東京1047チームの王者を決するファイナル。第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントの予選会決勝は、逆転また逆転のバトルの末、不動パイレーツ(目黒)が越中島ブレーブス(江東)を破り、4年ぶり3回目の優勝を果たした。全国大会は8月11日に新潟県で開幕し、競技は翌12日に始まる。東京第1代表の不動は1回戦第2試合で、宮古ヤングパワーズ(岩手)と対戦。第2代表の越中島は1回戦シードで、2回戦の第2試合から登場する。
(写真&文=大久保克哉)
※記録は編集部、本塁打はすべてランニング
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優勝
=4年ぶり3回目
ふどう
不動パイレーツ
[目黒区]
準優勝
えっちゅうじま
越中島ブレーブス
[江東区]
■決勝
◇府中市民球場
◇第2試合
不動パイレーツ(目黒)
02525=14
04010=5
越中島ブレーブス(江東)
【不】木戸、岡田-山田
【越】石原、宮川、一木-長島穂
本塁打/山田(不)
三塁打/長島光(越)、竹中、茂庭(不)、栗田(越)、寺田(不)
二塁打/寺田(不)
【評】東京トップ2のユニフォームは、色もデザインもよく似ていた。スボンのサイドに縦の2本ラインが、2021年に2回目の優勝を果たしている不動パイレーツ。ソックスに横3本ラインが、2016年以来の優勝を期す越中島ブレーブスだ。
先攻の不動は11安打、後攻の越中島は8安打。合わせて19安打の激しい打ち合いとなったが、滑り出しはロースコアの接戦を予期させるものだった。
越中島の先発右腕・石原杏嗣は第1球で101㎞ストライク。2球目で与死球も、捕手・長島穂岳とのコンビ(=下写真)で、50m走6秒台という不動・田中璃空主将の二盗を阻むなど3人で終えた。対する不動は、右サイドの木戸恵悟が1四球を挟んで3三振で立ち上がる。
様相を一変させたのは不動の長距離砲、六番の山田理聖だ。
2回表、一死二塁から左越えの先制2ラン(=上写真)。越中島の打線もこれに呼応した。二死一塁から、八番・小山蒼海(=下写真㊤)と九番・増田壮真の5年生コンビの連打で1点を返すと、一番・長島光毅の三塁打(=下写真㊦)に、続く栗田洵主将のテキサス安打で4対2と逆転してみせた。
不動もすぐさまやり返す。九番・市原稜の中前打を皮切りに、田中主将、二番・寺田悠人までの3連打でまず1点。さらに野選と、四番・間壁悠翔(5年)のスクイズで同点とすると、八番・上田廉(5年)が二死満塁から左翼線を破り(=下写真)、7対4と勝ち越した。
こうしてバトルが激化するなかで、差を生んだのは守りだった。不動は3回裏、無死二、三塁と一死三塁の2度ピンチに、適切な打球処理で三走をいずれもアウトにして無失点。一方、バッテリーミスや野選も絡んで逆転されていた越中島は、4回以降も送球や捕球のミスで失点を水増ししてしまった。
三番・竹中崇の適時三塁打などで4回に2点を加えた不動は、続く5回表にこの試合2度目の打者一巡。代打・中山大誠の右前打(=上写真)や寺田の左越え適時三塁打、竹中のスクイズに五番・茂庭大地のタイムリー(=下写真㊤)で締めて計14得点とし、試合を決めた。
越中島も4回裏、増田の内野安打に栗田主将の左中間三塁打で1点。5回裏は増田の3安打目(=下写真㊦)で二死一、二塁としたが、得点には結びつかなかった。
〇不動パイレーツ・田中和彦監督「4年前も東京1位で新潟での全国大会に出場。ご縁も感じますし、その先輩たちに結果として肩を並べられたことを誇りに思います。プレッシャーですけど、全国大会ももちろん優勝を狙います」
●越中島ブレーブス・長島拓洋監督「浮き足立つというか、いつもならぜんぜんないミスも…決勝という舞台がそうさせたのかなと。その反省も踏まえて、細かな守備からもう一度、確認して立て直したいと思います」
―Pickup Hero❶―
打って走って守って、行く末はスターに!?
