2023年の学童野球の日本一は、東京の不動パイレーツか、大阪の新家スターズか――。双方の選手・監督のコメントとともに見どころをお伝えします。夏の夢舞台の大一番は8月11日、午前9時、大田スタジアムでプレーボール!
(写真=福地和男)
(文=大久保克哉)
不動パイレーツ
[東京]2年ぶり4回目
過去最高成績=ベスト4/2019年
※今夏、更新
【戦いの軌跡】
1回戦 〇4対0弓削(熊本)
2回戦 〇1対0常磐(福島)
3回戦 〇7対0菱・境野(群馬)
準々決勝〇12対2簗瀬(栃木)
準決勝 〇4対0八日市場(千葉)
■永井丈史監督
「(準決勝勝利直後)個人的には今も落ち着いているので、勝ちたい強い気持ちは自然に出てくると思います。決勝もいつも通り。いつも通りのやるべきことをやる。声を出す、振るべきボールは振る、サインが出れば応じて動く。もうそれだけしかないですね。大きなことは言えません」
■小原快斗内野手
「準々決勝でちょっと力んでいたので、準決勝はリラックスして打席に入った結果がホームラン(大会3本目)になったと思います。決勝も絶対に勝ちます!」
■阿部成真捕手
「(準決勝で69球無四球完封勝利)決勝も投げたいです。ホームランも打ちたいです!」
新家スターズ
[大阪]2年連続3回目
過去最高成績=ベスト4/2022年
※今夏、更新
【戦いの軌跡】
1回戦 〇8対2館野(石川)
2回戦 〇19対2茎崎(茨城)
3回戦 〇7対1宮崎鷹黒(宮崎)
準々決勝〇4対1大里(沖縄)
準決勝 〇5対1レッド(東京)
■千代松剛史監督
「もうあと1つ。もうここまで来たら全国制覇、最後の絶対目標のそこしかないですね。選手らと一緒にがんばっていきます。相手も東京2位の良いチーム、試合も見させてもらいました。ただ、相手がどうこうというよりも、自分らの野球をすること。それだけです」
■山本琥太郎投手
「今日(準決勝)もコントロールは自分が(相手投手に)勝っていたと思います。決勝もたぶん投げると思います。1本もヒットを打たさんと、無失点でいきたいです」
■山田拓澄外野手(5年)
「プレー中は学年は気にしていません。決勝は打ち合いをして、守備も良くして勝ちたい。優勝して自分らの代でもう1回、このマクドナルドに来たいです(前年度優勝枠で)」
■見どころ
大差なら新家、僅差なら不動か
圧倒的な練習量の上に成り立つ新家の重量打線は、日替わりヒーローを生んでいるように、どこからでも得点できるのが強み。5試合で二塁打は計12本。左打ちの山本琥太郎と山田拓澄(5年)は本塁打を放っている。強打ばかりに目がいきがちだが、1点を奪うための足技と小技も備えている点が脅威。準決勝でも秀逸な相手バッテリーに対して盗塁企図を端から放棄するような愚を犯さず、盗塁死もあったが足で揺さぶりながら重圧をかけていったのが印象的だった。
対する不動は、準決勝で未登板のエース・永井大貴主将の先発が濃厚だ。球数次第で、準決勝で無四球完封勝利した阿部成真の救援があるだろう。これまでもこの右腕二枚を軸に、5試合のうち実に4試合(継投3試合)で完封勝ちしている。
不動・永井大貴主将。雨天下の準々決勝でも好投
都心部にあるゆえ、不動は定期活動(練習場所)が週末の4時間しかない。その中で、別の練習場所の確保や練習試合など、やりくりをしているチームならではの集中力と賢さが、選手たちの攻守にも見て取れる。その象徴が右腕二枚だ。
驚くようなスピードボールがあるわけでもないのに、打たれそうで打たれない。連打や得点を相手に許さないのは、絶対的な制球力の上に頭脳的な投球が冴えているからだろう。状況を読んで各打者も観察しながら、コーナーへ丁寧に投げ分けていく。加えて、球の緩急に投球のテンポなどにも幅があるから、連打をされにくい。永井にはリズム感と球のキレ、阿部には力強さがあって捕手でも強肩と、タイプが異なることでの相乗効果もある。
一方の新家は全試合を細かな継投で勝ち上がってきているが、大黒柱はエース右腕の山本だ。不動の2投手にも匹敵する制球力と緩急があり、凡打の山を築いていく。投げないときには一塁を守るが、大ピンチでは必ず登板することになるだろう。
不動打線は右打ちの三番・小原快斗が3本塁打、続く左打ちの四番・阿部が2本塁打。速球も遅球もフェンスオーバーできるのが2人の強み。状況によって、阿部の申告敬遠もあるだろうが五番・永井は経験豊富で今大会はバットがよく振れている。さらに5年生の難波壱はチーム本塁打王と侮れない。機動力も一番・岩崎貴彦を筆頭に備えており、サインプレーは打順に関係なく仕掛けることができる。
堅守を象徴する貴志奏斗主将(左)と城村颯人(右)の三遊間コンビ
さて、注目したいのは先制点だ。不動に早々に一発が飛び出すなど、先取点を奪えると新家打線にプレッシャーが生じ、競った展開になるのかもしれない。逆に新家があっさりと先制するようなら、そのまま主導権を持って準決勝のようにじわじわと点差を広げていく可能性がある。双方のこれまでの戦いから予想すると、ミス連発の弛緩した内容はまずあるまい。前半はほぼ得点のないままハイテンポで進み、後半戦でひと山、ふた山が訪れそうな気もする。
両軍ともに過去最高の4強の壁を越えており、どちらが勝っても初戴冠となる。ともに1回戦から6日連続の試合となる真夏の大一番。全国9842チーム(2022年度登録)の頂点は果たして――。