野球はとかく投手に目が行きがち。それが学童野球になると、捕手の優劣で明暗が分かれることがままある。エースが怪物級のボールを投じたとしても、それを確実に捕る・止める捕手がいなければ、まともなゲームにならないからだ。『細かすぎて伝わる特ダネ』の第3弾は、既出を含めて8月の夢舞台で輝きを増すだろう捕手たちにスポットを充てた。
(動画&写真&文=大久保克哉)
全国大会ともなれば、相手走者を簡単に進塁させるような捕手はほぼいなくなる。逆に言えば、ほぼ無条件に相手に次塁を与えてしまうようなチームは、自ずと予選で消えていくのだ。
概ね平均点以上の捕手。そういう大前提の上で、真っ先に取り上げたいのは昨夏の胴上げ捕手、中条ブルーインパルス(石川)の向慶士郎主将だ。1年前は5年生にして、堅実なキャッチングとブロッキングで目を引いた。リード面も任されており、3回戦ではピカイチ右腕の服部成(星稜中1年)と完全試合の偉業も達成している。
打球に対する反応と、動き出しの鋭さは随一。動物的なその瞬発力とスピードは、攻撃面でも大きな武器となっている。昨年は全国予選で左打席から打ちまくった。新チームで主将となってから一時期は打撃の調子を崩していたが、7月に倉知幸生監督に近況を尋ねると「春以降はかなり調子が上向きで、逆方向の左中間のサク越え(70m)も普通に出ています」との返答。全国大会ではダイヤモンドを疾走する姿も見られそうだ。
向慶士郎(中条ブルーインパルス※紹介は→こちら)
同じくサク越えアーチが期待できそうな左打者は、同じ石川県の館野野学童野球クラブ、中村颯真だ。ヤクルト・村上宗隆をコンパクトにしたような風貌と同様のルーティン。「ツボにはまると大人の打球」と山本義明監督が評するように、芯でとらえたときの打球速度はハンパない。通算で2ケタの本塁打をマークしているというのもうなづける。
また、コースの左右高低にテンポも交えた配球で投手陣を好リードし、県大会では4試合で4失点。打者としての心理や読みがディフェンス面にも生きているようだ。
中村颯真(館野学童野球クラブ※紹介は→こちら)
勝負強い打撃を売りとするのは、常磐軟式野球スポーツ少年団(福島)の本多希光だ。全国最多出場記録を保持する同チームの伝統のカラーは「守備と走塁」だが、今年は打力も秀でている。その強力打線で四番を張る本多は、短く持ったバットで機に応じて打ち分けるポイントゲッター。昨夏は5年生で全日本学童に出場、神宮球場でタイムリー二塁打を放っている点も心強い。
夏場に来てスローイング面が明らかに向上しており、二塁へはコンパクトな動作から強いボールをコンスタントに投じている。堅守のカギも握る扇の要だ。
本多希光(常磐軟式野球スポーツ少年団※紹介は→こちら)
全国経験者と言えば、昨夏8強の越前ニューヒーローズ(福井)の山本颯真主将だ。こちらは攻守走すべてハイレベルの万能捕手。県予選では2本塁打を放っている。
昨夏の全日本学童は2試合で6打数4安打4打点で三塁打2本。三盗も決めているほか、小飛球も好捕するなど、身体能力は中条・向にもひけをとらない。チーム内のコロナ感染で準々決勝を戦えなかった1年前の分も、今夏は東京で大暴れしてくれそうだ。
山本颯真(越前ニューヒーローズ※チーム紹介は→こちら)
身体能力に長ける万能型と言えば、北名古屋ドリームス(愛知)の境翔太主将も外せない一人。バットヘッドが猛烈に走るスイングは、投球のコースや緩急で変わることがなく、痛烈な打球を弾き返す。そして塁に出れば、学校1位の脚力の見せ場となる。
5年生までは遊撃手一筋。チーム事情もあって捕手に転じてからも、精力的な努力で基礎スキルをマスターし、新境地を開拓している点も見逃せない。
境翔太(北名古屋ドリームス※紹介は→こちら)
捕手の基礎スキルをガッツリと携えているのは八日市場中央スポーツ少年団の伊藤瑠生だ。捕手出身の宇野貴雄監督と富永孝コーチの目に留まったのが、三盗の練習中に捕手役を務めていた当時4年生の伊藤だという。以降は2人の薫陶を受けて、今では大人をうならせるほどのキャッチングを披露する。理知的なマスクに、トレードマークのメガネがまたよく似合う。
伊藤瑠生(八日市場中央スポーツ少年団※紹介は→こちら)
学童野球メディアで追い切れていないが、上記の6人以外にも全国大会では捕手の有望株が多数いるはず。小学生でも指導と努力次第でここまでできるのだ、というところを存分に見せてくれることだろう。
東京V2王者・レッドサンズの増田球太(写真下)と、初出場・簗瀬スポーツ(栃木)の半田蒼真主将は、ともに三番・捕手で攻守に頼れる逸材。また遊撃手がメインだが、捕手も無難にこなす不動パイレーツ(東京)の小原快斗は打力に著しく長けており、「2023注目戦士」で追って紹介する予定だ。