編集長コラム

選手、指導者、保護者を支える「良心」

選手、指導者、保護者を支える「良心」

2023.05.31

【編集長コラム】第4回  野球は深くて難しい。小・中・高・大の学生野球にプロ野球と、かれこれ20年以上は現場で取材をしてきた。少年時代からのテレビ観戦も含めれば、とんでもない数のゲームを見てきたはず。それでもまだ、初めてのシーンに出くわすこともあるのだから、野球はつくづくおもしろい。  いわゆる「珍プレー」。稀有なハプニングが目の前で起こったのは、この5月の半ば。スポーツ少年団(学童野球)の千葉県大会1回戦のことだった。  状況は一死二塁で、ボールカウントは2ボール2ストライク。ここで右打者がファウルチップしたボールが、捕手の頭上を空過して(ミットにも体にも触れずに宙を通り過ぎて)、ダイレクトで球審のマスク(面)にハマり込んでしまったのである(下3枚がその連続写真)。 「タイム!」  すかさず試合を停めた球審は、打者にアウトを宣告してから、マスク前面の格子に挟まっている白球を手で取り出した。すると、三塁側の攻撃チームの監督から「ファウルでは?」といった感じのアピールが入る。これに対して、球審は速やかに塁審3人を集めて協議に入り、数分もしないうちに二死二塁から試合は再開した。一塁側で撮影中の私には声は聞こえなかったが、三塁側の監督にはルールの説明がなされたようだった。驚いた風もなく、一部始終がスマートで毅然としていた球審は、体格も相まって頼もしかった。  初めて見たシーンに、初めて知ったルール。審判を除けば、現場にいた誰もがそうだったはず。その証拠に、異論も野次も聞かれないまま試合は滞りなく進んで決着。例のシーンが勝敗を左右することもなかった。 審判歴20年で初の珍事  その瞬間をカメラに収めていた私はちょっと得意気。SNSでの発信なども念頭に入れつつ、試合後の球審に短く話を聞いた。 「審判歴? 20年くらいですね。マスクにボールが挟まったのは? 初めてです。あの状況がノーストライクか1ストライクなら『ファウル』ですよ。でも2ストライクだったので、打者はアウトになる。以前にそういう解説をインターネットで見た記憶がありまして。お名前を! 斉藤弘之といいます」  およそ30分後。次の試合も同様に撮影をしながらスコアをつけている私の肩を、後ろから叩く人がいた。さきほどの球審。私服に着替えて帰途につこうかという感じの斉藤さんだった。その後、少し気になってスマートフォンで例のシーンの解説を探し当てたとのことで、画面をこちらに向けてスクロールしながら話してくれた。 「さっきのアレですけど、1つミスをしていました。打者のアウトは間違いなかったのですが、二塁走者を1つ進塁させないといけなかった。このルールを忘れていました、すみません」  その実直さに触れる前から、私は決めていたことを話した。 「わざわざ、ありがとうございます! 野球界でもたぶん9割9分の人が知らないルールだと思うんです。記事にするにも僕のほうでも必ず確かめますし、ご迷惑をおかけするようなことはしませんので、ご安心ください」 沁みる誠実さ  斉藤さんから電話がかかってきたのは、その5日後だった。 「申し訳ない、あのジャッジはやっぱり間違いでした。公認野球規則も読み返してきちんと確認したら、ストライクカウントに関係なく、正解は『ファウル』でした。あれがもし、ファウルチップではなくて空振りしたボールだったら、第3ストライクの振り逃げ(記録は三振)が適用されて、打者と二塁走者に1つずつ塁が与えられて一死一、三塁から再開になります」 『公認野球規則』より該当部分を抜粋  実は私も、高校野球の審判員をする同僚に確認をして、同じ正解をすでに得ていた。それを伝えると、斉藤さんは「実はもう1つ、私にミスがありまして…」と切り出した。  話を要約すると、こうだ。あの試合で装着していたマスクが実は硬式用だった。斉藤さんは中学硬式野球と学童軟式野球の審判を掛け持っており、硬軟で異なる防具類(マスクは硬式用の格子の幅がやや広い)は別々に管理しているが、急な審判依頼を引き受けたのが前日の夕方だったこともあり、中身をよく確認せずに取り違えてしまった。帰宅後に夫人から指摘されて、誤りに気づいたという。  誤審は美化されるべきものではないが、ミスや勘違いは誰にでもある。それを正直に吐露したり、非を認めて頭を垂れる人というのは、年輪を増すほど減るような気がする。私にはそういう実感めいたものがあるせいだろう、斉藤さんの誠実さが深く沁みた。保身に走っているのではないことは最後の告白でも明らか。マスクの取り違えという初歩的なミスは、本人が言い出さなければ誰にも知られずに済んだはずで、そこまで白状したのは審判としての責任感や矜持だったのかもしれない。 軽い気持ちで始めてみたが  聞けば、斉藤さんは還暦を過ぎて1年あまり。九十九里浜で有名な千葉県の大網白里市の出身で、高校野球までプレー。息子が小4で学童野球チームに入ると父親コーチとなり、翌年からチームの依頼で審判員に(現在は千葉県少年野球連盟に登録)。 「アウト・セーフと、ストライク・ボールをやってくれればいいから、と頼まれて軽い気持ちで始めたんですけど、やってみるともう、勉強せずにはいられませんでしたね」  息子が6年生になる前から、県の審判講習会にも参加するようになり、初めてその「証明書」を手にして2、3年後には、市の枠を超えて上部大会でも試合をさばくように。もちろん、アマチュア野球の審判だから無報酬だ。 「当初はわからないことがたくさんですよ。だからルールブックを必ず持参して、アピールがあればその場で見直したり。試合が終わると必ず審判同士で反省会をしますし、大きな大会はフィールド以外の審判席からも見てくれる人がいますので、何とか…」...