たけなか・しゅう
竹中 崇
[不動6年/中堅手]
どれだけチームを救ってきたことか。今大会最大のハイライトは準々決勝だ。敗北まであと2アウトという窮地の打席で、右越えの同点ホームランを放ってみせた(=上写真)。
「積極的に逆方向をイメージして打ちました」
息を吹き返したチームは、勢いのまま勝ち越して勝利した。
迫力もある打線にあって、竹中崇が三番で不動なのは何より、状況に応じた仕事ができるからだろう。バントもヒッティングも確実性が高く、ボール球の見極めもいい。そして打つとなれば、緩急やコースも苦にせず広角に弾き返せる。
決勝もそうだった。2点ビハインドの第2打席では、無死二、三塁からゴロを転がして打点(野選)を稼ぐと、3点リードの第3打席は一死一塁から左翼線へ適時三塁打(=上写真)。ラストの第4打席は、スクイズバントを決めた。
これほどマルチに活躍できるのはなぜか。打席では何を考えているのか。答えはこうだ。
「まぁ、打つだけの場面では、ピッチャーを打ってやろう、というくらい。頭を真っ白にはしないで、1つのことを考えるようにしています」
真っ先に目がいくのは打撃だが、センターの守備範囲も世代屈指だ。竹中だから追いついた、竹中だから捕れた、という飛球が今大会も複数。当然、脚力もあって走塁も抜け目がない。決勝では三塁打を放った後の内野ゴロで、処理した野手の一塁送球を見越して好スタートを切り、本塁を悠々と陥れている(=下写真)。
大会MVPの表彰があれば、おそらく選ばれていたことだろう。打てる、守れる、走れる。加えて、なかなかのイケメンとくる。身体の成長とともに、まだまだスケールアップしていくはずだが、まずは8月の全国デビューで注目したい逸材の一人だ。
―Pickup Hero❷―
2月の悔し涙から発奮、6月に笑ったブレイブな主将
くりた・じゅん
栗田 洵
[越中島6年/二塁手]
プロ野球オリックスの前身となる阪急ブレーブスや、MLBアトランタ・ブレーブスのチーム名は、「BRAVE(勇ましい)」という単語が語源とされている。越中島ブレーブスの由来は定かでないが、今年の背番号10は間違いなく、ブレイブな少年だ。
2月の京葉首都圏江戸川大会でもそうだった。結果は3位で、準決勝ではカバラホークス(足立区)に0対5の1安打完封負け。それでも栗田洵は守るセカンドの位置から終始、周りを見ながらナインを鼓舞していた(=上写真)。
プレーでは思うように引っ張れなかった自身への悔しさも募り、敗北後はポロポロと涙をこぼしながら、辛うじて言葉を吐き出した。
「江東区で勝って、都大会ベスト4以上が目標です」
それから約4カ月後。彼らは見事に目標を達成した上に、もう1つ勝って全国出場も決め、銀色のメダルに輝いた。
「首都圏大会が終わってから、『目の色を変えて野球をやろう!』って、みんなでずっとやってきました。決勝は舞台にのまれちゃった感じで細かいミスが出て勝てませんでしたけど、ここまで来られたのはみんなの成長だと思います」
全力プレーが大前提。決勝では2回に逆方向へタイムリーを放つと、一塁のベース上で笑みがこぼれた。再逆転されて4対9とワンサイドとなりかけた4回裏には、左中間へ三塁打を放って一走を迎え入れた(=上写真)。ミスも相次いだ5回表の守りでは、センターへ抜けそうなゴロを捌いて、3つめのアウトを奪ってみせた。
「全国大会では、今日(府中市民球場)みたいな立派な球場で野球ができると思うので、楽しみだし、そういう環境面も味方にしたい。自分たちのプレーができなかった今日の反省も生かしていきたいです」
この日ばかりは、敗れても雄弁だった。