第46回都知事杯フィールドフォース・トーナメントは7月16日、準決勝2試合を上柚木公園野球場で行った。1カ月前に閉幕した全日本学童東京予選で優勝したレッドサンズと、準優勝の不動パイレーツが、この日はそろって完勝。8月5日開幕の全日本学童大会を見据えた、新たな布陣や選手起用がズバリと当たる形となった。
※記録は編集部
(写真&文=大久保克哉)
【3位/高島エイト】徳島県で開催の阿波おどりカップに出場する
■準決勝1
高 島 10100=2
レッド 10602x=9
【高】重安、鈴木真、吉永-甲斐
【レ】北川、藤森一-増田
本塁打/藤森一(レ)、大熊(レ)
起用にこたえた5年生
レッドサンズは1カ月前に全日本学童東京予選で2連覇。その決勝戦は不出場だった5年生が、この日はスタメンの四番・二塁に。「全国に向けて、6年生に気合いを入れ直してもらおうかな、ということで」と門田憲治監督は試合後に意図を明かした。
大抜擢された中田静は、右打席から実力の高さを証明してみせた。第1打席は痛烈な遊直、5回の第3打席は中前へクリーンヒットを放った。そしてさらなる存在感を示したのが、同じく5年生の大熊一煕(いちき)だった。
3回表から中堅の守備に入ると、その裏の打席で左越え2ラン。さらに5回には右翼手の頭上へ、コールド勝ちを決めるタイムリーを放ってみせた。「絶対にランナーを返してやろうという気持ちでバッターボックスに入ったのが良かったと思います」
1回表、高島は(写真上から)石井、甲斐、吉永の3連打に鈴木真の二ゴロで先制する
結果は5回、7点差コールド。確かに3回裏からはレッドのワンサイドに近かった。しかし、鮮やかな先制パンチを披露し、3回表まで主導権を握っていたのは前年度優勝の高島エイトのほうだった。
1回表、先頭の石井晴仁から甲斐雄大主将、そして三番・吉永章洋までの3連打から、鈴木真夏の二ゴロで先制。その裏にすぐに追いつかれたが、3回表には救援したレッドのエース左腕から勝ち越し点をもぎ取る。最速121㎞/hを誇るレッドの藤森一生は簡単に二死を奪うも、高島は五番・田中駿一郎の右前打と続く仲里皇紀の左越え二塁打で2対1と再びリード。
しかし、その裏にレッド打線が倍以上にやり返した。まずは藤森一が右翼線への逆転2ランで自らの失点を帳消しに。バッテリーミスなどでイニング3点目を失った高島は、投手を含む4人の守備変更も流れを変えられず、与四球や適時失策、被弾も絡んで一気に6点を失ってしまった。
3回裏、レッドは二番・藤森一が右翼線へ糸を引くような打球の逆転2ラン(上)。途中出場の5年生・大熊も左越え2ラン(下)など一気に7対2とした
5回表は内野安打2本と野選で高島が再び、無死満塁の好機をつくるも、ギアを上げたレッドのエース左腕が後続を断つ。6回表には4-6-3の併殺も決めたレッドがその裏、2点を加えて7点差となって勝負は決した。
●高島エイト・甲斐大樹監督代行「3回の守りで続けてミスが出てしまいました。それまではガマンできていただけに…」
―Pickup Hero―
独自打法で好左腕から2本
[高島6年/右翼手]田中駿一郎
立てたバットを右手一本で持って構える。そして投手のモーションに合わせて、左足を大きく引き上げながら左手をバットへ。予め、ほぼテイクバックの体勢でいることで、ムダな動きが入らずスムーズにバットを振り出せるという。
「今年の5月くらいにコーチに教えてもらって、それからはこの打ち方の練習をものすごくやっています」
敗北に「悔しい」とも言った田中駿一郎だが、この一戦でまた自信を深めたことだろう。世代No.1とも評される左腕から、右前打と中前打を放ってみせたのだ。「球が速いので、早めに準備して思い切り振りました」。
昨夏に全国初出場した高島エイトは、学年単位の活動を基本とするが、個性や持ち味の尊重は共通カラーのようだ。甲斐大樹監督代行は「歴代のいろんなOBが来てくださり、その子に合わせた指導方法を採り入れてくれています」と語る。2年連続の全国出場も都知事杯連覇も逃したが、8月3日開幕の阿波おどりカップに向けて田中は声を振り絞った。
「自分たちはみんなで全力で、一生懸命に戦えるチーム。優勝を狙います」
【3位/しらさぎ】和歌山県で開催の高野山旗に出場する
■準決勝2
不 動 122001=6
しらさ 010001=2
【不】永井、阿部-小原、永井
【し】日向、三瓶-塚本
本塁打/小原(不)
約1カ月ぶりの再戦
全日本学童の東京予選3位で全国初出場を決めていた船橋フェニックスを、しらさぎは準々決勝で撃破。次なる相手は同予選の準々決勝で敗れていた不動パイレーツ(同予選準Vで全国出場)とあって、リベンジの舞台は整っていたが返り討ちにされてしまった。
両チームを通じてエラーは1つ。その失策も最終回で、大勢に影響するものではなかった。ともによく守ったなかで、この一戦においては攻守に一日の長があったのが不動だった。
不動は1回表、三番・小原が中越えの先制ソロ(上)。2回にはテキサス安打の西槙が、続く5年生・難波の中越え二塁打で長駆、生還(下)
「全国は連戦になるので、負担が大きいバッテリーを含めてバリエーションを1つ作っておきたいな、と」
永井丈史監督が狙いを説明したように、不動は打順も守備位置も全日本予選決勝のスタメンから大幅に変わっていた。それでも打線は機能し、先制、中押し、ダメ押しと効果的に得点した。
まずは三番・小原快斗が1回表に中越えの先制ソロを放つと、2回には六番・西槙越、5年生の難波壱、岸樹吹の3連続長短打で3対0に。3回には四番・永井大貴主将、6回には二番に打順を上げていた村上陽音に、それぞれタイムリーが生まれた。
不動の先発・永井主将は毎回走者を負いながらも、要所を締めて主導権を堅持
不動は新布陣の守りも穴がなく、3回には4-6-3の併殺。先発の永井は自らの暴投で1点を失った直後に三振を奪ったり、けん制死も奪うなど要所を締めてゲームメイク。そして2番手の阿部成真が、テンポの良い無四球投球で逃げ切った。
しらさぎ打線は、あと一本がなかなか出ず。6回、三番・宍倉の中前打が初タイムリーだった(下)
しらさぎは2回裏、5年生の方波見大晴が場内をざわつかせた。左方向へ目の覚めるような弾丸のファウルを放った後に、同じ方向へ三塁打を放ってから暴投で生還。5点を追う6回には、三番・宍倉信乃祐が一死一、二塁から中前タイムリーで意地を見せた。
「(適時打は)とにかく次につなぐことだけを考えて。もうちょっと早くから点を入られたら最後の展開も変わったかも」と宍倉は肩を落としたが、塚本吏琥主将は「高野山旗(29日開幕)では、この負けも生かしていきます」と切り替えた。
●しらさぎ・轟経史監督「大きなミスが出て負けたわけではないけど、不動の打線の良さが出たと思います。ウチは全日本学童の予選も、1週間前に良い試合をした後に同じことができずに負け。今回もまた…難しいところですけど、引き出してあげられなかったのは監督の責任です」