高円宮賜杯第43回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント(以下、全日本学童)の開幕までジャスト1カ月。『学童野球メディア』は、今夏の夢舞台を事前から事後まで特報していきます。第1弾は7月2日に出そろった出場全51チームと過去の成績のほか、ご当地外ではあまり知られていない特ダネも随所に――。
(写真&文=大久保克哉)
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「小学生の甲子園」とは
全日本学童が「小学生の甲子園」と呼ばれるのは、高校野球の夏の甲子園と同様に、都道府県大会を制したチームによるチャンピオンシップ大会であることが大きな理由だろう。1988年の第8回大会(静岡県開催)から、この方式となっている。
2009年の第29回大会からは、開催地が学生野球の聖地「神宮球場」のある東京都に。プロ野球ヤクルトの本拠地でもある同球場で毎年8月に開会式があり、都内の複数会場で51チーム参加の巨大トーナメントを6日間で消化する(予備日あり)。そして最後まで勝ち抜いて頂点に輝いたチームこそは「キング・オブ・キング」、全国の加盟9842の学童野球チーム(2022年度)のチャンピオンである。
47都道府県のうち、予選が困難な北の大地・北海道は出場枠が2。登録チーム数が唯一、4ケタを超える大激戦区の東京都も出場枠が2。北海道は北と南に分かれての予選で各出場チームを決する。東京都は第1・第2代表に加えて「開催地枠」もあるため、予選の都大会上位3チームが出場している(2009年から)。
【⇩東京大会リポートは→こちら】
優勝経験組は4チーム
2001年の第21回大会からは「前年度優勝枠」も設けられて、現行の出場51チームに。昨夏に5年ぶり3回目の出場で初優勝を遂げた中条ブルーインパルス(石川)が、今年は予選免除で全国V2へと向かう。選手主体の普段着野球を実践する倉知幸生監督は『学童野球メディア』の人気コーナー、監督リレートークのトップバッターも快く引き受けてくれた。
前年王者のその指揮官も親愛する“カリスマ指揮官”こと辻正人監督が率いる多賀少年野球クラブ(滋賀)は、何と6大会連続の出場。多賀の選手たちが展開する「ノー(脳)サイン野球」はもはや、夏の夢舞台の風物詩か。2018年から2連覇のほか、2大大会のもうひとつ、全国スポーツ少年団軟式野球交流大会(以降、全国スポ少交流)は2016年に初優勝と、都合3度の日本一を遂げている。
【⇧前年王者・中条ブルーインパルスの4月のレポートは→こちら】
【⇩多賀・辻監督の「監督リレートーク」は→こちら】
2大大会を通じた日本一の回数も、全日本学童の出場回数でも、多賀の上をいく「横綱」が福島の常磐軟式野球スポーツ少年団だ。創立40年目にあたる今年、保持する最多出場レコードを「23」に更新、全国スポ少交流も含めると全国出場は何と34回というオバケ記録だ。夏の2大大会をハシゴで出場した時代もあったが、現在のルールはダブル出場不可となっている。
1973年に選手8人でスタートした常磐。その8人の一人(当時4年生)だった天井正之監督は、6年時にチーム初の全国出場(全国スポ少交流)を果たす。中大卒業後に古巣のコーチを経て2000年から監督となり、2002年と05年に全日本学童で準優勝、07年には全国スポ少交流で優勝。家庭の事情で5年間は現場を離れた後、2015年に指揮官に復帰しており、節目の年でもある今夏はチームとして2010年以来の全日本学童制覇へ向かう。
【⇧常磐・天井監督の「監督リレートーク」は→こちら】
北ナニワハヤテタイガース(兵庫)は1988年に初優勝(全国スポ少交流もV)。お隣の大阪・新家スターズは2015年と19年に全国スポ少交流を制しており、全日本学童は出場2回目の昨夏、4強まで進出している。
千代松剛史監督率いる新家スターズ(大阪)は2015年の全国スポ少交流の決勝で多賀(滋賀)を破り、初の日本一に輝いている。写真は当時
茨城の茎崎ファイターズは2017年に、愛知の北名古屋ドリームスは21年に準優勝。東京第1代表のレッドサンズは昨夏8強入り、第2代表の不動パイレーツは19年に4強入りと、近年は開催地・東京勢の躍進も際立ってきた。九州勢が彩り豊かに
予選の至難さもあって例年、半数以上が初出場。これも2大大会の特色だが、今年の全日本学童は初出場組が昨年より6チーム減の25。昨年は全8県が初出場だった九州勢だが、今年は彩りが豊かだ。
宮崎と沖縄の2チームは1年前の初戦敗退の借りを返すべく、2年連続で神宮へ。福岡の光友ヴィクトリーは今大会で唯一、1981年の第1回大会(16チームで東京開催)を知る老舗で、2011年以来3回目となる今夏は全国初白星なるか。鹿児島の川内サンダースは1980年代から2020年代まで、10年刻みの全年代で全日本学童出場と安定しており、86年には準優勝の実績もある。
沖縄・大里シャークスは昨夏、初戦(2回戦)で1点差負け。「持っている力を出せないまま終わってしまったよ」と宮城政一監督は嘆いたが、今夏はその分も!
長崎の波佐見鴻ノ巣少年野球クラブは、熱い学生野球ファンには知られているだろう。2011年に全国スポ少交流で初優勝したメンバーが、波佐見中の軟式野球部で14年夏に全国制覇を遂げた。さらにその中の一人で、2010年から指揮する村川和法監督の三男・大介さんは、波佐見高で3年夏に甲子園出場、西日本工大では4年春に大学選手権に出場。こうして小・中・高・大と全国舞台でプレーした大介さんは、小柄ながら50m走6.0秒を誇る左の巧打者で、ドラフト候補にも挙がった。すでに引退して社会の一員となり、一児の父にもなっているというから、ゆくゆくは父の跡を継いで古巣を率いるのかもしれない。
学童の波佐見鴻ノ巣と波佐見中で、ともに日本一に輝いた村川大介さん(中央)。写真は2014年夏、横浜スタジアムで中学日本一に輝いたときの一枚で、左が父・和法監督(学童)で右が母
佐賀の川副少年野球は1999年以来、24年ぶりの出場。それを超える今大会の最長ブランクは、四国の藍住南タイガーススポーツ少年団(徳島)で1985年以来、実に38年ぶりの出場となる(全国スポ少交流は90年に出場)。
最後にもっとレアな情報を。何よりハンドボール熱が高いという富山県氷見市だが、野球でも小・中・高と全国区のチームがある。2017年に稲積少年会野球部と比美乃江スターズの合併で生まれた比美乃江稲積JBOYSは、3年前にも予選(県大会)を制していたが、全国大会はコロナ禍で中止に。合併から7年目、ようやく晴れ舞台に登場となる。率いる東軒宏彰監督はキャリア17年、2012年には前身の稲積少年会を全日本学童3回戦まで導いている(下写真は当時)。
※「全日本学童大会」の当欄では、出場するチーム・選手の紹介(既出を含む)や、名将たちのコメントや最新情報も交えた展望などを随時、アップしていく予定です