【東日本交流大会/準決勝❷】初顔対決その2。雨が何!? 7点差の“名勝負”90分

2026.04.30 |更新日:2026.04.30 2026リポート
【東日本交流大会/準決勝❷】初顔対決その2。雨が何!? 7点差の“名勝負”90分

 大会最終日は、準決勝に続いて決勝と3位決定戦がある。大詰めでのダブルヘッダーは、全国予選でも珍しくはないし、投手の頭数と球数や継投策がカギを握ることも多々。メイン会場での準決勝で対峙した、ラウンダース(山梨)と吉川ウイングス(埼玉)は、ともにエース右腕が先発しての真っ向勝負を展開。最終的に点差は開いたものの、中盤戦まではスーパープレーや好守を応酬。雨天によるミスや四死球も霞んでしまう“名勝負”から、ヒーローと敗軍のサイドストーリーもお届けしよう。

(写真&文=大久保克哉)

※記録は編集部

■準決勝2

4月4日◇希望ヶ丘公園野球場
▽第1試合
ラウンダース(山梨)
 30005=8
 10000=1
吉川ウイングス(埼玉)
【ラ】伊藤、深沢琉-中村
【吉】松浦、小玉葵-安保
三塁打/佐野(ラ)
二塁打/杉本(吉)、小番(ラ)

【評】先行のラウン伊藤誉、後攻の吉川松浦遥史。先発投手がそれぞれ、一番打者としてヒットを放って攻防は始まった。ラウンは二死二塁から雨宮城玖奥山葵登主将中村悠の3連打で3点を先取すれば、吉川はその裏、二盗と内野ゴロ2つで1点を返す。2回裏にラウン佐野大翔がセンターゴロを決めれば、吉川も3回表に二盗を2つ阻むなど、守っても互いに譲らない。ラウンは4回から左腕の深沢琉がマウンドへ。降り出していた雨が強まるなかで、吉川は徹底した待球作戦で3四球を選ぶも、得点はならず。直後の5回表、ラウンは打者10人の猛攻で5点を奪い、試合を決めた。
〇ラウンダース・日原宏幸監督「タイムリーヒットは奇跡だと思っているんですけど、2アウトからタイムリーが出たり、バッティングが非常に良くなっていて私自身がびっくり。リードしているなかで失敗もありましたけど、自分たちのするべきことをしっかりと分かっているのも大きいと思います」
●吉川ウイングス・岡崎真二監督「スコア以上に、戦えたかなと感じています。序盤の攻撃では、相手ピッチャーの伊藤クンの速い球にしっかり食らいついて良い打席が続いたと思いますし、ウチの松浦もよく投げました。初回も1点で抑えておけば…」

ラウンの伊藤㊤と吉川の松浦㊦は、ともに先頭打者安打から生還。投げてもゲームをつくった

1回表、ラウンは四番・雨宮城がレフトへ先制打㊤。続く奥山主将と中村㊦もタイムリーで3点を先取

吉川は2回、五番・杉本颯斗が右越え二塁打㊤も後続は好守で断たれる。ラウンは5回表、佐野の2点三塁打㊦など5本の長短打で8対1に

 

―Pickup HERO―
ふたつの敵とも格闘しつつの大収穫

ふかさわ・れん
深沢 琉
[ラウン6年/投手]

 2点リードの4回裏。二番手で登板した深沢琉を待ち受けていたのは、ふたつの敵だった。まずは強まりだした雨脚。そして2ストライクまでじっくりと見定めてくる、相手打線だ。
「今日みたいな雨で投げるのは初めてでした」


 深沢は本来、制球力を主体にテンポよく打たせて取るタイプ。だが、すでに水が浮いてきていた足場のせいだろう、1球ずつを確かめるように左腕を振っていた。
 それでも、一死から連続で与四球。明らかなボール球を続けるような乱調ではないものの、微細なコントロールがいまひとつ。また相手の吉川ウイングスも、常に全国大会をうかがう強豪チームだ。どの打者も、ボール球にみすみす手を出して助けるような愚を犯すはずもなかった。


 内野ゴロで走者に守備妨害があり、どうにか二死。だが、続く打者には追い込んでからファウルで粘られた末、四球を与えてしまい、満塁のピンチとなる。
 ここで一打が出れば同点、長打なら逆転だ。絶好機を迎えた吉川ベンチは、クリーンナップに入ることもある5年生の右バッターを代打で起用した。一方のラウンダースのベンチは、動く気配すらもない(=㊤写真)。さぁ、どうする深沢――。
「(雨で)手もボールも濡れて結構、滑ったんですけど、ベンチとか内野からいろいろ声を掛けてもらったし、濡れてるから投げられないじゃなくて、濡れてても投げるのがピッチャーの仕事。なので、強い気持ちで押していきました」


 結果、大ピンチを二飛で切り抜けた深沢は直後の5回表、先頭でクリーンヒットを放って大量5得点の足掛かりに(=㊤写真)。
 ハイライトは2イニング目の投球にもあった。先頭打者の絶妙なセーフティバントを、機敏かつ完璧に処理してアウトにしてみせた。さらに強烈なピッチャーライナーも捕球、そして最後は投ゴロと、全3アウトを自身の守備で奪って勝ちゲームを締めた。
「フィールディングは前は苦手だったんですけど、ヤマト(同じ左腕の佐野大翔)がすごく巧くて、それを何でだろう、みたいに考えて練習してきたことが実戦につながったと思います」
 軟投派の背番号11は、落ち着いてそう話した。また選手個々のそういう努力もよく知っている指揮官は、手放しでこう称えた。
「あのセーフティバントは瞬間、やられたと思いましたけど、よくアウトにしましたね。彼(深沢)はフィールディングが得意ではない部分があったし、秋からの課題でもあったなかで、練習してきた成果が出ましたね。バッティングもそう。私もホントにうれしいです」(日原宏幸監督)


