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浮かせて打つ、新感覚ティー 【エアーティー】

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【群馬県代表/初出場】玉村ジュニアベースボールクラブ

2026.06.13 |更新日:2026.06.13 2026プレビュー
【群馬県代表/初出場】玉村ジュニアベースボールクラブ

 創設から11年、いつからか悲願となっていた全国出場をついに叶えた。スタメンの4人は5年生という若いチームながら、センターラインを中心に守備が堅く、攻撃は幅が広い。そして何より、選手たちが生気に満ちている。一度は現場を離れ、学童野球を外から見つめ直したという指揮官はコーチングにも長け、実直で明るい。そういうチームだから、秋の新人戦、春の選抜大会に続く県3冠の“群馬無双”でも敵をつくらず、誰からも応援されている。今夏の全国舞台から、玉村ジュニアベースボールクラブの名が一気に広まるかもしれない。

(写真&文=大久保克哉)

※県決勝リポート➡こちら

全国予選の県決勝は8対2で勝利㊤。前日の準決勝「伊勢崎市対決」で戦った赤堀クラブスポーツ少年団が、一塁側のスタンドで玉村の応援に加わっていた㊦

たまむら
玉村ジュニアベースボールクラブ
[群馬県伊勢崎市/2015年創立]

初出場
【全国スポ少交流】
出場=なし

【県大会の軌跡】
1回戦〇12対0笠懸北・東小イースターズ合同
2回戦〇10対9菱・境野フューチャーズ
準々決〇22対0美土里タイガース
準決勝〇5対0赤堀クラブスポーツ少年団
決 勝〇8対2韮川レッズ


「ちょい騒ぎすぎ」

 戦力が整い、優勝旗やメダルを次々とコレクション。にもかかわらず、肝心要の全国予選でコケてしまう。これも“学童野球あるある”のひとつだろう。
 昨年度、2025年の玉村ジュニアベースボールクラブが、まさしくそれだった。秋の県新人戦に続いて、翌年3月からの県選抜大会も制して2冠に。ところが、4月の全国予選に来て、県準々決勝で0対1と敗北を喫してしまった。
 その失意や無念たるや、いかばかりか。想像を絶するものであっただろうことは、1年後の指揮官の涙が物語っていた。


「いやぁ、もう感無量です…」
 県決勝を制して全国を決めた選手たちは、歓喜の抱擁から挨拶を終えると、応援席へ笑顔で拳を突き上げながらベンチへ。その傍らで、髙木謙監督はコーチ陣やスタッフと握手をしながら、目頭をぬぐっていた(=㊤写真)。
「子どもたちのマック(全日本学童マクドナルド・トーナメント)にかける想いというのが、年を経るごとにホントに強くなってきまして。それがこういうかたちで達成できて、うれしく思います」
 試合中は全体を俯瞰しつつ、小学生と同じ目線に降りて「伝わりやすい言葉」を掛けるのが髙木監督流。だが前日の準決勝からは、異様に声を張るシーンも多かった。

松本主将の遊撃守備㊤は世代トップクラスだろう。再三の好プレーで味方を助けると、指揮官も興奮気味に出迎えた㊦


「この子たちの全国にかける想いは、以前の数倍、数十倍ですかね。私も何とかそれに応えてあげたいというところで、ちょっとベンチで騒ぎすぎました(笑)」(髙木監督)
 フィールドへ声を発しても、双方の応援でかき消される。それでも、出さずにはいられなったのだろう。とにかく、1年前の悲劇をぶり返してはなるまい――。実直な指揮官の“想い”は、選手たちにしっかりと伝わっていたようだ。
「チーム一丸となって、全員で声を出して、一生懸命にできたことが優勝につながったと思います」(松本咲斗主将)

強肩の三塁手・室岡㊤は、二番打者として技能も光った㊦


 準決勝も決勝もノーエラーで、攻めては先制、中押し、ダメ押し。徹頭徹尾の抜かりない試合運びで、いずれも完勝した。これで新人戦、選抜大会と合わせて県3冠を達成。前年の取りこぼしも見事に回収してみせた。

セオリーなき「タイム」

 スタンドの応援合戦にのみ込まれて、ベンチからの声はフィールドに届かない。それでも、選手たちを確実に振り向かせる方法がある。1試合につき、攻守で各3回まで許されている「タイム」だ。


「私はその3回使えるタイムをすごく大事にしていまして、1回目はなるべく早い段階で取るようにしています」
 髙木監督は、県決勝でもそれを実行した。最初のタイムは、1点を先取して迎えた1回裏の守備中だった。
 5年生エースの竹之内翔真が一死から死球を与え、続く打者は三遊間への深いゴロ。遊撃手の松本主将がそれをギリギリで捕球するや、一塁へノーステップスローでアウトに。うっとりとするような美技に応援席もドッと沸いたなかで、背番号30がベンチを出てきてマウンドへ(=㊤写真)。
 このタイミングのタイムには、疑問符も否めない。生まれている守備の良いリズムを失いかねず、逆にヒットを損したかたちの相手の消沈を和らげる「間合い」にもなりかねないからだ。

