高円宮賜杯第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント東京都予選会は6月1日、府中市郷土の森野球場で3回戦8試合を行い、大会ベスト8が出そろった。全国大会連続出場を狙う前年度優勝の船橋フェニックス(世田谷)、同準優勝の不動パイレーツ(目黒)のほか、都大会初出場の小平小川ベースボールクラブ(小平)なども勝ち上がった。7日には同野球場と府中市民球場で、準々決勝と準決勝がダブルヘッダーで行われる。
※記録は編集部。全試合の結果速報ではありません。
(写真&文=鈴木秀樹)
初の都大会で続くミラクル
小平小川が強敵を完封
■3回戦
◇C面第3試合
用賀ベアーズB(世田谷)
000000=0
10012X=4
小平小川ベースボールクラブ(小平)
【用】岡田、佐藤-大和
【小】近藤-桑原
三塁打/林(小)
二塁打/桑原(小)、大野(用賀)
大会初出場の小平小川ベースボールクラブが堂々のベスト8入りを果たした。
相手は5年生チームながら、激戦区・世田谷を勝ち抜いてきた用賀ベアーズB。今大会も1回戦を11対1、2回戦を10対0と、好打と堅守で快勝し、16強入りした強敵だ。
しかし、この日の小平小川は完璧だった。
1回裏、先頭の桑原怜央(=上写真)が中越え二塁打から三盗を決め、栗原彪の右前適時打で早々に先制。以降は中盤まで、用賀の堅守で追加点を奪えなかったが、4回に澤村圭、玉木惇史の安打と敵失で待望の2点目。そして5回、二死三塁から澤村の適時打で1点、続く林大地の右中間三塁打で4対0とした。
「みんな、自信をもって打席に入ってくれています。空振りしても、次には当てられると。常に前向きに行けたのが良かったですね」と、桑原征太監督が振り返る。積極的な攻撃もさることながら、この日は先発したエース左腕・近藤一輝(=冒頭写真)の投球が抜群だった。
「調子良かったです。とくにコントロール。キャッチャーの構えたところに投げられました。球数は気にしていなかった。行けるところまで、と思って投げました」(近藤)
マスクをかぶった桑原は「深く考えたわけではないけど、うまく相手をかき回す配球ができたと思います」と、好リードも光る快投劇。終わってみれば、近藤は65球で6イニングを投げ切り、うれしい1勝を完封で飾った。
「相手が強いのはわかっていました。打撃が素晴らしい。こういう球場(両翼70mの特設フェンスなしで、外野の打球はフリー)では、外野をとにかく下げて守るのがベストかと」
桑原監督がそう振り返ったように、次々と外野に飛ぶ大飛球をきっちり守り切った野手陣もエースの好投を支えた。
「まさか、あれほどガンガン外野に飛ばされるとは、想像していませんでしたが(笑)。選手は気負いなくプレーしてくれましたが、こっちはずっと緊張ですよ。とにかく外野がうまく捕ってくれました。きょうは、いい具合にハマってくれましたね」
そう言って、笑顔を見せた。
「変な話、勝ちにこだわりはないんです。常に前向きに。三振もヒットも、成功も失敗も、楽しめればいいと」
そんな話をする監督の脇で、選手たちが補足する。
「チームワークがね~、すごくいいんだよ」
登録選手14人の中には負傷者も。それでもポジティブプレーで躍進を続ける。小平小川の勢いは衰えそうにない。
5年生軍団が示した可能性
敗れた用賀は打線にいつもの勢いがなかった。2回には一死から大野時生が右翼に二塁打を放ったものの、後が続かず、散発3安打でまさかの完封負け。良い角度で上がった外野への飛球も、ことごとく小平小川の外野手の正面に飛んだ。
「このレベルになると、取れるアウトを取ったチームが勝つ。何か、流れを変えるプレーでも出ればよかったんですが…。仕方ありません」
村上太郎監督は淡々と振り返った。
それでも、5年生チームとは思えないパワフルな打線と堅守は、さすが、昨秋のマクドナルド・ジュニアトーナメント(4年生以下の都大会)王者。6年生チームに交じっての戦いでも、遜色ない実力を発揮した。
「もちろん、勝ち進めればもっと良かったでしょうが、選手たち自身も楽しんでプレーしたし、父母やコーチ陣も最高に盛り上がった。この結果は試練というよりは、プレゼントだと思ってますよ」(同監督)
間もなく始まる、都知事杯フィールドフォース・トーナメントの出場権も手にしている用賀B。伸びしろ未知数の5年生14人のチームは、秋の東京都新人戦(マクドナルド・ジュニアトーナメント優勝枠で出場)までには、もう一回り、成長できそうだ。
「ただ、この大会でも、実力を出しきれたとは思っていませんよ」
村上監督はそう言って、笑顔を見せるのだった。
初回の攻防で明暗
光った国立の堅守と足技
■3回戦
◇C面第1試合
調布フェニックス
00000=0
20023x=7
国立ヤングスワローズA
【調】松本、原、佐伯-栗山
【国】山崎-岩本
本塁打/山崎(国)
三塁打/栗山(調)、濱田(国)
初回の攻防が勝負の明暗を分けた。
1回表、国立ヤングスワローズAは調布フェニックスの先頭打者・栗山凱翔主将に安打を許すと、ボーク、暴投に四球で二死一、三塁のピンチに。だが、ここで得点を狙った重盗をホームで刺し(=上写真)、無失点で切り抜けた。
するとその裏、一死から清水升爲が左前に安打を放つと、返球のもたつきに乗じて二塁を陥れる好走塁。清水はさらに三盗を狙うと、これが悪送球を誘う形となって先制のホームイン(=冒頭写真)。続く山崎央月も右前打で出塁、二盗後にけん制悪送球で一気に生還を果たし、2点を先取した。
堅実なプレーでピンチを脱し、逆に失策がらみで先制。国立にとっては、またとない立ち上がりとなった。
「調布さんは強いですからね。あれが逆だったら、試合の流れは全く逆だったかもしれません」と国立の杉本敬司監督。
先発したエース右腕の山崎は「先制できたことで、落ち着くことができました」と、2回以降はすっかり立ち直り、快速球を武器に調布打線をきっちり抑えた。
4回に小林倫太朗の適時打と濱田藍の適時三塁打で4対0に。そして5回、一死一、二塁から山崎が左翼線をライナーで抜く3点ランニング本塁打を放ち、7点差コールド試合を成立させた。
初回の好走塁でチームに流れを引き寄せた、二番・清水は「船橋フェニックスとか、強いチームと戦う中で、いつも次の塁を狙うことが大切だって気づいたんです。きょうは相手のスキを突く走塁ができてよかった」と満足そう。吉川陽壱主将は「ベスト8がかかった試合なので緊張したけど、楽しめました。次も相手は強いと思うけど、相手よりも、自分たちの力を出すことに集中したい。それができれば、全国大会で戦う力はあると思っているので」とうなずいた。
昨年は5年生のBチームで挑んだ都知事杯で8強入り。そして秋の新人戦の成績、都ベスト16を超えてきた。勢いはまだ、止まりそうにない。
昭島クラブ(昭島)は3試合連続の2ケタ得点でベスト8入り(上)。連覇を期す船橋フェニックスは、新興軍・城東ベースボールクラブ(江戸川)に打ち勝った(下)
■準々決勝のカード
レッドサンズ 対 昭島クラブ
小平小川ベースボールクラブ 対 越中島ブレーブス
船橋フェニックス 対 城北メッツ
国立ヤングスワローズ 対 不動パイレーツ