全日本学童大会

【準々決勝❶/神宮】勝ち残り3/4が関西勢に!写真ダイジェスト&グッドルーザー

【準々決勝❶/神宮】勝ち残り3/4が関西勢...

2024.08.28

 高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントの準々決勝は8月20日、2会場で行われて4強が出そろった。勝ち残ったうちの3チームは関西勢となったが、聖地「神宮」では新たな風も吹いた。まずは同球場での2試合の写真ダイジェストと、グッドルーザーをお届けしよう。 (写真&文=大久保克哉) ※駒沢球場での準々決勝2試合も、写真ダイジェストで近日中にお届けします 準々決勝 ◇8月20日 ◇神宮球場 ■第2試合 北ナニワ、北嶋主将が5回完投 北ナニワの北嶋隼士主将(上)は、打たせて取る投球で5回を67球で被安打5の2失点完投。安佐の先発・大深修主将(下)も無失点で立ち上がるも、不慣れな人工芝の簡易マウンドで足をつって2回途中で降板 [広島]13年ぶり2回目 安佐クラブ  002000=2  02002 X=4 北ナニワハヤテタイガース [兵庫]2年連続4回目 ※5回時間切れ 【安】大深、中田昊-中田昊、竹内 【北】北嶋-矢之文 二塁打/中田昊(安)、中川、上石、山川、二木、矢之文(北) 1回表、守る北ナニワは三盗阻止でピンチを切り抜ける(上)。その裏、安佐は木村隼士がいきなりライトゴロを決め、一死二塁からの右飛でも強肩でタッチアップを許さず(下) 2回裏、北ナニワは中川翔斗(上)と5年生・上石弦(下)の連続二塁打で先制する 先制した北ナニワはなお、一死一、三塁で石橋孝志監督がタイム(上)。直後に山口琉翔の三ゴロで2点目が入る。守る安佐は三塁手・江原佳陽(下)の美技で2回裏を終わらせた 安佐の反撃は3回表。八番・長谷川慎の左前打(上)と一番・江原の右前打(下)などで一死満塁と好機を広げる 3回表一死満塁から、安佐の二番・中田昊輝が中前へ2点タイムリー(下)で同点に 2対2のまま迎えた5回裏。北ナニワは先頭の九番・山川諒(4年)が左へエンタイトル二塁打を放つ(上) 5回裏、北ナニワは4年生に続いて二番・二木正太朗(上)の二塁打で勝ち越し(上)、四番・矢之文太も二塁打(下)で4対2。結果、それが決勝打とダメ押しに...

【3回戦/神宮】平戸がサヨナラ劇で初の8強入り!etc.コメント&写真ハイライト

【3回戦/神宮】平戸がサヨナラ劇で初の8強...

2024.08.27

 高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントの3回戦は8月19日(2試合は20日決着)、2会場で行われ、ベスト8が出そろった。「聖地」神宮では、東西の王者が激突した第1試合に始まり、特別延長戦で雨天順延となった第4試合まで白熱のバトルが展開された。第3試合は神奈川・平戸イーグルスが、過去2回Vの滋賀・多賀少年野球クラブにサヨナラ勝ちで準々決勝進出を決めている。 (写真&取材=大久保克哉) ※好勝負やチームや選手の深掘りリポートは追ってお届けします ■3回戦/神宮第1試合 前年王者が関東王者に完勝 7月末の高野山旗決勝以来となるリマッチを前に、新家・千代松剛史監督と船橋・木村剛監督が握手(上)。結果は新家が船橋を返り討ちに(下)※この試合は後日、特報予定 [大阪]3年連続4回目 新家スターズ  2601=9  1000=1 船橋フェニックス [東京]2年連続2回目 新家は1回表、二番の西浦颯馬(下=写真は2回の左前適時打)から藤田凰介主将(上)、庄司七翔まで3連打でまず1点、さらに一、三塁からの重盗で三走・藤田主将が生還 船橋は1回裏、松本一(上)と竹原煌翔の連打などから併殺崩れで1点を返すが、以降は本塁が遠かった。手痛いミスも響いた中で、2回途中から登板した木村心大が気を吐いた   ■3回戦/神宮第2試合 豊上・桐原、あわや完封の快投 豊上のエース・桐原慶(上)は5回二死まで71球で被安打4の7奪三振。2番手が適時打を浴びて2失点(自責点2)も、危なげのない快投だった。攻めては四番・高橋嶺斗(下)が先制犠飛に2打席連続タムリーで4打点。写真は3回の左前打 [徳島]16年ぶり2回目 大津西スポーツ少年団  000002=2  10203 X=6 豊上ジュニアーズ [千葉]2年ぶり5回目 豊上・髙野範哉監督「1回戦からガミガミやり過ぎちゃって、昨日から体調が最悪。声も枯れちゃって(笑)。4打点の高橋は元々は不器用で補欠だった子。それが一生懸命に努力して最後に来て四番で頑張っている。きれいにレベルで振っているのでミート率が高いですね。明日の新家戦はガンガン打つだけ。ミスなしでバッティングがハマってくれたら良い勝負できるかな、という感じですね」(=写真上)...

【決勝★直前スペシャル】ファイナリスト徹底比較&監督・選手の決意

【決勝★直前スペシャル】ファイナリスト徹底...

