フィールドフォースは9月、早稲田大学男子ソフトボール部とスポンサーシップ契約を結んだ。一般的な企業協賛とは違い、「パートナーシップ」に近い協力関係。早大男子ソフト部の意見を取り入れながら、一緒にアイデアを形にし、ソフトボール向け商品の充実を図っていこうというものだ。新たな取り組みにより、ソフトボール界に新風を吹き込みたい。
まずは会ってみよう。話はそれからだ

フィールドフォースのホームページから、そのメールが届いたのは、今年2月のことだった。
差出人は早稲田大学男子ソフトボール部。内容は「スポンサーシップ」に関する依頼であった。
一般的にスポンサーシップというと、金銭面での協力を伴うものが多いが、フィールドフォースではそうした形での団体や事業への支援や協賛はしていない。その分少しでも商品価格を抑え、ユーザーに資したい──という思いからだ。
「ただ…」
社長の吉村尚記が言う。
「“思い”や“熱量”を持ってコンタクトをとってくれた方とは、まず会って話を聞いてみようというのが、私のポリシーでもあります。今回、大学生がこうして連絡をくれた。その行動力に敬意を抱きますし、熱意を感じます。まずは会って、話を聞こうと」
新たな取り組みの可能性

それからほどなく、齋藤拓哉主将をはじめとする、同部のメンバー4人が千葉県柏市のフィールドフォース本社を訪問。今回の依頼に関するプレゼンテーションが行われた。
早大男子ソフト部の紹介に始まり、その活動、さらに目指すビジョンや問題点、フィールドフォースへの要望まで、きっちりとまとめられたプレゼン内容に、吉村も次々と質問をぶつける。意見を交わす中で、その内容は具体性を増していった。
部員たちの熱意と行動力に感心しながら、吉村がひとつの提案をした。
もともと同部からの提案にあった「練習面でのサポート」という部分を発展させ、ともにアイデアを持ち寄って「ものづくり」にまで発展させようという、フィールドフォース側からの申し出だった。「スポンサーシップ」よりは「パートナーシップ」に近い関係性だ。
「資金面での支援といった一方通行の関係性ではなく、互いにアイデアを出し、双方向のやりとりで形にしてゆくことで、両者にメリットがある、新たな取り組みができるんじゃないかと考えたんです」
吉村はそう振り返る。
似て非なる競技

もとより、フィールドフォースでも、かねてからリクエストの多かったソフトボール向け商品の開発をテーマに掲げていた時期ではあった(→こちら)。
「早大の皆さんと話していく中で、ソフトボールは同じダイヤモンドスポーツではありながら、野球とは全く別のスポーツと考えた方がよさそうだ、という思いが強くなりましたね」
吉村が振り返る。
「そしてもちろん、彼らの思いに応えたい。彼らがあれだけの熱量で、われわれだけではなく、学校側も説得して、動かそうとしている。こちらも中途半端な対応ではいけない、と思ったんですね」
早大男子ソフト部に野球経験者が多いこともあり、話し合いはスムーズに進んだ。加えて、同部固有の練習環境がフィールドフォースの商品開発の方向性と重なる点が多かったことも、議論を加速させる一因となっていた。

同部が練習に使用しているグラウンドは、早大の本キャンパスにも近い東京・新宿区の喜久井町多目的グラウンドと、スポーツ科学部などがある埼玉・所沢市の所沢キャンパス内のグラウンド。このうち喜久井町グラウンドは、広いスペースが使える所沢グラウンドとは異なり、かなり狭い。
フィールドフォースはもともと、学童野球選手向けに“パートナー不要、省スペースで最大限の練習効果を”の開発コンセプトで各種練習ギアを開発、製作してきた歴史がある。限定されたスペースで実戦的、効率的な練習を行うためのアイテム開発は得意分野といっていい。
本社内の企画開発室で行われた意見交換では、既存の商品や開発中の練習ギアなどを示しながら、製品化の経緯や発想などについて、吉村から部員たちに「逆プレゼン」。その上で、新たな製品や練習ギアを一緒に創り出すことで、練習環境のハンディをプラスにしていこう、と提案したのだった。
吉村が解説する。
「現場の意見をもとに、一緒にものづくりや環境づくりを行う。われわれの本懐でもありますし、こうしたプロセスが、これから社会に出る彼らにとって、プラスの経験になればさらに良い、という思いもあります」
こうして早大男子ソフト部とフィールドフォースとの継続的なやり取りが始まったのだった。
すでに試作段階の商品も

企画開発課の小宅晨哉は、2021年の立ち上げからボールパーク福岡(福岡・直方市)の責任者を長く務めてきたこともあり、九州地区の少年野球事情に詳しい。
「福岡もそうですが、西に行くほど、小学生はソフトボールが盛んなイメージがあります。中学から硬式野球を始めることを前提に、軟式よりもボールの挙動やバッティングでの打感などの面で、硬式に感覚が近いソフトボールを選んでいるというんです」
そんな小宅も、早大男子ソフト部を訪ね、ソフトボールは「野球とは別の競技」とあらためて感じたという。
「打撃面での違いが大きいですね。小学生の頃は野球に近いものがあるかもしれませんが、中学や高校になると変化球対応が必要になります。とくにライズボールの浮き上がるようなボールの軌道は、野球にはないものですし、ヤマを張る時間すらないスピード感なんですよね」

喜久井町グラウンド、所沢グラウンドへの訪問を重ねて部員への聞き取りを行い、すでに商品化されているソフトボールサイズの穴あきボール(FSBB-6)やソフトボール用のフィンガーパワーボール(FFPB-12S)などは好評価を得ている。
さらに、現行の野球用ギアを応用することで作ることができる「軍手ボール」や「エンドレスティー」についても試作品は完成し、意見の集約が進む。
「こちらにとっては現場で使用しての意見は参考になりますし、先方にとっても用具の提供になっているので、ありがたがってもらっています」と小宅。「しかも、選手たちのレスポンスが早い。スピード感をもって商品開発を進められていますね」
ともにソフトボールを盛り上げる

その後も幾度となくミーティングを重ね、すでにいくつかの新規アイテムは試作段階にある。
吉村が言う。
「彼らには、どんどんわれわれを利用してもらえればいいし、われわれも彼らの行動力とスピード感には刺激をもらっています。すでに、最初に来ていただいたメンバーからは代替わりしていますが、引継ぎもスムーズで、大したものです」
最初のコンタクトからまだ半年余りだが、かなりのスピード感で進んでいる『早大男子ソフト部×フィールドフォース』の取り組み。
ともに考え、ともにつくる。
これもまた、産学協同のひとつの形と言えるだろうか。チームのサポートにとどまらず、ソフトボールの新たな魅力を発信することもできそうな、可能性を感じるタッグが誕生した。