全日本学童大会

【準々決勝➍】伊勢田が巧みに打ち勝つ。豊上“魔の3回”に泣く

【準々決勝➍】伊勢田が巧みに打ち勝つ。豊上...

2025.10.07

 先制、逆転、同点、勝ち越し――。序盤で激しく動いた試合のなかで、千葉の“最強軍団”は運にも見放されて大量失点。5人のスタメン5年生を含め、善処を尽くした京都の若いチームが逃げ切った。準々決勝の4試合目のリポートは「勝敗のポイント」を掘り下げ、ヒーローと敗軍のストーリーまでお届けする。近年は躍進が顕著だった関東勢は、この競技4日目をもってすべて姿を消した。 (写真&文=大久保克哉) ■準々決勝/みどりと森球場 ◇8月16日▽第2試合 [京都]2年ぶり2回目 伊勢田ファイターズ  13700=11  40101=6 豊上ジュニアーズ [千葉]2大会連続6回目 【伊】藤本、松倉、臼田-夏山 【豊】中尾、山﨑、中尾、山﨑-神林 本塁打/臼田(伊)、神林(豊) 二塁打/松倉2(伊)、村田、鈴木、後山(豊)、佐藤(伊) 【評】前半戦は激しい点取り合戦となった。伊勢田が1回表、松倉駿の二塁打に犠打、犠飛で先制すれば、豊上はその裏に倍返し。福井陽大の右前打に村田遊我の二塁打、死球と内野ゴロで同点とすると、鈴木海晴と後山晴(5年)の連続二塁打で4対1と逆転。しかし、なお一死二、三塁からのエンドランは空振りで三走挟殺など、ワンサイドには持ち込めず。逆に伊勢田は2回表、臼田塁人の2ランの後に八番・伊藤駿が二塁打で出ると、続く山本灯司(5年)が確実に送ったことで、ボークにより4対4に。さらに3回表、幸尚哉(5年)と藤本理暉の連打で無死二、三塁としてから、4四死球に赤尾空舞と松倉のタイムリーで大量7得点。そして2回から登板の臼田は、3回に1安打で1失点も、打たせてアウトを重ねた。審判団から「(90分超過で)この回が最後です」と告げられた5回裏の豊上は、神林駿采主将がレフトへ豪快にソロアーチを放つも、空砲に終わった。(了) 伊勢田は2回表、八番・佐藤が逆方向へ二塁打(上)。続く山本(5年)は犠打を決めたほか、二塁守備(下)では7度の守備機会で無失策(内野安打1)   ―Zoom into the Point― “不思議なし”準備と善処の勝利 『勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし』――。  かの名将・野村克也氏(元ヤクルトほか監督・故人)の座右の銘を、野球界で知らない大人はいないことだろう。この格言は、現在の長崎県平戸市の一帯を、江戸時代に治めていた文武の才が遺したとされる。  確かに、この準々決勝の敗者にも重なる節はある。だが勝者は、「不思議」で片づけられたら甚だ合点がいかぬはず。  伊勢田ファイターズは、目の前の1試合を勝つために最善を尽くしてきた。V候補本命と目された強敵を前にした準々決勝も、そこは変わらなかった。いわば「準備がもたらした勝利」でもある。...

【準々決勝❸】先頭弾にダメ押し満塁弾。多賀が“薩摩隼人”に完勝

【準々決勝❸】先頭弾にダメ押し満塁弾。多賀...

2025.10.01

 大会は折り返しての競技4日目となる準々決勝。例年はこのあたりから体力勝負の色合いも増し、心身の疲労度や戦力の差が見え隠れし始める。新潟市みどりと森の運動公園野球場での第1試合は、ともに前日の3回戦で好投した右腕が先発したが、いずれも3回もたず。こうした展開で浮き彫りとなったのは、元王者の試合巧者ぶりと厚い戦力。加えて、九州男児たちの一本気だった。殊勲のヒーローと、一枚のフォトグラフに始まる敗軍のストーリーまでお届けしよう。 (写真&文=大久保克哉) ■準々決勝/みどりと森球場 ◇8月16日▽第1試合 [鹿児島]3年ぶり2回目 大龍ビッグドラゴンズ  001002=3  32040 X=9 多賀少年野球クラブ [滋賀]8大会連続18回目 【大】田淵、梅元-今村 【多】岡本、高井-高井、大橋民 本塁打/里見、高井(多) 三塁打/小田(多) 二塁打/梅元(大)、奥野、三好、里見(多)、安樂(大) 【評】双方の先頭打者に長打が生まれ、その後の攻防で明暗が分かれた。先攻の大龍は梅元咲翔主将の左翼線二塁打に、安樂誠希のバント安打で無死一、三塁とする。しかし、守る多賀はけん制で一死を奪うと、三番を申告敬遠して二盗を阻止。そして三振で大ピンチを切り抜けた直後、里見葵生の先頭打者アーチで先制した。多賀はなおも畳み掛け、奥野悠太の二塁打から二死一、三塁として、小田悠陽の右中間二塁打で3対0に。また2回にも、三好想太朗と里見の連続二塁打に、今井葵飛の右前打で加点した。大龍の反撃は3回表だ。敵失に梅元主将の中前打で1点を返し、続く安樂の左中間二塁打で一死二、三塁に。だが、多賀はここで救援した右腕・高井一輝が後続を断つと、4回裏には自らのバットで8点差とする満塁アーチを放つ。6回表、大龍は敵失と田淵琉生の左前打で1点。さらに今村亮太のテキサス安打と棈松快斗の三ゴロで1点を加え、代打攻勢で二死満塁としたが反撃もそこまで。多賀は後半から次々と選手が代わり、17人がプレーして準決勝進出を決めた。(了) 大龍は梅元主将が二塁打(上)も無得点。多賀は里見が中越えソロ(下)。長打に始まった1回の表裏が流れを左右することに 多賀の攻撃は先頭打者アーチで終わらず。二番・奥野が左翼線へ二塁打(上)。大龍の先発・田淵(下)は初回、三振で二死まで奪ったが… 1回裏、多賀は六番・小田の右中間二塁打(上)で2点を追加。2回表の守りでは、ライトへ抜けそうな打球を一塁手・大橋民紀太がアウトに(下) 2回裏、多賀は三好(上)と里見の二塁打で1点、さらに今井の右前打(下)で5対0に 大龍は3回表、敵失から二進した前田健心(上)が内野ゴロで三進。そして一番・梅元主将の中前打(下)で生還 3回表、1点を返した大龍は安樂の左中間二塁打(上)で一死二、三塁としたが、救援した多賀の高井(下)を前に後続は断たれる 4回裏二死、多賀は里見が3安打目の左前打(上)。内野ゴロ併殺崩れの後、岡本が左前打(下) 四番・大塚堅史主将の2打席連続安打(上)で二死満塁とした多賀は、高井が左へサク越えアーチ(下)。4回を終えて9対1と大量リードに 大龍は5回表、一死から鮫島龍斗が中前打(上)も、多賀は5-4-3併殺(下)で切り抜ける...

【準々決勝❷】地元・新潟勢で最高タイ、旭スポ少が4強入り

【準々決勝❷】地元・新潟勢で最高タイ、旭ス...

