高円宮賜杯第43回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント東京都予選大会は6月17日、府中市民球場で決勝と3位決定戦を行い、レッドサンズ(文京区)の連覇で閉幕した。不動パイレーツ(目黒区)の猛追をかわしきった決勝戦をレポートする。
※記録は編集部、3位決定戦レポートは近日公開予定
(写真&文=大久保克哉)
⇧優勝・レッドサンズ=3年連続4回目の全日本学童へ
⇩準優勝・不動パイレーツ=2年ぶり4回目の全日本学童へ
■決勝
不 動 000004=4
レッド 10203 X=6
【不】永井、阿部-阿部、永井
【レ】藤森一、増田、藤森一、増田-増田、竹森
本塁打/増田(レ)
ワンサイドが一転
北海道に次ぐ全国2番目の登録数。1051チームの頂点にはやはり、一筋縄で輝けるものではなかった。
6対0と完勝ペースで迎えた最終6回表の守り。レッドはエース左腕の藤森一生を再びマウンドへ。先発して4回まで42球で3安打無失点のエースは、5回の守りから右翼に就いていた。既定の70球まで28球もある。最速120㎞/hもたびたびマークするなど、前半戦の力投ぶりからすれば、そのまま胴上げ投手になる絵も十分に浮かんだ。
「胴上げ投手」は3度目の全国にお預けとなったレッド・藤森一だが、初回から飛ばして最速120km。4回まで無失点、無四球の被安打3という快投だった
「やっぱり野球は最後まで何があるかわからないし、簡単に終わらせてくれないのが不動さん。全国大会に向けて良い経験になりました」(藤森一※「2023注目戦士」の記事は→こちら)
世代屈指とも言える左腕を脱帽させた不動打線は最終回、しぶとさを披露した。「今日はチームで速いボールを打つ練習をしてから会場に来たので、初球からどんどん振って合わせていこうと思っていました」。 三番・小原快斗は右越え三塁打を含む3打数3安打、狙い通り初球からスイングして右に左に打ち分けた。
6点を追う6回表に不動が猛反撃。四球と難波の左前打(上)で一死一、三塁から、三番・小原が3打席連続安打となる左前適時打(中央)。五番・岸も適時内野安打(下)など集中4安打で4点を返した
一番からの好打順で始まった6回表。不動は岩崎貴彦がまず四球を選ぶと、難波壱(5年)と小原快斗の連打で1点。四番・永井大貴主将の特大中飛で一死一、三塁となり、岸樹吹の内野安打で2点目が入る。続く西槙越の左前打で満塁として、相手エースを降板させると、阿部成真の押し出し四球で3対6に。さらに、八番・村上陽音のゴロを遊撃手がファンブルして4点目が入る。だが、ここで守るレッドサンズにビッグプレーが飛び出した。
ボールを拾い直した遊撃手の小笠原快が、一塁ではなく、三塁ベースに入った齊藤碧人へ送球。これでオーバーランしていた走者をタッチアウトにしたのだ。「一つ(一塁)はもう無理だなと感じて。いつもショートをやっている竹森君(康喜、このプレー時は捕手)が、そういうときによく三塁に投げているのでマネしてみました」(小笠原)。「ああいう場面でも諦めてプレーを止めずに、三塁ベースに入るというのは練習通りです」(齊藤)
この2アウト目で、守るレッドの一塁側応援席も盛り上がった。そして2点差の二死一、二塁から、打球はまたも遊前に転がり、6-5の封殺でゲームセットとなった。
6回表、レッドは一死満塁のピンチに遊撃手の小笠原がゴロを捕り損ねる(4失点目)も、球を拾い直した小笠原は三塁送球で走者を憤死に。直後も遊ゴロから6-5封殺で試合終了(写真)
前年に続いてチームを東京王者に導いたレッド・門田憲治監督は、真っ先に最後のビッグプレーを称えた。「いつもあんなことができるわけではないんですけど、成長を感じましたね。エラーはプロ野球選手もするし、ミスとかエラーの後にどうするかがすごく大事だ、と教えてきましたので」。
5回までの盤石な試合運びは、全国8強入りした昨夏を超える予感をさせるものだった。1回に先制、3回に中押し、5回にダメ押しと効果的に加点。6得点のうち敵失絡みは1点のみで、あとは適時打と犠打で奪ったものだった。3回に2ラン、5回にスクイズを決めた四番・増田球太は「ホームランの打球は僕としては完璧。エースの一生(藤森)を助けるためにここで1本と思って」と笑顔で振りれば、エースの藤森一は「今年は自分がチームを引っ張って優勝まで導きたいです」と自身3度目の全国大会へ抱負を語った。
レッドはエースの力投に打線も応える。1回に四番・竹森が先制打(上)、3回には三番・増田が痛烈な中越えのランニング2ラン(下)
5回裏、レッドは右前打から二盗の藤森輝主将が、暴投で一気に生還(写真)。さらに増田のスクイズ、代打・村田瑛心の中前打で6対0に
銀メダルを首から下げた不動・永井丈史監督も表情は明るかった。「最後(6回の反撃)は大したものだなと思いました。3月のナガセケンコー杯で優勝して、ここでも優勝すると調子に乗りすぎちゃうかもしれなかったですし、今日は悔しい思いをして全国大会に向かっていくということを前向きにとらえたいと思います」。現6年生たちの代での学年監督も4年目、集大成となる8月の夢舞台までに「走塁を磨き直したい」と話した。