全日本学童大会

【名勝負数え唄❶2回戦/新家vs.山野】濃...
47都道府県の王者によって日本一を決する「学童野球の甲子園」。全日本学童大会マクドナルド・トーナメントは、1回戦から決勝まで全50試合ある。真夏の最多6連戦とあって、どのチームもフレッシュな大会序盤に好ゲームが展開されることが多い。今年もまた、3回戦までに特筆レベルの名勝負が複数。中でも、毛色の違う実力派同士が得点を奪い合った、この2回戦は球史にも残るだろう激闘だった。 (写真&文=大久保克哉) 2回戦 ◇8月18日 ◇駒沢硬式野球場 ■第1試合 [大阪]3年連続4回目 新家スターズ 3205=10 2320=7 山野ガッツ [埼玉]初出場 【新】庄司、山田、庄司、今西、庄司-藤田、庄司、藤田、庄司、藤田 【山】中井、高松-樋口 本塁打/高松(山)、黒田(新) 二塁打/山田(新)、中井2、三木2、樋口(山)、竹添(新)、遠山(山)、松瀬、西浦(新) 鬼門を打破したV戦士 最終的には大会2連覇を果たすことになる前年王者だが、指揮官も大いに肝を冷やしたというのが、この2回戦だった。戦い終えての第一声と、血の気が引いたような顔が激闘のほどを物語っていた。 「疲れたわ~疲れた。いやぁ、ホンマにヤバいな。聞いていた通りやったわ、山野のバッティング…」 スポーツの世界では、どれほどの実力者でも「鬼門」と言われるのが、大会の初戦。いつものパフォーマンスを発揮できずに敗れたり、苦戦を強いられることがままある。 大会初戦の新家(上)は、いつも通りのパワフルできびきびしたシートノックを試合前に披露。見ていた山野ベンチに、気圧された様子はなかった(下) 前年度優勝枠で出場の大阪・新家スターズは、この2回戦が大会初戦だった。ただし、予選にあたる府大会にあえて参戦し、これを制してきた不敗軍団でもある。 不吉なものを早々に打ち払ったのは、前年V戦士のトップバッター、山田拓澄だった。開始2球目の103㎞を左打席から左中間へ運ぶ、特大のエンタイトル二塁打。試合巧者の新家は、この一撃から“らしさ全開”となった。 二番・西浦颯馬は、初球をバント。これが三塁前へ絶妙に転がるヒットとなって無死一、三塁に。さらに次の初球での二盗が悪送球を誘って、三走の山田が先制のホームを踏んだ。 1回表、新家は山田の二塁打(上)と西浦のバント安打(下)に、二盗絡みの敵失で1点 1点とは、かくも簡単に取れるものなのか――開始からわずか4球での先取。大会初戦の、それも初っ端でこれだ。二塁へ走った西浦は、センターへ抜けた送球を見て三塁も狙ったが、タッチアウトとなって走者はいなくなった。しかし、先制攻撃がそれで終わらないあたりも、いかにも不敗軍団だった。 四番・庄司七翔の右前打の前後に、死球と敵失があって2点目。さらに七番・新谷陸の左前タイムリー(=下写真)で、リードを3点に広げた。...
【名勝負数え唄❶2回戦/新家vs.山野】濃...

【夢舞台を彩った俊英❷】一芸に秀でた『金の...
万能のスターでなくても、秀でた一芸で輝けるのは、野球というスポーツの醍醐味のひとつ。学童ゆえ、未完成や粗削りを「是」と受け止めることもできる。たとえ短くとも、世界を一変するような輝き方もあるし、後から染み入る眩しさもある。夢舞台を彩った俊英たちの第2弾は、「打者編」「投手編」「マルチ編」に分けて、トータル12戦士を紹介していこう。 (写真=福地和男) (写真・文=大久保克哉) ■バットマン編 ―金の卵❶― 創作の主人公のようなリアル ほそや・なおき 細谷直生 [東京・不動パイレーツ] 6年/右投右打 「なんかマンガみたい」 全国銅メダルまでの自身のストーリーを、細谷直生はそのように評した。小学生最後の夏の夢舞台にあっては、フィクションの世界から飛び出した主人公のような立ち回りを演じた。 誰もが一目で忘れない、155㎝66㎏のシルエット。眼にはいつも生気が漲り、ヒザの屈伸で右打席に入るところから雰囲気もたっぷり。むんずと両手で持つバットを頭上に掲げ、肩まわりをほぐすルーティンまでが、期待値を跳ね上げた。 そして期待や注目に対して、少なくとも半分以上はバットで応えてきた。打率は5割5分超。大会最多本塁打はチームメイトの山本大智(※二刀流❸)に譲るも、単独2位となる3本のホームランを5試合の中でかっ飛ばした。 アーチの中でも、神宮球場の左翼特設フェンスの向こうへと放った、2本の2ランが痛快だった。ほしい場面での豪快な一発にスタンドはどよめき、応援席やベンチは狂喜乱舞する姿も。 1発目は愛知・北名古屋ドリームスとの3回戦だった。0対2で迎えた5回表、1点を返してなお、一時逆転となる2ラン。2発目は大阪・新家スターズとの準決勝だ。四死球も絡んで前年王者に0対3とリードされ、重苦しいムードで迎えた3回表だった。走者を1人置いて、高めの明らかなボール球を強引にバットに乗せて、左翼フェンスの向こうへと運んだ。 痛快な一撃に続き、ほとばしる激情。それが見て取れる表情や全身のアクションがまた、ことごとく絵になった。小6にして、こんなにも個性的で明白なキャラクターが他にいるだろうか。 その巨漢も怠惰の果てではない。鍛え抜かれたゆえであることは、機敏な一塁守備や力強いスローイング、敵の虚を突く好走塁からも読み取れた。また、仲間への声掛けを聞いていると、大人顔負けの野球頭の持ち主であることもわかる。 「NPBジュニアは全部、セレクションで落ちました」 自ら平然と言い出すあたりに、プライドものぞく。今夏の学童最高峰の舞台で得た自信とともに、反骨心がスイング力に上乗せされていくことだろう。 球界の最高峰のカテゴリーは客商売。ケタ違いの人々を魅了する巨漢選手のシルエットに、10年後の彼を勝手に描いて重ねてしまうのは筆者だけだろうか。本人にも迷惑だろうか。 ―金の卵❷― 努力は嘘つかぬを体現 たかはし・れいと 高橋嶺斗...
【夢舞台を彩った俊英❷】一芸に秀でた『金の...