2024.08.22

 ファイナルは関西の新旧チャンピオンの激突に!高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは、8月22日の神宮球場での決勝戦を残すのみ。勝ち残った大阪・新家スターズと、兵庫・北ナニワハヤテタイガースは兼ねてより交流があり、現6年生たちは5年時の春に1度だけ対戦し、新家が2対1でサヨナラ勝ちしている。日本唯一の学童野球専門メディアから、さらにディープな両軍の比較に加え、両監督と6年生たちの意気込みをお届けする。 (取材・構成=大久保克哉) (写真=福地和男) 決勝カード ◇明治神宮野球場 ◇8月22日 ◇9:00開始 [大阪]3年連続4回目 新家スターズ   VS. 北ナニワハヤテタイガース [兵庫]2年連続4回目   ※今大会成績は公式記録から集計していますが、後から一部訂正される可能性があります しんげ 新家スターズ 藤田凰介主将=主に三番・捕手「みんなチーム全体、調子が良いので、このままの調子でいって。点数を取られても凹まず、明るく元気に楽しく。それで日本一を獲りたいと思います」(=写真下) 山田拓澄=主に一番・左翼「相手を0点に抑えて、こっちはボコボコ打って、勝ちたいと思います。マウンドに立ちたい気持ちもあります」(=写真下) 今西海緒=主に八番・三塁「みんな疲れてるけど、1年間ずっと練習してきているので、試合になるといつも通りにやれるのだと思います。決勝はピッチャーをしっかりやること。それしか意識してないです」(=写真下) 庄司七翔=主に四番・投手「この大会の2連覇を目標に1年間、ずっとやってきたので、もう絶対に優勝したいです」(=写真下) 千代松剛史監督「もうここまで来たら、やっぱり優勝したいというのが本音です。がんばります!もうね、あれこれないですよ。勝つのみ」   きた 北ナニワハヤテタイガース 北嶋隼士主将=主に三番・投手「新家さんは強くて走塁がすごい。一塁に出ると、ほとんど三塁まで来るし、転がして1点も取ってくる。こっちは守り勝つだけです。相手を3点以内に抑えて、こっちは4点、5点を取る。みんなでやるべきことをやれば、できると思います。自分たちが練習でやってきたことを決勝の舞台でも出したいなと思います」(=写真下) 山口琉翔=主に一番・三塁「(準決勝で無四球完封の要因は)監督に教えてもらったようにストライク先行で、打たせて取る。心の中では人に任せず、自分で全部抑えるという気持ちでした。明日の決勝も投げるつもりです。新家さんには5年生の3月くらいに試合したときに2対1でサヨナラ負けして、そのときのピッチャーがボクだったので。今度は勝った瞬間にマウンドにいたいです」(=写真下) 中川翔斗=主に六番・左翼「...

【準決勝★直前スペシャル】全4チームの監督コメント&注目選手

【準決勝★直前スペシャル】全4チームの監督...

2024.08.21

 高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは8月21日、神宮球場で準決勝2試合を行い、ファイナリストが決まる。決戦を前に、ベスト4各チームの勝ち上がりと注目選手、指揮官のコメントをお届けしよう。 (取材&文=大久保克哉) ※試合評やヒーロー、グッドルーザーは大会後にお届けします 準決勝カード ■第1試合8:30開始 [大阪]3年連続4回目 新家スターズ   VS. 不動パイレーツ [東京]2年連続5回目 ※昨年決勝戦と同日カード(1年前の試合評➡こちら)   ■第2試合10:25開始 [兵庫]2年連続4回目 北ナニワハヤテタイガース   VS. 牧野ジュニアーズ [奈良]初出場   ―TEAM01― ″整い野球″の不敗王者 関東勢4タテなるか!? 前年度優勝/大阪府  新家スターズ 【今大会の軌跡】 2回戦〇10対7山野(埼玉)...

【2回戦/駒沢/府中】″酷暑も超える熱戦”写真ハイライト

【2回戦/駒沢/府中】″酷暑も超える熱戦”...

2024.08.20

 高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは8月18日、5会場で2回戦を行い、ベスト16が出そろった。前年Vの大阪・新家スターズと、初出場の埼玉・山野ガッツとのゲームは、学童球史に残るようなタフな点取り合戦に。前年準Vの東京・不動パイレーツと、2020年準Vの愛知・北名古屋ドリームスは劇的な逆転勝ち。これらの″酷暑も超える″名勝負は追って特報予定だが、まずは2会場での4試合を写真ハイライトで。 (写真&取材=大久保克哉) ■2回戦/駒沢第1試合 人生初アーチが逆転決勝3ラン! [大阪]初3年連続4回目 新家スターズ  3205=10  2320=7 山野ガッツ [埼玉]初出場 山野は長打6本を含む2ケタ安打の猛打で、前年王者をあと一歩まで追い詰めた。3回裏には七番・高松咲太朗がレフトへ勝ち越しソロ(上)、一番・中井悠翔が3安打目となるタイムリー(下)で7対5に 新家は4回表、5対7から六番・黒田大貴が逆転3ラン(上)。何と「初めてのホームラン」(黒田)が、大熱戦の決勝打となった※この試合は大会後に特報予定   ■2回戦/駒沢第2試合 船橋、ハンパないって! 1回裏、船橋の四番・濱谷隆太がライトへ先制2ラン(上)。5回裏に三番・竹原煌翔がレフトへダメ押しソロ(下)で13点目 [鹿児島]3年ぶり5回目 国分小軟式野球スポーツ少年団  000000=0  201280=13 船橋フェニックス [東京]2年連続2回目 「新チーム始動時は9人。それからここまでよくやりました」と国分小の末松正純監督。唯一の出塁は5回二死からの四球で、一塁へガッツポーズして走った小原旭(上)は「兄が野球をしていたので1年前にサッカーから野球に来ました。今は野球が大好きです」   ■2回戦/府中第3試合 成長、ハンパないって!...

【1回戦/駒沢】写真ハイライトetc.

【1回戦/駒沢】写真ハイライトetc.

2024.08.19

 高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは8月17日、7会場での1回戦から競技スタート。船橋フェニックス(東京)、多賀少年野球クラブ(滋賀)、北名古屋ドリームス(愛知)ら金メダル候補は概ね勝利するなかで、2019年準Vの茎崎ファイターズが敗退した。レポートの第2弾は、駒沢公園硬式野球場での1回戦4試合の写真ハイライト。 (写真&取材=大久保克哉) ※好勝負やチームや選手の深掘りリポートは追ってお届けします ■1回戦/駒沢第1試合 いきなり大会第1号!? [新潟]初出場 岩室クラブジュニア  10000=1  09400=13 多賀少年野球クラブ [滋賀]7大会連続17回目 おそらく大会1号? 1回表、岩室の二番・田中優心が、高く舞い上がる中越え先制ソロ(上)。多賀も3回裏、八番・髙木陽旭がレフトへ豪快にソロアーチ(下)   多賀は先発の鈴木啓大朗(上)が2回1失点とゲームをつくり、2番手の春日飛雄馬がパーフェクト救援で逃げ切り。岩室は頼みの大エース・田中が右肩負傷で大苦戦も、「楽しさ」を求めてチームを創設した父・田中裕明監督は、必ず笑顔で選手たちを出迎えていた(下)   ■1回戦/駒沢第2試合 若鷹軍団の今宮父、見参! 別府大平の今宮美智雄監督(70歳=上) は、福岡ソフトバンクの名手・今宮健太内野手の実父。かつて息子もプレーしたチームを率いて34年目で全国初出場&1勝。二番の豊島大和(下)が1回に先制三塁打、さらに四番・山下啓太のスクイズで2点 [大分]初出場 別府大平山少年野球部  200000=2  001000=1 西城陽MVクラブ [京都]10年ぶり3回目 11球ファウル、14球目で四球。2回表、別府大平の九番・三浦大和(下)は二死走者なしから驚異的な粘りで四球をゲット。西城陽の先発・北川佑信(上)は根負けも、真っ向勝負が印象的。以降も本格派の4投手が好投した...

