【2026注目の逸材❾】
須藤敬介
[石川/6年]
西南部サンボーイズ
※プレー動画➡こちら

【ポジション】投手、遊撃手
【主な打順】三番
【投打】右投右打
【身長体重】148㎝39㎏
【好きなプロ野球選手】坂本勇人(巨人)、山本由伸(ドジャース)
※2026年7月25日現在


並の体で特上の速球
150㎝にも40㎏にも満たない身体は、小6男児の平均的なサイズ。ただし、夏の全国大会(全日本学童マクドナルド・トーナメント)や年末のNPBジュニアトーナメントに出てくるような“ツワモノ”のなかでは、間違いなく「小さな部類」となる。
それでいて、スピードボールの最速は春先に107㎞、現在は110㎞超と世代トップクラス。投球動作と球筋はプレー動画にも収めているが、捕手の背後からその1球を目の当たりにしただけで、ぞっこんとなる大人は筆者だけではないだろう。





全身を使って地球の反力も得ながら、力強く振られた右腕から放たれる白球は、途中でもうひと伸びするように迫ってくる。すっと一本足になる立ち姿、きりっとミットを見据える眼光、ぴっと弾くような2本指のリリースに気合いの声。見れば見るほど、うるおしい。
「将来は三振を取れるピッチャーになって、プロに行きたい!」
サイズと力任せの早熟型ではないだけに、大きな夢を叶える可能性も十分と思われる。2009年には全国制覇もしている、西南部サンボーイズ(石川)の背番号1。須藤敬介は今夏の「小学生の甲子園」でも、話題をさらうかもしれない。

朴訥とした野球小僧
2年前の夏、須藤は同級生の相原咲也との二遊間コンビで全国出場している。1回戦で北名古屋ドリームス(愛知)に完敗。当時4年生の須藤にも、夢舞台は儚くてホロ苦い思い出となったようだ。

東京固定開催の最終年となった2024年、西南部は14年ぶり7回目の全国出場。6年生が4人と若いチームのなかで、当時4年生の須藤は正遊撃手。㊦写真は同年6月の壮行試合。須藤は左から3人目

「悔しかったイメージが残ってます」
二番・遊撃で出場し、守ってはノーエラーで打っては音なし。第1打席で四球、あとの2打席は三振で終戦を迎えた。
現在は遊撃守備がより堅実かつ華麗になり、三番を打つ三刀流で、自身2度目の全国出場にも貢献した。打撃はコースに逆らわない、アベレージタイプだ。
「目標は全国制覇。全国では緩急を使ってくるピッチャーがおるから、それに対しても打てるようにしていきたいです」

走塁でも遊撃守備でも、巧みな身のこなしが際立つ。「野球以外では家でゲームか、学校でドッジボールとかしとる。体育の走る系と投げる系はみんな得意」(須藤)

チームのOBでもある北川貴昌監督は「いわゆる野球小僧ですね」と、エース右腕を評する。
「須藤の親御さんが保護者会長をしとるもんで、自宅にお邪魔して話をすることもあるんですけど、その間も彼はず~っとボールに触れたり、ず~っとバットを振ったり。ホントに野球が大好きな子で、その“やりたい感”がプレーに出とると思います」



それにしてもなぜ、小さな体であのようなストレートを投げられるようになったのか。「しゃべるタイプの子じゃない。プレーで見せるタイプ」と、指揮官から聞かされていたが、あえて直球の質問を投げると「わからん!」とひと言。それでも、変化球も混ぜた問い掛けから会話が弾んでいった。



「小さいころから肩が強かったのか、どこかのタイミングで速くなったのか? 4年か5年くらいから速くなった」
「そのころに特別なことを? 硬式ボールの重い球みたいので、こうやって手首と指を鍛えて…」
「誰かに教えてもらって? いえ、自分でユーチューブの動画とかで見て家でやっとる」
「毎日それを? う~ん毎日かわからんけど、よく。あとは試合前は特に。それをやり出してから、ボールに伸びがある」
「指にボールが掛かって、あれだけ真っすぐに伸びていったら、気持ちいいのかな? はい、指に掛かるとココ(指先)に豆ができる。しっかり掛かって速い球がいっとるときは、三振取れる感じもするし、そのときは気持ちがいいです」



