敵は全国にあり!! ここ3年、秋の新人戦と初夏の全国予選で千葉県を席捲し続けている豊上ジュニアーズ。ただし、宿願の「日本一」は果たせていない。チーム史上「最強」と言われた昨年は関東勢で唯一のベスト8入りも、消化不良の余韻もあった。今年の6年生は9人。3年生時には髙野範哉監督の手ほどきを受けており、今夏はいわば「名将の肝いり世代」の集大成。野球も試合運びも巧みで“負けないチーム”に仕上がっている。
(写真&文=大久保克哉)
※県決勝リポート➡こちら
3年時から名将の薫陶。野球力で挑む“天下獲り”

豊上ジュニアーズ
3年連続7回目
初出場=2016年
最高成績=3位/2019、21年
【県大会の軌跡】
1回戦〇9対2海上マリンキッズ
2回戦〇12対5白浜タイガー
準決勝〇11対1FJT
決 勝〇8対1大橋みどりファイターズ
1/2成人式からの貯金
「正直、感動が薄れてきてしまって…全国大会で負けて泣いている子どもたちを見ても、涙が出てこなくなってきちゃったんですよね…」
髙野範哉監督が打ち明けたのは、2023年の春のこと。豊上ジュニアーズは当時、3年連続で全国大会に出場中だった。チームを全国区に押し上げたのは同監督だが、キャリア17年目にして初めて、自ら3年生チームを率いるという。そこで当メディアが単独インタビューした(※動画➡こちら)。

ちょうどその3年前の3年生たちが、現在の6年生たちである。早くから名将の薫陶を受けたアドバンテージもあるのだろう、昨秋の新人戦に続いて全国予選も県大会で圧勝。3年連続7回目の優勝を遂げると、真っ先に胴上げされた蛭間悠智主将は力強く宣言した。
「全国大会まであと2ヵ月。キャプテンとしてチームをさらにつくりあげて、最高の形で全国制覇に向かいたいと思います」

主将に続いて、6年生9人が次々と千葉市の空に舞っていく。4人の5年生メンバーや低学年生、保護者らを含む歓喜の様子を穏やかに眺めている指揮官の胴上げは、ラストになるのか。
「私の胴上げ? ないですよ、去年もそうでしたけど日本一になったら。この子たちは3年生のときから『全国優勝めざすぞ!』と一緒にやってるので。今日はこれはこれでみんなうれしいと思うんですけど、私はまだピンとこないですね」(髙野監督)

左翼手兼投手の蛭間主将はパワフル。一発パンチも秘めた打線の中軸だ

昨年は2019年(全国3位)を上回る「最強世代」と言われた。後のNPBジュニアも3人輩出したタレント軍団で、やはり千葉大会をぶっちぎりで制覇。当メディアも全国大会のV候補「大本命」に推した。しかし、準々決勝で思わぬ乱戦となって大敗。指揮官に涙はなかった。

2025年8月16日、京都・伊勢田ファイターズとの全国準々決勝で敗退(新潟・三条パール金属スタジアム)

「トーナメントは1回負けたら終わりですからね。今年は個の能力は去年にぜんぜん及ばないけど、この子たちのほうが野球ができるので…」
続く言葉はのみ込んだ髙野監督だが、むしろ今年のほうが可能性あり。そういう手応えも得ているようだ。確かなのは、強敵をねじ伏せるまでのパワーやスピードはないこと。でもその一方で“負けない強さ”が、しかと見て取れる。

指導陣で最も古株の斎藤欣也コーチ㊤と、全国舞台もよく知る原口守コーチが㊦が、名将をサポート

「やっぱり全国で勝つには、細かいことですよね。セーフティバントだったり、スクイズとかゴロ・ゴーだったり。そのへんの精度を上げて、取れるところで点を取らないと、競ったときに苦しくなる」(髙野監督)
千葉大会の決勝は、4イニングの攻撃で8安打8得点の5回コールド勝ち。本塁打1本に三塁打が2本、DHを含む野手全員が出塁した。そして決勝点となったのは、四番・蒔田皇明のスクイズバント(=㊦写真)による1得点だった。