【開会式】ラストの夢舞台「神宮」に1053選手の足跡。51チーム大行進

【開会式】ラストの夢舞台「神宮」に1053...

2024.08.17

 高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは8月15日、明治神宮野球場で開会式を行った。2009年から続いてきた東京の固定開催も今夏がラスト。全国の学童球児の憧れでもある聖地「神宮」で、出場全51チームの1053人(登録)が入場行進した。台風の影響で競技の初日は順延となり、17日の7会場1回戦からスタートする。決勝は22日、神宮球場。果たして、このフィールドに戻ってくるファイナリストは――。 (写真=福地和男) 開催地・東京を代表して、レッドサンズの竹澤律志主将が歓迎の挨拶。今大会は都4位で出場を逃すも、気持ちのこもった言葉に場内から大きな拍手も    1053人の選手を代表し、福井・東郷ヤンチャーズの吉田颯志主将が宣誓(上)。始球式はBCL/栃木の投手で、お笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行氏が務めた(下) ■出場51チーム ※大会公式プログラム掲載順   しんげ 新家スターズ [前年度優勝/大阪]3年連続4回目   みやま 美山イーグルス [北海道北]初出場   いわみざわ 岩見沢学童野球クラブ [北海道南]初出場   ひらかわジュニア 平川Jrベースボールクラブ [青森]初出場   いのかわ 猪川野球クラブ...

【直前最終展望《後編》】右の山には東西2強。追うニューカマーは、しらさぎかビーストか!?

【直前最終展望《後編》】右の山には東西2強...

2024.08.14

 全国47都道府県の代表によるチャンピオンシップ。「小学生の甲子園」こと高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは、6日間で出場51チームから日本一が決するまでに計50試合が消化される。展望の後編では、巨大トーナメントの右側半分のブロックに焦点を当てていこう。 (写真&文=大久保克哉) ※展望前編(トーナメント右ブロック)➡こちら きた 北ナニワハヤテタイガース [兵庫/1965年創立] 出場=2年連続4回目 初出場=1988年/優勝 【全国スポ少交流】 出場=3回 優勝=1回/1988年※初出場 北ナニワは昨夏の全国でプレーした選手が4人。山口(写真)がエースとなり、北島とのバッテリーで兵庫大会を連覇している  トーナメントの右側の山は、予想がなかなか難しい。というのも、過去の上位進出チームがごく限られていることもあり、つかんでいる情報も左側の山に比べると確実に少なくて薄いのだ。  むろん、出場チームや組み合わせには何ら非はない。当メディアの体力不足でしかないのだが…。  過去の日本一チームは、兵庫・北ナニワハヤテタイガースのみ。1988年に全国スポーツ少年団軟式野球交流大会とのダブルで初出場初優勝を果たしているが、現在は予選の段階から2大会同時出場が不可能に(※詳しい経緯は「レジェンドインタビュー」➡こちら)。あとは両大会を通じても、メダルに輝いているのは2019年準Vの茨城・茎崎ファイターズと、前年2018年の宮崎・三股ブルースカイしかない。 みまた 三股ブルースカイ [宮崎/1996年創立] 出場=6年ぶり4回目 最高成績=3位/2018年 初出場=2009年/2回戦 【全国スポ少交流】 出場=なし  全体の半数を占める初出場組や、まだ上位進出のないチームにも優勝の可能性はある。ただし、直近15年での初出場初優勝は、2013年の兵庫・曽根青龍野球部と、翌14年の愛媛・和気軟式野球クラブのみ。また、曽根青龍は優勝2年前の2011年に全国スポ少交流で3位となっており、両大会を経験した選手も複数。つまり実質的には、2回目の夏の全国大会だった。  近年の東京の夏は40度に迫る酷暑が連日のように続く。最長で6日間の6連戦。これを最後まで勝ち切るのは、特に遠征と宿泊を伴う初出場組には相当に困難だと言えるだろう。 鬼門に不気味な相手...

【直前最終展望《前編》】V2へ走る不敗王者とその包囲網。抜け出すのは!?

【直前最終展望《前編》】V2へ走る不敗王者...

2024.08.13

「小学生の甲子園」こと高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは8月15日夕刻、東京・神宮球場での開会式から始まる。『学童野球メディア』からの特ダネのプレビューは、前・後編に分けての大展望で締めとしよう。なお、全47都道府県の予選や代表チームを取材できているわけではないので、あくまでも観戦や応援の参考のひとつに! (写真&文=大久保克哉) しんげ 新家スターズ [前年度優勝・大阪/1979年創立] 出場=3年連続4回目 最高成績=優勝/2023年 初出場=2017年/2回戦 【全国スポ少交流】 出場=3回 優勝=2回/2015、19年 1年前の初Vにも貢献した2人。山田(上)が投打の要、藤田主将(下)はチームを引っ張る  完全無欠の全勝ロード。新チーム始動から練習試合を含めて、まだ1敗もしていないという。昨年度のチャンピオン、大阪・新家スターズは今年も突き抜けている。  毎年の優勝チームには翌年の出場権が与えられ、都道府県予選も免除される。それでも新家はあえて、府予選に参加して2連覇を達成。ハイレベルな大阪の王者というプライドも携えて、夢舞台に登場となる。 「もちろん、やるからには今年も獲らせていただくつもりですけど、あまりにも優勝、優勝と言い過ぎても子どもたちのプレッシャーですから。大会の横断幕にもあるように『楽しんでいこうぜ!』という感じの声掛けもしているところです」  こう語る千代松剛史監督は、百獣の王を思わせるような眼光の勝負師だ。でもその実、謙虚で思慮深い。選手と1対1のコミュニケーションも密で、言動に説得力がある。激変する時代にあっても、学童球界をリードするべき大人のひとりであることは、当メディアの過去の記事や動画でもお分かりいただけるだろう。 実情も手の内も隠さず  走攻守すべてに抜かりのない、新家の″整い野球″は健在。昨年のV戦士のうち、藤田凰介主将と山田拓澄(「2024注目戦士」➡こちら)が残るのも心強い。 「打撃はどのチームも強烈でハマったら怖い。ウチは正直、長打力だけは去年のほうが上。投手は左の山田と、右が3枚。エースの山田はちょっと調子が悪いので、誰が軸かは本番次第」  千代松監督が実情をそこまで話せるのは、余裕からではない。「選手はあくまでも成長過程の小学生やし、この情報化社会で隠せることなんてない」との信念がある。7月末の高野山旗もそうだった。 ふなばし 船橋フェニックス [東京/1971年創立] 出場=2年連続2回目 最高成績=2回戦/2023年※初出場 【全国スポ少交流】...

