【全日本学童千葉大会/準決勝評/決勝展望】 6・10頂上決戦は八日市場vs.磯辺

千葉県459チームの代表は、八日市場中央スポーツ少年団(匝瑳市)か、磯辺シャークス(千葉市)か!? 高円宮賜杯第43回全日本学童軟式野球千葉県予選大会マクドナルド・トーナメントは6月4日、千葉市の中田スポーツセンター野球場で準決勝2試合を行い、ファイナリストが決した。6月10日、同球場での決勝を制した王者が8月5日に東京・神宮球場で開幕の全国大会に出場する。準決勝のリポートと決勝の展望をお届けしよう。
■準決勝1
向 山 01105=7
八日市 1223 X=8
【向】扇、田中-橋本、扇
【八】富永、石井、富永-伊藤
⇧守り勝った八日市場中央スポーツ少年団は、2大大会を通じて初の全国出場をかけて決勝へ。⇩3位・向山ファイターズは「感謝の気持ちをもって元気よく。采配を含めてフェアプレーで戦うのが一番の特長です」(角野監督)
向山の一番・田中遥馬主将の左越え二塁打に始まった試合は、最後に流れが急変する好勝負となった。
先発した八日市場の本格派右腕・富永孝太郎主将は1回表、いきなり無死三塁という大ピンチから本領を発揮する。「どんどんストライクを取って、打たせたり三振を奪う」とセールスポイントを語るように、後続打者を早々に追い込むと声を発しながらの速球で2人を空振り三振に。また、右翼手の田中功明が前方の低いライナーを好捕して無失点で切り抜けた。
対する向山も、先発の右サイド・扇隼人が巧みな投球で打者に的を絞らせない。だが、バッテリーエラーやカバーリングの遅れなど手痛いミスが重なり、序盤2回までに被安打1で3失点。それでも打線が盛り返していく。2回には橋本一真と金井颯大の連打で1対1とすると、八番・八朔良幸が5球連続ファウルなど速球に食らいつく。3回には二番・浅野高輝が適時二塁打。さらに6点を追う5回表には、八朔の右三塁打を皮切りに四球や四番・渡邊征吾の三塁打などで1点差まで詰め寄る驚異の粘りをみせた。
上げる足の高さや動作テンポを変えたり、上下左右にボールを散らすなどクレバーな投球が光った向山・扇隼人
「ウチはとかく10番(富永)が注目されがちですけど、捕手や三遊間を中心にバックの守りで引き立っている。6年生はもちろん、スタメンの4年生5年生4人がよく頑張りました」
八日市場は宇野貴雄監督がそう振り返ったように、試合を通じて堅守が効いていた。2回にはディレードスチールを捕手・伊藤瑠生が冷静に阻止。3回には一死二塁から強烈な三ゴロを捕った石井陽向が、飛び出している二走を見て挟殺に。そしてハイライトは5回表だ。
抜け目のない走塁と三番・石井の適時三塁打などで6点にまで広げていたリードが、みるみる1点に。だが、ここからビッグブレーが飛び出す。一死一塁から、ゆるく舞い上がった打球は左翼・中堅・遊撃の中間あたりへ落ちていく。これを背走してきた遊撃手の宇井貴浩がギリギリでグラブに収めてみせた。そして最後のアウトは、ヒヤリとするライナーを右翼手の田中がキャッチ。試合は規定の90分を超えており、ここで決着した。
●向山ファイターズ・角野雅丈監督「最後まであきらめずによく頑張ってくれた選手たちに成長を感じました。序盤のミスによる失点が最後に響いてしまいました。まだスポ少の県大会も、夏の大会もあるので鍛え直してきたいと思います」
■準決勝2
大和田 044=8
磯 辺 234=9
【大】杉山璃、保坂、糸山-山澤
【磯】二田、上村、八田-横山
本塁打/杉山璃
⇧磯辺シャークスは「旋風」を起こした2013年以来の全日本学童出場を期して決勝へ。⇩3位・大和田タイガースは昨夏の全国経験者を軸とする全員野球で、2回戦では大会3連覇中の豊上ジュニアーズ(柏市)に3対2で勝利
「お互いにストライクをなかなか取ってもらえない中で、真ん中の甘いボールを良いスイングでとらえた、ということで打ち合いになりましたね」
2013年に全日本学童8強までチームを導いている磯辺・小池貴昭監督が振り返った準決勝の第2試合。両軍で計10四球、双方9安打(編集部記録)に3投手ずつ登板という大乱打戦となり、既定の90分間を3イニングで消化することになった。
1回表、一死満塁のピンチを6-2-3の併殺で切り抜けた磯辺は直後、横山輔主将の先頭打者三塁打に三番・大塚大空斗のスクイズ、続く上村裕之(5年)と植草大地の連打で2点を先取する。大和田もすぐさま反撃。2回表、押し出しや四番・杉山燎の適時打など打者10人の猛攻で4対2とひっくり返せばその裏、磯辺は九番に代打の人見奏多(5年)から二番・八田朝陽までの3連打などで5対4と再逆転してみせる。
シーソーゲームは続く。3回表は大和田の一番・杉山璃空の左翼フェンスまで打球が達する3ランなどで8対5と再々逆転。守る磯辺は適時失策もあったが、「1つでもアウトが増えればいい」(小池監督)と、一死二、三塁のピンチに2-6-2と転送するピックオフプレーで三走を憤死させるなど追加点を阻んだことが最後に生きた。
