11月23・24日のノーブルホームカップ第26回関東学童軟式野球秋季大会。そのメイン会場となる、茨城県のノーブルホームスタジアム水戸では、10月20日に県予選の最終日があった。70mの特設フェンスがある中で、準決勝2試合と決勝1試合でサク越えアーチはなし。それでも見どころのあった3試合を、順番にレポートしていこう。まずは同支部対決となった準決勝の第1試合。
※記録は編集部
(写真&文=大久保克哉)
第3位
さくらがくえん桜学園ベースボールクラブ
■準決勝1
◇10月20日 ◇第1試合
桜学園 0100=1
茎 崎 0074x=11
【桜】東郷、戸頃、東郷-堀柊
【茎】百村-佐々木
茎崎は5年生11人で、佐々木と佐藤は8月の全国舞台でもプレーしている(上)。桜学園は合併6年目で、今夏の全国予選県大会も5年生10人の多くが経験(下)
準決勝の第1試合では、つくば市で活動する2チームが激突した。
茎崎ファイターズは45年の伝統と、今夏を含めて全日本学童11回出場の実績がある。2019年の夏には全国準優勝を遂げたが、同年の4月に地元3チームが合併して産声をあげたのが、桜学園ベースボールクラブ。こちらは3年目の2021年の代に、新人戦と全国予選で県大会初出場を果たしている。
主導権を先に奪ったのは、その新興チームだった。立役者は先発右腕の東郷直翔だ。70㎞台のボールで打たせて取っていく。
1回裏は二死から与四球と2盗塁でピンチを招くも、茎崎の四番をフルカウントから二飛に。すると2回表、四番・戸頃魁星主将が四球を選んでからエンドランの内野ゴロで二進。そして七番・東郷の中前打で先制のホームを踏んだ。
桜学園・東郷が抑えて打って、序盤戦リードの引き金に
自らのバットで先取点を生んだ東郷は、波に乗る。2回裏は一死から与四球も、一塁けん制でアウトに。そして3アウト目を71㎞の右飛で奪うと、ベンチへと戻っていく足取りが自ずと弾み、顔もほころんだ。
「東郷がテンポよく投げてくれて、すごく良い流れで試合に入ることができました」と、桜学園の大﨑将一監督。好投の右腕に限らず、選手たちの表情が瑞々しい。順調な立ち上がりが大きな理由だが、「思い切って伸び伸びと、楽しくやろう!」という、県大会の位置付けが呼び水となっていた。
「練習試合は厳しくなっちゃいますけど、県大会は恐怖を感じる場所ではない。ある意味、発表会? そういうことですね」(同監督)
2回表、東郷の中前打で二走・戸頃主将が一気に生還(上)。大﨑監督(下)は息子と娘が在籍した前身のチームから指導者で、桜学園で初代の指揮官に
さて、2回までノーヒットの茎崎打線。「新チームは、いつものウチらしい野球に戻りました」と吉田祐司監督は事前に話していたが、3回裏の攻撃にそれが見て取れた。
俊足の左打ちの八番・本田大輝が、セーフティバントでチーム初安打。次打者の初球で二盗、3球目で三盗(=下写真)を決めてたちまち無死三塁に。九番・野刈家快成も四球を選ぶと、桜学園は戸頃主将をマウンドへ。左腕から90㎞を超える速球をバンバン投げ込んだが、相手に傾いた流れは止められなかった。
無死一、三塁から二盗と四球で満塁となり、暴投で二走・野刈家まで生還して茎崎が2対1と逆転。なおも四球、バント安打、テキサス安打で5点目が入り、五番・関凛太郎の左中間へのエンタイトル二塁打(=上写真)で6対1に。
続く4年生・百村優貴の中前打で、茎崎は4連打の8者連続出塁に。9人目の渡部竜矢主将は、スクイズでウエストボールに飛びついてファウル。2球後の再トライで投前に転がし(=下写真)、ダメを押した。
打者11人で7対1と、一気に形成を逆転した茎崎の攻勢は止まらない。4回裏、四球に盗塁、バント安打、野選で1点を加えると三番・佐藤大翔の右中間二塁打(=上写真)で10点差となり、コールドゲームが成立した。
けん制死2と8盗塁
全国区の強豪が底力を発揮した形となったが、目を引いたのは果敢な走塁だ。2回、3回と、一走がけん制死。また桜学園は正捕手がケガで、県大会中は中堅手の小柄な堀柊真が代役を務めてきたが、機敏でキャッチングも巧みで、送球も決して悪くなかった。
茎崎の先発・百村(4年)は90㎞前後の速球を軸に、4回1安打1失点の完投
それでも、茎崎の走者は若いカウントからの仕掛けが目立ち、8つの盗塁(三盗2)すべてが成功。それも、場当たりや個々のアイデアによるものではない。いかにも伝統のチームならではの、ベンチの意図があった。吉田監督(=下写真)がこう語っている。
「新チームは始まったばかりなので、失敗もさせないといけないし、成功すればこれでいいんだなとなる。リードの大きさも含めて、そのへんは言葉ではなく、本番で実際にやってみて初めて分かることだと思うんですよ。アウトになったら、なったで構わないので、どんどんやることやれよ、という意識付けをする時期ですね、今はまだ」
一方、結果は大敗となった桜学園だが、県3位は創部6年目での最高成績。序盤戦の内容は大いに可能性も感じさせた。
6年生は信澤冬樹と中村真人の2人だけだが、今夏は全日本学童の県大会に出場。1回戦敗退も、全国区の水戸レイズと特別延長までもつれる好ゲームを展開した。5年生たちには、そういう場数も多く踏んできた貯金が大きかったと、指揮官は今大会を振り返った。
「5年生以下を引っ張ってきてくれた6年生2人に感謝ですね。3位はそのおかげです。でも、ここは通過点なので来年勝たないと意味がないですし、まだまだ成長しないと」(大﨑監督)