【東京第1代表/2年連続2回目】船橋フェニックス

【東京第1代表/2年連続2回目】船橋フェニックス

2024.08.12

 ついに来るところまで来た! 昨秋の新人戦に始まり、6月の全国予選、7月の都知事杯まで。全国最多の1051チームが加盟する大東京にあって、船橋フェニックスは「無敗」を貫き通して、いよいよ最上のステージに立つ。自他ともに認める、優勝候補の大本命だ。 (写真&文=大久保克哉) ハイレベル&陽キャの"東京無双"。神宮ラストイヤーのトリで輝くか!? ふなばし 船橋フェニックス [東京/1971年創立] 出場=2年連続2回目 初出場=2023年(2回戦) ※以下、時系列の大会軌跡とリポート 【東京都新人戦】 1回戦〇9対7西伊興若潮ジュニア 2回戦〇4対3深川ジャイアンツ 3回戦〇19対2高島エイト 4回戦〇19対4オール麻布 準々決〇9対1高島エイト 準決勝〇10対5東村山3RISE 決 勝〇4対1旗の台クラブ ※2023年10月 決勝戦リポート➡こちら  【京葉首都圏江戸川大会】 1回戦〇10対1大雲寺スターズ 2回戦〇6対5深川ジャイアンツ 3回戦〇10対0中央バンディーズ 準々決〇2対1山野レッドイーグルス 準決勝〇3対0鶴巻ジャガーズ 決 勝〇9対2清新ハンターズ...

【千葉県代表/2年ぶり5回目】豊上ジュニアーズ

【千葉県代表/2年ぶり5回目】豊上ジュニアーズ

2024.08.05

“髙野マジック”炸裂! 千葉の盟主ともいえる豊上ジュニアーズは、髙野範哉監督がトップチームの指揮官に復帰して即、2年ぶり5回目の全国出場を決めた。拮抗したゲームでは一死までに三塁を奪い、手堅く得点する。全国大会でもおなじみのスタイルは今年、やや影を潜めている。それも今の戦力とチームカラーから、名将が導き出した答えのようだ。 (写真&文=大久保克哉) ※千葉大会決勝リポート➡こちら 天真爛漫と髙野”マジック”の化学反応 とよがみ 豊上ジュニアーズ [千葉/1978年創立] 出場=2年ぶり5回目 初出場=2016年 最高成績=3位/2019、21年 【千葉大会の軌跡】 1回戦〇17対2匝瑳東BBC 2回戦〇6対4磯辺シャークス 準決勝〇13対5新浦安ドリームスター 決 勝〇2対1常盤平ボーイズ 「えっ! やってないの?! ダメだろ、オマエ! なんで?! やっておけって、言っておいたじゃない!」  全国出場をかけた県決勝戦の開始まで、もう5分あるかないか。ただでさえ独特の緊張感が漂う中で、豊上ジュニアーズのベンチは指揮官の荒い口調と嘆き節で、にわかに凍り付いた。 これもマジック?  1年の中でも最も大事と思われる1日の、絶対に負けられない戦いの間際である。真相はどうあれ、この期に及んでのドタバタは、決して褒められたものではない。選手たちに動揺が走り、パフォーマンスにも影響しかねない。  ところが、そうならないあたりも“髙野マジック”なのだろう。間もなく始まった大一番で、マイナスの影響を見て取ることはなかった。むしろ、予想以上の好結果を生む一因にもなった。 県決勝の1回裏、四番・加藤が逆方向へ先制三塁打を放つ  1回裏に先制三塁打を放った四番・加藤朝陽。実はこの一塁手兼投手が、冒頭で叱られた張本人だった。髙野範哉監督は試合後、開始直前の言動は意図的でなかったことを打ち明けた上で、こう証言している。 「あれは本気で叱りました。加藤はちょっと太めで、土曜日の午前中(※決勝は土曜9時開始)は特に動きが鈍い。ピッチャーでもストライクが入らないんですよ。だから『試合前のピッチング練習を多めにやっておけよ!』と言っておいたのに、本人に確認したら『やってない』って(笑)」  命に背いた形の加藤もきっと、指示を忘れていたわけではない。前夜はチームで21時あたりまで室内練習場で打ち込み、当日朝も6時集合でバットを軽く振って実打もしてきたという。その中で彼なりに、自身のコンディションなども踏まえた判断があったのだろう。しかし、あのタイミングと指揮官の勢いからして、弁明する余地はなかった。 1回表、ファウルフライに飛び込む加藤と捕手・岡田主将。捕球ならずもこの後、顔を見合わせてニコニコ 「もういいや! みたいな感じで試合に入りました(笑)」...

