今治市営球場で行われた2回戦第3試合には、2週間前に大地震のあった熊本県の代表、IBCレイカーズが登場。地元・愛媛のAKT城東野球軍団(開催地)を下して、うれしい全国大会初勝利を挙げた。昨年に続く2度目の大舞台では、新たな友との交流も生まれている。
(写真&文=鈴木秀樹)
■2回戦
◇8月9日◇今治市営球場
▽第3試合
8長短打6点、IBC逃げ切り
[熊本]2年連続2回目
IBCレイカーズ
100131=6
000030=3
AKT城東野球軍団
[開催地]4年ぶり5回目
【I】横田、永野、横田-山下
【A】森松祐、村上、青野-青野、森松祐
三塁打/横田(I)
二塁打/永野、横田、山下(I)、笠原、青野(A)
【評】IBCレイカーズは初回、先頭の永野路ノ介が左中間二塁打を放つと、5年生の小島一剛がバントで送り、続く上田陽太の中前適時打で先制。4回には上田翔聖主将の内野安打から2つのバントなどで1点を加えると、5回には上田陽太の右前打、山下結海の右越え二塁打、上田主将の中前適時打などで3点を加えた。投げては先発の横田碧がAKT城東野球軍団打線を4回まで無安打零封の好投。継投後の5回、AKTに渡辺颯也と3年生二塁手・笠原一颯の連打、さらに青野陽向の適時打により3点を許したものの、IBCは最終6回にも横田の右翼三塁打などで加点し、逃げ切って勝利を収めた。
―On-the-ground report―
メモリアルな全国1勝
昨年に続き全国大会出場を果たしたIBCレイカーズが、うれしい大会初勝利を挙げた。
ただ、横田暁監督は手放しで喜んではいない。
「本当はもっと打てる子たちなんですけど…。今日はフライアウトが多かったですね」

試合前のシートノックからメンバー紹介までの時間も、とにかく元気な声が絶えないIBC。あいさつの声もひときわ大きく、地元から大挙駆けつけた応援団にも、笑顔でハキハキと応えている。
「今年は元気な子ばかり。ザ・少年野球ですね。ユニフォームを汚してナンボという」
横田監督が目を細める。
「実は、選手の親はボク以外、野球経験者が一人もいないんです。それでも、まとまりが抜群に良い」

昨年、初出場した全国大会は初戦敗退に終わった(北海道・東16丁目フリッパーズに惜敗)。その年末、親子を集めてのミーティングを行った。チーム8期生である現6年生たち中心の新チームで秋の新人戦に臨み、熊本の市内大会で敗れた後のことだ。
あらためてチーム全体で話し合い、全国大会連続出場と、そこでの1勝を目標に掲げた。
先輩たちが成し遂げられなかった全国1勝を、何としてもこの学年で──。
そこからは保護者も含めたチーム一丸、目標に向かい、脇目もふらずに野球に打ち込んだ。「お父さん、お母さんにもスイッチが入ったのか、すべてが変わりましたね。それ以降、チームの雰囲気は、ずっといい感じなんです」と横田監督が振り返る。
IBCの練習は水・金・土・日曜。「ウチは6年生だから試合に出られる、というチームではありません。この試合もショート(小島一剛)と最後に入ったライト(中村一翔)は5年生。選手たちは常に競い合っています」
もともと厳しい練習をこなしてきたIBCの選手たちだが、目標を定めた後は、試合でのプレーも明らかに変わったという。チームはその後、無敗のまま全国大会出場を決めたのだった。

そうして出場権を手にし、全国大会を目前にした7月28日、地元・熊本を大地震が襲った。
「令和8年熊本地震」。地元の空気は一変した。地震によりもたらされた被害や、その影響も落ち着かない中、県を代表して戦うべく、IBCナインは愛媛に向かったのだった。
これまでチームで掲げてきた目標とは別に、大会においても、いや応なしに注目を集めることとなった。
新たなプレッシャーもあったが、心温まる出会いもあった。
「お互い、初日に試合がないということで、昨日は神奈川代表の南瀬谷ライオンズさんと練習試合をしたんです」と横田監督。練習試合が決まってから、南瀬谷は選手らと父母が提案し、「がんばれ熊本」の横断幕をつくり、開会式ではそれを掲げて行進した。
「うるっと来ました。本当にありがたかったですね」。横田監督が笑顔を浮かべた。選手たちも互いに打ち解け、健闘を誓い合ったという。


そんな状況で迎えた初戦で挙げた、価値ある1勝。「本当はもっと打てる」と首をひねる横田監督。6対3ならば、快勝といってもよいスコアではあるが…。「いつもは、どこかで打線が爆発するタイミングがあるんですよね」
いつもと勝手が違うプレーの裏には、指導陣にも選手たちにも、初戦の緊張以外に、意識しないまでも、様々な意味での重圧があったのだろう。
試合中はベンチからも、選手同士でも頻繁に「イメージ!」の声が飛んだ。「選手たちには、常にイメージを持ってプレーすることを大切にしよう、と話してきました。6年生たちは、去年の大会も知っている。この大舞台でのプレーをイメージして、練習にも試合にも取り組んできたんです」
まずは目標達成。「でも、ボクはこれまでも選手たちに『狙うのはベスト4』と言ってきたんです。気持ちを切らさないように、という意味も込めて」と横田監督。「この1勝で、明日は気持ち良く、スコーンといけたらいいんですが」
地元への朗報の意味でも、大きな意味を持つ1勝を挙げたIBCナイン。スタンドでは大応援団から送られた歓声と拍手が響く。喧噪が落ち着くと、今治市営球場のグラウンドに、ユニフォームを真っ黒にした選手たちの、元気なあいさつがこだました。


IBCは初回に三番・上田陽太の適時打㊤で二塁打の永野がかえり先制㊦


5回に山下が右越えのエンタイトル二塁打㊤。先発の横田㊦は2度の登板で4回2/3を無安打の好投


2回裏、レフトに飛んだ難しい当たりを鈴木凛翼(中)が好捕㊤。5回裏、好守備でAKTの4点目を防ぐ㊦

AKTは反撃及ばず…


AKTは八番・二塁のスーパー3年生、笠原が躍動した。5回裏には右翼線に適時二塁打㊤、6回表には一塁手の真後ろに飛んだフライにダイビング㊦


先発の森松祐成主将㊤は3回1失点と粘りの投球。青野は5回裏、左翼線に2点二塁打㊦