たった5分の心の養成、いずれ全国でも!

たった5分の心の養成、いずれ全国でも!

2023.05.01

【編集長コラム】第3回    公式戦の前の5分間のシートノック。ここで手の内を隠すチームはまずあるまい。外の視線を気にするより、自分たちのパフォーマンスを発揮するための準備が主眼だ。ゴロの弾み具合やフライの見え方、外野やファウルゾーンの広さなど、その日で異なる環境面の確認のほか、自身と仲間のコンディションの確認も大切になる。  相手チームがそうした最終点検をしている5分間の過ごし方は、チームによる。全員で注視し、相手守備のレベルや長短をインプットしていくのが最も一般的だろう。相手との実力差が明らかな場合には、選手の萎縮や慢心を招かないようにミーティングをするなど、あえて見せないケースもある。  いずれにしろ、そこに存在するのは相手チームに対する「敵」という意識や概念。倒さなければ自分たちがやられてしまうし、トーナメント大会は負けたら終わりだ。目の前の相手に敵意を抱くのはごく自然で、これはまた学童野球に限らず、上のカテゴリーやほかのスポーツでも同様だろう。 自ずと豊かになる心 「サード、ナイススロー!」「ショート、ナイスキャッチ!」「セカンド、しっかり~!」…。  5分間のシートノックを行っている相手チームに向けて、声を発する。こういう地域が学童野球界に存在することをご存知だろうか。  ベンチの前に一列に並んだ選手たちは、これから戦うことになる相手チームのノッカーのボールを目で追いながら、プレーする選手へ口々に声を掛ける。そこに「敵意」はない。同じ地域で同じ野球をする「仲間」への関心や、互いに健闘を誓い合おうという意図が働いていることは、前向きな言葉や声のトーンからも読み取れる。 「いつから始まったんでしょうね、もう10年以上前からだと思います。連盟でルール化したり、強制するようなことは一切していません。おそらく、どこかのチームがやり始めて、良いと思ったチームがマネをする。それで徐々に広まったんだと思います」  そこは千葉県の柏市。24チームが加盟する市少年野球連盟の大桑久光会長は、シートノック中の声掛けの経緯をそう説明した。すっかり定着した風習なのだろう、その後の両チーム整列と挨拶、そしてプレーボールという流れにも支障は何もなかった。 シートノック中の相手選手たちへ、前向きな言葉を掛けていたビクトリージャガーズ。千葉・柏市春季大会の3位決定戦前より(2023年4月23日、柏ビレッジ)  声掛けには、チームや選手で温度差があった。しかし、指導者がハッパをかけたり、声が小さい選手を咎めたり、あまり発しないチームを連盟役員が注意したり、という愚が見られない。あくまでも任意で自主的なもの。選手たちは個々の自らの意志で言葉を選び、発していたのも印象的だった。 本質を見抜ければ  その後の公式戦はもちろん、真剣勝負だ。それでいて、相手チームをヤジったり、敵失で盛り上がったり、結果として相手選手の心理を脅かすような指導者の声もなかった。