3月に本格稼働した『学童野球メディア』では、2023年度の6年生と4年生から「注目戦士」をこれまでに23人紹介してきました。このうち11人の6年生投手が全日本学童出場を決めています。開幕直前のこのタイミングで、最新の情報や新規の動画も追加しつつ、おさらいをしていきます。
(動画&写真&文=大久保克哉)
先にお断りをしておこう。減っているとはいえ、学童野球チームは全国に1万近くある。これから紹介する12人以外にも、「未来モンスター」と呼びたくなるような逸材は各地にゴロゴロといるはず。あす5日に開幕する全日本学童大会もそれは同じ。当メディアは47都道府県をカバーできておらず、首都圏中心の情報になることをご容赦いただきたい。
それを踏まえても、世代屈指とも呼べるほどの「怪物クラス」の本格派投手が左右で1枚ずついる。レッドサンズの藤森一生と、船橋フェニックスの原悠翔だ。奇しくも、ともに東京でプレーする2人は球速だけでも全国トップクラスにある。左腕の藤森は東京予選の決勝に先発して最速120km、右腕の原は同日の3位決定戦で118㎞をそれぞれマーク(球場表示)した。
⇧レッドサンズ・藤森一生(紹介記事→こちら)
⇩船橋フェニックス・原悠翔(紹介記事→こちら)
またその日の投球が対照的だった。前週の準決勝の勝利で全国出場(※東京は3枠)を決めていた藤森のほうは、自らの限界に挑むかのように序盤から豪速球で押しまくった。初回に投じた12球のうち、スローボールは2球のみ。一方の原のほうは、3位決定戦を落とせば全国の道が閉ざされるとあってか、要所では豪速球で勝負しつつ、投球フォームのリズムと球速に幅をもたせて、慎重にアウトを重ねていった。
チーム同士の直接対決(予選準決勝)はあるが、藤森と原が先発で投げ合ったわけではない(11対1でレッドサンズが勝利)。それでも互いを認知しており、多少は会話もしたことがあるという。「全国では藤森クンに負けないようなピッチングをしていきたいです」と、原は闘志満々。対する藤森は「お互いに東京のエースとして、同じ学年の野球選手として、ライバル心をもってやっていきたいですね」。やや大人びた発言は勝者の余裕ではない。そういう真摯な人間性も育まれていることを、周囲も取材陣も知っている。なお、原が熱望する直接対決が全国で実現するとなると、決勝戦になる。
⇧八日市場中央スポーツ少年団・富永孝太郎(紹介記事→こちら)
⇩館野学童野球クラブ・山本愛葉(紹介記事→こちら)
本格派の中でも、コントロールが出色なのが八日市場中央スポーツ少年団(千葉)の右腕、富永孝太郎だ。全国8強の実績もある磯辺シャークスの強打と待球作戦をものともしなかった県予選決勝の快投が記憶に新しい(→こちら)。
館野学童野球クラブ(石川)の紅一点、山本愛葉と茎崎ファイターズ(茨城)の中根裕貴も、抜群の制球力を誇るサウスポー。山本は緩急と左右高低への投げ分けで県決勝では先発して4回無失点の好投。地元の石川県では7月末にガールズトーナメントが開催されたが、山本は仲間との練習に明け暮れたという。
全国大会に出てくるエースは、低学年から投打の軸というケースが圧倒的に多い。他方、4年生の終わりに名門に入った中根は目立たぬ存在。しかし、自主練習を重ねて、この最終学年で文句なしのエースとなった気概の塊だ。
⇧茎崎ファイターズ・中根裕貴(紹介記事→こちら)
⇩簗瀬スポーツ・郡司啓(紹介記事→こちら)
冒頭の藤森と原は、打者としても一発を量産する「怪物クラス」だが、より多彩なのは簗瀬スポーツ(栃木)の郡司啓だ。右にも左にも本塁打したかと思えば、三塁線へのセーフティバントから二盗、三盗。左腕にして遊撃も平然と守る。ある意味、フィールドでやりたい放題をしてチームを盛り立てる。
北名古屋ドリームス(愛知)の右腕・境翔太も、高い身体能力と汎用性を誇る。幼児からチームに入り、遊撃手一筋できていた。そして最上級生から本格的に捕手に投手にと、プレーの幅と可能性を大いに広げている。
⇧北名古屋ドリームス・境翔太(紹介記事→こちら)
⇩泉ホワイトイーグルス・髙橋隼太(紹介記事→こちら)
きれいなフォーシームを投じるのは、泉ホワイトイーグルスの右腕、髙橋隼太だ。埼玉予選で、地域選抜チームの並居る強打者たちを空転させてきた要因は、よく伸びる速球にあったようだ。「しっかりと2本の指を縫い目に引っ掛けて、バックスピンが掛かるようにリリースしています」。
4年生から3年連続で、全国大会初戦の先発マウンドに。多賀少年野球クラブ(滋賀)の筒井遙大は今夏、おそらくは前代未聞の偉業を遂げるだろう。今やチームと指揮官の知名度は「学童野球」の枠を超えているが、この右腕の伸びるボールとサク越え連発のパンチ力も広く知られてきている。
⇧多賀少年野球クラブ・筒井遙大(紹介記事→こちら)
⇩越前ニューヒーローズ・中橋大地(紹介記事→こちら)
越前ニューヒーローズ(福井)の中橋大地はハイレベルな投打二刀流でいて、1年前の全国から「打撃」で注目されてきた。昨夏は全国8強入りを決める逆転の決勝3ラン。今年5月からの県予選では、先発投手として新境地を開拓したという。来たる全国では1年分の進化の跡も見られそうだ。
あえて「守備」にも着目したいのは不敗軍団、新家スターズの右腕、貴志奏斗だ。理由は紹介記事をご一読いただきたいが、1年前の全国の三塁守備で目に見えぬ大傷を負った。だがそれをバネに、チームを主将として引っ張り、とうとう1年間無敗のまま全国へ。難関の大阪予選を制したときには、安堵と喜びのあまり涙が出たという。「めっちゃうれしかったです! 今年は自分らの代やから、去年より緊張します。でも、やる気とこれまでの練習量を自信にして、全国でも最後まで勝ち抜きます」。チームとご両親の協力で最新のプレー動画を追加しているので、こちらもぜひ!
⇧新家スターズ・貴志奏斗(紹介記事★動画追加→こちら)
繰り返しになるが上記11人以外にも、俊英はまだまだいるはず。たとえば、足柄ホープ(神奈川)の左腕、大須賀銀獅(下写真)。ソフトバンクや巨人で活躍した杉内俊哉を思わせるような、ムダのない安定したフォームから伸びのある速球を投じる。中堅守備でも美技を連発する注目の逸材だ。
大須賀銀獅(足柄ホープ)