全日本女子軟式野球連盟(全女連)主催の全日本女子軟式野球選手権大会には、「一般の部(クラブ)」と「中高生の部(中学クラブ・高校部活動)」が存在します。
その加盟チームの中には、2025年度から中高生の部から一般の部へと所属を変更し、上のカテゴリでの戦いを挑むと決めた高校生たちがいます。
今回は、その挑戦について "中京大学附属中京高校軟式野球女子部" の選手へお話をお聞きしました。
2025年10月5日更新
中高生の部での葛藤
女子軟式野球のカテゴリが「一般の部」と「中高生の部」という形であることには、女子野球自体が発展途上だった時代の工夫が残っています。
全国各地の女子野球人口やチーム数が少なく、中学生チームにも中学を卒業後の高校生が残ってプレーしていたり、高校の女子高校野球部がものすごいスピードで創部されていながら「女子軟式野球部」はほとんどなく、高校生限定の大会開催ができないという事情があります。
今回お話を伺った中京大中京高校の土井監督は、数年前から「中高生の部」から「一般の部」への登録変更を考えていたと言います。
基本土日で活動している中学クラブチームにとって、部活動で毎日練習ができる、しかも高校生が同じ大会に参加していることへの風当たり…連盟からの提案…選手たちの成長など…
監督の一存ではなく、あくまで提案という形で選手たち自身にカテゴリ変更するか否かを投げかけたそうです。
野球場が使えない時間も最大限工夫して多くのボールを打ちこむバッティング練習の様子
一般の部への挑戦
そんな監督の提案に対して部内でミーティングを行った結果、やはり最初は一般の部への挑戦をしたいという選手、中高生の部で優勝したいという選手に分かれたそうです。
中学生と戦う中高生の部では勝てば「勝って当たり前」と言われ、負ければ「高校生なのに」と言われる…そんな環境ではなく、自分たちが挑戦者となって一般の部に挑戦したいという選手。
中学生の頃に同大会に出場していて、「高校生になったら中京高校で優勝したい」という思いをもって入部している選手。
そんなそれぞれの意見をしっかりと出し合い、話し合い、最終的には『一般の部への挑戦』という結論に至りました。
そして見事に東海地区予選を1位通過し全日本選手権への出場権を手にしたのです。
今回はその挑戦への気持ちを2名の選手にインタビューしました。
磯谷美空主将
一般の部への登録変更派だったという磯谷主将は、監督から提案をもらい、大学生や社会人選手のクラブチームが出場する一般の部への挑戦をしてみたいという気持ちだったそうです。
若さで勝てるのではないか?という考えもあったそうですが、実際に試合をしてみると経験の差を感じたと言います。
例えばピンチになった時に、どうしても意気消沈しがちな中高生チームに対し、経験豊富な一般チームは沈むことなく上昇志向でピンチを切り抜けてくると実感しました。
カテゴリ変更が決まり、一般チームとの試合を重ねていくことで、今までどこか余裕がなかった自分たちのチームも、挑戦者としてプラスの方向に変わっていったそうです。
結果!見事東海地区チャンピオンになれたことで大きな自信になったと言います。
森本愛華選手
2025年夏の甲子園で始球式の大役を務めた森本選手は、東山スマイルガールズ出身で中学時代には同大会へ出場していました。
そして、その時にできなかった中高生の部での優勝を目標に、中京大中京高校の軟式野球部女子部へ入部したいと言います。
しかしながら一般の部への変更の話を聞いて、挑戦してみたいという気持ちになったそうです。
3学年で選手が入れ替わる中学や高校のチームと違い、自ら引退を決めるまで同じチームに所属することのできる一般のクラブチーム…長くチームに所属し、幾度となく対戦を重ねていることで情報も蓄積され、戦い方や戦術にも工夫がなされます。
試合展開においても「後半の追い上げがある」「最後まで気が抜けない」そんな緊張感のある戦いを経験できたと言います。
\二刀流/
森本選手、実はBaseball5の日本代表選手という二足の草鞋を履くすごい選手です!
2025年9月にメキシコで行われた第2回 WBSC ユースBaseball5ワールドカップに出場しています。
大会は第7位という結果でしたが、8月には女子野球の全日本選手権、そして9月にはBaseball5のワールドカップと、忙しくも濃密な高校3年生の夏を過ごしたのではないでしょうか。
全日本選手権大会
初めて一般の部での出場をした2025年8月の全日本選手権大会、初戦を2-1で突破し、2回戦は雨天順延の影響もあり不戦勝、ベスト8へと駒を進めます。
準々決勝の相手は、その後見事に2年連続6度目の優勝を成し遂げる石川県のダラーズとの一戦でした。
女子軟式野球界の女王とも言われる強豪チーム相手に、残念ながら2-7で敗れてしまいましたが、一般の部への挑戦は『十分戦える』という確固たる自信に繋がったのではないでしょうか。
中京大学附属中京高校 軟式野球女子部
編集後記
今回は代表して2名の選手にお話を聞きました。
「部内でも意見が分かれた」「ミーティングをして話し合った」「最終的には一般の部への移行をしてよかったと思える」と、非常に前向きな答えを聞くことができました。
野球の練習だけでなく、さまざまな取り組みにも積極的にチャレンジし、人としての成長や経験を大切にする土井監督の方針が選手にもしっかりと浸透しているようです。
高校の部活動で女子軟式野球ができる。という全国でも数少ない中京大中京高校軟式野球女子部の今後の活躍も応援していきたいと思います!
フィールドフォース 小林