47都道府県のチャンピオンによる「小学生の甲子園」こと、8月の全日本学童大会マクドナルド・トーナメント。関東地区では、今年も群馬県代表が最初に決まった。その予選の結果は速報済だが、最終日の3位決定戦からリポートしていこう。3回まで好勝負を展開した両軍は、全国予選での県4強以上は初めて。成り立ちも野球も異なるが、子どもの快活さは共通していた。なお、この一戦の勝者は阿波おどりカップ2026(徳島県)、敗れた4位チームはコントリビュートカップ第49回関東学童(神奈川県)と、8月の上部大会にそれぞれ出場する。
(写真&文=大久保克哉)
※記録は編集部、本塁打はすべてランニング。決勝のリポートは追って公開します
■3位決定戦
◇5月3日 ◇上毛新聞敷島球場
群馬ワールドウイングス(高崎)
0010=1
0017x=8
赤堀クラブスポーツ少年団(伊勢崎)
【群】唐澤、安藤-桑原
【赤】岩崎、吉田-藤倉
三塁打/岩崎(赤)
二塁打/神尾(赤)
【評】4回表までは、緊迫の接戦だった。赤堀の先発・岩崎葵は打たせて取る投球で快調にアウトを重ねる。対する群馬も1回裏、二塁手の阿部力毅と中堅手の山本塁撰の好守でピンチを脱するなど、得点を与えない。その群馬が3回表、四球と犠打に二番・安藤翔輝の左前打で先制すれば、赤堀は一番・筑井勇征(5年)の左前打に二盗、四番・岩崎の中越え三塁打で1対1に。4回表、中堅手・神尾陽斗の美技など打者3人で守りを終えた赤堀は直後、一気に試合を決めた。先頭の五番・天野楓也から森下一槻(5年)、藤倉羚生の3連打で満塁とし、八番・神尾の左翼線二塁打で4対1に。さらに重盗や三番・吉田大蔵主将の中前打で加点し、六番・森下の右前タイムリーで8対1となり、コールドが成立した。
〇赤堀クラブスポーツ少年団・吉田貴行監督「3回まで1点が重い展開だったんですけど、4回はウチのパターンに。ちょっと扉が開くと一気に爆発する(得点)。そういう選手ばっかりで良かったと思います」
●群馬ワールドウイングス・大嶋良汰監督「1回、2回と守備で良いプレーもあったんですけど、4回にミスも続いて相手の攻撃を止められず…。監督として詰めの甘さと、苦しい場面で士気をつくれなかったのが反省点です」

赤堀の先発・岩崎㊤は3回1失点。群馬は1回裏二死一、三塁のピンチで、中堅手の山本が右中間への飛球を好捕㊦


3回表、群馬の安藤が先制タイムリー㊤。赤堀はその裏、筑井(5年)が左前打㊦から二盗、岩崎の中越え三塁打で同点に


4回表に美技を披露した赤堀の中堅手・神尾㊤㊨が、裏の攻撃で満塁走者一掃の決勝二塁打。イニング11人目の打者・森下(5年)がコールド勝ちを決める適時打を右へ㊦

―Team Inside Story➊―
「楽しんでいこうゼ!」準備万端、おおらかな野球で大躍進

➡阿波おどりカップ2026出場決定
前日の準決勝は、9安打11残塁で完封負け。最後の1安打が印象的だった。

0対5の6回表、二死無走者から九番・川田眞琥音が中前打(=㊤写真)。初球から4球ファウルした末に、チーム9本目の「H」を灯した川田は打席中、ただの一度もベンチを見なかった。打って出る! 堅固な意思は冒頭のスイングから読み取れたし、「好球必打」は他の打者も同じだった。

「9安打でゼロ点は監督の責任かな」と自嘲気味に笑った吉田貴行監督(=㊤写真)だが、後悔の色は浮かんでいない。そしてこう続けた。
「上のカテゴリーでも通用する野球というのを私自身も求めていますので、あまり小細工をせずに『初球から良い球がきたら、いこう!』といつも。それで5球とかで攻撃が終わっちゃうこともあるんですけど、『楽しんでいこうゼ!』と。この大会(全日本学童マクドナルド・トーナメント※予選含む)と同じ合言葉でやってきていますので」

吉田主将は一本足打法㊤で2安打3打点。深澤大駕は前日の準決勝で中前打㊦

走者がいない打席では、ストライクを打つのみ。やるべきことが明確ゆえ、いちいち指導陣の顔色をうかがう必要もないのだ。
同様の方針を掲げる学童チームは少なくないが、赤堀クラブスポーツ少年団が特異なのは、何があろうとその根本が揺るがないこと。目先の1点や勝利を欲するがあまりに、「待て」を命じたり、凡退を咎めるような矛盾がベンチにない。

