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【吉川市近隣大会】第40回で史上初、吉川ウイングスV3

2026.04.01 |更新日:2026.04.29 2026リポート
【吉川市近隣大会】第40回で史上初、吉川ウイングスV3 - フィールドフォース

 埼玉県吉川市が「町」だった昭和時代の、1987年に始まった伝統の大会。吉川市近隣大会は県下6市1町と千葉県流山市の34チームによるトーナメント戦を2週にわたって行い、吉川ウイングス(吉川市)の3年連続7回目の優勝で閉幕した。節目の第40回大会にして3連覇は史上初。その王者を含め、3月21日の最終日まで勝ち進んだベスト4は、いずれも特筆に値するチームだった。

(写真&文=大久保克哉)

※学年未表記は新6年生。記録は編集部

■決勝

3月21日◇旭公園野球場

▽第3試合

吉川ウイングス(吉川市)

 010234=10

 200001=3

三郷スターズ(三郷市)

【吉】松浦、玉井-安保

【三】安是、長谷川-長谷川、及川

本塁打/玉井(吉)

三塁打/飛鳥田(三)、進2(吉)

二塁打/安保(吉)、長谷川(三)、岩熊、杉本、西田(吉)、安是(三)

【評】飛鳥田凌久の先頭打者三塁打からスクイズで先制した三郷スは、なおも長谷川蒼史主将の左翼線二塁打に、四番・菅原航太の右適時打でリードを2点に。投げては5年生の安是煌聖が、1失点で前半戦を折り返した。対する吉川ウは4回表、新5年生コンビの玉井颯音と岩熊正臣が連打で流れを変えた。続く杉本颯斗も四球を選んで無死満塁に。守る三郷スはここから1-2-3併殺を決めるも、吉川ウは八番・進恵翔の右越え三塁打で3対2と逆転に成功。吉川ウはさらに玉井のサク越え弾など、長打攻勢で計10点。先発の松浦遥史は、無四球完投まであと1人の好投で大会初の3連覇を呼んだ。

1回表、三郷スは飛鳥田の三塁打㊤と守藤悠人のスクイズで先制㊦

吉川ウは松浦㊤、三郷スは5年生の安是㊦。両先発が大一番を引き締めた

吉川ウは八番・進の2打席連続の適時三塁打で4回に逆転㊤。5回には5年生の四番・玉井がレフトへ豪快にソロアーチ㊦

 

―Team Inside Story➊―

指揮官「うれしい悩み」。チーム内競争激化で覚醒中

優勝

=3年連続7回目

よしかわ

吉川ウイングス

[埼玉・吉川市]

 競技人口が激減する昨今にあって、40年に及ぶ大会で初の3年連続優勝。これは、吉川ウイングスの地力と組織力の表れでもあるだろう。2021年にチームを2回目の全国大会(全日本学童マクドナルド・トーナメント)に導いている岡崎真二監督も、安堵の様子で一定の手応えを口にしている。

「組織を束ねる人間として、この年は強いけど、この年は落ちる、みたいなチームにはしたくないですし、毎年勝ち続けないといけないという責任も感じています。そういうなかで、今年も子どもたちが結果を残してくれて、これを自信につなげてくれたらいいなと思います」

 新6年生は11人いるが、決勝はスタメンの4人が新5年生で、それぞれに機能。中でも四番を張る玉井颯音は、最終日の3試合で唯一となるサク越えアーチを放つなど堂々たる活躍ぶりだった。

「低学年のころはホームランを打っていたけど、上のチームに来てからは久しぶりです。このままどんどん勝ち続けて、負けより勝ちを多くしていきたい」(玉井)

決勝の4回にエンタイトル二塁打の五番・岩熊正臣㊤、6回に満塁走者一掃の二塁打を放った二番・西田睦翔㊦は、ともに新5年生

 もちろん、新6年生たちも随所で存在感を示した。準決勝で“あわやサイクル安打”の松浦遥史は、決勝は“あわや無四球完投”と大車輪の活躍で大会MVPに。正捕手の安保凱翔主将は決勝の3回に二盗を阻み、準決勝では左腕の森圭祐がゲームメイクした。

