混戦模様の埼玉県予選を制して、一昨年以来、2度目となる全国大会出場を勝ち取った山野ガッツ。「5点取られたら6点取る。10点取られたら11点取る」。攻撃力を前面に押し出したチームスタイルは2年前同様で、厳しい県大会を打ち勝って全国大会への切符をもぎ取った。2度目となる大舞台で目指すのは──。
(写真&文=鈴木秀樹)
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初出場=2024年
2回戦〇11対4 名細少年野球クラブ(川越)
3回戦〇6対5 さくらキッズ(幸手)
準々決〇11対5 栄和クラブ(浦和)
準決勝〇8対2 上藤沢ライオンズ(入間市)
決 勝〇9対8 吉川ウイングス(吉川)
初出場の戦いと、2度目への挑戦

全国大会初出場を果たした2年前の戦いを、瀬端哲也監督は現在も克明に覚えている。
「初戦を快勝した後、2回戦で、その後優勝した新家スターズ(大阪)さんと戦ったんです。2点リードしていたんですが、最終回に3ランを打たれて、逆転負けでした」
指揮官は続ける。
「全国大会で戦う厳しさを知った一戦でもあったんですが、決勝の後、当時の新家スターズの千代松剛史監督が『2回戦が一番、苦しかった。あの試合は負けたと思った』とまで言ってくださった。それを聞いて、われわれが目指してきたチームづくりは間違っていなかったのかな、と思えたんです」
翌年の新5年、つまり現在6年生の学年の監督になることが決まっていた瀬端監督が「もう一度、全国を目指そう」と決めた瞬間だった。
「負けたのはウチに何かが足りなかったから、とは思わなかったんですよね。むしろ、全般的な方針は間違っていなかった、と。だからこそ、もう一度、ウチらしいチームをつくって、あの舞台に挑みたい、と思えたんです」
2回戦大敗の新人戦から再始動

とはいえ、である。
当然だが、「目指します」と宣言して簡単に出場権が獲得できるほど、全国大会への道は甘くはない。
少なくとも、県大会に出てくるほどのチームならば、当然、全て全国大会を目指していると考えるべきだろう。
埼玉には、その全国大会で3度の準優勝経験を持つ東松山野球スポーツ少年団(東松山)がいて、3位入賞経験のある熊谷グリーンタウン(熊谷)がいる。2年連続全国大会出場を目指す西埼玉少年野球(飯能)も昨秋の県新人戦で優勝するなど、ライバルたちも充実の戦力で全国出場を目指し、その爪を研いでいるのだ。
当然だが、その埼玉で勝てないことには、話にならない。
「一度、全国大会に出場できたことで、自分の中で『これだけ力をつければ、全国を目指せるかな』という基準はできたような気がするんです」と瀬端監督。「ただ、今年のチームを最初に見た2年前、そこまでの力を感じたのかといえば、当然といえば当然なのかもしれませんが、そんなことはありませんでした。新人戦など、県大会2回戦でコールド負けです」

5年生秋の新人戦では、県大会には出場したものの、上位を狙うには程遠い実力だったという。その新人戦が始まる前に、エース投手が転校によりチームを抜けていたのも一因だったようだ。
「さすがに、その頃はコーチ陣も父母も、『全国を目指すのは難しいんじゃないか』なんて空気になっていましたね」
入団希望の2人の選手がチームにやってきたのは、新人戦後のことだった。
山口県から引っ越して埼玉に来た吉岡泰平と、全国大会を目指せるチームへと移籍希望だった島村力翔がチームに加わったのだ。
「どちらも、ネットなどで調べてウチを選んでくれて、ご両親も熱心で」と瀬端監督。「足りなかったピースが埋まったような、そんな感覚があったんですよね」
県大会決勝では、島村は二番センター、吉岡が三番ピッチャー(その後キャッチャー)。ともにチームに欠かせない、重要なポジションを担う存在になっている。

成長の手応えと県大会での躍進
チーム成長の手応えを実感したのは、昨年の12月から今年2月にかけて行われた、フィールドフォースカップだった。
「初戦で熊谷グリーンタウンさんと対戦して、勝てたんです」
この大会で、山野はその後も2勝し、準決勝で東京のレッドサンズと対戦。タイブレークまで戦い敗戦。その後、3位決定戦で勝利し、戦いを終えた。


全国レベルのチームが集う大会で結果を残せたことは、チームにとって大きな自信に。山野はそこからさらに、春に向け急激に力をつけたのだった。
「全国大会の県予選が始まる頃には、見違えるほどでした」
瀬端監督が振り返る。
2回戦から登場した全日本学童の県予選でも、戦いながら調子を上げて勝ち進み、準決勝では、昨秋の新人戦で敗れた上藤沢ライオンズ(入間市)に快勝した。
決勝では、同じく快進撃をみせ勝ち上がってきた吉川ウイングス(吉川)と対戦した。
その予選のトーナメント表を見返すと、上記の東松山、熊谷、西埼玉は反対のブロックに入り、東松山と西埼玉はいずれも吉川に敗れ、すでに姿を消している(熊谷は西埼玉に敗戦)。この強運も無視できない。

そして決勝。山野は3回に大量6点を奪って主導権を握り、リードを守る形で見事、9対8で吉川に打ち勝ってみせた。瀬端監督は「ロースコアの試合ではなく、打ち合う展開になったことが勝因でしょうか」と振り返るのだった。
ただ、こうも付け加えている。
「『打ち勝つ』のがウチのスタイルであることに変わりはないんですが、同時に、この県大会では、大会を通して守備のミスがほとんどなかったんです」と瀬端監督。「力をつけた、うまくなったというよりは、次々と勝ち上がることで選手たちが自信をつけ、守備でも余裕を持ってプレーできていたんでしょうね」
再び全国大会へ
新戦力の加入、そして県大会における組み合わせの妙。加えてもちろん、勝つたびに力をつけ、ひとつになってきたチーム力。2年前に「再び全国へ」の目標を掲げ、それを公約通りに達成してしまうまでの山野の道のりを振り返れば、何かに導かれているかのような感覚さえ抱かされる。
県大会優勝後は一度、チームが緩んだという山野。直後に始まったGasOneカップ予選では、全日本予選決勝で下した吉川ウイングスに雪辱を許し、初戦敗退に終わっている。
「ただ、その後は全国大会が近づくにつれて、またノッてきてますよ」と瀬端監督。「愛媛では全開で戦えるはずです。ウチらしい戦いをするだけです」
2度目の大舞台でも、持ち前の「打ち勝つ野球」を看板に、ワクワクする戦いを見せてくれそうな予感がする、今年の山野なのだ。

【県大会登録メンバー】
※背番号、学年、名前
⑩6 孫山 知幸
⓪6 冨田 真平
①6 渕川 拓馬
②6 吉岡 泰平
③6 茂原 直経
④6 遠矢 雄志
⑤6 塩見 理人
⑥6 島村 力翔
⑦6 秋山 侑輝
⑧6 中村 翔
⑨6 野崎 海斗
⑪6 根本 詩音
⑫6 中川 夏希
⑬6 山本晴ノ介
⑭6 高橋 湘太
⑯6 吉葉 蒼
⑲5 山下 蒼介
㉑5 山口 輝翔
㉔5 小澤 慧
㉖5 千田 陽斗