 しかし、髙木監督に迷いはなかった。「二死二塁で、四番バッター。相手チームの最高の打者を迎えたところで、子どもたちをパッと見たときに不安そうな顔をしていたので、ココはちょっと行っちゃえ!! みたいな感じで」
 マウンドに集まった内野陣がはけた直後、竹之内は追い込んでからの投ゴロで3アウトを奪った。そして2回目の守備のタイムは、最高の結果をもたらすことに。


 無安打投球を続ける5年生右腕が4回裏、一死から与死球で、打席にはまた四番打者。ここで髙木監督の「タイム」(=㊤写真)の後、内野ゴロから6-6-3併殺で守りを終わらせている(=㊦写真)。
「トウマ(竹之内)はコントロールに自信をもっている投手で、きのうの準決勝も無四球(申告敬遠1)で完投。その彼が珍しく、1試合で2つめの死球を与えたので、ダメージが結構あるのかな、と。直感的にマウンドへ行きました」

大崩れしないワケ

 韮川レッズの右強打者、岡本大和主将は決勝戦後、玉村の5年生エースをこう評している。「見た目は打てそうだけど、ちょっと打ちづらい。コントロールがいいので、どんどん追い込まれるし」。同主将は準決勝ではタイムリー二塁打2本、決勝は2打数でヒットはなかった(1死球)。
 竹之内は準決勝に続いて、決勝も完投した。被安打4の1失点、要した球数は62球。上背も球速も並ながら“打てそうで打てない”のは、結果論ではない。まして、変化球を投げているからでもない。

5年生エース・竹之内は県準決勝、決勝と連続完投。たとえスローボールでも、球の握りは真っすぐ(フォーシーム)だ㊦

 指揮官とエースとの合言葉は「タイミング」。打者に対しては、球速と投球フォームとテンポの変化による前後への揺さぶりと、内外への揺さぶりで淡々とアウトを重ねていく。土台は出色の制球力とタフなハートで、まともに弾き返されることがあっても、連打はそうそう食らわない。
「(決勝も)思い通りのピッチングができました。相手の岡本クンが良いバッターなのでちょっと怖かったです。全国大会でも完投したいです」(竹之内)

エースの巧みな投球をリードする小湊㊤は4年時から捕手。二塁手の5年生・野口㊦の守備範囲もまた驚異的

 若きエースを下支えするのは、バックの堅守と安定感だ。シンボリックなのは松本主将と野口虹斗(5年)の二遊間で、守備範囲の広さは全国大会でも3本の指に入ることだろう。髙木監督は「もう何度、あそこ(二遊間)で救ってもらったか分からない」と県大会中に話していた。
 二遊間と同じく、捕手の小湊煌月と三塁手の室岡京は、2年前の4年時からのレギュラーで、秋の関東新人戦も2年連続でプレー(いずれも1回戦敗退)。カバーリングやバックアップも抜かりなく、個のパフォーマンスは試合状況で左右されない。

左翼手の竹田隼㊤も4年時からのレギュラー。2024年11月の関東新人戦では右方向への強い打球も㊦

 そのあたりも経験値とスキルの高さを物語るが、何よりも印象的なのは、ミスを恐れていないこと。「自分の守備で流れを変えてやるという気持ちで守っています」と語る松本主将を筆頭に、どの選手もどの場面でも硬直せず、反応と出足が鋭いのが特長だ。
「やっぱり守備の堅さが優勝につながったと思います」(室岡)

有効なコーチング

 さて、県決勝戦。玉村の攻撃中の「タイム」は1度だけだった。これも試合の流れからすれば疑問符も浮かんだが、やはり指揮官の深慮がそこにもあった。

 場面は3回表、二死三塁からの内野ゴロで守る相手にミスがあり、2対0とリードを広げたところ。二死二塁で打席へ向かう六番・楊鎵蔚が、ベンチを出てきた指揮官に呼び寄せられた(=㊤写真)。以下、髙木監督の弁。
「あそこは技術的な話ではなく、確認に行きました。相手投手はスローボールを結構投げていたので、楊には『真っすぐか、遅い球か、どっちを狙いたい?』と。そしたら『速い球を狙います』と言うので、『じゃあ1本、狙っていけ!』と」