 そして学年も関係なく、決勝で最も輝いたのは八番を打つ進恵翔だった。まずは2点ビハインドの2回表に、二死二塁から右中間へタイムリー三塁打。そして1点を追う4回表、無死満塁の好機が併殺で二死二、三塁となった直後に、またもや逆方向への三塁打でこれが逆転打に。

「(2本とも)2アウトだったので良い球が来たら打つという感じでした。これからも、今日みたいにチャンスで1本出してチームに貢献できたらいいなと思います」(進)

八番・進㊤は決勝で逆方向へ三塁打を2本。六番・杉本颯斗㊦は左越え二塁打

 ベンチワークも柔軟で冴えていた。機に応じて足技、小技も使いつつ、終わってみれば準決勝と決勝を通じて14人がフィールドでプレー。チーム内競争の激化で総体的にレベルが上がってきており、岡崎監督も「うれしい悩み」と漏らすほど。

 心強いのは、タイプの異なる5人が張り合う投手陣だ。この最終日に登板した4投手は、いずれも腕がきれいに振られていた。中でもポテンシャルが光ったのは、新5年生左腕の小玉葵生(=㊦写真)だ。

小玉葵㊤は新5年生。同じく左腕で出色の制球力を誇る森はバントも決めるなど打線でも機能㊦

「なるべくピッチャーを気持ちよく投げさせるように、不安にさせないようにしています」と語る安保主将(=㊦写真)のキャッチングとリードは安定している。背番号10のリーダーはまた、3連覇で慢心することなく、抱負を新たに語っている。

「全国大会に行けなかった去年の先輩たちの気持ちも込めて、今年は行けるようにがんばりたい」

 全国予選はここ2年続けて県ベスト4。最後の一歩、二歩を超えるべく、まだまだ進化していきそうな2026年のチームだ。

 

―Team Inside Story❷―

節目の10年ぶりVならずも、大収穫

準優勝

みさと

三郷スターズ

[埼玉・三郷市]

 三郷スターズは2016年の第30回大会で初優勝。それ以来となる10年ぶりVは逸したが、決勝を終えた生方亮一監督(=㊦写真)は感慨深げにこう話した。

「最後はちょっと守備の乱れも出て、力及ばずでしたけど、決勝でプレーしただけでも子どもたちには良い経験になったと思います」

 全国区の強豪を相手に、上位打線がいきなりつながって初回に2点を奪うと、そのままリードして折り返した。先発した5年生右腕の安是煌聖は緩急の投球が冴え、4回の無死満塁のピンチでは1-2-3の併殺を奪ってみせた(=㊦写真)。

 しかし、直後に逆転打を浴びて降板。マスクをかぶっていた長谷川蒼史主将が救援したが、終盤2回で7失点と苦しんだ。それでも最後まで投げ抜いた主将は、実はスクランブル登板だったという。

「ピッチャー4人のうちの2人がケガをして急に投げられなくなって。キャプテン(長谷川)は正キャッチャーで、試合でもほとんど投げたことなかったんです。まぁ、それでも良い経験になったと思います」(生方監督)

1-2-3の併殺も決めた捕手・長谷川主将㊤の球の握り替えの速さはピカイチ。マウンドでは苦しみ抜いて消沈しかけるも、遊撃の岡謙斗が励ました㊦

 キャリア20年になる指揮官は、さらに衝撃的な事実を打ち明けた。実は10年前の優勝以降、チームは部員不足に陥って廃部の危機に瀕していたそうだ。

「人数が一番少ないときは3人。6、7年は高学年チームがなかった状態で、やっと活動できるようになって2年目なんです」

 選手が再び集まりだした一番の要因は、都心への鉄道路線つくばエクスプレスと「三郷中央駅」の開業による、人口の爆発的な増加。生方監督はその環境に甘えるだけではなく、指導方法や選手との接し方も「大きく変わりました」と断言した。

