『学童野球メディア』の開設から3回目の大みそか。今年も年間最優秀選手を発表します!! 当メディアはこの1年も、学童野球の現場から気になる情報や生の声、模範たるチーム・選手の取り組みなどをお届けしてきました。全都道府県を回れる体力はまだありませんが、夏の全日本学童大会マクドナルド・トーナメントは半数以上の32試合をカバー。また全国予選や新人戦なども含め、取材した6年生の数だけでも相当です。その中から『2025年MVP』を選出しました。
(選出=編集部/写真&動画&文=編集長・大久保克哉)


【2025年最優秀選手】
かんばやし・しゅんと
神林駿采
[千葉・豊上ジュニアーズ/東京ヤクルトスワローズジュニア]
6年/捕手兼中堅手/右投右打/158㎝52㎏
プレー動画➡こちら
※2025年8月1日公開
【主な掲載記事(公開順)※2024年は当時5年生】
➊2024.08.05全日本学童大会プレビュー『チーム紹介』➡こちら
❷2024.08.19全日本学童大会『1回戦写真ハイライト.etc』➡こちら
❸2024.12.04関東新人戦『グッドルーザー』➡こちら
➍2025.03.17フィールドフォースカップ『MVP』➡こちら
❺2025.05.14東日本交流大会★ベスト8➡こちら
❻2025.08.01『2025注目戦士㉒』➡こちら
❼2025.08.04全日本学童千葉大会★優勝➡こちら
❽2025.08.05全日本学童大会『チーム紹介』➡こちら
❾2025.08.29全日本学童大会『2回戦Pickup』➡こちら
❿2025.10.07全日本学童大会『準々決勝&チームストーリー』➡こちら
⓫2025.10.24NPBジュニアトーナメントプレビュー2025『ヤクルトJr.』➡こちら
⓬2025.10.27全日本学童大会『俊英カタログ前編』➡こちら
永久の取材スタンス
球児に限らず、小学生で人生や身の振りが決まるわけではない。ゴールはどこにも見えず、自我も芽生えて興味や関心が広がりだした程度だ。
成長期の訪れは個体差が激しく、早いか遅いかが野球のパフォーマンスや結果に直結しやすい。満12歳で外見は大人並だとしても、中身は機能も知能も思考も未熟。おまけに心はナイーヴだったりするから、周囲や大人のかかわりが肝心になる。

そういう特性のある世代の野球である。当メディアは現場で取材はするが、いちいちプレーヤー同士を引き比べたり、目先の結果だけで優劣を決めつけたりしないように努めている。学童球児の歩み方の正解は無限大。親子のあり方もそれぞれで、人から是非を問われるものでもない。
それらも踏まえた上で、ひとつの正解や模範的な例として、有能で最低限の人格やマナーを備えた選手たちを数多く取り上げ、記事にしている。前置きが長くなったが、このあたりは今年に限らない、学童野球メディアの永遠の基本スタンスである。
悩める好打者も多いなか
さて、この2025年。学童野球界で最も大きな出来事と言えば、複合型バットの一般用(大人用)の使用禁止だろう。打球部に別素材が据えられ、打球の飛距離も値段も驚くほどの、いわゆる「飛ぶバット」が公式戦で使えなくなった。その影響は多くの名将たちの予想も超えるもので、夏の全国大会(全日本学童マクドナルド・トーナメント)では、サク越え本塁打がほぼ半減した。

昨年まで「飛ぶバット」を使っていた選手は、打球が明らかに飛ばなくなったことで調子を崩したり、対策が後手を踏んだり。長いこと活躍から遠のく選手もいた。そうしたなかで、春先からコンスタントにサク越えアーチを放つ右バッターがいた。
それが2025年のMVPに選出した、神林駿采だ。所属する千葉・豊上ジュニアーズは全国常連の強豪チームであることから、主要な大会で勝ち進むことが多く、結果として筆者も多くのプレーを目にすることに。
そして彼が登場した記事のバックナンバーだけでも、なかなかの数に。初登場は、5年時の夏で、全国大会プレビューを兼ねたチーム紹介。それから直近のNBPジュニアトーナメントのプレビューまで、数えてみると13本となった。

笑顔も多かったNPBジュニアトーナメント。「キャプテンの自分が明るくすることで、みんなを盛り上げたいと思っていました」(神林)

年末年始のお休みの期間に、各リンク先の記事を順にご一読いただければ、そのパフォーマンスやプレーがいかに優れていたのか、お分かりいただけることだろう。さらには、時々のコメントや人との関わりなどから、心が成長していく過程も垣間見られるかもしれない。
魅力のひとつは、逆方向へもサク越えできるパンチ力。今夏の全国大会では、3試合で2本のサク越え弾と、ハイレベルな舞台でも驚異的な結果を残した。でも「MVP」の決め手となったのは、平凡な二塁ゴロを内野安打にしてみせた1本だ。
その一戦に勝利し、全国準優勝することになる相手の指揮官も「あれは普通のセカンドゴロですよ」と、神林のあまりの脚力に目を丸くしていた。加えて、大差ビハインドとなった豊上ナインが、シュンとなりかけた矢先の全力走と一塁ヘッドスライディング、そして両の拳を握っての咆哮(=下連続写真)。名門で10番を背負う神林は、どこまでも雄々しくてタフだった。