2025.09.28

 本家・高校野球の甲子園でも、「小学生のの甲子園」でも、準々決勝は実力伯仲で盛り上がることが多い。メイン球場のHARD OFF ECOスタジアム新潟での第2試合、木屋瀬バンブーズ(福岡)と旭スポーツ少年団(新潟)の初出場対決も、緊迫の好勝負に。開始から主導権を奪ったのは木屋瀬。対する旭は、二番手の大型右腕が劣勢の流れを断ち切り、バッテリーを組む四番打者のバットが勝利を引き寄せた。 (写真=福地和男/文=鈴木秀樹) ■準々決勝/エコスタ新潟 ◇8月16日▽第2試合 [福岡]初出場 木屋瀬バンブース  010000=1  00300x=3 旭スポーツ少年団 [新潟]初出場 【木】森下、藤田-但馬、森下 【旭】小林、小柳有-今井 二塁打/塚田(旭)石井(木) 【評】先制は木屋瀬。2回表に2四球などで一死一、二塁とし、井上雄陽が左前適時打を放った。旭スポ少は3回裏、四球と塚田晄人主将の安打、さらに重盗でチャンスを広げると、暴投で追いつき、今井咲太郎の2点適時打で勝ち越しに成功した。その後、旭スポ少は走者を出しながらもあと1本が出ず、追加点は奪えなかったものの、3回からマウンドに上がった小柳有生が6回までの4イニングを1安打無失点で投げ抜き、ベスト4進出を決めた。(了) 1回表裏は双方の先頭が出る。木屋瀬・永嶋璃陽斗(5年)は右前打(上)。旭スポ少の塚田主将は左越え二塁打(下) 2回表、木屋瀬は四球、飯田航平の犠打(上)、吉武楽人の四球(下)で一死一、二塁に 2回表、一死一、二塁から木屋瀬・井上の左前打(上)で、二走・森下結心が生還して先制(下) 先制された旭スポ少は直後の2回裏、藤田七音の中前打(上)と藤田侑汰(5年)の右前打(下)で一死一、二塁に 木屋瀬は2回裏一死一、二塁のピンチで、捕手・但馬愛飛(上)が二塁けん制で刺す(下)など、無失点で切り抜ける 3回表から登板した旭スポ少の小柳有(上)は、相手打線を手玉に。そして3回裏、先頭の小林楓(5年)が四球を選んで(下)反撃に転じる 3回裏、重盗を決めて一死二、三塁とした旭スポ少は、暴投で三走・塚田主将がかえり1対1に(上)。さらに四番・今井が中前へ勝ち越しの2点タイムリー(下) 3回から沈黙の木屋瀬打線は6回表二死から、四番・石井爽介が右へエンタイトル二塁打(上)。だが、マウンドの小柳有は最後の打者を左邪飛に打ち取り終了(下)   ―Close-up...

【準々決勝❶】最多7回Vの長曽根、39年前の王者を下す

【準々決勝❶】最多7回Vの長曽根、39年前...

2025.09.25

 メダル圏内のベスト4をかけた準々決勝は、新潟市の2会場で行われた。メイン球場のHARD OFF ECOスタジアム新潟での第1試合では、史上最多の優勝7回を誇る長曽根ストロングス(大阪)と、1986年に初優勝を遂げている牛島野球スポーツ少年団(秋田)が対決。試合は投手戦で始まり、終盤は一進一退の攻防が展開された。 (写真=福地和男/文=鈴木秀樹) ■準々決勝/エコスタ新潟 ◇8月16日▽第1試合 [大阪]3年ぶり18回目 長曽根ストロングス  000022=4  000020=2 牛島野球スポーツ少年団 [秋田]28年ぶり5回目 【長】谷脇、森川-岩﨑 【牛】東海林、渡辺-齊藤 三塁打/五十嵐(牛) 二塁打/齊藤(牛)、岩﨑、苧原2、月田(長) 【評】1回表、長曽根は二番・岩﨑海斗が中越え二塁打も、三盗を狙いアウトに。以降は長曽根先発の谷脇蒼が緩急巧みに相手打線に的を絞らせない投球を見せると、牛島のエース・東海林大志もテンポ良く長曽根打線を抑え、4回まで互いに無得点。5回、長曽根は苧原祐次郎の中越え二塁打と、続く山田蒼のバント安打で無死一、三塁の好機を得ると、内野ゴロの間に1点、内野ゴロ野選でもう1点と、2点を先取。しかし、牛島はその裏、二死二塁から五十嵐陽翔の適時三塁打、さらに5年生・佐藤岳恒の適時内野安打で同点に。それでも、長曽根は6回にも月田拓斗の右前打と四球を足掛かりに、機動力も加えた攻撃で敵失を誘うなど、2点を加えて勝負を決めた。(了) 牛島の先発・東海林(上)は5回を5安打2失点の粘投。長曽根の先発・谷脇(下)は4回を1安打無失点の快投 2回裏、牛島は一死から齊藤成流が中越え二塁打(上)も無得点。二死からは長曽根の遊撃手・月田が後ろ向きで飛球を好捕(下) 5回表、長曽根は先頭の苧原が二塁打(上)、続く山田がバントヒット(下)で無死一、三塁に 長曽根は無死一、三塁から畑中零生(上)と岡林優志(4年=下)の内野ゴロで、5回表に2点を先取 5回裏、牛島は齊藤の中前打から二死二塁として、八番・五十嵐が適時三塁打(上)。続く5年生の佐藤岳も内野安打(下)で2対2に 同点とされた長曽根は6回表、月田の右前打(上)に四球、敵失で無死二、三塁とする。そして投ゴロで三走がスタートも、タッチアウトに(下) 6回表、本塁憤死で一死となった長曽根は二、三塁から七番・苧原の3安打目となる内野安打(上)で、三走・吉見が生還(下)して勝ち越し 畑中のスクイズバントが決まり(上)、6回表に4対2とした長曽根は、二番手の森川壱誠がリードを守り切って終了(下)  ...

【3回戦❻】ベスト8出そろう。写真ダイジェスト&全結果

【3回戦❻】ベスト8出そろう。写真ダイジェ...

2025.09.19

 朝からのゲリラ豪雨と中断により、3時間26分というロングファイトもあった8月15日の3回戦。三条パール金属スタジアムでの第3試合はナイトゲームとなり、終わったのは19時27分だった。同球場での3試合の写真ダイジェストと、全3会場8試合の結果を改めてお伝えする。 (写真=福地和男) ■3回戦/三条スタジアム ◇8月15日▽第1試合 森下が2安打完封。木屋瀬、スミイチ逃げ切り [福岡]初出場 木屋瀬バンブーズ  100000=1  000000=0 富谷ストロングスポーツ少年団 [宮城]初出場 【木】森下-但馬 【富】越前、根来-根来、越前 二塁打/但馬(木) 1回表、木屋瀬は無死一、二塁からエンドラン空振りで、永嶋璃陽斗(5年)が三塁でタッチアウト(上)。だが、藤田海智主将が三塁内野安打(下)で一死一、三塁に 1回表一死一、三塁から木屋瀬がスクイズ。打者・石井爽介はインハイの球をよけながらバットに当て(内野安打=上)、三走・但馬愛飛が生還(下)して先制 富谷の先発・越前貴仁(上)は4回4安打1失点。左利きの二塁手・佐藤俊介(5年=下)は5度の守備機会でワンミスのみ 木屋瀬の先発・森下結心(上)は3回までパーフェクト投球。三塁を守る永嶋(下)は2回から4者連続でゴロをさばいてアウトに 4回裏、富谷は池田虎太郎がチーム初安打も二盗に失敗(上)。5回裏には齊旺佑が左へクリーンヒット(下)も得点はならず 富谷の根来亮賢主将(上)は5回からパーフェクト投球。木屋瀬の森下は中川芳生監督にも励まされながら(下)、71球で無四球完封 ▽第2試合 小技、大技に小柳有が投打で躍動。地元・新潟王者が逆転勝ち [新潟]初出場 旭スポーツ少年団  013000=4  100000=1...

