投手だけの問題ではない
野球に限らずどんなスポーツにも、競技特有の発生しやすい体の痛みや怪我の種類があります。
野球やソフトボールのように、ボールを "投げる" ことが主となる競技では「肩や肘の怪我」は避けては通れない重要課題です。
特に多くの球数を、しかも全力で投げ続ける投手に起きる怪我と思われがちです。
しかし、力加減は違えど同じ数だけ投げている捕手や、1試合に数回という機会で咄嗟に本気で送球をする野手にも起きうるのが『投球障害』 です。
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投球障害とは…ボールを投げる投球動作において、肩関節や肘関節などに痛みや違和感など支障をきたし、投球が困難になること
本ブログ記事では、その投球障害について自宅でできる予防方法や投げ方を見直すことのできる練習用品についてご紹介していきます。
※すでに痛みや症状がある場合は、医療機関を受診してください。
原因は一つではないが…
投球障害と言っても痛みを伴う箇所はさまざまで、「肩の前が痛い」「肩の後ろに違和感がある」「投げる時だけ肩が痛い」「投げる時も打つ時も肘が痛い」など症状も異なります。
そして、それぞれの症状が異なるように原因もさまざまです。
その一つが、ここ数年ニュースにも取り上げられるようになった『投げすぎ』という大きな問題です。
高校野球の連戦・完投が美談のようにメディアにも取り上げられていた時代とは異なり、現在はその先も続く選手生命を守る選手起用へとシフトしてきました。
そしてその流れは学童野球(小学生の軟式野球)も同様で、2020年度より国内外の学童野球公式戦において『投球制限70球(小学4年生以下では60球)』が導入されました。
全日本軟式野球連盟のルール変更によって、チームの柱となって多くの試合で投げている学童球児達の肩や肘への負担は、少なからず軽減したと言って間違いはないでしょう。
~そして新たな課題も~
『複数名の投手育成が必要』
先述した投球制限によって一投手の負担は軽減されましたが、同時に一人あたりの球数は減り、投手をする選手の人数は増えました。
ダブルヘッダーなども行う学童野球チームでは、球数制限によりチーム中で最低でも3~4人の投手が必要です。
大所帯のチームや常に上部大会などを狙うチームからは、「投手ができる選手が多くいるので問題ない」「うちはみんな投手ができるようにずっと練習しているから大丈夫」という声も聞かれます。
しかしながら、全国各地すべてのチームが同様ではないでしょう。
全体的に人数が少ないチーム、入部したての子が多くまだ投手ができる選手が少ないチーム、怪我や学校行事等で試合に出場できる選手が少ないチームなど、複数名の投手育成に苦戦する学童チームは非常に多いです。
そんなすべてのチーム・選手のために、ここからは投球障害を防ぐトレーニングと野球練習用品をご紹介していきます。
投手に必要な自宅プチトレ
すでに投手として日々試合で投げている選手+今後投手として投げる機会が増える選手、そして捕手や野手で頑張るすべての選手の投球障害予防に繋がるトレーニングをご紹介します。
500mlのペットボトルを使用しますので、学童球児にも過剰な負荷なく、自宅で簡単にできる "肩の怪我を予防するためのインナーマッスルトレーニング 3種" です。
①肘を伸ばして真横!
肘は曲げず、真横に腕を伸ばし、ペットボトルを上下します。
肩回りを意識して、10回×3~5セット行いましょう。
②肘を伸ばして斜め45度!
肘は曲げず、斜め45度上に腕を伸ばします。ポイントは、腕や体全体に力を入れず、とにかく肩だけを動かします。
胸が地面から離れないように、10回×3~5セット行いましょう。
③肘を曲げて最後の粘り!
この動きはなかなかやったことがないかもしれません。肘をまげて体の横でペットボトルを上下します。
できる限り上下運動を大きく、10回×3~5セット行いましょう。
怪我をしやすい投げ方していませんか?
ストレッチやトレーニングを行い怪我をしにくい体づくりをすることと、もう一つとても大事なことは "怪我をしない投げ方" を身に付けることです。
特に成長期の学童球児が「速い球を投げたい」「遠くまで投げたい」とガムシャラに力任せで投げ続けてしまうことも、投球障害へ繋がる原因の一つになります。
\こんな投げ方はNG/
わかりやすいように肩にボールを乗せていますが、肩の高さより肘が下がってしまっています。
これでは力強いボールは投げられず、さらにこの状態でガムシャラに投げてしまうと特に肩への負担が大きく、投球障害を引き起こしてしまいます。
\こんな投げ方もNG/
こちらは体が左側(右投げの場合)に倒れてしまい、かつボールを離す手と頭も離れてしまっています。
これではコントロールも定まらないどころか、遠い距離にあるボールを強く投げようとすることで肘に大きな負担がかかり、投球障害を引き起こしてしまいます。
投げ方を見直す野球練習ギア
ボールを投げる瞬間(リリース)だけでなく、その前の投げ始めの準備の位置(トップの位置)が重要です。
このトップの位置を子ども自身が体で覚え、常に安定した投げ方ができれば投球障害のリスクは下げられます。
こちらの画像は直径約18㎝の柔らかいボールを肩に乗せ、手首付近と耳付近の3点で固定しています(商品名:スローイングパートナー)
このボールが落ちないようにすることで、肘が両肩を結んだラインまで上がってきて、頭から手が離れすぎていないトップの位置になります。
ボールを3点固定でセットしたトップの状態から、腰・体を回転させて投げるだけで、肩肘の負荷・怪我のリスクが少ない投げ方を身に付けることができます。
(実際に投球するときは肩に乗せたボールは落ちてOKです)
ボールを投げられない環境では
平日の自宅練習や自主練習など、ボールを投げられない環境でも投げ方を見直したいときは、シャドーピッチングがおすすめです。
タオルを使ってのシャドーピッチングをしている選手も多いと思いますが、先述した肘が下がってしまう選手の投げ方改善には、棒状のものを使用する方法があります(商品名:シャドーインナーロッド)
肘が下がったまま投げようとすると棒の先端が顔付近を通過、もしくは頭に当たってしまいます。
しっかりと肘を上げて、頭の上を棒が通過するように振ることで、両肩のライン上よりも下がることなく、肘の負担の少ない投げ方になります。
あくまでボールをリリース(離す)する練習ではなく、腕の動き・投げ方の見直しとして体で覚えたいときや、ボールを投げられない環境でも投球に繋がる練習をしたいときにおすすめです。