【夢舞台を彩った俊英❶】投打『二刀流』8戦士
完全試合も遂げたV腕がいた一昨年。そして124㎞を投じるモンスターが躍動した昨年。この直近2年が特別で、今年は例年に戻ったということなのかもしれない。誰もが「怪物!!」と認めるようなパフォーマンスは見られなかった。負けたら終わりの大会ゆえ、埋もれたまま消えた能力もあるかもしれない。しかし、持てる力を本番で発揮することや、チームを勝たせるのもまた実力だ。全50試合のうち18試合を現場で取材した『学童野球メディア』が、個人成績も集計・加味した上で、今夏の夢舞台を彩った俊英たちを紹介していく。第1弾は、投打の「二刀流」で輝いた8戦士。 (写真=福地和男) (写真・文=大久保克哉) ―投打二刀流❶― 捕手でもスケール大の『三刀流』 なかた・こうき 中田昊輝 [広島・安佐クラブ] 6年/右投左打 現場で取材した限りでは「No.1」の本格派投手だった。168㎝58㎞の身体を持て余していない。整ったフォームから右腕を存分に振って投じるストレートは、迫力満点だった。 下位打線はストライク先行で、ねじ伏せる。上位打線やピンチの場面では、スローボールも交えて各打者とじっくりと勝負。投げ終わりに、軸足の靴底がきれいに天を向いているのも特長的だった。 「ピッチャーは佐々木朗希投手(ロッテ)が好きです」 8月の広島県の大会で更新したという最速は118㎞。今大会はリリーフ登板で3つ勝って、聖地・神宮での準々決勝へ。同球場は学童16mの投球距離に合わせた計測システムがないものの、コンスタントに110㎞前後を投げていたと思われる。 同点の5回に二塁打3本で決勝点を奪われて敗北。「勝負したんですけど、甘く入ってしまって思い通りのボールを投げられなかったのが一番悔しいです」と号泣しながら話した。 バットを持てば、左打席から鋭い当たりを連発。1回戦で二塁打2本、2回戦では右中間の特設フェンスの向こうへアーチを描いた。続く3回戦は3打席連続四球も、打ち気にはやることなく、準決勝も好球必打で二塁打と2点タイムリーを放った。 さらには捕手としても出色だった。とりわけ見事だったのは、強肩とフットワークだ。2回戦、3回戦と初回に二盗阻止。けん制とクイック投法に長けていた大深修主将とのバッテリーで、流れを呼んだ。また3回戦では、ライトゴロのベースカバーに入り、一塁悪送球を拾っての矢のような二塁送球で打者走者をタッチアウトにするビッグプレーもあった。 「キャッチャーは甲斐拓哉選手(ソフトバンク)が好きです。これからもピッチャーとキャッチャー、両方でいきたい。夢はプロ野球選手です」 ひとしきり激しく泣いた後は、爽やかな笑顔で聖地を後にした。姉3人に続く、末っ子。中田家でもきっと待望だった男児は、スケール感はそのままに、世代の夢も負っていくことになるのかもしれない。 ―投打二刀流❷― 大会No.1リードオフマン やまだ・たくと 山田拓澄 [大阪・新家スターズ] 6年/左投左打 1年前の全国舞台も六番・中堅でフル出場、ホームランも放って日本一に貢献したときから「世代屈指」と注目されてきた。投打二刀流にトライして1年、満12歳には長くて重すぎるプレッシャーもあっただろうが、見事にチームの2連覇に貢献した。...
【夢舞台を彩った俊英❶】投打『二刀流』8戦士

【決勝評/ヒーロー&グッドルーザー】完全無...
高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントの決勝は、おそらく史上初の雨天コールドで、5回終了をもっての決着に。兵庫・北ナニワハヤテタイガースを11対0でリードしていた、前年度優勝の大阪・新家スターズの2年連続2回目の優勝が決まった。4回表を潮目にワンサイドとなった大一番だが、前半戦は見応えのある好勝負が展開された。 (写真&文=大久保克哉) ※日本一・新家スターズのリポートは後日にお届けします 決勝 ◇8月22日 ◇明治神宮野球場 [大阪]3年連続4回目 新家スターズ 10190=11 00000=0 北ナニワハヤテタイガース [兵庫]2年連続4回目 ※5回終了、雨天コールド 【新】庄司、今西、山田、今西-藤田凰、庄司 【北】北嶋、山口、上石、二木、北嶋-矢之文 二塁打/山田(新) 5回裏(上)から激しい雨となり、6回表に新家が15対0とリードを広げてなお、二死満塁。交換するボールも手につかなくなって試合が中断(下) もう十分だから、勘弁してもらえないか!? 「聖地」神宮球場を激しく打ちつける雨音は、不敗の前年王者へ全国から向けられた「白旗」を代弁するかのようだった。 6回表。11対0とリードする新家スターズの攻撃は、豪雨に等しく止む気配がなかった。一死から一番・山田拓澄のエンタイトル二塁打を皮切りに、1四球を挟む5連打で14対0に。二死となってから、八番・今西海緒が押し出し四球を選んでもう1点が加わり、2巡目の攻撃に入ってボール3となる。 ここで初めて、試合は中断する。そして約30分の待機を経ての「終了」という断に、異論は出なかった。「小学生の甲子園」とも言われる全日本学童大会で、それも決勝戦でのこういう決着は極めて異例。キャリア60年の北ナニワハヤテタイガースの石橋孝志監督も「こんなの初めてや。でも仕方ないわな」と、敗北を潔く受け入れた。 正式には5回終了、雨天コールド。これによって、公式記録に書き込まれていた6回表の新家の4得点や5安打も、すべて修正液で塗りつぶされた。 それでも11対0。新家スターズが文句なしに、2年連続2回目の日本一に輝いた。 新チームになってから、練習試合やローカル大会も含めて全勝中。この全国大会は前年度優勝枠での出場が約束されていたが、それでも大阪府予選に参戦し、これも制してきての完全無欠の全国制覇だった。 中断から30分が過ぎて、球審が「コールドゲーム」を宣告(上)。ネット裏では、両監督に屋内で実施する閉会式の説明も行われた(下) 表彰式は球場入り口からのメイン通路で行われ、歓喜の胴上げもなし。それでも千代松剛史監督は、満ち足りた表情で報道陣にも応対した。 「ボクはいつも厳しいことを言うてるんですけど、努力の成果が出て喜んでいるときに子どもたちが一番成長するんじゃないかと思っているんです。やっぱりね、これだけ(練習)やってきたから、この(日本一の)景色が見れた。となると、中学に行っても、努力の先にそういう光景があるんじゃないか…そういう話は子どもたちにいつもさせてもらっています」 双方で投げ合い...
【決勝評/ヒーロー&グッドルーザー】完全無...