【3回戦❺】壮行試合から33日目。緊迫のガチンコ勝負

【3回戦❺】壮行試合から33日目。緊迫のガ...

2025.09.17

7月13日、愛知県の北名古屋市総合運動広場で、全国出場する2チームの壮行試合が行われた。愛知県王者の北名古屋ドリームスと、京都府王者の伊勢田ファイターズ。友好関係にある両軍は、手の内を隠すこともなく、仮想「全国大会」として本気で戦った。そして迎えた8月の本番。それぞれ1回戦、2回戦を勝ち上がり、3回戦で顔を合わせると、1点を争う緊迫の好勝負を展開した。 (写真&文=鈴木秀樹) ■3回戦/みどりと森球場 ◇8月15日▽第3試合 [愛知]3年連続7回目 北名古屋ドリームス  000000=0  00010 X=1 伊勢田ファイターズ [京都]2年ぶり2回目 【北】坪井、竹井-大久保 【伊】藤本、夏山、藤本-夏山、石川、夏山 二塁打/藤本(伊) 【評】粘り強く投げ続ける、両軍の投手の力投にバックも堅守で応える、見応えある投手戦。北名古屋先発の坪井心汰(5年)が毎回、走者を出しながらも要所を締め、3イニングをゼロで切り抜けると、伊勢田先発の藤本理暉も1、2回に死四球で走者を出しながら、バックの堅守にも助けられ、さらに調子を上げた。均衡を破ったのは伊勢田。4回、先頭の五番・栗山雄吾が四球で出塁し、捕逸と赤穂空舞のバントで三進。5年生コンビでお膳立てすると、二死から佐藤駿が右前に適時打を放ち、待望の先取点を奪った。伊勢田の藤本は無安打投球を続け、5回途中で夏山淳主将のリリーフを仰いだが、最終6回二死一塁の場面で再登板。ノーヒットリレーを完成させ、1点を守り切って勝利を挙げた。(了) 伊勢田は藤本(上)、北名古屋は5年生の坪井(下)。先発した両左腕がゲームをつくった 0対0の4回裏、伊勢田は四球と捕逸、5年生・赤穂の犠打(上)で一死三塁に。北名古屋は岡監督がタイムを取ってマウンドへ(下) 4回裏一死三塁から伊勢田の八番・佐藤が右へ弾き返し(上)、三走の5年生・栗山が生還(下)。これが決勝点に   ―Close-up Winner― 「ここで戦おう」約束の場で競り勝つ いせだ 伊勢田ファイターズ [京都]  昨年末にはポップアスリートカップ(くら寿司トーナメント)で初優勝を果たすなど、躍進目覚ましい伊勢田ファイターズが、大会準優勝経験もある強豪・北名古屋を下して、2度目の大会出場でベスト8入りを決めた。...

【3回戦❹】本州最北端vs.本土最南端。前半は好守、後半は二塁打の応酬

【3回戦❹】本州最北端vs.本土最南端。前...

2025.09.16

 ベスト8をかけた3回戦。メイン球場・エコスタ新潟での第2試合では、本州の最北端となる青森県の王者と、本土の最南端となる鹿児島県の王者とが激突。それぞれ、呼び声の高い強豪チームを下してきているとあって、暴投を除くと守りはともにノーミス。勝者のエースは4回までパーフェクト投球を披露し、後半戦は両軍で計7本の二塁打が生まれて試合が動くなど、見どころの多い好ゲームだった。 (写真&文=大久保克哉) ■3回戦/エスコタ新潟 ◇8月15日▽第2試合 [鹿児島]3年ぶり2回目 大龍ビッグドラゴンズ  000311=5  000002=2 弘前レッドデビルズ [青森]初出場 【大】田淵、梅元、田淵-今村 【弘】小林、山本、岩渕-岩渕、小林 二塁打/棈松、前田、梅元、東、安樂誠(大)、奈良、小林(弘) 弘前レッドの小林(上)は粘り強く打たせて取る。大龍の田淵(下)は精度もスピードも抜群の速球で押しまくる。両先発が前半戦は持ち味を発揮した 牛耳る右腕と、耐える守備  前半戦の3イニングは双方無得点。しかし、その中身には大きな違いがあった。  先発した右腕・小林凛人の連続与四球に始まった弘前レッドデビルズは以降、手堅い守りが目を引いた。いきなりの無死一、二塁のピンチで5-5-3の併殺を決めるなど、無失点で切り抜けると、2回の冒頭では遊撃手の對馬一真主将が、三遊間の深いゴロに追いついての一塁送球でアウトに。  小林はそれでも波に乗れず、内野安打と四球に暴投で一死二、三塁のピンチに。続く3回にも2安打2盗塁を許して、同じく一死二、三塁のピンチを招いた。だが、そこからが粘り強かった。冷静に打たせて取り、バックもノーミスで相手に得点を与えない。 前半戦は弘前レッドの三遊間が好守を連発し、工藤監督も相好を崩す(上)。大龍も三塁手の鮫島(下中央)が4回までに4つのアウトを奪う  一方の大龍ビッグドラゴンズは、投球練習から出色のスピードボールを投じていた右腕の田淵琉生が、イニング7~8球のペースで相手打線を手玉に取っていく。  時折りの抜いたボールもあるが、投球の多くはキレ味の鋭いストレート。それがホームプレート上を外れることがほとんどなく、バットの芯にも当てさせない。2回には連続で空振り三振を奪い、3回には下位打線にファウルで粘られたが、制球も球威も変わることがなかった。 「完全試合は新チームになったころにやったことがあります。今日も途中で監督に言われたりして、少し意識はしました」(田淵)  ただし、大龍の打線は前半3イニング、毎回の好機をことごとく生かせなかった。こういう流れで試合が運んだ場合、優位に進めてきたチームに綻びが生じたり、劣勢を耐え抜いてきたチームがワンチャンスをものに形勢逆転、ということが往々にしてある。果たして――。 「4度目の正直」成る  グラウンド整備が終わって迎えた後半戦。案の定、試合が動いたが、前半戦からの流れを度返しする形となった。  弘前レッドは、4回の頭から5年生の山本蒼をマウンドへ。こちらは本格派で、右腕が力強く振られていたが、その代わりバナを大龍打線が急襲した。...

