女子野球選手にとって、学生野球の先にはどのような選択肢があるのか…
働きながら野球を続ける環境として "企業チーム" があります。
今回は全選手を正社員として雇用している【ZENKO BEAMS(ゼンコービームス)】の選手の日常と、企業チームという選択で自身にとってプラスとなった点を聞きました。
2025年6月15日更新
目次 |
ZENKO BEAMSとは? |
選手の仕事内容 |
野球の練習環境 |
企業チームという選択 |
後輩たちへアドバイス |
編集後記 |
ZENKO BEAMSとは?
ゼンコーグループがもつ女子硬式野球チーム:ZENKO BEAMSは2016年に発足しました。
全22選手(マネージャー1名を含む)が正社員として株式会社ゼンコーに所属しています(2025年シーズン現在)
ZENKO BEAMS大会戦績
2017年 第12回全日本女子硬式クラブ野球選手権大会 優勝
2021年 第16回全日本女子硬式クラブ野球選手権大会 準優勝
2022年 第17回全日本女子硬式クラブ野球選手権大会 3位
2024年 リポビタン杯争奪プレミアヴィーナスリーグ 優勝
フリーターや契約社員などではなく、しっかりと就職もしながら野球を続けたいという選手にとって、引退後も会社に残り働き続けることもできるため、長い目で見ても非常に良い環境といえます。
一般企業へ就職すると、どうしても大会遠征や休日の兼ね合いで有給休暇を使いながらの現役続行となることがほとんどです。
その点、企業チームは野球のスケジュールを考慮しての勤務となるため、野球と仕事との両立という点ではベストな選択肢かもしれません。
選手の仕事内容
選手たちの日々のお仕事内容としては、平日は各業務別支社ごとに分かれて内勤、オフシーズンは土日が出勤日になり、主にイベントの警備業務を行っています。
勤務スケジュールは火曜~金曜7時半~16時半、曜日によって勤務後の夕方~夜に練習を行います。
土日は野球の練習・試合に充てられますが、中止の際は出勤して勤務を行うこともあります。
野球を続けるためにゼンコーグループへの就職を決めた選手たちですが、会社としても「まずは仕事をしっかりこなすこと」という方針にブレはありません。
平日練習も必ず自身の仕事を終わらせてからの参加となるため、残業となり遅れて練習に参加することもあります。
野球の練習環境
自社の持つ倉庫を改装したという室内練習場も所有し、平日の夕方~夜間練習、雨天時の練習環境も万全です。
充実したボール数や練習用具の種類、トレーニングマシン、ピッチングマシン、移動式のマウンド等が揃っています。
練習環境については、屋外のホームグラウンドがあるわけではないですが、毎週本拠地ふじみ野の近辺でとても広くキレイな球場で練習をしています。
そして先述した専用の室内練習場があるため、業務後の練習や、空いている時間を使っての自主練習、雨の日でグラウンドが使用できない時など、練習を行う環境はとても整っています。
企業チームという選択
高卒・大卒とさまざまですが、企業チームで野球を続けるという選択をした選手たちに素直な気持ちを聞いてみたいと思います。
Q. なぜ企業チームを選んだのですか?
A. 当時高校生だった私には、社会人野球というものがすごくかっこよく映りました。
トップレベルの中で野球ができることへの期待や、先輩方の大人びた雰囲気や偉大さに憧れ企業チームを選びました。
Q. 仕事との両立で苦労していることはありますか?
A. とにかく自分の時間が取れなくなることです。
もちろん自分で工夫し、休む時は休むことも大切にしていますが、両方本気でやりたいので、業務後の練習や、ジム、自主練などは欠かせません。
また、シーズン中は出勤の回数が少なくなる為、少しでも仕事に貢献できるように日々体力との勝負です。
Q. 社会人として成長できたと思えることはありますか?
A. 礼儀作法はもちろん、社会人のマナーや人との接し方、考え方など、様々な先輩方や上司の方とコミュニケーションが取れるので、常に学ぶ事が多くなりました。
何よりも、責任をもって物事に取り組むことが出来るようになりました。
Q. 野球選手として成長できたと思えることはありますか?
A. 野球と仕事の両立により、切り替えることが上手くなりました。
何かに偏った考え方や、思い込み、ネガティブな思考などに捉われず、プレーをする上で前向きな姿勢と、謙虚さを持てたと思います。
Q. 企業チームだからこそというチームメイトとの関係性に特徴はありますか?
A. 家族よりも一緒に過ごす時間が長い分、先輩後輩分け隔てなくコミュニケーションが取れ、自然と仲が深まります。
後輩たちへアドバイス
Q. 野球続ける選択肢に迷う後輩たちへアドバイスをお願いします!
A. 野球を続けるかやめるかで迷う理由は人それぞれですが、今女子野球の人口は増え、様々なところで新しいチームが立ち上がっています。
SNSでそのチームの状況や雰囲気がわかる時代ですが、まずは自分でそのチームに行き、見て、感じて、体験することが大切だと思います。
未来の女子野球選手たちにとても期待しております!
編集後記
私自身も現役時代に何度も対戦経験のあるZENKO BEAMSさん。
大学生や別のところで就職している選手も混合で所属しているチームも複数ありますが、全選手を正社員として雇用しているという点は、学生の女子野球選手にとっては非常に魅力的なのではないかと思います。
インタビューにあるように、両立という面での苦労や体力勝負という点ももちろんありますが、完全に野球だけが収入源となる環境がない今、企業チームの存在意義というものは非常に重要なのではないでしょうか?
今回は平日練習にお邪魔させていただき「小中学生の保護者の皆さんや学生の女子野球選手へ向けて、将来のビジョンを描ける情報を発信したい」という私の要望にも快く答えていただきました。
ありがとうございました!
フィールドフォース 小林