またしても、ひとり練習にうれしいギアが、フィールドフォースから発売された。「エンドレスティー」FBT-700。大量のボールも、ネットも不要。パートナーいらずで、省スペースでもティー打撃ができるスグレモノ。単調になりがちなひとり練習をレベルアップしてくれる、頼れるパートナーの登場だ。
スウィングパートナー×ティー打撃=?
ゴム仕掛けでつるされたボールと、三角形のネットが印象深い、新発売のFBT-700。正面を目がけて、正しくバットを振り抜けば、フィールドフォースのロゴが印刷されたシートに「バシッ」と小気味よい音が響く。このシート自体も、単なるロゴ掲出だけでなく、しっかりと音が出るように考えられた機能を持っているのだ。スウィングが不安定だったり、うまくミートできていないときには、打ち込んだボールがネットに届かなかったり、当たりが弱かったりするので、いい音を鳴らすことができない。しっかりスウィングできているかを判断する、ひとつの指標になる。

ひとりで思う存分、「置きティー」に代わる打撃練習に取り組むことができるという、革命的商品。これまでにフィールドフォースがリリースしてきた、「スウィングパートナー」の延長線にある練習ギアでもある。
「そうなんです」。社長の吉村尚記が解説する。「ひとつには、スウィングパートナー同様、一人で気軽にできる練習の代表ともいえる“素振り”に、明確な目的と意識を持って取り組むための手助けをしてくれるギア、ということもできます」。もちろん、実際にボールを打つことができるという意味では、それ以上の付加価値もあわせ持っている。「いかにストレスフリーで、バットを気兼ねなく振ることができるか。それを追求した結果でもあります」
打球はネットを越えてしまうもの、なのか?
エンドレスティーFBT-700を開発する直接のきっかけになったのは、ある家庭で、高さ3メートルのネットを庭に設置したい、という施工を請け負ったことだったという。
「3メートルといえば、結構な高さになります。ただ、それだけの高さがあっても、やはり打球によっては越えてしまうんです」
かといって、ボールの飛び出しを防ぐために、天井まで設置するとなると、もはや「壁」ではなく「ケージ」状になるため、今度はそれ自体が風で飛ばされたりといった心配も出てくる。これも安易に取り組むことはできないのだ。

「そんな制約なく、思いきりバットを振れるギアは作れないか、というのがスタートだったんです」
そこからエンドレスティーの仕組みに思い至るところが、吉村ならでは、としか言いようがないのだが、ともあれ、こうしてプロジェクトがスタートしたのだった。
目指す仕組みは、ティーバッティング形式のスウィングパートナー。打ってもボールが元の場所に戻ってくるように、ゴム紐でつるす仕組みにすればいい──。では、ゴムの太さ、強さは? すぐに切れてしまわないか? 思いきりスウィングできるものにするためには、その衝撃に耐える強度と、耐久性も必要では…?
アイデアを次々と形にし、試作を繰り返した。上下のゴム紐だけでボールを支える仕組みでは、打った後に長い間、ボールのブレが止まらないため、横方向にもゴム紐を張り、短時間でボールが元の位置に戻り、止まるように調整。支柱やガイドとゴム紐が接する部分には、滑車を付けるなどして、できる限りゴムの擦れを軽減する機構に。その都度、試作品に向かって社員が交代で打ち込むなど、耐久試験も繰り返し、やがて、商品化のゴーサインを出せるまでに、耐久性は高められたのだった。
自宅練習、ひとり練習も全力で!
考えてみれば、自宅で、あるいは一人でする練習は、ほとんどの場合、何らかの制約があり、力をセーブしているのではないだろうか?
前述のネットの高さもそうだろう(そもそも、3メートルの高さのネットを設置できる家もそうそうないと思われるが…)。スペースもしかり。フィールドフォースの代名詞でもある、オートリターンシリーズは、限られたスペースで、少ない球数でも打ち続けることができる、ひとり練習の救世主のような練習ギアではあるが、それですら、決まった大きさのネットに打ち返すことが前提になっている。

「だからこそ、制限なくフルスウィングできるエンドレスティーを商品化する必要性を感じていたんです」
と吉村。これまで世にない商品を創り出す──。フィールドフォースの使命である。そして、それがひとり練習における、新たな練習法を生み出すことになるのであれば、それこそが、いかにもフィールドフォース製品、ということになる。
力いっぱいフライを打ち上げる!
三角ネットの中央正面にあるフィールドフォースのロゴを目がけて打つ、と冒頭で説明した。これが基本的な使用法となるが、少し違った練習もできる。
これまで説明してきたとおり、通常のティー打撃であれば、正面の防球ネットを越えてしまうような大飛球であっても、思い切り打てるのがエンドレスティーの存在理由。であれば、思う存分、フライを打ち上げるのも有効な練習になりそうだ。バットの芯で捉え、三角ネットの頂点あたりに向かって打ち込めば、ちょうど、いわゆる「バレルゾーン」になるだろうか。

「そういえば、3メートルのネットのほかに、もう一つ、開発のきっかけになった出来事がありました」と吉村が言う。「花巻東高校です」
甲子園常連の強豪校、岩手・花巻東高校野球部の佐々木洋監督は、吉村と同じ昭和50年組。元NTT東日本野球部監督の飯塚智広さんも同級生だ(⇒こちらを参照)。その縁で、あるときに花巻東高の指導に行く機会があった飯塚さんが、同校のグラウンドにあった、フライを打ち込むための背が高く、打者側に傾斜したネットの写真を後日、吉村に見せてくれたのだという。「ちょうど佐々木監督の息子さん、佐々木麟太郎選手がいた年です。角度をつけてボールを打つ練習に使っていたんですね」。思いきりフライを打つ練習は、エンドレスティー開発当初から、使い方の一つとして織り込み済みだったのだ。
基本コンセプトは「素振りを意味ある練習に」!

エンドレスティーは、上下の支柱にある、ゴム紐の両端の取り付け位置を変えることで、ボールの高さを段階的に調整することが可能になっている。当然、打球を飛ばしたい方向や、打つべきボールの内外角コースから逆算し、自分の立つ位置や、体の向きを変えることで、ボールの打ち分けや、苦手コースの克服を目指す練習もできる。
使用者の意識次第で、練習の幅も広がる。これもまた、フィールドフォース製品の特徴といっていいだろう。
「打撃の、とくに基本練習で重要なのは、スウィングの再現性を高めることですよね。自分のリズムで、目的意識をはっきりと持って繰り返し、振る。大切な練習だと思うんです」と吉村が言う。「『素振りを意味ある練習に』というのは、ずっと、フィールドフォースの商品開発の大きなテーマの一つですからね。これからもどんどん、追及していきたいと思っているんです」
吉村はそう続け、意味ありげな笑みを浮かべた。
あるいはひょっとしたら、次なる新製品の青写真は、すでに彼の頭の中にあるのかもしれない──。