高円宮賜杯第43回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント東京都予選大会の3位決定戦は6月17日、府中市民球場で決勝に先駆けて行われた。一進一退の前半戦を経て、後半に大きく突き放した船橋フェニックス(世田谷区)が、花小金井サイドワインダーズ(小平市)に13対6で勝利。開催地・東京の3枠目での全国大会初出場を決めた。
※記録は編集部、決勝戦リポートは→こちら(写真&文=大久保克哉)
⇧全日本学童初出場を決めた3位・船橋フェニックス
⇩4位・花小金井サイドワインダーズ
■3位決定戦
船 橋 31234=13
花小金 01203=6
【船】原、皆見、原-齋藤
【花】佐野、西村、吾郷-吾郷、山中
本塁打/原(船)
4/1051のプライド
1週間前のダブルヘッダー。準々決勝に続く準決勝で敗れた同士が、残り一枚の全国切符をかけて対峙した。
終わってみれば、3者凡退は1回裏のみ。ほとんど塁上を賑わし続けた戦いは、既定の90分を5イニングで消化。昨秋の関東王者・船橋が毎回得点で貫録を示した形となったが、前半戦は一進一退の好勝負が展開された。
⇧5回表、船橋の三番・原が中越え3ラン。左手を突き上げての生還で12点目が入る
3回表、船橋の五番・齋藤蒼太が左前へ(上)、七番・楠健伸が右前へ(下)それぞれタイムリー
「自分たちは良い球を投げられていたけど、相手が強くて打たれてしまいました」と、花小金井の吾郷裕真主将。正捕手として投手陣を懸命にリードし、5回表には自ら救援も、船橋打線の勢いを止められず。それでも、東京1051チームのベスト4まで来たのだ。
「相手に先行されても、みんなで力を合わせて後半勝負の戦いも経験してますし、今日もまだぜんぜん、いけるぞと思いながら戦っていました」
花小金井は主将の言葉を裏付けるような、光るプレーや粘りも随所に見られた。10点差とされた直後の5回裏には、上位打線が3安打集中で3得点。2回表の守りでは5年生の右翼手・大嶋甲人がファウルフライをダイブで好捕。「ファウルは捕れなくてもファウル。打球が飛んだ瞬間に飛び込むと決めていました」(大嶋)。
2回表に美技を披露した花小金井の大嶋(中央)。「これから自分たち5年生の大会もあるので、今日の経験を活かしたいです」
直後の2回裏の攻撃では、先頭の四番・西村風輝が118㎞/hの速球をはじき返しての中越え三塁打。3回にも左翼線へ二塁打の西村は「打つほうは練習の成果が出せたのかなと思います。でも相手のレベルが1つ2つ上かなというくらい、ぜんぜん違いました」と唇をかんだ。
吾郷主将も実力差は認めつつ、「今日で自分たちも1個上のレベルに上がれたと思います。ガスワンカップ(関東大会)とか、まだ目指す大会があるので頑張ります」と殊勝に話した。
120km/hに迫る速球も打ち返して3打数3安打2打点。花小金井の四番・西村が気を吐いた
さて、夏の全国大会へ滑り込みで出場を決めた船橋だ。相手も脱帽させる攻撃力はすさまじかった。
1回表、先頭・尾花緋肢(あかし)の技あり左前打を皮切りに、打つわ打つわでトータル13安打で13得点。三番・原悠翔(※「2023注目戦士」→こちら)の3ランなど派手な一打もありつつ、11盗塁(うち三盗3)に象徴される果敢で抜け目のない走塁が効いていた。3回に二盗を阻まれて以降も走者はトライを続け、相手のミスも誘発。また、走者の好スタートを見た打者は必ず見送るなど、約束事の浸透度もはっきりとうかがえた。
「そのあたり(走塁や決めごと)は、もう何回も失敗して修正してきて、ようやく形になってきたのかなと思います」と、齋藤洋美監督は船橋ナインに及第点。昨秋の新人戦は「打って打っての野球」で東京大会と関東大会をともに初制覇。しかし、以降は実績のあるチームに敗れることもあり、経験値と引き出しの乏しさを痛感してきたという。
「関東大会以降、強豪チームとたくさんやらせてもらう中で、こうしたら点が取れるんだなということを僕ら指導陣が勉強して、それを子どもらに落とし込んできた感じです」(同監督)。
船橋は13安打11盗塁。四番・笹谷主将(右)は3打数3安打3打点、三盗2を含む4盗塁の活躍
初回の2点目と、3回の1点はそれぞれスクイズによるもの。4回には二死無走者から2安打で3得点と、地味な攻撃も積み重なっての大勝だった。スクイズバントに二塁打や2点タイムリーなど全打席で得点に絡んだ四番・笹谷海陽主将は「大事な試合はやっぱり、小技も使っていなかないと得点できないので。全国ではもう強いチームしかいない中で自分たちは初めてなので、そこでどう戦えるか、どう勝てるかを、しっかりとやっていきたいと思います」と話した。
2回表、船橋は八番・安藤且馬の左越え三塁打(上)と、九番・皆見颯之介のスクイズ(下)で加点
夏の全国舞台でも、カギを握るのはエースで三番の原だろう。1日70球という球数制限の中で、この右腕がどこでマウンドに立つのか。3位決定戦では先発と抑えを兼務したが、本来は大ピンチや流れを引き寄せたい局面での登板がメインだという。
「全部が全部を一人に頼り切るのは、学童チームとしてどうかな」と齋藤監督。全国大会はダブルヘッダーがない代わりに、最大6連戦となるが「無理はさせないし、彼(原)の体力と総合力も含めて、どうやって戦っていくかを見極めたいと思います」(同監督)。
6年生16人と5年生2人。仲間を懸命に応援する控え組とスタンドの一体感は、酷暑の夢舞台でもナインの背中を押す力となることだろう。