【茨城県代表/2年連続11回目】茎崎ファイターズ

【茨城県代表/2年連続11回目】茎崎ファイターズ

2024.07.27

“関東の雄”から“ニッポンの雄”へ。11回目の今夏の夢舞台が、昇華のタイミングなのかもしれない。過去に銀メダルが1個、銅メダルが3個。残る「黄金のメダル」への本気度が、今年は手練れの首脳陣からもうかがえる。客観的に見ても、文句なしの優勝候補だ。とりわけ、2024年を迎えてからの進化と躍進は目覚ましいものがある。 (写真&文=大久保克哉) ※茨城大会決勝リポート➡こちら 時は来た!! 関東から“ニッポンの雄”へ飛翔が始まる くきざき 茎崎ファイターズ [茨城/1979年創立] 出場=2年連続11回目 初出場=2001年 最高成績=準優勝/2019年 【全国スポ少交流】 出場=2回  県決勝は6年生10人が全員出場。「めっちゃ緊張しましたけど、めっちゃ出られてうれしかったです。茎崎はベンチもみんなサポートできて、試合に出ている人たちも優しいです」(代打出場の西山光=写真上) 【県大会の軌跡】 1回戦〇9対6波崎ジュニアーズ 2回戦〇10対0古河プレーボール 3回戦〇10対3オール東海ジュニア 準決勝〇7対0上辺見ファイターズ 決 勝〇9対1水戸レイズ “昇り龍”と“レベチ”の如く  前年に続く全国出場。これが決まるまでは決して外には漏れてこなかったが、吉田祐司監督は新チームの始動当初から、5・6年生たちにこう言い続けてきたという。 「今までは県大会がスタートラインだったけど、オマエたちは全国大会がスタートラインだよ!」  掛け値なしに、それだけの潜在能力があったということだ。そしてそれを着実にチーム力へと落とし込みながら、結果を出してきた。  どれだけ、それが難しいことか。キャリアの長い学童指導者ほど、よくわかるところだろう。  4年生の代では輝かしい実績を残しながら、2年後の6年時は泣かず飛ばすというチームも少なくない。あるいは5年時までの「経験」という貯金にものを言わせて、秋の新人戦は突っ走るも、やがて息切れ。そして年明けからはライバルの後塵を拝する、というケースもありがちだ。...

【東京都第2代表/2年連続5回目】不動パイレーツ

【東京都第2代表/2年連続5回目】不動パイレーツ

2024.07.19

 真夏の全国大会でも戦うごとに成長を感じさせながら、5つ勝って東京勢初のファイナリストとなったのが1年前。不動パイレーツが今夏も、難関の夢舞台に戻ってくる。奇しくも、新人戦の都3回戦敗退と全日本学童の都大会準Vは、前年と同じ足跡。今年もやはり、大会ごとに進化と勝負強さを示してきており、期待せずにはいられなくなる。 (写真&文=大久保克哉) ※東京大会決勝リポート➡こちら ふどう 不動パイレーツ [東京/1976年創立] 出場=2年連続5回目 初出場=2016年 最高成績=準優勝/2023年 【全国スポ少交流】 出場=なし 【都大会の軌跡】 2回戦〇14対2立川クラブ 3回戦〇10対5Golden age 準々決〇10対7レッドサンズ 準決勝〇7対6しらさぎ 決 勝●6対9船橋フェニックス 「小学生の甲子園」で銀メダルに輝いたからといって、恵まれぬ野球環境が劇的に好転することはないのだろう。ましてそこは東京23区の人気のエリア。社会も人も「少年野球」を中心に回っているわけではない。  不動パイレーツが拠点とする小学校の校庭を使える時間は、1年前と相変わらず、原則として土日の計4時間のみ。都心では決して珍しくないが、全国区のチームには都外からも練習試合の申し込みが絶えない。  現代表の深井利彦監督が率いていた2016年に、全日本学童初出場で3回戦まで進出。19年と21年は東京王者として同大会に出場しており、今夏で5回目の夢舞台となる。  平日練習はなく、過ごし方は個々に委ねられている。だが、何もせずにレギュラーを張れるような、ぬるま湯の体質ではない。週末は主に遠征で対外試合をこなしながら、各々の現在地を把握し、戦術の理解と精度を高めながら一体感が醸成されていく。 2023年は全国準優勝。ベンチ入りした11人の5年生のうち、難波がレギュラーとして活躍した(写真/福地和男)  深井監督が代表となって以降は、父親の学年監督が選手と一緒に繰り上がるシステムに。昨年は慶大出身の永井丈史監督が「エンジョイ・ベースボール」で大きな花を咲かせた(リポート➡こちら)。今年は指導歴8年、鎌瀬清正主将の父・慎吾監督が率いて4年目のチームとなる。 異様な落ち着きと強み  前年から残るレギュラーは、左スラッガーの難波壱だけ。それでも、夏に向けて右肩上がりの成長を続けているのは、昨年とよく似ている点だ。...

【東京都第3代表/初出場】しらさぎ

【東京都第3代表/初出場】しらさぎ

2024.07.12

 野球のスタイルも育成のシステムも、ここまで尖りながら至難の全国大会に出てくるチームは、そうそうない。大人が子どもを駒のように扱う勝利至上主義にも見えて、一方では個々の身体づくりを最優先にした年間の取り組みと、全学年を通じた段階的な育成がある。そしてその土台の上に、徹底的かつ高精度なバントと走塁で1点を積み重ねる野球が成り立っていた。創立から47年、選手は今日も1学年9人以上。固有の色を守り抜くことで到達した初の夢舞台で、さらなる花を咲かせるか――。 (写真&文=大久保克哉) ※東京大会3位決定戦リポート➡こちら “三度目の正直”で初の夢舞台。独自のカラーで旋風なるか!? [江戸川区] しらさぎ  【都大会の軌跡】 1回戦〇10対0日の出ジュニア 2回戦〇11対1高円寺メイト 3回戦〇14対0葛飾アニマルズ 準々決〇7対2国立ヤングスワローズ 準決勝●6対7不動パイレーツ 3位決〇8対0旗の台クラブ  6月15日、午前8時ジャスト。府中市民球場のフィールドに、しらさぎ戦士24人のよくそろった声が反響した。 「お願いします!」  東京大会準々決勝の惜敗から1週間。3枚目の全国切符をかけた3位決定戦の日は、方波見大晴主将の号令で脱帽しての挨拶から始まった(=ページ最上部写真)。  いつどの公式戦でも、おそらく繰り返されているだろう、厳かなスタート。プレーボールまで60分、敵軍はまだ現れていないが、三塁ベンチを背に横一列に並んだ面々は、早くもほとばしるようなエネルギーを発している。そして統制はそのままに、ウォームアップと練習が始まった。 「先週の準々決勝で負けちゃってから、みんなでまた練習に取り組んで立ち直って、今日は朝イチからしっかりと入れたと思います」(方波見主将)  1977年創立のチームにとっては、3回目の3位決定戦だった。最初の2016年は不動パイレーツに5対8で、一昨年の2022年は高島エイトに1対2で、それぞれ敗れている。  迎えたこの一戦は、徹頭徹尾のマイスタイルで強敵を撃破。ついに「小学生の甲子園」の扉をこじ開けた。“三度目の正直”というよりは“頑の勝利”のほうが、表現として適切かもしれない。 成功率10割に脱帽  攻め手はごくシンプルだった。1アウトまでに一塁に走者が出ればバント。さらに1アウトまでに、三塁に走者が進んでもバント。打順も関係なく、判で押したように犠打で1点を奪いにいった。 「ウチはスーパースターはいないので、全員で1点を取る。走塁とバントで1点ずつ、これがしらさぎ野球です。江戸川大会から都大会の序盤までは、前半は1点ずつ、後半は打たせるという作戦でいけました」(坂野康弘監督)  それも今に始まったことではないという。現6年生と5年生たちは下級生時代から、同様の取り口で大きな成果を挙げてきた。4年生以下の東京王者を決める「マクドナルド・ジュニアチャンピオンシップ」でも、それぞれ優勝(2連覇)している。 息子が卒団後も指導者としてチームに残って8年になる坂野監督  いわば筋金入りの野球スタイルだ。対戦相手は当然、対策をしてくる。今回の相手の指揮官は戦前、「ウチがどれだけ、バント処理ができるかがカギですね」と話していた。...

