第44回高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは、大阪・新家スターズの2連覇で閉幕した。開幕の42日前から、4カ月にわたってお届けしてきた特報も、これがラスト。個人成績やデータを含めて大会を総括しつつ、来年の夢舞台出場と活躍が期待される5年生20戦士を紹介しよう。節目の第45回大会は、新潟県で開催される。
(写真・文=大久保克哉)
(写真=福地和男)
Wのラストイヤー
神宮(東京)開催の最終年に、何本のホームランが生まれるのか――。
巨大トーナメントの勝ち上がりとは別に、今大会はそういう注目もされていた。というのも、打球部が別素材の複合型バットのうち、一般用(大人用)の使用が来年度から全面禁止となるからだ。
同バットの代表格と言えば、ミズノ社の『ビヨンドマックス レガシー』。コロナ禍の2020年に登場すると、伝統のこの全国大会も翌年から本塁打が激増。外野70mの特設フェンスと、試合数の50はほぼ変わらない中で、2021年から34本(53試合)、43本(48試合)、29本と推移してきて、今年は39本のホームランが飛び出した。
3位の東京・不動パイレーツの四番・山本大智(=下写真右)が、大会最多の4本塁打。その前の三番を打つ細谷直生(=下写真左)が3本と、ランキングの上位2位を同一チームが独占した。以下、2本塁打で4選手が並んでいる。
10本増の総本数以外に、昨年と比べて違いが顕著なのは、大会序盤に本塁打が集中していることだ。1回戦(19試合)も2回戦(16試合)も、前年の倍以上(※2023総括➡こちら)。1回戦は何と20本塁打で、1試合に1本以上が出た計算になる。一方、3回戦8試合では1本(前年8本)、準々決勝以降では5本(前年7本)と尻すぼみに。
こうした極端な傾向から推察されることのひとつは、戦力レベルの二極化だ。そのギャップが大会序盤の本塁打の量産を招き、拮抗してきた後半戦で激減したと考えることもできる。出場全51チームが初戦を終える、2回戦までの35試合で、2ケタ得点が17チーム(前年10)もあったことも、ひとつの裏付けとなるだろう。
ミラクルも犠飛も多々
2年連続優勝を果たした大阪・新家スターズ(=下写真)は、1試合平均9.8得点という恐ろしい成績を残しながら、本塁打は1本だけ。ただし、その唯一がスペシャルだった。
5対7と逆転され、残り時間からしても最後の攻撃になるだろうという2回戦の4回表に、六番・黒田大貴が逆転3ラン。本人にとっても初のホームランという神懸かり的な決勝アーチから、チームは勢いを増していった。前年同様、走攻守のすべてが整うチャンピオンの牙城を崩し切るチームは、ついに現れなかった。
それでも、実際に相対した5チームはそれぞれ独自のカラーがあり、試合前半は見応えのある勝負を展開した。
中でも初出場ながら、王者をとことん追い詰めた埼玉・山野ガッツの打撃力は特筆するべきものだった。
準優勝の兵庫・北ナニワハヤテタイガースは、準々決勝で北嶋隼士主将(=上写真右)が完投し、続く準決勝では山口琉翔(=上写真左)が完封。ともに右腕で、三振の山を築くような本格派ではなかったものの、制球が安定していて駆け引きが巧み。数パターンあるという守備の変則陣形を使い分けるなど、チームとしても細やかな野球が印象的だった。
逆転に次ぐ逆転やサヨナラ決着など、球史にも残りそうな名勝負が複数あったのも、今大会の特長だった。初出場の福井・東郷ヤンチャーズに、過去準Vの実績がある不動パイレーツと愛知・北名古屋ドリームス。この3チームのミラクルは1度ではなかった。
初出場の福井・東郷ヤンチャーズは「選手ファースト」で3回戦進出。就任8年目の竹内浩二監督は次男・千太郎と今年度限りで卒団も、末っ子の2年生・承太郎が高学年になるころには復帰も!?
2回目の出場で全国1勝を挙げた神奈川・平戸イーグルスは波に乗り、3回戦では過去2回Vの多賀少年野球クラブ(滋賀)をサヨナラで破り、ベスト8まで躍進。その決勝打も含め、今大会は犠牲フライも目立ったが、来年度は本塁打とともに激減するのかもしれない。
関東勢の躍進続く
参加51チームの選手の平均人数(登録)は20.6人で、6年生は平均9.4人。昨年度の平均19.2人、6年生8.9人をそれぞれ上回った。
ベンチ入りの人数が、従来の20人から25人に拡大されたのは昨年度。その枠を満たしたチームも、前年の6から8(15.7%)に微増。一方、6年生が9人以上のチームは、前年より1つ減って24チーム(47.1%)だった。
京都・西城陽MVクラブは6年生15人。中学硬式など指導歴30年超の武田利行監督(左端)の就任は昨年11月で「冬場に徹底的に走らせたので動きにキレが出ました」。全国は初戦で1対2の惜敗も、ベンチを含むマナーとハイレベルな投手陣が目を引いた
全体として、選手の数は気持ち回復の傾向にあるようだ。しかし、気になるのは地域格差だ。東京と大阪の2大都市と周辺の府県は、6年生を含む選手の数が概ね平均値に達しているのに対して、北海道を除く地方はバラつきが激しい。特に心配なのは四国地方で、2年連続で登録20人に達したチームがない。
もちろん、都市部と地方部との人数格差は学童野球の全国大会に限ったことではなく、若年増の人口とも大いに相関関係があるのだろう。またその格差が、大会成績にも表れてきている側面もある。
昨年はベスト4のうち3チームが関東勢、今年は同じく3チームを関西勢が占めた。ベスト8は昨年の内訳は関東5、九州2、関西1。今年は関西と関東が各3で、中国が2。3年前の2022年に史上初めて、ベスト8の半分を占めた関東勢の躍進は続いていると見ていいだろう。
神奈川・平戸イーグルスは、2年ぶり2回目の出場で8強まで進出した
全日本学童大会は1990年の第10回大会から、47都道府県の予選を制したチームによるチャンピオンシップとなった。1986年から日本マクドナルドが冠スポンサーとなり、出場チームに与えられる『赤いワッペン』は全国のチーム・選手の大きな憧れだ。
同様に、開会式の会場にもなる「神宮」(明治神宮野球場)がシンボル的な存在でもあったが、2009年の第29回大会から続いた東京都での開催は、今夏の第44回大会をもって終了。今後は全国持ち回りとなり、来年夏は新潟県での開催が決まっている。
その新たな舞台にも登場し、主役となれるかもしれない俊英。今夏の全国で輝いた5年生たちを最後にカタログ方式で紹介して、総括の締めとしよう。
全10本のプレビューに始まり、開幕後のレポートはこれで19本目。4カ月強、アクセスとご愛読をありがとうございました! 夢舞台を含む学童野球界の盛り上がりの一助となるべく、『学童野球メディア』は今後も走り続けます。