「この大会はそんなに打てなかったけど、バントとかサインプレーをしっかり決めることはできました。全国ではまず、ヒットを打ちたいです」(蒔田)
また、対戦相手の捕手は全国レベルのスキルだったが、4つの盗塁を企図。三盗を含め2つは刺されたが、春先まで散見された不用意な走塁死は最後までなかった。5年生の荒井皇明と坂部伶哉が、スタメンに定着して足も使えることで攻撃力は増している。

坂部㊤と荒井㊦の5年生コンビは、走攻守でそれぞれ戦力に

守りから波に乗る
チームの長所や自信の源は「ディフェンス力」と、6年生たちは異口同音に語る。「守備力は去年とかよりも良いので、守備からバッティングに流れをもってくることができています」とは、1学年上の代からの正遊撃手、後山晴(「2026注目戦士❼」➡こちら)だ。

三塁手の増渕㊤と二塁手の玉井㊦は、ともに堅実で打力も上向きだ

千葉大会決勝では、その後山と三塁手の増渕碧人が張り合うかのように、一塁へ矢のような送球を披露しては、キャラリーのため息を誘った。また、昨年の全国でもプレーしている玉井蒼祐との二遊間コンビは息もぴったりで、4-6-3の併殺も決めている(=㊦写真)。
学童野球でも全国レベルになれば、内野ゴロ併殺は珍しくはないが、その多くは6-4-3か、満塁時の本塁フォースアウトからの打者走者のアウト。二塁手の右方向への送球に始まる4-6-3で2つのアウトを奪えるチームは、全国大会でもひと握りだろう。

打撃も秀でる後山は、1学年上の「最強世代」の中でも活躍。昨秋の関東新人戦㊦は2試合で7打数3安打

後山はまた、昨秋の関東新人戦(ベスト4)では救援登板で102㎞を計時。その後に肘を痛め、長いこと腕を振り抜けずにきたが、千葉大会決勝時は「もう大丈夫です。思い切り投げています」とニッコリ。登板はなかったが、ブルペンで投じていた快速球からして、最多6連戦となる全国大会ではマウンドでも輝きそうだ。

エース右腕の加藤豪篤(=㊤写真)は、最速は100㎞前後と並でも、制球力はピカイチ。受ける捕手の関澤月陸(=㊦写真)は「ゴウトク(加藤)がボクの構えたミットに投げてくれるので、簡単にアウトが取れる」と、千葉大会の勝因を語っていた。また髙野監督のコメントからも、エースに寄せる信頼や期待がうかがえる。
「加藤はたまにポコンといかれるし、ランナーは背負う。でも、連打をされないので取られても2点くらい。ちょっと、これまでのウチにはいないタイプのピッチャーなので、逆に楽しみですね」


左翼手の蛭間主将はマウンドから力強い球も投げ、背番号3の石井尊(=㊤写真)はしなやかなフォームが光る。「投球は1週間で210球まで」との新ルールが全国大会でも今夏から導入されるが、多士済々の投手陣は大きな安心材料だろう。サービス精神も旺盛な大黒柱、加藤豪は「全国では日本国民をびっくりさせる球を投げたいです!」と豪語し、聞いていた仲間たちと楽しそうに笑った。
総じてやけに人懐こいのも、名将との早い出会いのおかげか。今夏は何かやってくれそうな予感がする。その「何か」は、2年越しの髙野監督の胴上げなのかもしれない。そうでないとしても、フィナーレでは指揮官の頬を伝うものがあるだろう。

【県大会登録メンバー】
※背番号、学年、名前
⑩6 蛭間悠智
①6 加藤豪篤
②6 関澤月陸
③6 石井 尊
④6 玉井蒼祐
⑤6 増渕碧人
⑥6 後山 晴
⑦5 荒井皇舟
⑧6 蒔田昊明
⑨6 須藤結太
⑪6 坂部伶哉
⑫6 増田 丈
⑬6 坪倉旺佑
⑭5 加藤鉄将