多少の人見知りかもしれないが、どこにでもいる6年生だ。擦れてない朴訥とした須藤少年は、4きょうだいの末っ子。すでに社会人の兄と姉に、高1の姉(今夏の甲子園出場を決めた遊学館高のマネジャー)をもつ。
兄の大きな背中を追って、野球らしきことをやりだしたのは2歳あたり。そして4つ上の姉が4年生で入部する際に、一緒に西南部の門を叩いた。
「最初から楽しかった。バッティングより投げるのが特に好き。ピッチャーでもショートでも、とにかく投げるのが好き」



強烈なライバルと、こだわり
須藤の今日を語る上で、外せないは先述の同級生のチームメイト、相原の存在。そのように指摘するのは、北川監督だ。
「彼らは性格も好対照で、1年生のときからず~っとライバル心むき出しで、張り合いながら成長してきとる。野球のことはどっちも譲らない。低学年のころも、背番号の20番と21番をそれぞれ与えると、『なんでオレのほうが大きい番号なのか!?』と揉めて。入れ代えたら『なんで代えるのか!?』とまた揉めて…」

1年時から切磋琢磨してきた須藤と相原。㊤は2年前、㊦は現在

ただし、憎しみ合っているわけではない。互いに負けん気も人一倍で、激しく競い合ってきた結果、ともに高いレベルのプレーヤーとなっている。2ショット写真を撮る際には目を見合わせて笑うが、双方へのコメントはなかなか出てこない。それでも目標は「全国制覇!!」と、あらためて口をそろえた。

現在は主将も務める相原(=㊤写真)は二番・遊撃で、マウンドに立てば迫力のあるボールを投じる。また背番号3の坂下遥輝(=㊦写真)も、まとまったフォームでリリースが安定している。

そして受ける捕手の西琉臣(=㊦写真)も、基礎スキルと強肩強打が光る。バッテリーがこれだけハイレベルなのは、指導力によるところも大なのだろう。
「須藤と相原は金沢市を越えて、今では石川県でも名前が通る。奢ってしまうような扱い方をされることもある。にもかかわらず、テングにならない。野球というスポーツは1人ではできない、ということを彼らは分かっとるんです」(北川監督)

2年前は、6年生が4人のチームで全国出場。上にはぜんぜん上がいる世界を、4年生の段階で肌身に感じたことも鼻が伸びない理由だろう。
「それとウチは、あの2人だけが奮闘しているわけでもない。周りの選手も一緒になって底上げができとる。なので、今年のチームは攻守で“つながり”があるんです」(同監督)

開幕までもう10日を切っている全国大会。世代屈指の須藤と相原をはじめ、実力派の6年生7人がそれぞれパフォーマンスを発揮すると、17年ぶりの日本一も現実味を帯びるのではないか。須藤の“弾丸ストレート”への率直な感想とともに、指揮官へそのように伝えると、すぐ近くにいる本人に聞こえるように30番が言った。
「あの子(須藤)は、自分の型というかポリシーがあって“ザ・ピッチャー”なんです。それはいいかなと思うんですけど、キュウリしか食べんもんでね。『ガソリンを入れんかったら動けんよ』といつも言っとるけど、なかなか…」

ニヤつく背番号1に、筆者が軽口で畳み掛けてみる。
「キュウリが大好きなんて、それもまた珍しい。じゃあ、『カッパ投手』というタイトルで売り出そうか?」
すると、背番号1は元のぶっきらぼうに戻って、ひと言。
「イヤだ!」
補足をしておくと、好物はキュウリ一択ではない。メロンやブドウも好んで食べている。「肉は? 食えるけど、ホルモンは食えん。魚は? そんなに好きじゃない。カニは? 食える」
北陸の“小さな怪腕”は、独自のこだわりにおいても取材者を飽きさせない。これからもっともっと、多くの人たちに、より深く知られていくことだろう。

(動画&写真&文=大久保克哉)