 ちなみに、深沢が同じ左腕の佐野のフィールディングから読み取った答えは、こういうものだった。
「投げ終わったら、もう野手になる。ヤマトは、投げた後にすぐ別の動きに反応するのが速いなと思って、それをマネして練習しています」
 強い、巧いだけではない。無機質な野球ロボットの衆でもない。子どもながらに思考を巡らせ、行動にも移せる。そういう選手も育つのが、ラウンダースというチーム。全員が活躍・機能した一戦のなかで、最も収穫を得たのは深沢だった。

 

―Team Inside Story―
関東準V王者に肉薄。手応えありの大会締め

第4位
よしかわ
吉川ウイングス
[埼玉]

 既定の90分を5イニングで使い切った準決勝。これを落とした吉川ウイングスの面々は、すぐさまベンチを空にして、3位決定戦が待つ隣接のフィールドへと消えていった。
 終わってみれば7点差。1対8という最終スコアからすれば、大敗である。しかし、岡崎真二監督(=㊦写真)の足取りは重くなかった。むしろ、手ごたえありという口ぶりだった。


「今の試合を見ていない人は、スコアを見てラウンダースの強さが圧倒したんだなと感じると思うんですけど…。戦った現場の者としては、スコア以上に戦えたかなというふうに感じています」
 選手たちへも移動する前に、そういう主旨を手短に話したという。現場で取材した筆者の感慨もまた、岡崎監督と重なる。少なくとも、ラウンダースの圧勝ではなったし、2点差で推移した4回までは手に汗を握るような展開だった。


 ラウンダースの先発は、昨秋の関東新人戦(準優勝)で唯一の110㎞超えを果たしていた伊藤誉(=㊤写真)。「2026注目戦士❷」で紹介している、ミライモンスターだ(➡こちら)。その出色右腕の速球に、ウイングス打線はのっけから食らいついた。
 1回表、先頭の松浦遥史は2球ファウルしてフルカウントから、逆方向へクリーンヒット。そして3球目で二盗を決めると、内野ゴロ2つで生還した(=㊦写真)。
 二番・西田睦翔(5年)の進塁打(三ゴロ)も、三番・安保凱翔主将の打点(二ゴロ)も、速球をファウルした末に生まれていた。さらに2回には、五番・杉本颯斗が文句なしの右越え二塁打を放っている。


「序盤の攻撃では、伊藤クンの速い球にしっかり食らいついて良い打席が続いたと思います」(岡崎監督)
 全国トップレベルのスピードボールに、手も足も出なかったわけではない。下位打線もそうだった。2回裏、一死二塁からは七番・進恵翔が右中間へ、続く八番・城ケ崎翔は中前へ、それぞれきれいに打ち返した。

2回裏一死二塁、進の打球は右中間へ上がる㊤。だが、予めそこに寄っていた相手の右翼手・小玉に捕球されて二走は動けず㊦

 進の打球も、城ケ崎の打球も、ふつうならヒット。だが、ラウンダースは守っても「並」ではなかった。右中間への飛球は「バッター的に来るかなと思って寄りました」という右翼手・小玉翔太が難なくキャッチ。続いて二遊間を抜けた打球は、中堅手・佐野大翔が捕球から一塁へ矢のような送球でセンターゴロに。

2回裏二死二塁、城ケ崎はきれいに中前へ弾き返す㊤も、「いつも狙っている」というラウンダースの佐野の手にかかっての中ゴロでチェンジに㊦

 渋いスーパープレーと、ド派手なスーパープレーによって、吉川は得点を阻まれた。それでも打線1巡目で、怪物級の投手にこれだけ対応できたのだから自信になるはず。2巡目以降で得点は生まれなかったが、攻撃は機に応じて幅があった。
 雨脚が強まるなかで、相手投手が軟投派の左腕に代わると、今度は計ったようにストライクとボールとを見極める。そして続けざまに3つの四球を奪ってみせた。5回の先頭、代打で登場した佐藤威斗のセーフィバントは、発想も転がした打球も絶妙だった。


 守りでは失点につながるミスも出たが、練習の成果も随所に。中堅手の阿部稜央(5年=㊤写真左)は本塁好返球があり、左翼手の進(=㊤写真中央)は再三の守備機会に適切な位置取りと動きでノーミスを貫いた。
 投内の連係で奪った一発けん制のアウトもあり、3回には2つの盗塁を阻止。その2つめは、ウエストからドンピシャの二塁送球だった(=㊦写真)。


 マスクをかぶる安保主将の送球力は本物。洞察力がより伴ってくれば、鬼に金棒か。指揮官も満足するだけではなく、課題を忘れていなかった。
「アウトになるのかセーフになるのか。ギリギリのところで気持ちを出せるか、というあたりに相手とウチでは差があったと思います。そこでもう少し、気持ちを強く持ってプレーができたら、(スコア上でも)互角に戦えるんじゃないかなと」

千葉の新興チーム、ASAI KIDS☆UNITEDとの2回戦は、5年生の四番・玉井颯音のサヨナラ打で勝利

 全国予選の試金石と位置付けられるこの大会で、意外にも4強以上は今年が初めて。2回戦はサヨナラ勝ちし、続く準々決勝では“房総の盟主”豊上ジュニアーズ(千葉)に打ち勝った。
 3位決定戦は、戸塚アイアンボンドス(神奈川)に7対8でサヨナラ負けも、ゴールはここではない。ウイングスの覚醒の足音は、夏まで響きそうな勢いだ。


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