孝平監督曰く、「大舞台のほうが燃えて力を発揮する『お祭り男』。普段はちゃらんぽらん(笑)」。
6対0で迎えた7回裏に2点を失い、なお一死二、三塁のピンチでは、タイムを取ってマウンドに内野陣を集めた山下孝平監督からの「いけるか?」の問いに、「オレ、いけます!」と即答。お祭り男は再登板のマウンドでも本領を発揮し、2者連続三振で締めた。
――Hero❷――
全国に爪跡残した四番・捕手
大町皐太
[木屋瀬6年/捕手]
マスクを被ってはエース右腕を6回無失点に導く好リード。3つの飛球も俊敏なフットワークで捌き、すべて刺殺。ピンチの芽を摘んだ。
バットでは3打席で無安打に終わるも、第1打席は痛烈なライトゴロ。第2打席はレフトへ大飛球を放った。相手のファインプレーに阻まれたものの、非凡な打撃力がうかがえた。
攻守を通じてのリーダーシップに、打席では風格も漂う。四番・捕手の大黒柱が全国舞台で確かな爪跡を残した。