要するに、フェアプレーの精神が、この地域では自ずと根付いているのだ。 「ところがですね、県大会に行くと柏市のチームはよく怒られるんですよ。『相手チームのシートノック中はベンチの中に入っていなさい!』と」  連盟の吉田繁男副会長はそう言って苦笑い。確かに、相手のシートノック中はフィールドに出ないというのが一般的にはルールやマナーだろう。シートノックが妨げられないための制約とその必要性も理解できる。  柏市は、全日本学童大会に2019年から連続出場中の豊上ジュニアーズも所属するハイレベルな地域。往年のスター・谷沢健一氏(元中日)や、日米で活躍した小宮山悟氏(現・早大監督)などプロ選手も複数生んでいる。  そういう「野球どころ」だからといって、あるいは自分たちは良いことをしているのだという思い上がりから、県大会で注意に背くこともないのだろう。そもそも、ベンチの中からでも相手チームに声を届けることはできる。フェアプレー精神の養成という本質を見抜ける大人が増えてくれば、県大会や全国大会でもシートノック中のベンチ前からの声掛けが認められるケースも出てくるのかもしれない。 日本人の体質  プロ野球・日本ハムの新本拠地、エスコンフィールドは本塁からバックネットまでの距離が15mで、これは『公認野球規則』にある「60フィート(18.288m)以上」を満たしていないと話題になった。以降の顛末は割愛するが、当時の議論で明るみになったのが日米のルールの解釈(体質や文化?)の違い。MLBのルールブックには「60フィート以上を推奨」、日本のそれには「60フィート以上が必要」と記されているらしい。  是非を論じるつもりはないが、ルールを厳格化するのは日本人の体質(美徳?)だろう。そしてルール内のすれすれのラインを追求したり、抜け道を探しだすのが得意。一方で、そのルールが意図するところにまで解釈が及ばないがために、ルールの形骸化も多発する。公立の中学校や高校に残る、時代錯誤な校則が最たるところかもしれない。  学童野球の本質や意義とは何だろう。野球とチーム活動を通じた子供(選手)とその親(保護者)の幸せ、だと筆者は考える。それにはルールや取り締まりも必要だが、それ以上に本質を説くこと。そして本質を基準に、ものごとを判断・行動できる大人の数が肝要ではなかろうか。  異なる意見やあり方も認めて尊重する。どこか一部に著しい不利益や不均衡が生じないのであれば、弾力的に特例や例外も認めていく。そういう懐の深さ広さを共有して、幸せな親子をどんどん増やす。それによって非・野球人(コラム第2回参照)をも振り向かせ、競技者減少にも歯止めがかかるという考えは、浅はかだろうか。 幸せな親子をより多く 「楽しい」と「厳しい」。対義語であるかのように、昨今の現場ではこの二語をよく耳にする。子供の育成や指導のあり方に関心が高まっていること自体が大きな進歩。問答無用の旧態依然からの脱却へと、重かった舵が動いているようだ。...