【3回戦❸】東西の都のV候補対決、大阪に軍配

【3回戦❸】東西の都のV候補対決、大阪に軍配

2025.09.12

 全国最多の1000チーム超が加盟する東京都にあって、この2025年は無敗を貫いてきた不動パイレーツ。西の都、大阪府代表の長曽根ストロングスは、史上最多となる7回の優勝を誇り、7月末の高野山旗(和歌山県開催)を制してきた。そんな東西を代表するV候補同士が、3回戦で激突した。 (写真&文=鈴木秀樹) ■3回戦/みどりと森球場 ◇8月15日▽第2試合 [大阪]3年ぶり18回目 長曽根ストロングス  0004=4  0120=3 不動パイレーツ [東京第1]3年連続6回目 ※時間規定により4回で終了 【長】谷脇、森川-岩﨑 【不】木戸、高浦、岡田-山田、竹中 二塁打/岩﨑(長)田中2、茂庭、中山、間壁(不) 【評】不動は初回に先頭の田中璃空主将が左中間二塁打で出塁も、後続が倒れ無得点。しかし2回、先頭の五番・茂庭大地が中越え二塁打を放つと、二死後、中山大誠の左翼二塁打で先制。3回には二死から竹中崇、間壁悠翔(5年)、茂庭の3連打で2点を加えた。長曽根の反撃は4回。死球、四球、四球で満塁とし、敵失で1点、さらに相手守備の乱れで1点を返すと、連続四球で再び塁を埋め、DH解除で一番に入っていた、先発投手の谷脇蒼が右中間手前に落ちる安打。これで三走の苧原祐次郎と二走の5年生・山田蒼が一気にかえって逆転に成功。5回表、不動は田中主将の左中間二塁打などで二死二、三塁まで詰め寄ったが無得点に終わり、4回時間切れで、長曽根が接戦をものにした。(了) 2回裏、茂庭(上)と中山(下)の二塁打で不動が先制 不動は3回裏、二死から竹中(下)、間壁(上)、茂庭の3連打で3対0に 4回表、長曽根は四死球や敵失、重盗(上)で2点を返すと、谷脇のタイムリーで4対3と逆転。その裏は二番手・森川(下)が無失点で逃げ切り   ―Close-up Winner― 「10回やったら9回負ける」難敵を逆転で下す ながそね 長曽根ストロングス [大阪] 「今年はウチ、小さい選手ばかりで、厳しいと思いますわ」...

【3回戦❷】2017年王者vs.2018&19王者

【3回戦❷】2017年王者vs.2018&...

2025.09.10

 5回目の出場となった2017年に、道勢初となる優勝を果たしたのが東16丁目フリッパーズ(北海道南)。前年度優勝枠で出場した翌2018年は、初戦の2回戦でサヨナラ負け。そのときの勝者が多賀少年野球クラブ(滋賀)で、3回戦以降も勝ち抜いて初優勝(出場12回目)し、翌19年も制して2連覇を遂げた。そんな両チームが、今夏の3回戦で対峙。8年ぶり2回目の顔合わせは「元王者対決」と箔がつき、また否応もなく介入してきたのは気まぐれな豪雨だった。 (写真&文=大久保克哉) ■3回戦/エスコタ新潟 ◇8月15日▽第1試合 [北海道南]3年ぶり9回目 東16丁目フリッパーズ  000001=1  50010 X=6 多賀少年野球クラブ [滋賀]8大会連続18回目 【東】川口、西山-徳田 【多】岡本、高井、岡本、里見-大橋民 二塁打/舘洞(東)、中浦(多)、徳田、片岡(東)  8月15日の朝。新潟の市街地は真夏の陽光に照らされていたが、見上げる空の一方向では暗雲が不気味にうごめいていた。予報によると、午前中は時折りのゲリラ豪雨があるという。  4日前に開会式を行ったメイン球場、エコスタ新潟では3回戦2試合を予定。全面人工芝とあって、雨をやり過ごしながらの進行で無事に消化はされるだろうと思われた。 決着に3時間26分  第1試合の当初の開始時刻8時半には、案の定の激しい雨。両軍へは当日早々に、1時間のスライドが伝えられていたという。結局、9時44分に始まった試合が、6イニングを終えて決着したのは13時10分。実に3時間26分という長丁場を招いたのは他でもない、不可抗力の降雨だった。  初回を終えた時点で21分間、5回表の途中には85分もの中断を余儀なくされた。結果として、それが勝者に味方し、敗者には憎きものとなった面も否めない。東16丁目フリッパーズの笹谷武志監督(=上写真)の、試合後のひと言が印象的だった。 「条件は相手も同じなんですけど、今日は流れというか、球運もなかった気はします」   水たまりはないが、雨を吸っている人工芝は、転がるボールをたちまち濡らし、選手たちのスパイクの裏を滑らせる。そういうコンディションで余計に際立ったのが試合前、東16丁目の斬新なシートノックだった。 「ただ順番を待って、捕って投げるという形ではなく、実戦でよくある状況を設定してそれに応じて動く。こういうスタイルにしたのは数年前です」(笹谷監督)  ボール回しに続いて「無死一塁」の想定で、ノッカーの打球はランダムに。例えば、三遊間のゴロなら併殺コースとなり、緩いゴロから一塁へ直接送球された場合は、一塁手が仮想の走者を刺すために三塁へ転送する。外野手も打球とアプローチに応じて送球先が変わり、内野陣はその指示を出しながら中継か、仮想・打者走者のケアへと動く。  それらがハイペースで次々と行われ、ベンチからのブザー音を合図に「無死二、三塁」「無死満塁」など想定も変わる。そして既定の5分間「終了」のアナウンスがあると、各自がその場で一礼してベンチへ引き上げた。 東16丁目のノックは、登録24人(6年生11人)を各所に配し、状況と打球に応じて複数人が連動。中堅手・佐藤秀哉(下)の身のこなしと強肩は1回戦から光っていた  試合前のシートノックの5分間は、どのチームにも平等に与えられている。その目的は指導者や大会や対戦相手によっても異なり、一概に善し悪しを言えるものではない。...

【3回戦❶】合わせて150歳!大ベテラン監督同士が好勝負

【3回戦❶】合わせて150歳!大ベテラン監...

2025.09.08

 牛島野球スポーツ少年団(秋田)の吉田敏雄監督が77歳、戸尾ファイターズ(長崎)の松本大三郎監督が73歳。合わせて「150歳」となる、ベテラン監督同士の対決が夢舞台で実現した。全日本学童大会の3回戦は8月15日、3会場で8試合を行い、ベスト8が出そろった。当メディアのリポートは、一進一退の好勝負となった「150歳対決」、新潟市のみどりの森の運動公園野球場の第1試合からスタートしよう。 (写真&文=鈴木秀樹) ■3回戦/みどりと森球場 ◇8月15日▽第1試合 [長崎]2年連続10回目 戸尾ファイターズ  000201=3  10003 X=4 牛島野球スポーツ少年団 [秋田]28年ぶり5回目 【戸】大田屋、佐保-藤永 【牛】東海林、渡辺-齊藤、東海林 三塁打/佐保(戸) 二塁打/渡辺2、奈良(牛) 【評】朝から降り出した強い雨により、試合は当初予定された午前8時半から4時間半遅れ、午後1時過ぎにプレーボールがかかった。戸尾は初回、先頭の佐保壱晟が左中間三塁打を放つも、次打者の右邪飛でタッチアップから先制のホームを狙い刺されるなど、無得点に終わった。一方の牛島はその裏、先頭の伊藤駿が右前打を放ち盗塁、渡辺想真主将の中越え適時二塁打で先制。戸尾は4回に田川綾人(5年)の中前打と、林大翔の左前打などでチャンスメークし、敵失で同点に追いつくと、大田屋遼の中前適時打で勝ち越しに成功した。しかし、牛島は5回、先頭の七番・奈良大翔の左翼線二塁打で好機を得ると、敵失で再び追いつき、伊藤駿の適時打と東海林大志のスクイズで2点リード。最終6回、70球の球数制限を迎えた先発・東海林から渡辺主将へとマウンドをつなぎ、戸尾の反撃を藤永将生の適時打(公式記録は敵失)による1点でしのぎ、逃げ切ってベスト8進出を決めた。(了) 大雨により、土と天然芝のみどりの森球場は他会場に遅れて13時開始に。1回表、守る牛島は右翼手・五十嵐陽翔の本塁好返球で相手の先制を阻む(下)。走者は三塁打の戸尾・佐保 4回表、戸尾は石崎の左前打(上)など3安打と敵失で同点、大田屋の中前打で2対1と逆転する(下) 5回裏、牛島は奈良の二塁打(上)と敵失で2対2に。さらに無死一、二塁から伊藤駿の中前打(下)で1点勝ち越し 5回裏に再逆転した牛島は、なおも一死二、三塁でスクイズ。東海林は片手で伸ばしたバットに白球を当て(上)、三走・五十嵐が生還(下)。これが決勝点に   ―Pickup Hero― 3連戦すべて規定の70球に。元王者の115㎞右腕 しょうじ・たいし 東海林大志...