【準決勝❷試合評/ヒーロー&グッドルーザー...
同じ関西勢。大会公式パンフレットでは、見開きページの左右に並ぶ兵庫と奈良のチームが、決勝の椅子をかけて激突した。高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントの準決勝第2試合は、6回表まで0対0という珍しい展開に。迎えた6回裏、北ナニワハヤテタイガースが中川翔斗の適時二塁打でサヨナラ勝ちした。先発のエース・山口琉翔は、被安打3の無四球完封。敗れた牧野ジュニアーズも、田中瑛人主将が5回無失点と好投し、初出場ながら銅メダルに輝いた。 (取材&文=大久保克哉) (写真=福地和男) 兼ねてより互いを認知していたという両軍だが、コロナ禍や荒天などで交流試合はなかなか実現せず。初対決が、全国準決勝という舞台に 準決勝 ◇8月21日 ◇明治神宮野球場 ■第2試合 [奈良]初出場 牧野ジュニアーズ 000000=0 000001x=1 北ナニワハヤテタイガース [兵庫]2年連続4回目 【牧】田中、鶴岡-田仲、田中 【北】山口-矢之文 二塁打/山口、中川(北) 北ナニワの山口(上)と、牧野の田中主将(下)が、5回までともに無失点の投げ合いを演じた 来年度からは使用が禁止される、一般用(大人用)の複合型バット。打球部が別素材でできており、インパクト時のボールの変形を抑える分だけ、飛距離が増すという優れもの。 「野球を変えた」とも言われる、その“飛ぶバット”が全盛でも、全国大会になるとロースコアのゲームもままある。それだけ投手と守備のレベルも高いということだろう。ただし、終盤戦まで0対0のゲームとなると、昨今の全国大会でも相当にレア。今夏も50試合の中で、この準決勝の第2試合だけだった。 2回表、牧野は迎井が中前打(上)。その裏は北ナニワの上石(5年)が左前打(下)。しかし、後続が倒れて無得点 北ナニワハヤテタイガースは山口琉翔、牧野ジュニアーズは田中瑛人主将。先発した両右腕の快投によって、5回を終えてもスコアは0対0。ただし、どちらの右腕も、剛速球で三振の山を築くというタイプではなかった。 大きな括りで言えば、軟投派。打たせて取るタイプだ。コンパクトなテイクバックが共通しており、必要なところで適度に力を与えられたボールの多くは、捕手の構えたミットの方向へ。 初回には双方の守りにミスもあったが、両右腕は落ち着いて後続を打たせて取った。2回表には牧野の迎井福司が、その裏には北ナニワの5年生・上石弦が、それぞれ一死からクリーンヒットを放ったものの、生還はできなかった。 大人用複合型バットも何の! 「ボクは県大会が終わった(全国出場決定)後から、打たれ過ぎて良いピッチングができなくて。速いボールを投げたいと思っちゃっていたので、コントロールが悪くなって、フォアボールを出してから甘く入った球を打たれる感じで…」 大会前の自分をこう振り返ったのは北ナニワの山口だ。反省と教訓が十分に生かされた、この日のピッチングだったのだ。終わってみれば、無四球で散発の被安打3。走者は何度も背負ったが、毎回の先頭打者で確実に1アウト目を奪ったことで、試合巧者の相手に思うような攻撃をさせなかった。...
【準決勝❷試合評/ヒーロー&グッドルーザー...

【準決勝❶試合評/ヒーロー&グッドルーザー...
昨年の決勝と同一カードとなった、高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントの準決勝第1試合。前年優勝の大阪・新家スターズが、東京・不動パイレーツを6対2で返り討ちにした。わずか3安打ながら、肉を切らせて骨を断つという内容だった新家はこれで、関東勢を4タテ。与えた7四死球が響いた不動とすれば、試合に勝って勝負に負けたというところか。ポイントに切り込んだ試合評に続いて、ヒーローとグッドルーザーをお届けしよう。 (取材&文=大久保克哉) (写真=福地和男) 準決勝 ◇8月21日 ◇明治神宮野球場 ■第1試合 [東京]2年連続5回目 不動パイレーツ 002000=2 12111 X=6 新家スターズ [大阪]3年連続4回目 【不】山本、唐木、鎌瀬-鎌瀬、唐木 【新】庄司、今西、庄司-藤田凰 本塁打/細谷(不)=大会3号2ラン 二塁打/細谷(不) 1回表、不動の二番・鎌瀬主将が死球で出ると、二盗に成功(上)。さらに内野ゴロで二死三塁としたが、新家の先発・庄司七翔が三振を奪って切り抜ける(下) 「勝敗を超えて今日は何か、ウチのゲームをさせてもらったと思っています。これまでやってきたこと、心掛けてきたことについては、何も間違っていなかったと確信できました」 不動・鎌瀬慎吾監督の試合後の弁は、決して負け惜しみには聞こえなかった。 終わってみれば、毎回失点の4点差で敗北も、ヒット数は新家の3本に対して5本。その内訳も、単打2本とバント安打1本の新家に対して、不動は全5本が外野へ打ち返したヒットで、本塁打とエンタイトル二塁打が1本ずつ。打球の鋭さからしても、個の打力は上回っていたと思われる。 また守備においては、バッテリーミスを除けば互いにノーエラー。その中で光ったのは、準々決勝までほぼやりたい放題だった新家の足技を、不動が見事に返したワンプレーだった。 1回裏、新家は先頭の山田が四球から二盗に続いて、三盗(上)も決めて無死三塁に。一死後、三番・藤田凰介主将の三ゴロで先制点。表の不動の攻撃と似ているようで、進め方も結果も違った 2回裏だ。攻める新家は、適時ボークと一番・山田拓澄の右前タイムリーで3対0として、なお二死一、三塁。ここで一走の山田がゆるゆると塁間に出て投手のけん制を誘い、挟殺プレーに。その間に三走が本塁を突くという、高校野球でもよくある戦法のひとつだ。 1点が入るか否かは、双方の熟練度による。こういう場面を想定した走塁と守備をどれだけ練習し、また実戦で経験してきたかという、場数だけではない。最も問われるのは、総体的な戦術の浸透度だ。状況の把握と約束事の共通理解が全員に必要で、その上で個の判断力と、プレーの精度が明暗を分けることになる。 二死一、三塁から挟殺プレー...
【準決勝❶試合評/ヒーロー&グッドルーザー...