【埼玉県代表/初出場】山野ガッツ

【埼玉県代表/初出場】山野ガッツ

2024.07.05

 国内最大級のショッピングモール「レイクタウン」のある埼玉県の越谷市に今夏、日本一の学童チームが誕生するかもしれない。直近の初出場初優勝は10年前。酷暑下で最多6連戦となる夢舞台で、面食らう初出場組は多い。しかし、山野ガッツには6年生が15人もいて、県大会では全員がプレー。都内の各会場へは日帰りも可能で、長期の集団生活で疲弊する心配もなさそう。戦力も環境も整っている上に、「10点取られたら11点取り返す」と一貫したスタイルで、過去の苦杯もミラクルの原動力になっているようだ。 ※県決勝戦リポート➡こちら (写真&文=大久保克哉) 6試合99得点の猛打で、過去の悪夢や無念もきれいに一掃 さんや 山野ガッツ 【埼玉県大会の軌跡】 1回戦〇26対0本庄リトルパワーズ 2回戦〇15対3草加ボーイズ 3回戦〇23対1長瀞ジャイアンツ 準々決〇14対2オール上尾 準決勝〇9対5吉川ウイングス 決 勝〇12対3東松山スポーツ少年団 2022年にはポップ杯全国ファイナルに初めて導いた瀬端監督。ついに全日本学童初出場も決めて「やっぱり、ちょっと違いますね。全国の小学生の第一目標の大会ですから」  東京近郊のニュータウン。最寄りに日本最大級のショッピングモールまであるのだから、頭数の少なさで困ることはまずない。山野ガッツは学年単位で活動できる、関東有数のマンモスチームだ。  4年生の秋以降の約3年間は、父親ではない専任の監督とともに1年ずつ繰り上がる。つまり、3人の監督が3年周期でローテーションするシステム。いずれも、選手主体の野球を展開する、物腰も穏やかな指揮官たちだ。  昨年の6年生チームは、三ツ畑竜一監督が率いていた。自主対戦形式のポップアスリートカップを勝ち抜いて、関東代表を決める最終予選まで進出。しかし、本戦の全国ファイナルトーナメント(14チーム)には2歩、届かなかった。  その前年の2022年に、ポップ杯の全国ファイナルに初出場を果たしたのが瀬端哲也監督。そして同大会終了後に引き継いだのが、現在の6年生たちだった。 昨秋の県新人戦決勝は両軍で19四死球、まともな勝負とならずに敗北で涙も(2023年9月17日、東松山野球場) 「ウチは5点取られたら6点取るというチーム。勝負は来年の全国予選ですけど、越谷市の予選を勝ち抜くのがまた大変なんです」  昨秋にこう話していた指揮官も選手たちも、一様に明るくて、活気があった。“未来モンスター”のような秀でたタレントは不在でも、総じて個々のスキルが相当に高い。新人戦は県で準優勝。しかし、決勝は両軍で計19四死球というよもやの大乱戦で、すこぶる後味のよろしくない不完全燃焼が否めなかった(リポート➡こちら)。  その一戦の、あまりにも狭かったストライクゾーンを前に、先発した伊藤大晴はマウンドで何度かヒザに手を置いた。被安打0なのに、6四死球の5失点で初回を終えると、たまらずに号泣。指揮官も言いたいことは山とあっただろうに、前途のある小学生たちを前に模範たる大人の対応に終始したのも印象的だった。 「(球審のジャッジは)言っても仕方ない。相手も条件は一緒で、ウチがそれに対応できなかっただけ」(瀬端監督) 天災ならぬ「運災」も  そんな指揮官には、実はもっと苦い記憶がある。5年前の2019年の全日本学童の県予選だ。  埼玉県は全国でもおそらく唯一、地域選抜チームの参加が古くから認めらており、県大会の半数以上はその選抜軍が占める。単独チームがこれを勝ち抜くのは至難だが、瀬端監督率いる山野は最終日まで勝ち進んだ。...

【プレビュー❶ここだけの特ダネ】出場全51チームの顔ぶれと全国実績

【プレビュー❶ここだけの特ダネ】出場全51...