3回表一死一、二塁から大和田の一番・杉山璃空が左越えの逆転3ランを放つ
3回裏、磯辺は植草と洞口孝介の連打に四球で一死満塁とすると、代打からそのまま左翼の守備についていた人見が、今度は中越えの2点二塁打。続く横山が右に同点犠飛を放つと、バッテリーミスで9対8と再々再逆転。そしてこの回の攻撃終了をもって、熱戦に幕が下りた。
昨夏の全国スポ少交流大会に出場している大和田は、今夏の全日本学童出場の道は閉ざされた。それでも大乱戦のピンチの中で、三塁手の杉山燎は難しいゴロを華麗に処理。3回に許した同点犠飛の場面では、右翼手・山口明良から二塁手・西塚珀斗、そして捕手の山澤時央へと完璧な中継で間一髪のクロスプレーとするなど、守備も全国レベルにあることがうかがえた。
●大和田タイガース・石戸映汰主将「悔しいです(涙)。自分たちの力は出せました。夏の全国大会の道はスポーツ少年団のほうしかなくなったので、絶対に獲るという気持ちです」
■決勝戦展望
激戦区CHIBAプライド
さすがは千葉県。全国で6番目にチーム数が多い激戦区であり、「ここまで来たら当然、良いチームばかり」と向山ファイターズ(習志野市)の角野雅丈監督が話したように、準決勝に登場した4チームはハイレベルな上にそれぞれに持ち味を発揮し、全国舞台に比べてもそん色のない熱戦を展開した。
また、控え選手や保護者らの応援マナーも特筆するべきものだった。地元の磯辺シャークスは大応援団が駆けつけていたが、攻守に関係なく、投手が投球動作に入ると一斉に静まる。ほか3チームのベンチと応援も同様で、投手がモーションに入ると歌声も鳴り物も聞かれなかった。
「今年からの新たな取り組みです。選手たちに余計なプレッシャーを与えず、力を存分に発揮してほしいということで、監督会議のときから応援マナーについてのお願いも徹底させていただきました」(千葉県少年野球連盟・平田宗久理事)
試みの意図までが理解されているのだろう、試合中に大人の罵声や怒鳴り声がないのは当然。落球や暴投など敵失を誘うような声や、結果として子供の心理を追い込むようなベンチからの声掛けも聞かれなかった。
「守」が秀でる八日市場
さて、決勝は八日市場中央スポーツ少年団と磯辺の激突に。八日市場が勝てば初の全国出場、磯辺が勝てば10年ぶり2回目の全国となる。
八日市場は守備のタイムも自分たちで。「この大会で勝つために頑張ってきた子供たちを自信を持って送り出していますので、私から言うことは何もないです」(宇野監督)
野球どころの銚子市にも近い、匝瑳(そうさ)市を拠点とする八日市場は、少子化の影響から6年生は5人だけ。スタメンには4年生と5年生が2人ずついるが、フィールドでは学年の差をまるで感じさせない。富永孝太郎主将ら6年生から声を掛け合う姿が印象的で、バッテリーを中心とする守備力が抜けている。就任11年目の宇野貴雄監督は、決勝に向けてこう語った。
「去年は6年生が4人だけで、この大会は地区予選の決勝でサヨナラ負け。今の6年生たちはそれからずっと、この大会を目標にやってきたと思います。あと1つ、もうここまで来たら急にはうまくなりませんし、しっかり体調を整えながら良い準備をして臨みたいと思います」
試合巧者の磯辺
本格派投手に大技、小技に勢いもあり。2013年に全日本学童初出場で8強進出と「旋風」を巻き起こした磯辺は、当時の小池貴昭監督が3年前に復帰。4年生監督からの3年計画最終年で、2度目の全国出場に王手をかけた。
「選手たちは、やりたい野球をしっかり理解してくれています。千葉で最後の1つを勝つのがいかに大変かは10年前にも経験してます。何とか勝ち切りたいですね」(小池監督)
活動拠点は「幕張新都心」の新興住宅地域で、若者の姿も多々。今年は6年生と5年生が各11人。この全国予選に向けて2学年合同の練習を始めたところ、5年生がぐんぐん成長して6年生も底上げされたという。準決勝で代打から2打席連続の適時二塁打を放った5年生の人見奏多は、決勝に向けて力強くこう宣言した。
「6年生と一緒に全国に行くというのは前から思っていたことなので、決勝に勝ってみんなで神宮(全国舞台)へ行きたいと思います!」
ともに秀逸の捕手
両軍ともに注目は捕手だ。八日市場の伊藤瑠生(⇧写真左)と磯辺の横山輔(同右)は、あらゆる基礎スキルが突出。双方の好投手たちが常に思い切り腕を振れるのも、彼らの存在があるからだろう。準決勝は打ち勝った両軍だが、決勝はロースコアのしびれる接戦となるかもしれない。大一番は6月10日の午前9時にプレーボールとなる。
なお、準決勝で敗れた向山と大和田タイガース(八千代市)は同じく10日、全国スポ少交流大会予選の県大会3回戦(大谷津運動公園野球場)で対戦する。
(大久保克哉)