【準々決勝❷/駒沢】新家と不動が1年ぶりリ...
高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントの準々決勝。駒沢公園硬式野球場では、前年度優勝の大阪・新家スターズと、東京第2代表の不動パイレーツが勝利。両チームは昨夏の決勝で戦っており、1年ぶりのリマッチが準決勝で実現することに。新家は2回戦から関東勢に4連勝も、千葉の盟主・豊上ジュニアーズが先制攻撃と勝負手で王者をグラつかせた。 (写真=福地和男) (取材&文=大久保克哉) 準々決勝 ◇8月20日 ◇駒沢球場 ■第2試合 前年覇者、気付けば大差の逆転勝ち 新家は八番・今西海緒が3安打3打点の活躍で、4回の2点中前打が決勝打に(上)。豊上は絶好調の四番・高橋嶺斗が初回に3ラン(下)など4点を先取した [大阪]3年連続4回目 新家スターズ 034130=11 400001=5 豊上ジュニアーズ [千葉]2年ぶり5回目 【新】庄司、山田-藤田凰、庄司 【豊】桐原、加藤-岡田 本塁打/高橋(豊) 三塁打/福井(豊) 二塁打/藤田凰、庄司、西浦颯(新) 1回裏、豊上は一番・福井陽大(5年)が三塁打と野選で生還(上)。なお、無死一、二塁で四番・高橋がセンター方向へ大会1号アーチ(下) 新家は2回表、四番・庄司七翔の左前打から一死満塁として八番・今西の犠飛(上)でまず1点。さらに一番・山田拓澄の中前打(下)で3対4に迫る 3回表、新家は三番・藤田凰介主将(上)と、四番・庄司の連続二塁打(下)で4対4の同点に 3回表、豊上はバッテリーミスで4対5と逆転されたところで髙野範哉監督がタイムを取る(上)。しかし、新家が今西の中前打で7対4。4回表には五番・松瀬吟愛(下)のタイムリーで加点 4回は互いの守りが光った。豊上は二盗阻止(上)、新家は6-4-3の併殺を奪う(下) 新家は5回、二番・西浦颯馬が満塁の走者を一掃する二塁打(上)でダメ押し。豊上は最終6回、途中出場の5年生・中尾栄道の二塁打(下)で5点目が入る 3回途中から救援した新家の山田が4安打1失点、無四球の好投で準決勝進出を決めた...
【準々決勝❷/駒沢】新家と不動が1年ぶりリ...

【準々決勝❶/神宮】勝ち残り3/4が関西勢...
高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントの準々決勝は8月20日、2会場で行われて4強が出そろった。勝ち残ったうちの3チームは関西勢となったが、聖地「神宮」では新たな風も吹いた。まずは同球場での2試合の写真ダイジェストと、グッドルーザーをお届けしよう。 (写真&文=大久保克哉) ※駒沢球場での準々決勝2試合も、写真ダイジェストで近日中にお届けします 準々決勝 ◇8月20日 ◇神宮球場 ■第2試合 北ナニワ、北嶋主将が5回完投 北ナニワの北嶋隼士主将(上)は、打たせて取る投球で5回を67球で被安打5の2失点完投。安佐の先発・大深修主将(下)も無失点で立ち上がるも、不慣れな人工芝の簡易マウンドで足をつって2回途中で降板 [広島]13年ぶり2回目 安佐クラブ 002000=2 02002 X=4 北ナニワハヤテタイガース [兵庫]2年連続4回目 ※5回時間切れ 【安】大深、中田昊-中田昊、竹内 【北】北嶋-矢之文 二塁打/中田昊(安)、中川、上石、山川、二木、矢之文(北) 1回表、守る北ナニワは三盗阻止でピンチを切り抜ける(上)。その裏、安佐は木村隼士がいきなりライトゴロを決め、一死二塁からの右飛でも強肩でタッチアップを許さず(下) 2回裏、北ナニワは中川翔斗(上)と5年生・上石弦(下)の連続二塁打で先制する 先制した北ナニワはなお、一死一、三塁で石橋孝志監督がタイム(上)。直後に山口琉翔の三ゴロで2点目が入る。守る安佐は三塁手・江原佳陽(下)の美技で2回裏を終わらせた 安佐の反撃は3回表。八番・長谷川慎の左前打(上)と一番・江原の右前打(下)などで一死満塁と好機を広げる 3回表一死満塁から、安佐の二番・中田昊輝が中前へ2点タイムリー(下)で同点に 2対2のまま迎えた5回裏。北ナニワは先頭の九番・山川諒(4年)が左へエンタイトル二塁打を放つ(上) 5回裏、北ナニワは4年生に続いて二番・二木正太朗(上)の二塁打で勝ち越し(上)、四番・矢之文太も二塁打(下)で4対2。結果、それが決勝打とダメ押しに...
【準々決勝❶/神宮】勝ち残り3/4が関西勢...