【2回戦❸】V2王者散る。写真ダイジェスト&全結果

【2回戦❸】V2王者散る。写真ダイジェスト...

2025.09.02

 圧倒的な安定感で2023年から2連覇を遂げていた新家スターズ(大阪)が、大会初戦で涙――。全日本学童大会の2回戦リポートの第3弾は、悠久山野球場での3試合の写真ダイジェストのほか、新家ら元王者3チームが登場した水原球場での2試合の写真を交えて、全16試合の結果をお伝えしよう。出そろったベスト16のうち、7チームまでが初出場組となっている。 (写真&文=鈴木秀樹) (写真=福地和男) ■2回戦/悠久山野球場 ◇8月14日▽第1試合 戸尾、打者10人で大逆転逃げ切り [埼玉]初出場 西埼玉少年野球  040000=4  01060 X=7 戸尾ファイターズ [長崎]2年連続10回目 【西】香川、新井、高橋-矢澤 【戸】佐保-藤永 二塁打/香川(西)、柴田、田川、石崎、藤永、梅崎(戸) 【評】西埼玉は2回、早川暖真の安打と四球、磯部煌稀の安打で満塁とし、内野ゴロ野選で先制。さらに関川暖太と香川幹大主将の連続適時打で、この回、計4点を奪った。一方の戸尾は2回裏に四死球と敵失により、無安打で1点。4回には自慢の「打ち出すとつながる」打線が「やっとつながった」(松本大三郎監督)。二死走者なしからの四球に続き、柴田太郎主将と田川綾人(5年)の連続二塁打、さらに申告故意四球を挟み、林大翔の適時打で同点に。暴投で勝ち越し点を奪うと、石崎翔太、藤永将生も連続適時打を放ち、西埼玉を一気に突き放した。戸尾先発の佐保壱晟は中盤以降立ち直り、最終6回には投球数「69」で迎えた最後の打者を捕邪飛に打ち取り、完投勝利を挙げた。戸尾・松本監督は「試合途中には(2回の4失点で)泣いてる子もいましたが、すぐにケロリとしていつも通り。まあよくやってくれました」。西埼玉・綿貫康監督は「やはり全国の戦いは厳しい。ただ、目標だった大会出場を果たし、1勝できた。すべてが良い経験。子どもたちには感謝です」と振り返っていた。(了) 2回表、西埼玉の打者一巡の猛攻は五番・早川の右前打(上)から始まった。一死満塁から一番・香川主将は右へ2点二塁打(下) 4回裏、戸尾は二死一塁から二番・柴田主将(上)と三番・田川(5年=下)の連続二塁打でまず2点 六番・石崎(上)と七番・藤永(下)も連続の適時二塁打など、戸尾は4回裏で7対4と大逆転   ▽第2試合 8度目Vへ、長曽根が完勝 [開催地/新潟]初出場 東中野山ブルーシャークス  000000=0...

【2回戦❷】初回に10点!2会場2試合写真ダイジェスト

【2回戦❷】初回に10点!2会場2試合写真...

2025.09.01

 出場全53チームが出そろう全日本学童大会の2回戦は、7会場で16試合を行い、大会ベスト16が決まった。リポートの第2弾は、見附市運動公園野球場での第2試合と、メイン会場のHARD OFF ECOスタジアム新潟での第3試合を写真ダイジェストでお届けしよう。いずれも大会初出場同士の対戦で、ともにワンサイドで決着。初回の二死走者なしから、10得点という猛攻も見られた。 (写真&文=大久保克哉) ■2回戦/見附市野球場 ◇8月14日▽第1試合 [福島]2年ぶり24回目 常磐軟式野球スポーツ少年団  000010=1  10100 X=2 豊上ジュニアーズ [千葉]2年連続6回目 【常】奥山、佐藤瑛-上遠野 【豊】中尾、山﨑-神林 本塁打/神林(豊) 二塁打/鈴木(豊)、齋藤(常) ※リポート➡こちら   ▽第2試合 投打かみ合い、大坪南波多が完勝 [佐賀]初出場 大坪赤門南波多野球部  101004=6  000100=1 坂祝ホワイトセブン...

【2回戦❶Pickup Match】最多出場の元王者vs.強打のタレント軍

【2回戦❶Pickup Match】最多出...

2025.08.29

 全日本学童大会の1回戦は、組合せの関係で11チームがシード。全53チームが出そろうのは、7会場で16試合を行う2回戦となる。中でも注目を集めたのは、常磐軟式野球スポーツ少年団(福島)と豊上ジュニアーズ(千葉)の一戦だ。常磐は大会最多24回目の出場で、2010年に初優勝。豊上は過去に銅メダルが2回、1年前の全国8強メンバーら複数のタレントを擁する。守りが安定しているのは常磐で、打力が突き抜けているのが豊上。迎えた対決は、常磐が得意とする接戦となり、緊張の糸が張ったままの6イニングだった。 (写真&文=大久保克哉) 先攻の常磐はベンチ入り23人で6年生12人(上)。後攻の豊上はベンチ入り18人で6年生14人(下) ■2回戦/見附市野球場 ◇8月14日▽第1試合 [福島]2年ぶり24回目 常磐軟式野球スポーツ少年団  000010=1  10100 X=2 豊上ジュニアーズ [千葉]2年連続6回目 【常】奥山、西本-上遠野 【豊】中尾、山﨑-神林 本塁打/神林(豊) 二塁打/鈴木(豊)、齋藤(常) 元王者の利と術中 「1年に1回くらいは、力以上の試合やんなきゃダメなんだよ! それが今日だよ、やれっから!」  4回終了後の給水タイム。一塁側のベンチ内でナインをそう鼓舞していたのは、常磐軟式野球スポーツ少年団の天井正之監督(=上写真)だった。  同監督は1984年の創設時のメンバーで、6年時にはチーム初の全国出場(全国スポーツ少年団軟式野球交流大会)を果たしている。そのOB監督の野太い声には、しかと自信が宿っていた。また聞いている選手たちの顔からも、その気が十分に感じられた。  彼らの先攻で始まった試合は、この時点で0対2とビハインド。だが、それまでの内容は悲観するものではなく、得意の接戦に持ち込めていた。  苦しさをより感じていたのはむしろ、猛打を誇る相手側だったのかもしれない。豊上ジュニアーズの髙野範哉監督(=下写真)の試合後の第一声も、こうだった。 「ウチが負けるとしたら、こういう試合展開なんですよね」  要するに豊上とすれば、もっと大きくリードする展開を、現実的な理想として描いていたと思われる。春先に練習試合をした際には、常磐の投手陣を打ちまくって大勝していたこともある。  双方のシートノック前には、豊上・髙野監督が一塁側ベンチへ歩み寄って常磐・天井監督と軽く談笑(上)。試合開始30分前には、大会本部席前でメンバー表を交換(下)  ただし、今度の対決は、ガチンコの夏の夢舞台だ。魔物が住んでいるのは、本家・高校野球の甲子園とは限らない。「小学生の甲子園」でも初戦の難しさを口にする名将は多く、実際にいつもの力を出せないまま消えていく有力チームもままある。...