2024.07.04

 高円宮賜杯第44回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント(以下、全日本学童)の開幕まで約40日。『学童野球メディア』は、今年も開幕前から閉幕後まで特報します。まずは6月29日に出そろった、出場全51チームの顔ぶれと実績から。どれも高校野球の甲子園なら当たり前の情報ですが、「小学生の甲子園」では、きっとここだけ! プレビュー編では、予選の模様や過去の記録や話題、名将たちのコメントなども交えてシリーズでお伝えしていきます。 (写真&文=大久保克哉) ※大会の歴史や方式などは2023年プレビュー❶参照➡こちら 『聖地』神宮ラストイヤー  今夏の夢舞台は、昨年より10日遅い開幕となる。8月15日の17時から東京の明治神宮野球場(神宮球場)で開会式を行い、翌16日から21日までの6日間で51チームによる巨大トーナメントを消化し、日本一を決する。  2009年から続いてきた東京の固定開催も、今年がラストイヤー。学生野球の聖地にして東京ヤクルトスワローズの本拠地でもある「神宮球場での入場行進」が、全国の野球少年少女の大きな夢だったが、来年度からはシンボル的な球場がなくなる。2021年は東京五輪開催に伴い、新潟県で開催されたが、来年度は再び同県での開催が決まっている。  今夏の会場は例年通り7会場。昨年の稲城中央公園野球場がなくなり、スリーボンドベースボールパーク上柚木(上柚木公園野球場)が新たに加わっている。 昨年の決勝は大田スタジアムで行われた。全会場に70mの特設フェンスがあり、一般用の複合型バット『レガシー』などが来年度から禁止となるため、サク越え本塁打の数も今夏がピークになるかもしれない  組み合わせ抽選は7月18日。ではこれに先駆けて、出場チームの顔ぶれを見ていこう。6月29日に秋田県と佐賀県で代表が決まり、全51チームが出そろった。  今日では「全国」と称する大会が多数あるが、40年以上前に始まった由緒のあるメジャーな全国大会は夏のふたつしかない。この全日本学童大会と、日本スポーツ協会(JSPO)が主催する全国スポーツ少年団軟式野球交流大会(以降、全国スポ少交流)だ。そこで一覧表には、両大会の出場実績を入れている。  全日本軟式野球連盟(JSBB)に加盟する学童チームは、9842(2022年度)。その全チームにほぼ公平に予選参加資格があり、47都道府県での予選がほぼ同様に行われて、優勝チームが出場する真のチャンピオンシップとなる「全国大会」は、今も昔も全日本学童大会のみ。また予選参加規模は、日本のスポーツ界でおそらく第1位(団体競技)。本家「甲子園」の高校硬式野球部加盟数が3798校だから、予選の競争倍率は倍以上という計算になる。 最も直近の初出場初優勝は、10年前(2014年)の愛媛・和気軟式野球クラブ。当時は全国に1万3000以上の加盟チームがあった  予選が超難関であるゆえ、初出場が半数程度あるのも例年の特長で、今年も約半分の25チームが初出場。これは昨年とまったく同数で、2年前の2022年は31チームあった。  地域による偏りはほぼ見られないが、北信越地方は昨年同様に初顔が多い。2022年初優勝の石川・中条ブルーインパルスは、今年は最初の地区予選敗退で県大会に出られなかったものの、全国スポ少交流の予選では県大会を制し、北信越大会出場を決めている。 過去の王者は今年も4チーム  過去に優勝の実績があるのは4チーム。この数字も不思議と、3年前から同数で推移している。  昨夏、圧倒的な内容で初優勝を飾った新家スターズ(大阪)は、「前年度優勝枠」での出場となる。予選は免除されているのだが、あえて今年も府予選に参加して堂々の優勝。それだけでも連覇への意気込みの高さがうかがえる。強面ながら柔軟で謙虚な千代松剛史監督は、2015年と19年にはチームを全国スポ少交流優勝にも導いている。 大阪・新家スターズの千代松監督インタビュー➡こちら  4チームの中で最も古い優勝は、北ナニワハヤテタイガース(兵庫)の1988年。当時は同一年に全国スポ少交流とのダブル出場も可能で、前年1987年の亀川野球スポーツ少年団(大分)に続いて、史上2チーム目にして最後のW優勝を遂げている。創設者にして現在もチームを率いる石橋孝志監督(=下写真)は、1950年生まれの74歳。昨夏も3回戦まで進出、炎天下でも元気な姿を見せていた。  複数回の優勝は多賀少年野球クラブ(滋賀)のみ。今や「学童野球」の枠も超えて認知されてきている辻正人監督が、“卒・スポ根”を標ぼうして2018年と19年に大会2連覇。2016年には全国スポ少交流で初優勝、その翌年2017年から何と7大会連続で全日本学童に出場、これは史上最多タイの連続出場記録となる。また、出場17回も今大会では最多だ。 滋賀・多賀少年野球クラブの辻監督インタビュー➡こちら  東京固定開催元年の2009年、多賀少年野球クラブを決勝で破り(2対1)、初優勝を飾ったのが石川県の西南部サンボーイズ。当時の指導陣はもういないが、OBでもある北川貴昌監督が6年生4人の若いチームを率いて、東京ラストイヤーに神宮の開会式に戻ってくる。最後に出場したのは2010年(前年度優勝枠)で、初戦の2回戦で敗退している。 OBの北川監督(下)率いる石川・西南部サンボーイズは14年ぶり7回目出場の名門。神宮元年に続いて最終年でも覇権をつかむか  全国スポ少交流で、最多タイ3回の優勝を誇る小名浜少年野球教室(福島)は、3年ぶりに全日本学童の切符を手にした。予選の県決勝では“永遠の好敵手”にして全日本学童最多出場記録(23回)を誇る、常磐軟式野球スポーツ少年団を下してきている。温かみのある磐城弁が独特の小和口有久監督は、1948年生まれの満76歳。北ナニワハヤテの石橋監督よりも年長、おそらく今大会でも最年長の指揮官になるだろう。 福島・小名浜少年野球教室の小和口監督。好評企画『監督リレートーク』登場回➡こちら  最長ブランク、実に22年ぶりの出場(2回目)となるのは、群馬県の桃木フェニックスだ。2002年に初出場で8強まで進出、当時は背番号28のコーチだった貫井徹也監督が、現チームを率いている。2大大会を通じての最長ブランクは、富山県の黒部中央バッファローズ。こちらは1984年の全国スポ少交流以来、実に40年ぶりの全国が今夏初出場の全日本学童となる。...