また大前提として、どの選手も打って出るだけのスイングを身につけている。実父でもある監督を「最高の監督で、最高のパパ」と語る吉田大蔵主将は、「火曜日と木曜日のナイター練習は厳しいです」とも口にする。
要するに、整ったお膳と明解なアプローチによって、おおらかな野球が展開されている。無責任と成り行き任せの「楽しむ」とは決定的に違う。県大会(全国予選)初出場で3位まで駆け上ってきた最大の要因も、そこではないだろうか。

3位決定戦も、1回、2回と好機はつくるも無得点。それでも二盗、三盗があり、無死一塁からヒットエンドラン敢行など、走者がいる場面ではサインプレーも見られた。そして3回表、岩崎葵の“四番のひと振り”でついに得点が入る(=㊤写真)。
「昨日からずっとタイムリーが出てなかったので、絶対に自分が打ってやろうという気持ちでした」
外野オーバーの長打をこう振り返った岩崎は、相手の中継プレーで本塁タッチアウトとなり(記録は三塁打)、勝ち越しの生還はならずも1対1の同点に。待望のこのタイムリーが、攻撃の導火線に火をつけた。続く4回、打者11人の波状攻撃で7点を奪ってコールド決着に。

その超ビッグイニング中に、攻める赤堀側の一塁ベンチがドッと湧くシーンがあった。いきなりの連打で無死一、二塁となり、守る群馬ワールドウイングスが二番手投手をマウンドへ。このタイムの間に、いつもは沈着冷静な吉田監督をはじめ、指導陣の笑い声で盛り上がった(=㊤写真)。そのワケは――。
「バントをしたい場面だったんですけど、本人(打席の七番・藤倉羚生)が、いかにも打ちたげな感じで(笑)。『信じてるから、打ちたいならバスターでいってこい!』と。期待に応えてくれましたね」(吉田監督)

藤倉は左前打(=㊤写真)で満塁とし、続く神尾陽斗の決勝タイムリーにつなげた。中堅守備も冴えていた神尾は、左打席から1球目2球目を一塁線へファウル。八番打者(準決勝は二番)とは思えぬ鋭い打球を連発すると、3球目を逆方向のレフト線に運ぶ技ありの一打(=㊦写真)で、走者3人を迎え入れた。

長短打7本で7得点した4回の攻撃は、五番・天野楓也の中前打㊦から始まった

攻守のヒーローは8月の阿波おどりカップに向けて、抱負をこう語った。
「守備でも活躍して、バッティングでも活躍できるようにがんばります」(神尾)
伊勢崎市が熱い!!
活動拠点の伊勢崎市は群馬県の南部、埼玉県との境にある。この時代に人口が増え続けていることも、近年の躍進の一因なのかもしれない。

準決勝の伊勢崎市対決で敗れた赤堀だが、すぐさま心のこもったエールが勝者の応援席へ㊦

今大会は準決勝の第2試合が「伊勢崎市対決」に。これを5対0で制した玉村ジュニアベースボールクラブは、翌日の決勝もものにして初優勝。赤堀は前年の伊勢崎南ホークス(➡こちら)に続いて、銅メダルに輝いた。
「去年の秋も今年の選抜大会(春季大会)も、支部大会で玉村さんに負けて県大会に出られなかったんですけど、玉村の髙木(謙)監督とはワイワイと野球談議をさせていただく仲。去年の伊勢崎ホークスさんに続いて、今年は私たちが阿波おどりカップに行かせてもらいますけど、群馬県代表、伊勢崎市の代表として、いつも通りの野球を元気よくやってきたいなと思っています」(吉田監督)

―Team Inside Story❷―
通年スクールから派生。4年目のエポックメイキング

日本のプロ野球(NPB)12球団で、いち早く子ども向けの通年スクールを起ち上げたのは読売巨人軍で、「ジャイアンツアカデミー」は開校20年の節目にある。各年代の発育発達にも則った指導育成法『ジャイアンツメソッド』は今や、球団や地域の垣根も超えて全国的に広がっている。

そしてこの2026年5月、また画期的な出来事があった。
系列のスクールでジャイアンツメソッドを習得したコーチ陣が、2022年に群馬県高崎市で「群馬ベースボールアカデミー(以降、アカデミー)」を開校。その講師陣と生徒で編成する群馬ワールドウイングス(以降、ウイングス)が、軟式野球連盟に加盟4年目にして、全国最終予選(県大会)で4強入り。「小学生の甲子園」まであと2勝というところまで大躍進したのだ。