【3回戦/神宮】平戸がサヨナラ劇で初の8強...
高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントの3回戦は8月19日(2試合は20日決着)、2会場で行われ、ベスト8が出そろった。「聖地」神宮では、東西の王者が激突した第1試合に始まり、特別延長戦で雨天順延となった第4試合まで白熱のバトルが展開された。第3試合は神奈川・平戸イーグルスが、過去2回Vの滋賀・多賀少年野球クラブにサヨナラ勝ちで準々決勝進出を決めている。 (写真&取材=大久保克哉) ※好勝負やチームや選手の深掘りリポートは追ってお届けします ■3回戦/神宮第1試合 前年王者が関東王者に完勝 7月末の高野山旗決勝以来となるリマッチを前に、新家・千代松剛史監督と船橋・木村剛監督が握手(上)。結果は新家が船橋を返り討ちに(下)※この試合は後日、特報予定 [大阪]3年連続4回目 新家スターズ 2601=9 1000=1 船橋フェニックス [東京]2年連続2回目 新家は1回表、二番の西浦颯馬(下=写真は2回の左前適時打)から藤田凰介主将(上)、庄司七翔まで3連打でまず1点、さらに一、三塁からの重盗で三走・藤田主将が生還 船橋は1回裏、松本一(上)と竹原煌翔の連打などから併殺崩れで1点を返すが、以降は本塁が遠かった。手痛いミスも響いた中で、2回途中から登板した木村心大が気を吐いた ■3回戦/神宮第2試合 豊上・桐原、あわや完封の快投 豊上のエース・桐原慶(上)は5回二死まで71球で被安打4の7奪三振。2番手が適時打を浴びて2失点(自責点2)も、危なげのない快投だった。攻めては四番・高橋嶺斗(下)が先制犠飛に2打席連続タムリーで4打点。写真は3回の左前打 [徳島]16年ぶり2回目 大津西スポーツ少年団 000002=2 10203 X=6 豊上ジュニアーズ [千葉]2年ぶり5回目 豊上・髙野範哉監督「1回戦からガミガミやり過ぎちゃって、昨日から体調が最悪。声も枯れちゃって(笑)。4打点の高橋は元々は不器用で補欠だった子。それが一生懸命に努力して最後に来て四番で頑張っている。きれいにレベルで振っているのでミート率が高いですね。明日の新家戦はガンガン打つだけ。ミスなしでバッティングがハマってくれたら良い勝負できるかな、という感じですね」(=写真上)...
【3回戦/神宮】平戸がサヨナラ劇で初の8強...

【決勝★直前スペシャル】ファイナリスト徹底...
ファイナルは関西の新旧チャンピオンの激突に!高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは、8月22日の神宮球場での決勝戦を残すのみ。勝ち残った大阪・新家スターズと、兵庫・北ナニワハヤテタイガースは兼ねてより交流があり、現6年生たちは5年時の春に1度だけ対戦し、新家が2対1でサヨナラ勝ちしている。日本唯一の学童野球専門メディアから、さらにディープな両軍の比較に加え、両監督と6年生たちの意気込みをお届けする。 (取材・構成=大久保克哉) (写真=福地和男) 決勝カード ◇明治神宮野球場 ◇8月22日 ◇9:00開始 [大阪]3年連続4回目 新家スターズ VS. 北ナニワハヤテタイガース [兵庫]2年連続4回目 ※今大会成績は公式記録から集計していますが、後から一部訂正される可能性があります しんげ 新家スターズ 藤田凰介主将=主に三番・捕手「みんなチーム全体、調子が良いので、このままの調子でいって。点数を取られても凹まず、明るく元気に楽しく。それで日本一を獲りたいと思います」(=写真下) 山田拓澄=主に一番・左翼「相手を0点に抑えて、こっちはボコボコ打って、勝ちたいと思います。マウンドに立ちたい気持ちもあります」(=写真下) 今西海緒=主に八番・三塁「みんな疲れてるけど、1年間ずっと練習してきているので、試合になるといつも通りにやれるのだと思います。決勝はピッチャーをしっかりやること。それしか意識してないです」(=写真下) 庄司七翔=主に四番・投手「この大会の2連覇を目標に1年間、ずっとやってきたので、もう絶対に優勝したいです」(=写真下) 千代松剛史監督「もうここまで来たら、やっぱり優勝したいというのが本音です。がんばります!もうね、あれこれないですよ。勝つのみ」 きた 北ナニワハヤテタイガース 北嶋隼士主将=主に三番・投手「新家さんは強くて走塁がすごい。一塁に出ると、ほとんど三塁まで来るし、転がして1点も取ってくる。こっちは守り勝つだけです。相手を3点以内に抑えて、こっちは4点、5点を取る。みんなでやるべきことをやれば、できると思います。自分たちが練習でやってきたことを決勝の舞台でも出したいなと思います」(=写真下) 山口琉翔=主に一番・三塁「(準決勝で無四球完封の要因は)監督に教えてもらったようにストライク先行で、打たせて取る。心の中では人に任せず、自分で全部抑えるという気持ちでした。明日の決勝も投げるつもりです。新家さんには5年生の3月くらいに試合したときに2対1でサヨナラ負けして、そのときのピッチャーがボクだったので。今度は勝った瞬間にマウンドにいたいです」(=写真下) 中川翔斗=主に六番・左翼「...
【決勝★直前スペシャル】ファイナリスト徹底...

【準決勝★直前スペシャル】全4チームの監督...
高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは8月21日、神宮球場で準決勝2試合を行い、ファイナリストが決まる。決戦を前に、ベスト4各チームの勝ち上がりと注目選手、指揮官のコメントをお届けしよう。 (取材&文=大久保克哉) ※試合評やヒーロー、グッドルーザーは大会後にお届けします 準決勝カード ■第1試合8:30開始 [大阪]3年連続4回目 新家スターズ VS. 不動パイレーツ [東京]2年連続5回目 ※昨年決勝戦と同日カード(1年前の試合評➡こちら) ■第2試合10:25開始 [兵庫]2年連続4回目 北ナニワハヤテタイガース VS. 牧野ジュニアーズ [奈良]初出場 ―TEAM01― ″整い野球″の不敗王者 関東勢4タテなるか!? 前年度優勝/大阪府 新家スターズ 【今大会の軌跡】 2回戦〇10対7山野(埼玉)...
【準決勝★直前スペシャル】全4チームの監督...