世界一の祝賀ムードに、水など差したくないが…

世界一の祝賀ムードに、水など差したくないが…

2023.03.29

【編集長コラム】第2回    WBC優勝! 侍ジャパン世界一の祝賀ムードや、開幕目前のプロ野球ペナントレースに、大詰めを迎えているセンバツ甲子園。野球が国民レベルで盛り上がっているのに、水など差したくない。そんな意図もさらさらないので逡巡してきたが、いつまでも触れないわけにもいくまい。  何ともショッキングな現実が、このほど明らかとなっている。ついに、なのか。やはり、と言うべきか――。 初めて「大台」を割る  日本の野球界で最も多くのチームが加盟する組織、全日本軟式野球連盟(JSBB)の学童野球チーム数が「1万」の大台を割ってしまった(2022年度)。1975年の統計開始以来、「1万」を切るのは初めてのこと。2000年度から2011年度までは14000台で推移してきたが以降は概ね、減少の度合いを強めながら今日にいたる。  厳密には、減少に転じたは2007年度で、当時はそれでも14968チームあった。それが15年連続の漸減で、昨年度はついに桁が1つ減って9842チームに。少子化に加えてコロナ禍の影響も色濃いのだろうが、15年間で5000ものチームを失った事実を球界は真摯に受け止めなければいけないだろう。   保身ばかりのご長老も  学童野球の現場に出ていても、酷な現実にぶち当たることがある。昨夏の全国大会では、下級生の人数不足で翌年度から活動を休止するというチームに複数出会った。同様の理由による休止や解散が各地で後を絶たず、合併に合併を繰り返す延命策も珍しくない。こうした中で、子供の奪い合いや退団・移籍を巡るチーム同士、大人同士のトラブルも多発しているという。  数年前がウソのように、週末のフィールドから大人の怒声や罵声が聞かれなくなってきている。だが、野球界の巨大な裾野を構成する最小単位、市区町村の域まで入り込むと、目や耳を覆いたくなる惨状にも出くわす。  バッテリーすら「捕る・投げる」がまともにできないのに大会に参加して、まるで野球らしくない内容とスコアで沈黙するチーム。区域では名の通るベテラン監督や、甲子園出場など選手として実績のある指導者が試合中はふんぞり返り、高圧的な言動で選手を逐一やり込めたり、審判にも食ってかかったり。多くはないが2023年になっても、そういう光景を目にしている。  最小単位の管轄組織は現実に背を向け、「資金難(人手不足)とボランティア」を盾に改革やデジタル化にも無頓着。試合スコア(公式記録)を正しく残せない役員・審判員もザラで、正式な試合記録が昔から存在していない。従来の慣習やシガラミにとわれて近隣や他の組織と反目したり、己の肩書きや既得権益を守ることにばかり腐心する長老組も少なくない、と聞く。 非・野球人が増すばかり  国民の大多数が巨人軍の選手を知っている、という時代は遠い昭和のこと。野球少年・野球少女はやがて高校生となり、成人し、多くは人の子の親にもなるだろう。むろん、野球とノータッチの少年・少女も同様である。  ということは、野球を知らない・興味がないという親子。一口に言えば「非・野球人」が、この先もどんどん割合を増していく、と考えられる。  日本の野球界は今現在も、野球人(経験者とその身内)だけで大半のことが回っているように思われる。全体とすれば、それでもまだ十分過ぎる経済効果や訴求力があり、世の大きな関心事となり得ている。一方、人気や知名度や縦社会に染まり、祀り上げられることでの弊害も見過ごせない。世の流れに無頓着(不勉強)で、人の声にも耳を傾けられない。そして、土着した経験則と固定観念が是非もなく受け継がれていく。このご時世にあっても体罰や暴言で処分される指導者が根絶しないのは、そうしたロジックが働いているせいもあるだろう。  WBCでもMVPに輝いた大谷翔平選手(エンゼルス)のような世界的なスーパースターが、プロから誕生している。学生球界は、昔ながらの体育会系のゴリゴリで勝ちに徹するチームと、趣味のひとつという感覚でプレーするチームとの二極化が加速しているように見受けられる。前者には未来を夢見る選手が集中し、毎年のように上位の成績を収めるが、ひと握りの試合組を除くと放置されてしまうケースも多々。後者は前者に興味がなく、まるで交わろうとしない。そして両者の溝や無関心は、カテゴリーが下がるほど露骨に見て取れる。 負のイメージ払拭を  野球経験者同士、いわば身内で少ないパイ(選手)を奪い合ったり、飼い殺しにするような愚も看過はできまい。だがそれよりも、非・野球人を含む世間から野球に注がれる「負のイメージ」を払拭していかないことには、野球少年・野球少女はどこまでも減り続けてしまうのではなかろうか。  14年ぶりに世界一に返り咲いた侍ジャパンは野球の醍醐味を広く顕示し、「正のイメージ」を増幅してくれたはず。何をしても超人的でありながら、どこまでも屈託のない大谷選手の貢献度も計り知れない。野球に夢中になりだした少年時代を思い出した大人も多いのではないだろうか。子供には大谷選手のようなプレーはできなくても、同じように晴れ晴れと野球を楽しむことは簡単なはず。  ある人の講演によると、スイミングスクールに通う小学生の数は安定しており、今も昔も大きく増減していないという。同様に、親が二の足を踏むことなく、息子や娘を野球チームに入れることができるようになるには、どうしたらいいのか。このあたりに焦点を当てて、次回は少し踏み込んだ具体案を提起してみたい。 (大久保克哉) 昨夏は全日本学童16強。富山・岩瀬ドラゴンズの黒崎清二監督は選手の力を引き出せる模範的な指導者だ。だが、学区のシバリもあって新年度は6年生3人で(他チームでプレー)、低学年のみが活動。同監督は富山初の中学軟式クラブの指導者に招かれている