「キャプテンになって、人間的にもだいぶ成長しましたよね。センスのない子だったんですけど、野球に対する姿勢も取り組みも、みんなガラっと変わっちゃいましたから。人の話を聞く目つきも、教えられたことをやろうとする姿も、ちょっと他の子とは比べものにならないくらい。でもまさか、ヤクルトジュニアでもキャプテンをやってるとは…(笑)」
こう話したのは、豊上の髙野範哉監督。神林のMVP選出を受けて、あらためてコメントを寄せてくれた。神林に福井陽大、中尾栄道の豊上3選手がヤクルトのユニフォームでプレーしたNPBジュニアトーナメントは、ネット配信で観戦したそうだ。

夢の祭典で自信を再確認
既出でない情報。年末の祭典、NPBトーナメントでの神林にも触れておこう。
ヤクルトジュニアは予選リーグ2勝で決勝トーナメントへ。準決勝ではソフトバンクジュニアと白熱のシーソーゲームを展開した末に3対4で敗れ、3位で終えている。
「やっぱり負けたのが悔しい。ソフトバンクはさすが前年度優勝チームで、バッティングも守備もしっかりしていて強かったです」


NPBトーナメントの予選リーグ第3戦では目の覚めるようなエンタイトル二塁打を左へ。足を大きく上げる打法は佐藤貴規コーチの直伝。「10月ごろにまったく打てなかった時期に、効果と目的も教えてもらいました」(神林)


神林は一番・中堅で全4試合フル出場。準決勝は無安打も、敵失で一塁に出てから二盗を決めてみせた。頭からベースに飛び込んで、際どくセーフに。このときにマスクをかぶっていたのは、大会中に自己ベストを126㎞に更新した無類の鉄砲肩、石光奏都(『2025注目戦士㉒』➡こちら)だったが、ベンチのサインは「グリーンライト」。いつ行ってもいいよ、という指示だった。
「度会(博文)監督からは『シュント(自分)が出れば1点は確実』と、ずっと言われてきました。大会ではあまり打てなくて出塁できなかったけど、練習試合で6連敗していたライオンズ(西武ジュニア)に予選の1試合目で勝てたのはうれしかった(神林も適時打1本)」

身長158㎝は6年生として恵まれているが、選び抜かれたNPBジュニア戦士の中に入ると、小さなほうの部類に。当然、打球の飛距離も肩の強さも上には上がいた。それでも神林は自信を増したところがあるという。
「足の速さですね。これだけはジュニアでも、他の人に負けてないなと思いました。これからも足を生かしながら、活躍できる選手になっていきたいです」
ヤクルトジュニアで計測した50m走のタイムは何と、6秒55。もちろん、チーム最速だ。今後の進路は非公開だが、頭の中でもほぼ固まっているようだ。




「今はゆっくりしたいです。何も考えないで、何もしないで」
NPBトーナメント閉幕の夜、神林は率直にそう言った。
それだけ毎日、野球に全力を注いできたのだろう。敗退後の3位表彰式、首脳陣から選手一人ひとりの首に銅メダルがかけられたシーンでは、主将も堰を切ったように号泣。頬を伝うものがあった度会監督からは、こう言われたという。
「こんなにすごい選手はいないから、これからも自信をもっていけ!! キャプテンとして頑張ってくれて、ありがとう」

もうひとりの恩師からは、深慮と愛があればこその叱咤が寄せられている。
「もともとがホントの野球のうまい少年と違うから、これまでやってきたこと、これから教わることをきちっとやっていかないと。足が速いのも、周りの選手が成長期に入ればどんどん追いつかれてきちゃう。そういうことも自覚して意識して、努力を怠らないでほしい」(髙野監督)
そうなのだ。詳しくは選手紹介の記事にあるが、3年生までの神林は試合にたまに出るだけの、泣かず飛ばすの外野手だった。それでも、6年生でNPBジュニア入りして主将も任されるまでに大出世。その最たる理由は、たゆまぬ努力に他なるまい。その歩みは本人の大きな拠り所であり、多くの学童球児に希望を与えてくれることだろう。

全国の新6年生(現5年生)たちへアドバイスがあるとすれば、自身に日々言い聞かせてきたことだという。
「練習では自分が一番ヘダだと思ってやる。試合では自分が一番だと思って自信をもってやる」
学生球界では、まま耳にする言葉だが出自なんぞ、どうでもいい。信じて貫くことに意味がある。