【1回戦《後編》】2ケタ得点も激減!!前年9チーム→2チーム

【1回戦《後編》】2ケタ得点も激減!!前年...

2025.08.22

 高円宮賜杯第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント。8月13日にあった1回戦のリポート後編は、長岡市の悠久山野球場での3試合の試合評のほか、見附市運動公園野球場での写真を交えて、全21試合の結果をお伝えしよう。本塁打の激減は前編で触れたが、2ケタ得点したチームも昨年の9チーム(全19試合)から、2チーム(全21試合)へと激減している。 (写真&文=鈴木秀樹) (写真=福地和男) ■1回戦/悠久山球場 ◇8月13日 ▽第1試合 戸尾、集中打で初戦を突破 [広島]3年ぶり2回目 原クラブ  001000=1  00303x=6 戸尾ファイターズ [長崎]2年連続10回目 【原】鹿田、百田-永瀬 【戸】佐保、柴田-藤永 三塁打/廣中(原) 二塁打/柴田、田川、藤永(戸) 【評】原が3回、廣中結都の三塁打を足掛かりに先制も、戸尾がその裏に佐保壱晟、柴田太郎、田川綾人、西啓之介の連打などで逆転。戸尾は5回にも田川、西啓、林大翔の連打などで3点を追加し、原を引き離して勝利。戸尾・松本大三郎監督は「得点機には打線がつながったけど、本来の力を考えると、まだまだ。なんとか長曽根(ストロングス・大阪)さんと戦うまで残りたい」、4年生からレギュラーで、一昨年は高野山旗、昨年は本大会でもプレー経験のある柴田主将は「緊張はありませんでした。3回と5回には打線がよくつながって、チームの良いところが出ました。この調子で勝ち進みたいです」と笑顔。(了) 試合は戸尾・佐保壱晟(上)、原・鹿田航志(下)、両先発の好投で幕を開けた 戸尾は0対1の3回裏、佐保、柴田太郎(上)、田川綾人、西啓之介(下)の連打などで逆転   ▽第2試合 西埼玉ガチガチも、初陣飾る [埼玉]初出場 西埼玉少年野球  001001=2...

【1回戦《前編》】本塁打75%減!! 前年19試合20本→21試合5本

【1回戦《前編》】本塁打75%減!! 前年...

2025.08.20

 高円宮賜杯第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは、雨天により、8月12日に7会場で予定された1回戦21試合が翌13日へスライドした。過去に優勝・準優勝している8チームは、すべて2回戦へ。1日遅れの無難な船出のなかで顕著となったのは、本塁打と大差決着の激減だ。本塁打は昨年の19試合で20本から、今年は21試合で5本に。是非はさておき、一般用の複合型バットの使用が禁止された影響は明白、といえそうな競技初日を前後半の2回に分けてリポートする。 (写真&文=大久保克哉) ※全試合のリポートではありません ■1回戦/阿賀野水原球場 ◇8月13日▽第1試合 多賀が甲斐の猛追かわす [山梨]2年ぶり2回目 甲斐JBC  000032=5  00521 X=8 多賀少年野球クラブ [滋賀]8大会連続18回目 【甲】豊泉、岩下-志澤泉 【多】高井、児玉、里見-大橋民、大橋煌 三塁打/中浦(多) 二塁打/中浦(多)、高橋(甲)、大橋民(多) 【評】スクイズ失敗(投飛)からの併殺やけん制死を奪うなど、序盤は甲斐の堅守が際立った。多賀には嫌な流れだったが、3回に打者一巡の猛攻で一掃する。大橋民紀太と中浦奏の連打に申告敬遠で一死満塁から、二番・奥野悠太が中前へ先制のタイムリー。さらに大塚堅史主将のバント安打、岡本律希の投ゴロ、小田悠陽の中前打とクリーンアップの連続打点で5対0とした。甲斐は5回から反撃スタート。5年生の代打・天野玄稀の右前打から好機を広げると、二番・岩下陽人の中犠飛と四番・高橋煌青の左越え二塁打で3点を返した。続く6回にも志澤泉悧主将の二塁打から打線がつながり、一番・白須大翔の中越え二塁打で1点差まで詰めたが、追撃もそこまで。甲斐の中込裕貴監督は「この時代でも、ウチは練習時間も長いし厳しい。よく耐えて頑張ってきた選手たちに勝たせてやりたかった…」と唇を噛んだ。(了) 序盤は甲斐の好守が光った。1回はスクイズを阻んで併殺(上)、2回には捕手の志澤泉悧主将(下)がけん制で一走をアウトに 3回裏、多賀は打者一巡の猛攻。まずは大橋民紀太の左前打(上)、中浦奏の右翼線二塁打(下)で一死二、三塁に 3回裏一死満塁から、奥野悠太(上)と小田悠陽(下)の2点タイムリーなどで多賀が5対0とする 5回表、甲斐は岩下陽人の犠飛と四番・高橋煌青の左越え二塁打(上)で3点。続く小林康介(5年)も逆方向へライナーを放つも、途中出場していた多賀の右翼手・近藤楓が好捕(下) 6回表、5点を追う甲斐は中込裕貴監督に送り出された代打・天野玄稀(5年=上)が右中間へ二塁打を放つ(下) 6回表、一死満塁と好機を広げた甲斐は白須大翔の中越え二塁打(上)で5対8に。最後まで諦めない姿勢が光った   ▽第2試合...

【開会式】豪雨の間隙、新潟に集結53チーム・1052人が大行進

【開会式】豪雨の間隙、新潟に集結53チーム...