【2回戦/駒沢/府中】″酷暑も超える熱戦”...
高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは8月18日、5会場で2回戦を行い、ベスト16が出そろった。前年Vの大阪・新家スターズと、初出場の埼玉・山野ガッツとのゲームは、学童球史に残るようなタフな点取り合戦に。前年準Vの東京・不動パイレーツと、2020年準Vの愛知・北名古屋ドリームスは劇的な逆転勝ち。これらの″酷暑も超える″名勝負は追って特報予定だが、まずは2会場での4試合を写真ハイライトで。 (写真&取材=大久保克哉) ■2回戦/駒沢第1試合 人生初アーチが逆転決勝3ラン! [大阪]初3年連続4回目 新家スターズ 3205=10 2320=7 山野ガッツ [埼玉]初出場 山野は長打6本を含む2ケタ安打の猛打で、前年王者をあと一歩まで追い詰めた。3回裏には七番・高松咲太朗がレフトへ勝ち越しソロ(上)、一番・中井悠翔が3安打目となるタイムリー(下)で7対5に 新家は4回表、5対7から六番・黒田大貴が逆転3ラン(上)。何と「初めてのホームラン」(黒田)が、大熱戦の決勝打となった※この試合は大会後に特報予定 ■2回戦/駒沢第2試合 船橋、ハンパないって! 1回裏、船橋の四番・濱谷隆太がライトへ先制2ラン(上)。5回裏に三番・竹原煌翔がレフトへダメ押しソロ(下)で13点目 [鹿児島]3年ぶり5回目 国分小軟式野球スポーツ少年団 000000=0 201280=13 船橋フェニックス [東京]2年連続2回目 「新チーム始動時は9人。それからここまでよくやりました」と国分小の末松正純監督。唯一の出塁は5回二死からの四球で、一塁へガッツポーズして走った小原旭(上)は「兄が野球をしていたので1年前にサッカーから野球に来ました。今は野球が大好きです」 ■2回戦/府中第3試合 成長、ハンパないって!...
【2回戦/駒沢/府中】″酷暑も超える熱戦”...

【1回戦/駒沢】写真ハイライトetc.
高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは8月17日、7会場での1回戦から競技スタート。船橋フェニックス(東京)、多賀少年野球クラブ(滋賀)、北名古屋ドリームス(愛知)ら金メダル候補は概ね勝利するなかで、2019年準Vの茎崎ファイターズが敗退した。レポートの第2弾は、駒沢公園硬式野球場での1回戦4試合の写真ハイライト。 (写真&取材=大久保克哉) ※好勝負やチームや選手の深掘りリポートは追ってお届けします ■1回戦/駒沢第1試合 いきなり大会第1号!? [新潟]初出場 岩室クラブジュニア 10000=1 09400=13 多賀少年野球クラブ [滋賀]7大会連続17回目 おそらく大会1号? 1回表、岩室の二番・田中優心が、高く舞い上がる中越え先制ソロ(上)。多賀も3回裏、八番・髙木陽旭がレフトへ豪快にソロアーチ(下) 多賀は先発の鈴木啓大朗(上)が2回1失点とゲームをつくり、2番手の春日飛雄馬がパーフェクト救援で逃げ切り。岩室は頼みの大エース・田中が右肩負傷で大苦戦も、「楽しさ」を求めてチームを創設した父・田中裕明監督は、必ず笑顔で選手たちを出迎えていた(下) ■1回戦/駒沢第2試合 若鷹軍団の今宮父、見参! 別府大平の今宮美智雄監督(70歳=上) は、福岡ソフトバンクの名手・今宮健太内野手の実父。かつて息子もプレーしたチームを率いて34年目で全国初出場&1勝。二番の豊島大和(下)が1回に先制三塁打、さらに四番・山下啓太のスクイズで2点 [大分]初出場 別府大平山少年野球部 200000=2 001000=1 西城陽MVクラブ [京都]10年ぶり3回目 11球ファウル、14球目で四球。2回表、別府大平の九番・三浦大和(下)は二死走者なしから驚異的な粘りで四球をゲット。西城陽の先発・北川佑信(上)は根負けも、真っ向勝負が印象的。以降も本格派の4投手が好投した...
【1回戦/駒沢】写真ハイライトetc.

【開会式】ラストの夢舞台「神宮」に1053...
高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは8月15日、明治神宮野球場で開会式を行った。2009年から続いてきた東京の固定開催も今夏がラスト。全国の学童球児の憧れでもある聖地「神宮」で、出場全51チームの1053人(登録)が入場行進した。台風の影響で競技の初日は順延となり、17日の7会場1回戦からスタートする。決勝は22日、神宮球場。果たして、このフィールドに戻ってくるファイナリストは――。 (写真=福地和男) 開催地・東京を代表して、レッドサンズの竹澤律志主将が歓迎の挨拶。今大会は都4位で出場を逃すも、気持ちのこもった言葉に場内から大きな拍手も 1053人の選手を代表し、福井・東郷ヤンチャーズの吉田颯志主将が宣誓(上)。始球式はBCL/栃木の投手で、お笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行氏が務めた(下) ■出場51チーム ※大会公式プログラム掲載順 しんげ 新家スターズ [前年度優勝/大阪]3年連続4回目 みやま 美山イーグルス [北海道北]初出場 いわみざわ 岩見沢学童野球クラブ [北海道南]初出場 ひらかわジュニア 平川Jrベースボールクラブ [青森]初出場 いのかわ 猪川野球クラブ...
【開会式】ラストの夢舞台「神宮」に1053...

【直前最終展望《後編》】右の山には東西2強...
全国47都道府県の代表によるチャンピオンシップ。「小学生の甲子園」こと高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは、6日間で出場51チームから日本一が決するまでに計50試合が消化される。展望の後編では、巨大トーナメントの右側半分のブロックに焦点を当てていこう。 (写真&文=大久保克哉) ※展望前編(トーナメント右ブロック)➡こちら きた 北ナニワハヤテタイガース [兵庫/1965年創立] 出場=2年連続4回目 初出場=1988年/優勝 【全国スポ少交流】 出場=3回 優勝=1回/1988年※初出場 北ナニワは昨夏の全国でプレーした選手が4人。山口(写真)がエースとなり、北島とのバッテリーで兵庫大会を連覇している トーナメントの右側の山は、予想がなかなか難しい。というのも、過去の上位進出チームがごく限られていることもあり、つかんでいる情報も左側の山に比べると確実に少なくて薄いのだ。 むろん、出場チームや組み合わせには何ら非はない。当メディアの体力不足でしかないのだが…。 過去の日本一チームは、兵庫・北ナニワハヤテタイガースのみ。1988年に全国スポーツ少年団軟式野球交流大会とのダブルで初出場初優勝を果たしているが、現在は予選の段階から2大会同時出場が不可能に(※詳しい経緯は「レジェンドインタビュー」➡こちら)。あとは両大会を通じても、メダルに輝いているのは2019年準Vの茨城・茎崎ファイターズと、前年2018年の宮崎・三股ブルースカイしかない。 みまた 三股ブルースカイ [宮崎/1996年創立] 出場=6年ぶり4回目 最高成績=3位/2018年 初出場=2009年/2回戦 【全国スポ少交流】 出場=なし 全体の半数を占める初出場組や、まだ上位進出のないチームにも優勝の可能性はある。ただし、直近15年での初出場初優勝は、2013年の兵庫・曽根青龍野球部と、翌14年の愛媛・和気軟式野球クラブのみ。また、曽根青龍は優勝2年前の2011年に全国スポ少交流で3位となっており、両大会を経験した選手も複数。つまり実質的には、2回目の夏の全国大会だった。 近年の東京の夏は40度に迫る酷暑が連日のように続く。最長で6日間の6連戦。これを最後まで勝ち切るのは、特に遠征と宿泊を伴う初出場組には相当に困難だと言えるだろう。 鬼門に不気味な相手...
【直前最終展望《後編》】右の山には東西2強...