 結果、楊は死球、次打者は投ゴロで3アウトに。この試合は2打数無安打だった楊だが、準決勝では右中間へタイムリー三塁打を放っている(=㊤写真)。
「自分は六番・指名打者で守備はしていないんですけど、自分の成績よりもチームを優先したバッティングをしたいと思っています」(楊)
 こういう選手が育つのも、指揮官がコーチングのスキルを備えているからだろう。楊へのタイムからしても、それは明らか。
 自ら求めている答えに選手を誘導する対話はコーチングではなく、暗に命令しているだけ。一方、具体的に確認をすることで迷いを消したり、方向性や道筋を浮き彫りにする。対話による「確認」や「尊重」は、確率を高めるための有効なコーチングである。


写真㊤は2024年の関東新人戦。㊦はその1年後。選手目線での声掛けと明るさは不変だ

「自分は高校の途中までしか野球をしていないし、プライドも何もない」と語る髙木監督は、創設12年目のチームで指揮は都合9年目。息子たちが卒団してから約2年は、あえて指導現場を離れて見聞を広げつつ、学童野球を外から見つめ直したという。
「ベンチのコーチは毎年、選手のお父さんにお願いしています。息子と一緒に中学野球に上がっちゃいますけど、親御さんのコーチがいると毎年勝負にいけるというメリットも。私は消防職員で、チームにいられない日も多いんですけど、今年のコーチ陣はいろんな具申をして、どんどん練習してくれるので、私から技術的な面はほとんど言わなくて済んじゃっているんですよ」(髙木監督)

写真㊨から29番の松本北斗コーチ、28番の山本淳コーチ

バントでも生きていける

 昨年秋の関東新人戦は、準優勝することになるラウンダース(山梨)に1回戦で1対6の敗北。優勝を期していたが、相手のいいようにやられ放題で完敗すると、指揮官はショックを受けたように半ば茫然としていた(リポート➡こちら)。
「あの敗戦が糧になって、『この冬はバントを徹底的にやろう!』と目標をひとつ立てて取り組んできました。それは中学、高校に行っても役立ちますし、『バントだけでも上で生きていける選手もいるんだよ』と子どもたちに」
 こう語る指揮官の息子2人は卒団生で、健大高崎高に進学。すでに卒業した長男は、3年夏の甲子園メンバーに。それだけでも、十分に説得力がある。

県決勝は打ちまくった四番・小湊も、準決勝の3回にはスクイズバント㊤で、三走・室岡を生還させた㊦

 全国予選の準決勝と決勝では、犠打の成功率が86%。犠飛とファウルを除くと、内野安打も含めてバントは6つあり、失敗は本塁タッチアウトとなった決勝の最終回のスクイズだけだった。
「コーチ陣たちがいろいろと考えてくれて、遊び感覚も入れながら冬場にバントを極めてきたおかげです」と髙木監督。もちろん犠打ばかりではなく、2試合で9盗塁、15安打のうち4本はバットを振っての適時打と、攻撃に幅があった。


 決勝のヒーローは四番の小湊(※リポート参照)だが、準決勝ではその後を打つ宮沢仰が1回に先制打、5回には左翼線へ二塁打を放っている(=㊤写真)。また、完敗した昨秋の関東新人戦で唯一のヒットを記録したのも、この右打者だった(=㊦写真)。
「最低でもヒットは打てるように、ピッチャーの特徴をとらえて打席に入っています。全国大会はサク(両翼70mからの特設フェンス)があると思うので、それを越せるようにがんばります」(宮沢)


 指名打者を含むスタメン10人のうち、4人は5年生という若いチームながら、どこにも穴が見当たらない。それでも指揮官に慢心はなく、8月に愛媛県で開かれる全国大会に向けては「外野守備の強化」を口にしている。


七番・右翼の萩原瀧皇㊤と八番・中堅の山本塁輝㊦の5年生コンビも、攻守で計算できる戦力

 チームとしても初の夢舞台。また、県決勝に出場したメンバーの全員が、愛媛県に上陸するのも今夏が「初めて」だという。
 酷暑は年々厳しさを増している上に、最多6連戦の長期遠征となることから、不安はあるだろう。それでも頭に浮かんでくるのは、指揮官の大きな器の上で存分に果敢にプレーをしている玉村ナインの姿。遠い四国の地に来ても、“昨日の敵まで今日の友”としながら、ミラクルを巻き起こすかもしれない。

【県大会登録メンバー】

※背番号、学年、名前

⑩6    松本咲斗
①6    室岡京
②6    小湊煌月
③6    宮沢仰
④6    飯村維吹
⑤6    竹田隼
⑥5    野口虹斗
⑦6    楊鎵蔚
⑧6    髙橋和
⑨6    髙橋音色
⑪5    竹之内翔真
⑫5    萩原瀧皇
⑬5    久保頼太
⑭5    山本塁輝
⑮5    高橋充希
⑯5    オーベー・リチャード
⑰4    古藤大翔
⑱4    髙橋風磨
⑲4    伊藤智徳
⑳4    須藤湊大
㉑4    松本義虎
㉒4    狩野煌士朗
㉓4    今井朝飛
㉔6    フィリップス・デヴィン新


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