【2024注目の逸材】
てらむら・りく寺村 陸
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【所属】東京・旗の台クラブ
【学年】新6年(現5年)
【ポジション】中堅手兼投手
【主な打順】三番
【投打】左投左打
【身長体重】147㎝45㎏
【好きなプロ野球選手】吉田正尚(レッドソックス)
※2024年1月10日現在
父親が背番号30、息子は背番号10で目指すは「小学生の甲子園」こと全日本学童大会初出場――。まさしく“学童野球あるある”の父子鷹だ。
47都道府県で唯一の登録3ケタ、1000チームを超える東京にあって、昨秋の新人戦は準優勝。寺村俊監督は秋田県の横手高で主将を務め、早大時代に故・応武篤良監督の薫陶を受けている。
そしてキャプテンの寺村陸は、2人兄弟の長男坊。「三番・中堅」でスタメン出場し、リリーフ登板から勝ちゲームを締めるまでが主な役目だ。
「チームではマックで全国大会(全日本学童)に出るのが目標。個人ではDeNAジュニアに入りたい(NPB12球団ジュニアトーナメント出場)」
新年の抱負をそう語る寺村は、フィールドでは闘志満々の頼もしいリーダーだ。150㎝にまだ届かない体を存分に使い、打っても守っても投げても躍動感に満ちている。
とりわけ目を引くのが、ダイナミックな投球フォームだ。一本足で立つまでに、予備動作とその反動も利して片ヒザを胸近くまで引き上げてくる。これは2023年度の巨人ジュニアでもプレーした、東京・高島エイトの鈴木真夏選手(現6年)の投法を手本にしているという。
「その投手(鈴木)が大会で6連続三振を取ったのを見ていて、お父さんにも『マネしてみたら』と言われて。やってみたら球もいくし、タイミングを外せたりもできるので続けています」
5年秋の時点で最速100㎞超。「ピンチの場面のほうが球が速くなる」
一本足の体勢でグラつくこともなく、リリースのポジションも理想的だからボールに勢いがある。昨年10月の新人戦準々決勝、駒沢公園野球場でマークした101㎞が最速で、「6年のうちに115㎞を投げたい!」と鼻息が荒い。
通算の本塁打数は、昨秋の新人戦終了時点で35本前後だった。打つフォームには力みやムダな動きがなく、素直に鋭くバットが振り出されていく。
「引っ張るのはいつでもできる。良いときは逆方向の外野オーバーが出ます。チャンスで気持ちが高ぶりすぎないようにして、打てるようになることを今は目指しています」
一番のこだわりは打撃で、打者として大成する未来像を描いているという。
通算35本塁打超。「チャンスでホームランが打てるようになりたい」
朴訥とした少年
「私生活では洗濯ものを畳んでしまうとか、当たり前のことをきっちりやっていれば、お父さんに怒られないけど、できないときは厳しい。お母さんはお父さんが怒るときにボクの味方をしてくれるし、試合の前には『打てるよ、打てるよ!』とか言ってくれます」
公式戦でのむき出しのファイトや勝ち気がウソのように、オフタイムの寺村は朴訥としていて微笑ましい。子どもらしくて背伸びした感じがなく、ありのままの経緯を自分の言葉で紡いでくれる。
「野球を始めたのは1年生の冬(12月)で、お父さんにやらされました。旗の台の体験会にボクは泣きながら引っ張られて行ったので。チームに入ってからも最初はぜんぜん慣れなくて。本格的に始めたのは2年生の夏で、それまでは家で素振りも何もしてなかったし、野球に興味もなかったので」
実は旗の台に入るまでの約半年間は、サッカーボールを蹴っていた。こちらの競技には、自ずと興味が沸いたという。
「でも、サッカーは自分から始めたんですけど、やってみたらつまらなかった。野球は1試合の中でも自分に打つ番が回ってくるけど、サッカーはボールがずっとこないときもある」
旗の台の活動は週末と祝祭日のみ。野球の楽しさがわかってきたのが2年生で、その夏から自主練習に励むようになったのは、打てない自分が周囲に乗り遅れていることを実感したからだという。
「今は羽根打ちとか連続スイングをやっています。キャッチボールは肩の負担があるので、シャドーピッチングとか。お父さんが怒るときもあるから、弟(2年生=入部済)に『来い!』みたいに言って一緒にやるときもあるけど、弟はそんなにまだやる気が出てないから、ボク一人でやるほうが多いです」
野球のスイッチを入れたのは父だったが、本気モードのスイッチは自ら押した。つまり、父親コーチから学年監督となった寺村監督は、きっかけを与えたに過ぎない。だからこそ、弟の気持ちも推し量れる兄に成長してきたのだろう。
「将来は僅差の試合とかチャンスで打てる吉田正尚(レッドソックス)みたいに、メジャーリーガーになりたい!」
大きな夢を具体的に描く長男と、父親との濃密なラストイヤーは幸先よくスタート。この1月7日のローカル大会(フィールドフォースカップ1回戦)で、小学校校庭の場外へ特大アーチを放っている。
「めちゃ飛びました。気持ち良かった」
(動画&写真&文=大久保克哉)