「待ったなしの危機」が、 広く認知されるまでには

「待ったなしの危機」が、 広く認知されるまでには

2023.02.16

【編集長コラム】第1回  次代を担う小学生、中学生の競技人口がここにきて激減。それも急坂を転がるように減り続けている――。こういう走り出しで『野球界の危機』と題した連載を、少年野球の専門誌で始めたのは2015年の春だった。難関の予選を経た夏の全国大会でも、6年生が9人に満たないチームが珍しくなくなり、下級生の活躍が非常に目立ち始めたころだ。  いち早く、声高に 「プロ野球の観客動員数がどんどん増えている中で、水を差すようなことをするんじゃねぇよ!」  連載当初は手厳しい叱責もあったが、屈するわけにはいかなかった。どんなに歴史が古かろうと、本場のアメリカで活躍するスターが現れようとも、現役のプレーヤー(学生)が減っては先細りが見えている。野球界を下支えする巨大なカテゴリー、小中学生のジュニア層がしぼんでくれば、自ずと地盤沈下が起こる。競争力やレベルの低下が、いずれ最高峰のプロ球界にも及ぶ。要するに、日本の野球界は知らぬうちに衰退へと舵を切っているのではないか。それなのに、専門誌が真っ先に声を挙げなくてどうするのだ、と。    同連載では「待ったなしの危機」にあることを、複数の統計データや現場の実情も交えて訴えた。他競技との比較や時代背景などを踏まえての考察も随所で展開した。    ジュニア層の競技者激減の理由を「少子化」で片づけようとする向きも当初は多かった。しかし、サッカーやバスケットボールをする小中学生は、同時期に微減や微増の傾向を示すデータもあった。中学校の軟式野球部員は、少子化の倍以上のペースで減り続け、2013年は総数でサッカー部に追い抜かれてしまった。日本スポーツ少年団(小学生)の団員数もやはり、2012年から野球が1位の座を追われるなど、ショッキングな現実を伝えてきた。 明るくエネルギッシュな甲斐清隆監督と、粘り強い選手12人でミラクルV。2014年の全日本学童王者・和気軟式野球クラブ(愛媛)は15年8月をもって活動に終止符   球界団結の進展も  あれから数年以上が過ぎた今、「競技人口の減少」は日本球界の火急の問題として、広く認識されている。そう思うのは筆者だけではないだろう。    ジュニア層ほどの「激減」ではないものの、人気の高校野球(硬式)にも累が及んでいる。全国の総部員数は、2014年から8年連続で減少(約4万人減)、加盟校数は球界再編問題が勃発した2005年を境に減少が続く(17年で約400減)。また、夏の甲子園出場をかけた都道府県大会では、部員不足(8人)による加盟校同士の連合チームが年々増えて2022年度は112となっている。   「子供たちのために」という現役プロや元スター選手らの言動が、近年は頻繁に報じられている。かつては温度差が激しかったNPBの12球団ジュニアトーナメントも、今では大半がチーム編成から本腰を入れている。各球団の子供向けの通年スクール「アカデミー」は、先駆者・巨人軍の秀逸なメソッドを母体として、広がりをみせていると聞く。   「コロナ禍」で足止めは食ったものの、ジュニア世代の指導者のライセンス制度が導入されるなど、管轄組織の垣根も超えた対話や活動、球界全体としての動きは活発化していると思われる。いまだに、学童球児の実数(正確な総人数)も把握できていないが、全カテゴリーを通じた競技者登録システムが近年のうちに完成・稼働するという話もある。かつてはバラバラで自己完結していた球界内の各団体やカテゴリーが、縦横のつながりを持ち始めていることは大きな進展だろう。     では、ここ数年のジュニア層の推移はどうなっているのだろう。次回は現場の実情や声も踏まえつつ、そこに迫ってみたい。 (大久保克哉)