9月に新発売された「ハイシーム硬式ボール」FHSB-9K。通常の硬式ボールに似た外見で、縫い糸の色が違っている。しかし、ただ糸の色が違うだけではない。縫い目(シーム)そのものが高くなっているのだ。縫い目にしっかりと指をかける意識を持つことで、変化球はもちろん、ストレートの質も変わる。これから硬式野球を始める小中学生はもちろん、すべての投手に実感してほしい、“使って納得”の商品だ。
持ってみると…違いがくっきり
ブルーとグリーンの縫い糸が印象的な、ハイシーム硬式ボール FHSB-9K。通常の硬式ボールに見た目が近いため、間違えることがないようにという配色になっている。
それ以外は一見、通常の硬式ボールと大きく変わりはない。が、握ってみると、はっきりとわかる。縫い目が通常よりも高いのだ。通常のボールの約1.5倍というから、それほどでもないように感じるが、手にしてみると、はっきりと縫い目を意識させられる。なかなかの存在感だ。
「試作段階では、これ以外にもいくつかの高さのものを作ったのですが、この高さがベストでした」
そう話すのは、この商品の開発責任者である営業企画部長の鎌田侑樹だ。

「商品開発メンバーの打ち合わせの中で、『こんなのあったら面白いね』という話が出て、それを形にしたんです。最初に話題になったのは今年の冬、2月でした」
会議の前の意見出しだ。
「そのときにいたのは柏本社の今泉(翔太)、小林(夏希)、成田(雄馬)、リモートで仙台の鈴木崇良、北海道の柴田(隼斗)、足立の原(汰希)でしょうか。いつものメンバーです。『硬式ボールで変化球を投げるのは難しい。回転をかける感覚を養えるものが欲しい』、『これを使ってボールが曲がった、という成功体験を与えられるようなものは作れないか』といったアイデアが出たんですよね」
スライダーって、どうやって?
鎌田自身、中学から高校、大学、そして4年間の社会人野球と、長く投手人生を歩んできた。
「これは個人的な経験なんですが…」
鎌田が言う。
「中学は軟式で、高校から硬式になりましたが、とくに意識することもなく、ずっと変化球を投げていました。スライダー投手だったんです。よくいう『ボールを切る』という感覚だけで投げることができていました」
変化を感じたのは、社会人のときだったという。
「社会人になり、求められる質の高さもそうですが、自分でもレベルアップしなければと思うようになったんです。ストレートのスピードを上げようとフォームを見直す中で、ボクはもともとサイドスローに近いスリークォーターくらいの腕の角度だったんですが、オーバースローに近い形に変えて。そんな風に試行錯誤を繰り返す中で、スライダーが以前のように曲がらなくなったんです。あれこれ考えながら試すうちに、投げ方が分からなくなってしまって…」
もともと、深く考えなくても、感覚で投げることができていた変化球。ところが、投球動作のメカニズム自体を変えてしまったことで、その感覚を取り戻すことが難しくなったのだという。
「あれ、スライダーってどうやって回転かけてたんだっけ、と。以前のイメージで投げても曲がらないんです。かといって、一度変えてしまうと、元のフォームに戻すことも不可能なんですよね。結局、引退するまで、昔の感覚は戻らなかったですね…」
高い縫い目をつくり出すには

そんな鎌田の経験もあり、これから変化球を覚える投手、これまでの感覚を取り戻したいという投手に向け、ボールの縫い目をより意識できるよう、通常よりも縫い目を高くした変化球練習用のボールを作ろう、という方向性が決まった。
次は、そのアイデアをどうやって形にするか。
ここでは、多くのバリエーションのボール作りを手掛けてきた、社長・吉村尚記のアドバイスがあった。
「縫い糸の素材を変える、などの案も出ましたが、それだと指先の感覚も変わってしまいます」
吉村が振り返る。
「そう考えると、通常のボールと同じ、綿糸にはこだわりたい。ただ、普通の製作工程で作ると、縫い目の高さは決まってしまいます」
そこで、本革ではなくPVC(塩化ビニル)製の合成皮革で練習用硬式球を作ったときの経験をもとに、こんなアイデアを出した。
「縫い目の部分に、太めの毛糸を巻き込むようにしてみてはどうかと。本革と違い、PVCは素材自体が伸びることがないので、縫い目の高さを出すために毛糸を使っていた。その毛糸を太くすることで、縫い目をより高くした硬式球ができるのではないかと」
通常よりも少し余裕のあるサイズで裁断し、縫い目部分に毛糸を縫い込んで高さを出す。こうしていくつかの高さの試作品が出来上がり、1.5倍のものが採用されたのだった。
きっかけづくりに

通常のボールと、見た目は大して変わらないが、使ってみれば違いは歴然。難しく考えずに使っても意識づけになり、変化球習得にも役立つ。フィールドフォースらしいアイデア商品だ。
鎌田が解説する。
「変化球を覚えるのに、曲がらなくて悩んでる人のための、きっかけになるギアです。縫い目にしっかり指をかけ、ボールに回転をかける感覚を意識し、身につけておくことが大切なんです」
回転方向、回転数、回転の強さ…。ハイシーム硬式ボールを使ってそれらを意識づけし、通常のボールに戻って練習を続けることで、感覚をつかむことは容易になるはずだ。
これから変化球を覚えたい人も、以前の感覚を取り戻したい人も。
「ハイシームボールを使うことで、難しく考えなくても、ボールを曲げる回転のかけ方、その感覚が身につくと思います。まずは、これから変化球を覚えたい人に使ってほしいですね。すでに変化球を投げている人には、バリエーションを増やすのにも役立つかもしれません」
ストレートにも、強い送球にも
商品化に向け、試作とテストを繰り返す中で、新たな発見もあったという。
「当初は変化球を投げるためのボール、というコンセプトだったんですが、指先で縫い目を意識し、しっかり回転をかけるというのは、ストレートも同じですよね。真っすぐ投げるのにも、回転は大事」
さらに、その感覚が必要なのは投手に限らないという。
「野手にとっても、低くて強い、理想の送球をするためには、ボールにしっかり回転をかけることが必要。その感覚を養うのにもよさそうです」
使い手の工夫次第で、用途も広がる。これもまた、フィールドフォースらしさではある。


「できれば、併せて使ってほしいアイテムがあるんです」
鎌田はこれに追加の提言をする。
「まずはフィンガーパワーボール(硬式球、FFPB-9K)。これもボールに強く回転をかける感覚をつかむのに役立ちます。そして、これはストレートを投げるときのためのギアですが、ロケットリリース・発射バンド(FRRSB-100J/200A/300T)。これはリリース時、指先に力を伝える感覚を養うことができます。この2つを併用した練習は、かなり効果が高いと思いますよ」
変化球習得にも、ストレートの質向上にも、そして力強い送球の練習にも。コスパも抜群。ハイシーム硬式ボール、オススメです。