【直前最終展望《前編》】V2へ走る不敗王者...
「小学生の甲子園」こと高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは8月15日夕刻、東京・神宮球場での開会式から始まる。『学童野球メディア』からの特ダネのプレビューは、前・後編に分けての大展望で締めとしよう。なお、全47都道府県の予選や代表チームを取材できているわけではないので、あくまでも観戦や応援の参考のひとつに! (写真&文=大久保克哉) しんげ 新家スターズ [前年度優勝・大阪/1979年創立] 出場=3年連続4回目 最高成績=優勝/2023年 初出場=2017年/2回戦 【全国スポ少交流】 出場=3回 優勝=2回/2015、19年 1年前の初Vにも貢献した2人。山田(上)が投打の要、藤田主将(下)はチームを引っ張る 完全無欠の全勝ロード。新チーム始動から練習試合を含めて、まだ1敗もしていないという。昨年度のチャンピオン、大阪・新家スターズは今年も突き抜けている。 毎年の優勝チームには翌年の出場権が与えられ、都道府県予選も免除される。それでも新家はあえて、府予選に参加して2連覇を達成。ハイレベルな大阪の王者というプライドも携えて、夢舞台に登場となる。 「もちろん、やるからには今年も獲らせていただくつもりですけど、あまりにも優勝、優勝と言い過ぎても子どもたちのプレッシャーですから。大会の横断幕にもあるように『楽しんでいこうぜ!』という感じの声掛けもしているところです」 こう語る千代松剛史監督は、百獣の王を思わせるような眼光の勝負師だ。でもその実、謙虚で思慮深い。選手と1対1のコミュニケーションも密で、言動に説得力がある。激変する時代にあっても、学童球界をリードするべき大人のひとりであることは、当メディアの過去の記事や動画でもお分かりいただけるだろう。 実情も手の内も隠さず 走攻守すべてに抜かりのない、新家の″整い野球″は健在。昨年のV戦士のうち、藤田凰介主将と山田拓澄(「2024注目戦士」➡こちら)が残るのも心強い。 「打撃はどのチームも強烈でハマったら怖い。ウチは正直、長打力だけは去年のほうが上。投手は左の山田と、右が3枚。エースの山田はちょっと調子が悪いので、誰が軸かは本番次第」 千代松監督が実情をそこまで話せるのは、余裕からではない。「選手はあくまでも成長過程の小学生やし、この情報化社会で隠せることなんてない」との信念がある。7月末の高野山旗もそうだった。 ふなばし 船橋フェニックス [東京/1971年創立] 出場=2年連続2回目 最高成績=2回戦/2023年※初出場 【全国スポ少交流】...
【直前最終展望《前編》】V2へ走る不敗王者...

【東京第1代表/2年連続2回目】船橋フェニックス
ついに来るところまで来た! 昨秋の新人戦に始まり、6月の全国予選、7月の都知事杯まで。全国最多の1051チームが加盟する大東京にあって、船橋フェニックスは「無敗」を貫き通して、いよいよ最上のステージに立つ。自他ともに認める、優勝候補の大本命だ。 (写真&文=大久保克哉) ハイレベル&陽キャの"東京無双"。神宮ラストイヤーのトリで輝くか!? ふなばし 船橋フェニックス [東京/1971年創立] 出場=2年連続2回目 初出場=2023年(2回戦) ※以下、時系列の大会軌跡とリポート 【東京都新人戦】 1回戦〇9対7西伊興若潮ジュニア 2回戦〇4対3深川ジャイアンツ 3回戦〇19対2高島エイト 4回戦〇19対4オール麻布 準々決〇9対1高島エイト 準決勝〇10対5東村山3RISE 決 勝〇4対1旗の台クラブ ※2023年10月 決勝戦リポート➡こちら 【京葉首都圏江戸川大会】 1回戦〇10対1大雲寺スターズ 2回戦〇6対5深川ジャイアンツ 3回戦〇10対0中央バンディーズ 準々決〇2対1山野レッドイーグルス 準決勝〇3対0鶴巻ジャガーズ 決 勝〇9対2清新ハンターズ...
【東京第1代表/2年連続2回目】船橋フェニックス

【千葉県代表/2年ぶり5回目】豊上ジュニアーズ
“髙野マジック”炸裂! 千葉の盟主ともいえる豊上ジュニアーズは、髙野範哉監督がトップチームの指揮官に復帰して即、2年ぶり5回目の全国出場を決めた。拮抗したゲームでは一死までに三塁を奪い、手堅く得点する。全国大会でもおなじみのスタイルは今年、やや影を潜めている。それも今の戦力とチームカラーから、名将が導き出した答えのようだ。 (写真&文=大久保克哉) ※千葉大会決勝リポート➡こちら 天真爛漫と髙野”マジック”の化学反応 とよがみ 豊上ジュニアーズ [千葉/1978年創立] 出場=2年ぶり5回目 初出場=2016年 最高成績=3位/2019、21年 【千葉大会の軌跡】 1回戦〇17対2匝瑳東BBC 2回戦〇6対4磯辺シャークス 準決勝〇13対5新浦安ドリームスター 決 勝〇2対1常盤平ボーイズ 「えっ! やってないの?! ダメだろ、オマエ! なんで?! やっておけって、言っておいたじゃない!」 全国出場をかけた県決勝戦の開始まで、もう5分あるかないか。ただでさえ独特の緊張感が漂う中で、豊上ジュニアーズのベンチは指揮官の荒い口調と嘆き節で、にわかに凍り付いた。 これもマジック? 1年の中でも最も大事と思われる1日の、絶対に負けられない戦いの間際である。真相はどうあれ、この期に及んでのドタバタは、決して褒められたものではない。選手たちに動揺が走り、パフォーマンスにも影響しかねない。 ところが、そうならないあたりも“髙野マジック”なのだろう。間もなく始まった大一番で、マイナスの影響を見て取ることはなかった。むしろ、予想以上の好結果を生む一因にもなった。 県決勝の1回裏、四番・加藤が逆方向へ先制三塁打を放つ 1回裏に先制三塁打を放った四番・加藤朝陽。実はこの一塁手兼投手が、冒頭で叱られた張本人だった。髙野範哉監督は試合後、開始直前の言動は意図的でなかったことを打ち明けた上で、こう証言している。 「あれは本気で叱りました。加藤はちょっと太めで、土曜日の午前中(※決勝は土曜9時開始)は特に動きが鈍い。ピッチャーでもストライクが入らないんですよ。だから『試合前のピッチング練習を多めにやっておけよ!』と言っておいたのに、本人に確認したら『やってない』って(笑)」 命に背いた形の加藤もきっと、指示を忘れていたわけではない。前夜はチームで21時あたりまで室内練習場で打ち込み、当日朝も6時集合でバットを軽く振って実打もしてきたという。その中で彼なりに、自身のコンディションなども踏まえた判断があったのだろう。しかし、あのタイミングと指揮官の勢いからして、弁明する余地はなかった。 1回表、ファウルフライに飛び込む加藤と捕手・岡田主将。捕球ならずもこの後、顔を見合わせてニコニコ 「もういいや! みたいな感じで試合に入りました(笑)」...
【千葉県代表/2年ぶり5回目】豊上ジュニアーズ