「今はとにかく、細かく丁寧に説明します。昔は8まで説明すれば、10までできる子が多かったけど、今は10、12まで教えるようなことも珍しくない」

 攻撃時はその指揮官から、1球ごとにブロックサインが出ていたが、選手たちに“やらされている感”はゼロ。各々が持ち味を生かさんと、盗塁だけではなくセーフティバントを試みたり、初球ストライクから強振したり。目の前の結果で一喜一憂しないベンチとの信頼関係も読み取れた。

「自分たちの目標は三郷市で一番になってマック(全日本学童)の県大会に出ることです」と長谷川主将。埼玉県の全国予選(県大会)は、いまだに地域選抜チームが半数近く出ている異例の地域だが、三郷市は2年前に選抜チームを廃止。三郷スターズにも大舞台への道が開かれている。

 

■準決勝1

3月21日◇旭公園野球場

▽第1試合

吉川ウイングス(吉川市)

 220201=7

 020001=3

南流ファイターズ(流山市)

【吉】森、小玉葵-安保

【南】染谷、濱口-稲垣

三塁打/松浦(吉)、濱口(南)

二塁打/濱口、斉藤(南)、松浦(吉)

【評】開始直後、松浦遥史と西田陸翔(5年)の連打と盗塁、ボークで先制した吉川ウが、以降もコンスタントに加点して完勝した。先発左腕の森圭祐は4回までに3者凡退が3度と安定した投球。南流は2回裏、四番・濱口光と六番・斉藤彰吾の二塁打などで2点、濱口は6回裏にも適時三塁打と気を吐いた。吉川ウはバントと盗塁も絡めた攻撃で計7点、4打数4安打の松浦は本塁打が出ればサイクルヒット達成だった。 

 

第3位

なんりゅう

南流ファイターズ

[千葉・流山市]

  

■準決勝2

3月21日◇旭公園野球場

▽第2試合

北越谷少年野球クラブ(越谷市)

 100001=2

 20101 X=4

三郷スターズ(三郷市)

【北】加藤、町田雄-町田大

【三】守藤、安是-長谷川

三塁打/長谷川、安是(三)

二塁打/紅谷、増田(北)

二塁打/濱口、斉藤(南)、松浦(吉)

【評】1回から試合が動いた。北越谷が二番・紅谷倖大の二塁打で先制すれば、その裏、三郷スは長谷川蒼空主将の三塁打を足掛かりに2対1と逆転。両先発投手は2回から立ち直り、三郷スの守藤悠人は6回二死まで2失点と、打たせて取って勝利を呼び込んだ。3回と5回には5年生の五番・安是煌聖が貴重なタイムリー。北越谷も先発の加藤勇太が粘投し、6回表には町田雄大の内野安打から宮村海翔の右ゴロ、町田大翔(5年)の内野ゴロで1点と、最後まで食い下がった。

 

第3位

きたこしがや

北越谷少年野球クラブ

[埼玉・越谷市]

 

―Team Inside Story❸―

受難の時代も、それぞれ生き抜く

  銅メダルに輝いた2チームからは、時代にも即した新たな息吹が感じられた。

「楽しくやれればいいかな。今はなかなか野球を選んでくれる子も少なくなっているので、野球が楽しいなと感じてもらって、次のステージに行ってくれるといいなと思っています」

 こう話した南流ファイターズの片倉哲史監督は、就任3年目。息子は1年前に卒団しているが、指揮官としてそのままチームに残っている。

「楽しむ」とは今や、学童球界でもキーワードだが、解釈と実践には幅も隔たりもある。むろん、各々が好き勝手にやり放題とか、遊び半分でいるだけではベスト4まで勝ち上がれるはずもない。

 南流のベンチには、異様に張り詰めた空気感はなくても、フィールドの選手たちは真剣そのもの。5年生の三塁手、小沢海翔(=㊦写真)はファウルボールにも食らいつくなどフットワークが光った。

 また、一塁コーチを務めていた際の、難波友輝の協調する声掛けも印象的だった。打者のスイングを逐一見ながら「いいよ、狙いは合ってるOK!」など。意欲的にチームに尽くす姿勢はイコール、勝利への本気度であったと思われる。

 打線はアグレッシブ。準決勝では六番の斉藤彰吾と、四番の濱口光のバットからタイムリーとなる長打が生まれたが、いずれも初球から振った(ファウル)末に生まれた打点だった。