2025.08.12

 高円宮賜杯第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは8月11日、HARD OFF ECOスタジアム新潟で開会式を行った。前線の影響で、連日の「警報級の大雨」予報が出ていたが、47都道府県のチャンプたちを歓迎するかのように、夕刻の式中は遠くに晴れ間も。前年度優勝と開催地代表を加えた53チーム1052人(登録選手)が、「小学生の甲子園」で入場行進した。なお、12日は予報通りの雨で、1回戦以降が1日ずつ順延し、決勝は18日の予定となっている。 (写真=福地和男、大久保克哉、鈴木秀樹) 「私たちは、野球が、大好きです!!」。庄野シリウス(三重)の横水英成主将が選手宣誓の最後に声を張ると、スタジアムが大きな拍手に包まれた 「私も小学生のときにこの大会を目標にしていましたが、かないませんでした…」。日米両球界で活躍した和田毅氏(元ソフトバンクほか)が、挨拶の後に始球式へ 始球式の打者は、前年度優勝の大阪・新家スターズの竹添來翔主将。捕手は開催地・新潟県代表の旭スポーツ少年団の塚田晄人主将が務めた   ■出場53チーム ※大会プログラム順   しんげ 新家スターズ [前年度優勝/大阪]4年連続5回目    ゆうべつ 湧別マリナーズ [北海道北]15年ぶり2回目    ひがし 東16丁目フリッパーズ [北海道南]3年ぶり9回目    ひろさき 弘前レッドデビルズ [青森]初出場...

【直前最終展望《後編》左ブロック】常連組も横一線!? 半歩リードは多賀、茎崎、常磐、豊上か

【直前最終展望《後編》左ブロック】常連組も...

2025.08.11

 高円宮賜杯第45回全日本学童軟式野球大会のプレビューも、いよいよラストの第10弾。3回戦までに強豪同士のつぶし合いも予想される、トーナメント表の左側の山を占っていきたい。こちらには過去の日本一が4、準優勝が2、3位が1チームずつ。またその中には、大会最多出場記録、最多連続出場記録を保持するツワモノも。全体の約半数を占める初出場組の絡みは見通せないが、真夏の最多6連戦は経験値がモノのをいいやすい。なお、直近5日内に紹介した、茎崎ファイターズ(茨城)と豊上ジュニアーズ(千葉)の詳しくは、そちらを参照いただきたい。 (取材&文=大久保克哉) ※各チームから提供の写真も使用しています。当メディアでは写真の二次利用を固くお断りしています  高校野球の“本家”甲子園では、今夏から日中の炎天下を避けての朝夕二部制が導入された。また2年前からは、正規の9イニングで決着しない場合には、即座にタイブレークへ入るルールに変更されている。  当メディアの読者であれば、二部制も特別延長戦も「小学生の甲子園」が先駆けであるのはご存知だろう。選手の健康や身体を優先するべく生まれたルールが、ノウハウを含めて上のカテゴリーへ。そういう流れがあるのかもしれないし、国民的な関心事でもある“本家の甲子園”には、軽々にルールをいじれないシガラミもありそうだ。  ともあれ、「小学生の甲子園」は、今年も運営面に新たな動きがある。従来は一部の会場であった1日4試合を取りやめ、どの会場も3試合または2試合に。昨年まで3年間続いた、ナイトゲーム(17時55分開始)が廃止された。  昨年は大接戦となった第4試合のナイター(=上写真)が、ゲリラ豪雨と時間帯からして続行不能となり、翌朝の「特別継続試合」となるイレギュラーがあった。当メディアは『歴史的な名勝負』として報じた(➡こちら)が、20時過ぎまで球場にいた小学生が、12時間後の朝にはガチンコの戦い中というのは、相当に過酷でもあったようだ。  当事者の一人、北名古屋ドリームス(愛知)の岡秀信監督は「抽選ではなく、決着するまで試合をやらせていただいたことに感謝しかないですし、相手も同じ条件でしたので負けの言い訳にもとられたくない」と前置きした上で、私見を述べてくれた。 「ナイターの翌朝は疲労だけではなく、諸々の準備など難しさもありましたので、ナイターがなくなれば、勝ち上がりチームも確実に楽になるでしょうね」 2回戦で黄金カード!?  さて、その岡監督が率いる北名古屋もいる、トーナメント表の左側のブロック。こちらには馴染みの強豪チームがごそっといて、勝ち上がりの予想が極めて困難だ。何せ、過去のVチーム同士の激突が、2回戦、3回戦と立て続けに実現する可能性がある。 『学童甲子園』で目下11連勝中の新家スターズ。写真は大会連覇を遂げた昨夏のメンバー しんげ 新家スターズ [前年度優勝・大阪/1979年創立] 出場=4年連続5回目 最高成績=優勝/2023年、2024年 初出場=2017年/2回戦 【全国スポ少交流】 出場=3回 優勝=2回/2015、19年  左ブロックでも究極の“死の山”にいるせいか、大会2連覇中の新家スターズの指揮官は、抑え気味のトーンに終始している。 「今年は前年優勝枠の出場で、大阪大会では負けてますし(4強)、交流のある強豪のみなさんの胸を借りるつもり。当たって砕けろ! という感じです」(吉野谷幸太監督=上写真右)  新家は昨年も前年V枠の出場ながら、あえて府予選も制してきての全国2連覇達成だった。怪物クラスはいなくても、走攻守のいずれも磐石な“整い野球”は過去2年、他の追随を許さなかった。昨年は九番・右翼でプレーした竹添來翔が、今年は主将を務めている。6年生は女子を含めて5人と、若いチームがどこまで磐石に近づけるか。ひとつのカギはそこにありそうだ。 たが 多賀少年野球クラブ...

【直前最終展望《前編》右ブロック】長曽根がV記録更新か、止めるは不動か!?

【直前最終展望《前編》右ブロック】長曽根が...

2025.08.09

「小学生の甲子園」こと高円宮賜杯第45回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは8月11日、新潟県のハードオフエコスタジアム新潟で開会式を行う。53チームによる巨大トーナメントは翌12日に始まり、17日には2025年のチャンピオンが誕生する見込み。開幕までの『特ダネ』プレビューは、トーナメント表を左右に分けての大展望(前・後編)で締めとしよう。なお、今年も全都道府県の予選を取材できていないので、あくまでも観戦や応援の参考に。 (取材=大久保克哉、鈴木秀樹) (文=大久保克哉) ※各チームから提供の写真も使用しています。当メディアでは写真の二次利用を固くお断りしています  トーナメント表の左半分(ブロック)に、実績のある強豪チームが集まる――。全国大会の常連チームや名将たちの間では近年、都市伝説より信憑性のある現象として囁かれているが、今年もその傾向が顕著となった。  過去の優勝チームは6チームあるが、そのうち4チームが左側の山に。さらにベスト4以上(優勝を除く)は、4チームのうち3チームが左側だ。序盤戦から激しいつぶし合いが予想されるが、大展望の前編は右側のブロックに焦点をあてたい。 3回以上のVを唯一  トーナメント表の左右も関係なく、突き抜けているのは大阪の長曽根ストロングスだ。過去7回の優勝は、孤高の史上最多記録。44回の大会史の中で、複数回の優勝は他に3チームあるが、3回以上のVとなると長曽根しか達成していない。 ながそね 長曽根ストロングス [大阪/1988年創立] 出場=3年ぶり18回目 最高成績=優勝7回※最多記録/2002年、2003年、2005年、2011年、2015年、2016年、2021年 初出場=2001年/ベスト4 【全国スポ少交流】 出場=3回 優勝=1回/2024年  7月末の高野山旗(和歌山県開催)も制して乗り込む今大会で、V記録の更新はなるか。以下は、熊田耐樹監督(=上写真)のコメントだ。 「全国大会では、どの試合も気が抜けへんけど、組合せ表を見て最初に思ったのは、お互いに勝ち上がれば3回戦で当たる、不動パイレーツ(東京)戦やね。年明けの試合(長曽根主催の『目指せ!新潟・スポ少2025』2DAYS IN SUITA)では、いい試合をしたけど負けた。なんとかそこまで行って、今度は勝ちたい。新潟は2021年に優勝した、ゲンの良い場所。それにもあやかって、勝ち上がれたらいいなぁ思うてます」  打線をリードするのは、長打力もある岩﨑海斗。森川壱誠主将は制球力が高い投手で、遊撃手の月田拓斗と中堅手の畑中零生が守りの要になっている。 長丁場でポイントは…  右側のブロックには今大会の出場チームで唯一、「昭和時代」に日本一を遂げているチームもいる。牛島野球スポーツ少年団(秋田)だ。  初出場は1985年で、翌86年に優勝。さらに1994年、1997年と出場も、優勝年以外は白星なし。28年ぶりの出場となる現チームに、昭和の輝きを知る人物はいるのだろうか。今大会で取材したいチームのひとつだ。 ふどう...