【茨城県代表/2年連続11回目】茎崎ファイターズ
“関東の雄”から“ニッポンの雄”へ。11回目の今夏の夢舞台が、昇華のタイミングなのかもしれない。過去に銀メダルが1個、銅メダルが3個。残る「黄金のメダル」への本気度が、今年は手練れの首脳陣からもうかがえる。客観的に見ても、文句なしの優勝候補だ。とりわけ、2024年を迎えてからの進化と躍進は目覚ましいものがある。 (写真&文=大久保克哉) ※茨城大会決勝リポート➡こちら 時は来た!! 関東から“ニッポンの雄”へ飛翔が始まる くきざき 茎崎ファイターズ [茨城/1979年創立] 出場=2年連続11回目 初出場=2001年 最高成績=準優勝/2019年 【全国スポ少交流】 出場=2回 県決勝は6年生10人が全員出場。「めっちゃ緊張しましたけど、めっちゃ出られてうれしかったです。茎崎はベンチもみんなサポートできて、試合に出ている人たちも優しいです」(代打出場の西山光=写真上) 【県大会の軌跡】 1回戦〇9対6波崎ジュニアーズ 2回戦〇10対0古河プレーボール 3回戦〇10対3オール東海ジュニア 準決勝〇7対0上辺見ファイターズ 決 勝〇9対1水戸レイズ “昇り龍”と“レベチ”の如く 前年に続く全国出場。これが決まるまでは決して外には漏れてこなかったが、吉田祐司監督は新チームの始動当初から、5・6年生たちにこう言い続けてきたという。 「今までは県大会がスタートラインだったけど、オマエたちは全国大会がスタートラインだよ!」 掛け値なしに、それだけの潜在能力があったということだ。そしてそれを着実にチーム力へと落とし込みながら、結果を出してきた。 どれだけ、それが難しいことか。キャリアの長い学童指導者ほど、よくわかるところだろう。 4年生の代では輝かしい実績を残しながら、2年後の6年時は泣かず飛ばすというチームも少なくない。あるいは5年時までの「経験」という貯金にものを言わせて、秋の新人戦は突っ走るも、やがて息切れ。そして年明けからはライバルの後塵を拝する、というケースもありがちだ。...
【茨城県代表/2年連続11回目】茎崎ファイターズ

【東京都第2代表/2年連続5回目】不動パイレーツ
真夏の全国大会でも戦うごとに成長を感じさせながら、5つ勝って東京勢初のファイナリストとなったのが1年前。不動パイレーツが今夏も、難関の夢舞台に戻ってくる。奇しくも、新人戦の都3回戦敗退と全日本学童の都大会準Vは、前年と同じ足跡。今年もやはり、大会ごとに進化と勝負強さを示してきており、期待せずにはいられなくなる。 (写真&文=大久保克哉) ※東京大会決勝リポート➡こちら ふどう 不動パイレーツ [東京/1976年創立] 出場=2年連続5回目 初出場=2016年 最高成績=準優勝/2023年 【全国スポ少交流】 出場=なし 【都大会の軌跡】 2回戦〇14対2立川クラブ 3回戦〇10対5Golden age 準々決〇10対7レッドサンズ 準決勝〇7対6しらさぎ 決 勝●6対9船橋フェニックス 「小学生の甲子園」で銀メダルに輝いたからといって、恵まれぬ野球環境が劇的に好転することはないのだろう。ましてそこは東京23区の人気のエリア。社会も人も「少年野球」を中心に回っているわけではない。 不動パイレーツが拠点とする小学校の校庭を使える時間は、1年前と相変わらず、原則として土日の計4時間のみ。都心では決して珍しくないが、全国区のチームには都外からも練習試合の申し込みが絶えない。 現代表の深井利彦監督が率いていた2016年に、全日本学童初出場で3回戦まで進出。19年と21年は東京王者として同大会に出場しており、今夏で5回目の夢舞台となる。 平日練習はなく、過ごし方は個々に委ねられている。だが、何もせずにレギュラーを張れるような、ぬるま湯の体質ではない。週末は主に遠征で対外試合をこなしながら、各々の現在地を把握し、戦術の理解と精度を高めながら一体感が醸成されていく。 2023年は全国準優勝。ベンチ入りした11人の5年生のうち、難波がレギュラーとして活躍した(写真/福地和男) 深井監督が代表となって以降は、父親の学年監督が選手と一緒に繰り上がるシステムに。昨年は慶大出身の永井丈史監督が「エンジョイ・ベースボール」で大きな花を咲かせた(リポート➡こちら)。今年は指導歴8年、鎌瀬清正主将の父・慎吾監督が率いて4年目のチームとなる。 異様な落ち着きと強み 前年から残るレギュラーは、左スラッガーの難波壱だけ。それでも、夏に向けて右肩上がりの成長を続けているのは、昨年とよく似ている点だ。...