「ボクらが子どものころは『初球は見ていけ!』みたいなのもありましたけど、今の子たちには『甘い球が来たら、もうどんどん打っていいよ』と話してます」(片倉監督)

 全国区の強豪に敗れはしたが、下を向く選手はなし。4月12日に始まる流山市の大会を前に「良い経験をすることができました」と、指揮官も前を向いた。

四番・濱口㊤は長打を2本。六番・斉藤㊦は左翼線二塁打に中直と、打球が痛烈だった

 同じく3位の北越谷少年野球クラブは、前向きで明るいムードと、独自の取り組みが印象的だった。

 準決勝を前にした5分間のシートノックは、外野から始まった。実戦でありそうな打球をハイペースで放つ紅谷学監督に、ピリついたムードはなし。選手たちは打球の処理に懸命で、中継プレーなど必要な場面で適切な声を発していた。

紅谷監督は長男の時代から指導者となって12年。新6年生に三男・倖大がいる

「ウチはいつも外野からノックします。外野を先に守ってから、内野にも入ってほしい子もいたりするので」

 こう語る紅谷監督は、大会や公式戦は実力主義。あくまでもベストメンバーで挑むが、漏れた選手たちへの配慮もある。「ウチは5・6年生だけで22人。この大会(吉川近隣大会)はベンチ登録が18人で、4人だけ外れるのもアレなので、あえて14人だけ連れてきました」

 そしてチームにとっては初の大会4強入り。迎えた準決勝は1回表、加藤勇太と紅谷倖大の一・二番コンビの連打で先制すると、ベンチは大いに盛り上がった。

 その裏のピンチでは5年生女子・菊地由愛が右飛を落球して逆転されるも、続くセーフティバントを三塁手の金澤樹主将が捌いて3アウトに(=㊤写真)。

「気にするな、終わったことはしょうがないんだから次、いこう!」

 ベンチへ戻ってきて、指揮官からそう励まされた菊地は、その後は2度の守備機会を無難にこなしている。

 2回裏の守備が始まる前には、ボールバックからの掛け声を捕手の増田暁奏が途中まで発してから、右翼の菊地へ「ライト!」と指名。そして菊地の発声から守りがスタートした。このように、掛け声をする選手が毎回異なっていたが、その意図は。

「何年か前に同じようなことをしているチームがあって、ウチもみんなに声を出させたら集中も続くかなということで、キャッチャーが指名するようにしました」(紅谷監督)

三番・捕手の増田㊤は攻守の要。一番の元気印は指揮官だった㊦

 シートノックも守備前の声出しも、やり方に定めやルールはない。本質を理解し、目的もあればこそオリジナルも生まれるのだ。試合中、指揮官が率先して鼓舞していたのにも理由があった。

「ウチの子たちはこのところ、ただやらされている感じで、恥ずかしくて声も出せないとかいうのも…。この時期にそんな場合じゃないかもしれないけど、大会は楽しくやろうよ、と。ボク(監督)が先頭に立ってバカになってやれば、子どもたちもついてくるかなと思いまして…」

 準決勝はそのまま逆転負けしたが、最終回には四番・町田雄大の三塁強襲ヒットから1点をもぎ取り、代打の女子・成澤莉央も内野安打(=㊦写真)と、意地を見せた。

 また特筆したいのが、度々の二塁けん制。アウトは奪えなかったが、複数人が必ず連動していた。その場限りで楽しければいい、というだけのチームでは備えられない守備のオプションに違いない。

「そうなんです、楽しくやるのが一番なんですけど、勝たなければホントの楽しさも分からない。今回、チーム史上初のベスト4まで来ることができて、少しは子どもたちも分かってくれたと思います」(紅谷監督)

 人口の多い越谷市は、約30チームがひしめく県有数の激戦区。全国予選は13地区で予選を行い、その勝者たちで県大会の「越谷市代表」をかけてまた戦うという。もちろん、北越谷もその座を狙っているが指揮官はこうも話している。

「正直、強くすることより、人を集めるほうが大変なんで。町内のチームをなくさないようにこれからも取り組んでいきたいと思います」


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