【茨城県代表/3年連続12回目】茎崎ファイターズ

【茨城県代表/3年連続12回目】茎崎ファイターズ

2025.08.08

 伝統の堅守とつなぐ攻撃が復活した今年は、過去2年とは異質の強さと安定感がある。3年連続12回目の全国出場を決めた際には、2人が泣いていた。1人は裏方や盛り上げ役に懸命だった生え抜きの6年生、そして背番号30番だ。指導キャリアは30年。2001年の全国デビュー以降はおそらく、大会や人前ではそうそう見せなかっただろう指揮官の涙の理由とは――。名将・吉田祐司監督の横顔と、全国に轟く強豪チームの真髄に迫ってみたい。 (写真&文=大久保克哉) ※茨城大会決勝リポート➡こちら 名将の涙の深いワケ。“関東の雄”は原点回帰で一戦必勝 くきざき 茎崎ファイターズ [茨城/1979年創立] 出場=3年連続12回目 初出場=2001年 最高成績=準優勝/2019年  【全国スポ少交流】 出場=2回  【県大会の軌跡】 1回戦〇5対1上辺見ファイターズ 2回戦〇7対0宗道ニューモンキーズ 3回戦〇10対1吾妻少年野球クラブ 準決勝〇5対0嘉田生野球スポーツ少年団 決 勝〇8対0楠クラブスポーツ少年団 「ユウジの『ユウ』の字は、のぎへんに右で間違いないですね?」 「はい、そうです」  3年連続12回目の全国出場を決めたばかりのベンチ内。失礼にもほどがある記者の不適切な愚問にも、吉田祐司監督は表情ひとつ変えず、どこまでも穏やかに丁寧に応じていた。 過去の栄光より目の前  これまでに手にした全国舞台でのメダルは4つ。2008年、11年、17年が銅で、2019年に銀メダル。これほどの実績を築きながら現存するチームは、関東では他にないことから、“関東の雄”と呼ばれて久しい。また、その大功労者でもある吉田監督は、指揮官となって四半世紀を超え、全国にも轟く名将だ。  ただし、同じ野球界の名将でも、高校野球と学童野球とでは、知名度も関心度も雲泥の差がある。国民に広く知られる人もチームも、学童球界には存在しないのは昔からだ。  それゆえ、大手のメディアは門外漢の記者も現場へ平気で送り込む。そして冒頭のような質問も、悪びれるでもなく堂々と。吉田監督は慣れもあるだろうが、冷静でいられるのはきっと、高校の名将にも劣らぬ器と人間性の持ち主だからだ。 吉田監督が大会会長を務める東日本交流大会は、茨城県を舞台に2003年に始まった。県内外のチームに交流が広がり、全国予選の試金石ともなっている。写真は今年4月6日、第21回大会の閉会式...

【千葉県代表/2年連続6回目】豊上ジュニアーズ

【千葉県代表/2年連続6回目】豊上ジュニアーズ

2025.08.05

   チーム史上「最強」と胸を張れる戦力が整っている。1年前の全国8強の体験者が3人。100㎞超を常時投げる左腕が2枚いて、右腕もおそらく同数。サク越えできる打者は少なくとも4人いる。これだけ役者がいても依存し切らず、優勝旗のコレクションで悦に入らないのは、経験豊富な名将が率いているからだろう。下級生も交えて激しくポジションを争う過程では、悪夢のような大逆転負けもあったが、それもきっと名将の想定内。新チーム始動時から『天下獲り』を公言してきた豊上ジュニアーズが、満を持して大本命の舞台に立つ。 (写真&文=大久保克哉) ※県決勝リポート➡こちら 名将と天井知らずの“最強世代”。至上の頂へ1年計画が遂行中 とよがみ 豊上ジュニアーズ [千葉/1978年創立] 2年連続6回目 初出場=2016年 最高成績=3位/2019、21年 【県大会の軌跡】 1回戦〇25対0千葉市原マリーンズ 2回戦〇7対1ASAI KIDS☆UNITED 準決勝〇16対1エースライオンズ 決 勝〇15対0匝瑳東ベースボールクラブ 柏の名将もうひとり 「チームは生きもの。ちょっとしたことで良くも悪くもなるし、危機感は常に持っています」  これはサッカーの元日本代表監督、西野朗氏から直接に聞いた言葉だ。Jリーグの最多勝利監督であり、1994年のアトランタ五輪で王国ブラジルを撃破、2018年のロシアW杯では日本最高成績の8強へ導くなど、数々の偉業を遂げた名将。1990年代の終盤には千葉県の柏レイソルを率いて、初タイトル(1999年ナビスコ杯)をもたらしたが、2001年のシーズン中に成績不振で解任という憂き目も経験している。  豊上ジュニアーズは同じ柏市内で、プロサッカーチームよりずっと古くから活動している。ごく一般的な地域のチームに訪れた転機は、2006年だったのかもしれない。2019年から2大会連続で全国3位など、チームを全国区の強豪へと昇華させた髙野範哉監督が、初めて指導者(父親コーチ)となった年だ。  都合6回目の全国出場を決めた今年は、かつてないほどに名将の鼻息も荒い。昨秋の新人戦に続いて、6月の全国最終予選も「千葉に敵なし!」をぶっちぎりVで証明。その決勝の直後、応援にきていた保護者や関係者や低学年生らを前に、髙野監督はこのように挨拶した。 「今日は子どもたちのことは、みなさんで胴上げしてあげてください。ボクはいいです。この代は全国優勝を目指してスタートしているので、ボクは全国優勝したらお願いします。ホントに本気で全国優勝を目指していますので、応援をよろしくお願いします(※一部抜粋)」  少なくとも、そこに数十人はいだだろう。自ずと巻き起こった大きな拍手が、改装オープンから間もない国府台スタジアムの外壁にも反響。濁りも忖度もない、期待と確信の音色だった。  ストレートにものを言う指揮官は、心にもないことを口走って場を取り繕うような御仁ではない。おそらく、そこにいた大多数がそれも知っている。挨拶ではまた、5年生と4年生たちに向けて、名将はこうも言った。 「いいか、何度も言ってきてるけど、簡単には全国大会には行けないんだからな。去年だって、頑張って頑張ってやっとだった。今年は最初から『必ず行く』と言ってきたけど、これが普通じゃないからな」...