6月に発売予定の新商品「パラシュートボール」FPRCB-4040。製品名通り、ボールにパラシュートをつけた簡単構造の練習ギアだが、そこはフィールドフォース。納得の商品哲学がある。そして、使ってみてわかる、計り知れないポテンシャル。ひょっとして、初心者の練習風景が変わるかも…。
キャッチボールを「ボールを捕る」練習と考えると…

「パラシュート」+「ボール」。それ以外には何も使っていない。シンプルこの上ないこのギアが、使ってみると、かなり楽しい。空に向かって思い切り投げたボールがゆっくりと落ちてくるさまは、想像はつくものの、それ以上のワクワク感だ。
「キャッチボールって、練習の基本って言われますよね」
フィールドフォース社長・吉村尚記がそう切り出した。
「初心者向けの野球教室なんかをみても、講師の皆さんはそんな言葉を子どもたちに投げかけています」
キャッチボールはすべての基本。しっかりステップして、相手の胸に向かって投げよう──。野球教室では聞き慣れた言葉だ。
「でも、捕る側の初心者にとっては、自分の胸に向かってくるボールって恐怖心がありますよね」
そうなのだ。胸の前でボールを捕るとき、グラブの使い方は基本的に逆手になる。まだグラブに慣れない子どもたちにとっては、決して簡単ではないのだ。
「あるとき、多賀少年野球クラブの辻正人監督が言ってたんです。相手に正対する体勢ではなく、たとえ捕れなくてもボールが体に当たらない、半身の形で構えて捕るようにすればいいと」
そこで、ハタと気づく。
そもそも、われわれはキャッチボールを「投げる練習」と捉えがちで、「捕る側」の視点では、そこまで深く考えていなかったかもしれない。
「そうなんです。でも、“キャッチ”ボールなんですから。捕る練習であるという考えを、もう少し進めると…」
吉村が続けた。
「フライを捕る練習が先にあってもいいんじゃないだろうか、と思ったんですよね」
フライを恐怖心なく捕るためには

フライ練習を、キャッチボールよりも先に…。
これには、吉村なりの根拠があった。
「空間認知能力ってありますよね」
最近では基礎トレーニングのさまざまなメニューにも組み込まれ、その強化が重要とされている空間認知能力。ネットで調べてみると、対象物の形や、自分との相対的関係を3次元的に把握する力──という定義になるらしい。
「フライを捕るという動作は、落下点を予測し、そこまで移動し、捕球する、という一連の作業になります。空間認知能力を高めるための練習にもなるんです」
そして、空間認知能力は野球や他のスポーツにとどまらず、日常生活においても重要であり、子どもの時期にこそ伸ばしたい能力とされる。
「そう考えると、フライを捕る練習には、大きな意味があると思いませんか? ひょっとしたら、キャッチボールより先にあってもいいかもしれません」
なかなかの説得力である。
「ですが、野球を始めたばかりの子にとっては、やはり自分に向かって飛んでくるボールって怖いんです」
物理的に考えれば、真上に投げたボールは、高く投げるほど速いスピードで落ちてくるわけで、初心者にとって、結構な恐怖になるのは確かだろう。小さな子に向かってボールを投げるときには、やさしい下投げでゆっくり、捕りそこなっても手前に落ちる位置に投げるのが普通だ。
「フライを捕る恐怖心を、なんとか取り除けないかと考えた結果、思いついたのがパラシュートだったんです。ボールにパラシュートを取り付けることで、ゆっくりと落ちてくるようにできれば、恐怖心なく捕りにいくことができるだろうと」
発想の転換は、新幹線がヒントに
こうしてたどり着いた、パラシュートボールのアイデア。しかし、これを形にするまでには、結構な時間を要した。
「最初の試作品は、これです」
と吉村。

ボールに、小さなパラシュートをつけた、文字通りのパラシュートボールだ。
「これでたしかに、ボールは遅くなります。ただ、投げたとたんに大きく減速してしまって、あまり飛ばず、近い距離でポトリと落ちてしまうだけでした」
この課題を抱えたまま、数カ月が過ぎた。
「ずうっと考えていたんですけど、なかなか思いつかなかったんですよね」
吉村が振り返る。
「ところが、ある出張の時、不意に新幹線を見て思ったんです。これだ、って」

「新幹線って、ノーズが流線型になってるから、あれだけのスピードが出せるんですよね。いかに空気抵抗を減らすか、という話です」
しかし、パラシュートボールはそもそも、空気抵抗を増やすことでボールを遅くしようと開発が始まったギア。まったく逆の機能と同居できるのか。
「パラシュートの裾に、ボールと結び付ける形で絹のような、なめらかな布を付ければ、飛び出しの空気抵抗を減らせるんじゃないかと思ったんです。そして、ある程度飛んでスピードが落ち始めたところでパラシュートが開いて、一気にスピードが落ちる、と」
放物線の頂点でうまくパラシュートが開くように、布地はポリエステルのメッシュ素材を選んだ。
ここからは、多少、奇跡的である。
メッシュ素材が相性バッチリで、最初は勢いよく飛んでくれるうえに、イメージ通りに中間地点からパラシュートが開き、急ブレーキがかかるようになったのだった。
「布地の選択もバッチリでしたし、パラシュートの大きさは、広げて直径40センチとしたのですが、これもちょうど良く、修正なしでそのままいけたんです」
すべて“目分量”。きわめてアナログな、経験と直感だけで正解を出してしまうところが、いかにも吉村らしい。
新たな練習シーンを創り出すことができるか!?

こうして完成したパラシュートボール。試作品からの変更点は、パラシュート本体の色と、ボール取り付け部の補強布の大型化程度だった。
付属するのは、重さ55グラムのフォースマシン用ホワイトボール。フライを投げたときに落ちてくる速度が緩やかで恐怖心なく捕りにいける、絶妙な重さだ。もちろん、体に当たったとしても痛くない。
ボール取り付け部は、2本の幅広ゴムバンドを十字に配置。ボールは取り換えられるため、付属のホワイトボールだけでなく、もっと軽量な穴あきボールから、重量のある軟式球まで、様々なボールを使うことができる。
グラブを使う必要もなく、遊び感覚で使えるパラシュートボール。高く放り投げるフライの練習以外に、山なりに投げるキャッチボールなどにも、恐怖心なく取り組めるはずだ。
グラブがなくてもOK。キャッチボール・デビューの前に、パラシュートボールで捕球練習を──。そう呼びかけたくなる、気軽さと楽しさを備えた、初心者向けの練習ギアだ。