「この(6年生の)代は、去年の秋に『全国大会に行こう!』とスタート。練習試合を含めていろんな負けを経験して、それを糧にやってきたメンバーなので、厳しい試合も多かったんですけどホントによく戦ってくれた。3位決定戦の後には『悔いない!やり遂げた!』と私からみんなに言いました」
こう語る大嶋良汰監督(=㊤写真)は、アカデミー開校時からの講師で、昨秋にウイングスの新指揮官に。24歳と若く、選手たちを明るく前向きに引っ張るリーダーのようにも見えた。

前日の準決勝は、3回までスコアボードに「0」がなし。壮絶な点取り合戦となったが、3回終了後のグラウンド整備中に、指揮官は選手たちへこう伝えていた。
「どこよりも強い気持ちを持って、最後まで戦い抜こう!」
スコアは6対6。勝負の後半戦を前に、「勝つぞ!」「打て!」「ゼロで抑えろ!」など結果を厳命するのではなく、目的を果たすための手段をワンポイントで伝える。こういう声掛けはコーチングを学び、現場でも経験を積んできたからこそだろう。

迎えた後半戦で、守りのミスが響いて7対9と惜敗(=㊤写真)。選手には涙もあったが、指揮官は彼らの成長を実感していた。
「ちょっと前までは、大差をつけられてそのまま負けてきたんですけど、今日はミスしても凹まないし、失点してものうのうと。一人ひとりがワンプレーにこだわって、全力でやれたと思います」

よく目立つのは、大人のような巨漢の四番・桑原桜翔(=㊤写真)。軟式J号球をピンポン球のように弾き返し、準決勝では2打席連続で打点を挙げたが、どの打者もバットがよく振れていた。

六番の内田磨知は準決勝で右越え本塁打(=㊤写真)。五番の北原蒼太は、準決勝と3位決定戦を通じて無安打ながら、振り抜きも利いたスイングで鋭いファウルを何本か。下位打線はバスター打法を多用していたが、四球狙いではない。ミート率を高める「スイングドリル」としてスクールで実践しているだろう内容を、そのまま本番で再現していた。

写真㊤は五番・北原、㊦は九番・山本

「選手も十人十色。一人ひとり違うので、指導方法も必ずしも同じではない。その子に合ったバッティング方法だったりを教えています」(大嶋監督)
選手たちは月曜から木曜まで毎日、スクールに通っているとあって、投げ方も総じて基本が備わっている。

写真㊤は安藤、㊦は唐澤主将

右腕コンビの安藤翔輝と唐澤幸雅主将は100㎞超を投じ、二塁手の阿部力毅、中堅手の山本塁撰は守備範囲が広く、ビッグプレーも。また3位決定戦では、外野から本塁までの中継プレーで、相手のランニング本塁打を阻んだシーンもあった(=㊦写真)。

二塁手の阿部㊦は広い守備範囲とフルスイングが光った

チームとしては、昨春の県選抜大会の準優勝を超えられず。「全国出場」の悲願も幻となったが、どのチームも照準を合わせてくる全国最終予選に3回目の出場で最高成績となる県ベスト4入り。これで、8月に神奈川県で開催されるコントリビュートカップ関東学童の出場権を手に入れた。
「関東大会まで無敗記録をつくろうという新しいテーマを立てて、7連勝中なんです。どんな劣勢の場面でも、慌てず落ち着いてプレーできるようになりましたし、サク越えホームランも増えてまして。リフレッシュした子どもたちが、また伸びていることを実感しています」
1点を争う接戦から一転、悪夢のようなサヨナラコールド負けを喫した3位決定戦から、約3週間。指揮官の声は明るく弾んでいた。

教員免許も持つ金子コーチが、全国予選ではノッカーとスコアラーを兼務。アカデミーではヘッドコーチを務める

アカデミーは主に学年別で5クラスあり、定員は各20人。月謝は3000~9000円で、生徒は全員がウイングスに加入しているわけではなく、5期生にあたる現6年生も半分の10人だけだ。大嶋監督は、アカデミーにはウイングスのチーム事情などを持ち込まないように注意を払っているという。
「スクールとチーム(ウイングス)は完全に別もの。スクールのほうは初心者も多いので、他の生徒と力の壁を感じさせないような指導やケアを心掛けています」
1クラス50~90分の授業を、週4日間で計20コマ。これを現在は、大嶋監督と金子瑞稀コーチの2人で回している。そして土日はウイングスでの指導と、相当にヘビーな野球漬けの日々に違いない。だが、大嶋監督は心配を寄せ付けなかった。
「子どもたちが無邪気にいつもついてきてくれるので。それに応えるのがボクの仕事です」

通年スクールが編成する学童チームも激レアだが、連盟に加入して全国舞台をガチンコで目指すというのも史上初かもしれない。まったく新たなスタイルの学童チームは、まだまだ脚光を浴び始めたばかりである。