【特報最終版】2023夏の夢舞台を総括

【特報最終版】2023夏の夢舞台を総括

2023.09.21

 1981年の第1回大会から数えて43回目の今夏。高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメントは、大阪・新家スターズの初優勝で閉幕した。開幕1カ月前から、およそ2カ月半にわたって特報してきた当コーナーもこれがラスト。記録面を含めて大会を総括し、また来年の夢舞台に備えたい。高校野球の甲子園の比ではない難関。学童野球の全国出場は「一生の宝」にもなり得る栄誉である。 (写真・文=大久保克哉) ※個人の記録一覧は最下部、タップで拡大できます 10年前と変わらぬ構図  新家スターズが全国の登録9842チーム(2022年度)の頂点に輝いた。1回戦から決勝まで全6試合、大きなビハインドや厳しい劣勢がないままの戴冠だった。大阪勢の優勝は2年ぶり13回目。こちらもぶっちぎりの記録となる。 「学童野球の監督は、どんなに勝っても謙虚に、謙虚に、ですわ」  新家・千代松剛史監督は冗談めかして笑ったが、戦術面も含めて攻守走のすべてが鍛え抜かれていて穴がなかった。とりわけ光ったのが、どの打順からでも得点できる攻撃力だ。 初Vの新家(大阪)は6試合で21盗塁。走者は梅本陽翔。タッチする遊撃手は大会3本塁打の不動(東京)の小原快斗  力の差があれば、打ちまくる。戦力拮抗なら、打って出ると犠打ではなく、足技で無死または一死三塁の状況をつくり、確実に1点を重ねていく。こうした野球は全国大会では珍しくないが、今夏は太刀打ちできる相手がいなかった。  ベスト8のうち5チーム、ベスト4のうち3チームまでを関東勢が占めた。これは前年を超える史上最高の「大躍進」だった。しかし、関西勢を中心とする手練れの野球を凌駕した、とはお世辞にも言えない。  準優勝の不動パイレーツ(東京第2代表)は、今大会最多の6本塁打。3位のレッドサンズ(東京)の藤森一生は、最速124㎞をマークするなど突出した個の能力があった。しかし、王者の地盤を揺るがすにはいたらず。むしろ、戦術面や試合運びの点で差を見せつけられてしまった。 レッド(東京)の124㎞左腕・藤森一生は銅メダルの原動力になった  こうした西と東の構図や格差は、少なくとも10年前から大きく変わっていないのが実情だろう。今夏はまた、戦術にも長ける有力チームが序盤戦で消えたことが、新家独走の一因になったとも思われる。  多賀少年野球クラブ(滋賀)、常磐軟式野球スポーツ少年団(福島)、中条ブルーインパルス(石川)と、過去のV経験組がそろって2回戦で敗退してしまった。 2021年準Vの北名古屋(愛知)は順調に初戦突破も、続く2回戦で涙  今年の常磐は伝統の堅守に打力も備えていた。0対1で敗れた2回戦では、終盤に同点スクイズもありえた場面で強攻も無得点。「今年はバッティングをがんばってきたので、仕留めてくれると信じていました」と天井正之監督は潔かった。  好機を迎えてのタイムで、呼び寄せた打者・走者と交わした笑顔が信頼を物語っているようだった(下写真)。期待に応えられなかった6年生たちも、野球人生はまだこれからだ。 合併や統合から全国へ  今大会からベンチ入り登録選手の数が25人(従来20人)に増えたが、この枠を満たしたのは6チーム(11.8%)に過ぎなかった。また、6年生が9人以上いたのは25チーム(49%)で過半数割れと、選手減少の余波がこうしたところにも見て取れた。 大会最少の選手13人で3回戦まで進出した香川・丸亀城東。写真右から日本貴浩監督(右)、正捕手の長男・廉人(中央)、3年生で正遊撃手の次男・賢伸(左)  山梨県は小学校単位のチーム編成が伝統だが、立ち行かない地域も出ているという。甲斐市では約半数の5校(チーム)が統合して「甲斐ジュニアベースボールクラブ」として3年前に船出。今夏は6年生18人(大会最多)で全国8強まで躍進した。「試合中はどんどん会話をしなさいと言っています」と小澤大生監督。指示待ちではない選手たちのハイスキルが光り、2回戦では2021年準Vの北名古屋ドリームス(愛知)も下してみせた。 50m走7秒フラット。甲斐(山梨)の九番・向井光来は、犠打もヒットにしてしまうスピードが際立った  「笑顔でやらなければ、良いプレーもできない」と和田久雄監督が語る菱・境野フューチャーズ(群馬)は、子ども会が母体の2チームが2011年に合併して誕生。「子どもたちの未来が明るく輝くように」(同監督)と、3年前から現チーム名に。全国初陣では8安打11盗塁(三盗3)の10得点で勝利。「二盗はサインです。凡フライでも二塁まで全力走とか、走塁面は力を入れてきました」と、成果が表れた内容に指揮官も満ち足りた表情で語った。 53や88など、菱・境野の選手は背番号も好きな番号を自由に  長野県の野沢浅間キングス(下写真)は、全国出場実績のある浅間スポーツ少年団と野沢少年野球クラブとの統合初年度で、いきなり全国1勝。6年生14人で鍛えられた外野守備やスイング力、戸塚大介監督の落ち着いた采配も印象的だった。 「ウチは子どもに考えさせる野球をふだんからやっているので、大人がああだこうだ言わなくても、きっかけさえ与えてあげればできる子たちなんです」(同監督)...

【インサイド・ルポ❸壮絶バトル】逆転サヨナラ弾と九州男児の誉れ

【インサイド・ルポ❸壮絶バトル】逆転サヨナ...

2023.09.20

 巨大トーナメント序盤戦の壮絶なバトル。ここを順当に勝ち抜き、ベスト4にもほぼ手を掛けながら、一気に奈落の底へ落ちていったチームがある。でも、その1敗と引き換えに、彼らは永遠の誇りを手にしたのかもしれない。インサイド・ルポ❷の続編をお届けしよう。 (写真・文=大久保克哉) ※前編のインサイド・ルポ❷→こちら   ―2011JSC Champion ― 6年生9人の精鋭と名将 メダルにも劣らぬ「誇り」 [長崎]6年ぶり4回目 はさみこうのす 波佐見鴻ノ巣少年野球クラブ 【戦いの軌跡】 2回戦〇13対3横堀(秋田) 3回戦〇8対2越前(福井) 準々決●1対2八日市場(千葉)  マナーとモラルの問題  攻撃も守備も関係ないし、敵も味方もない。マウンドの投手がセットに入ると、ベンチ上のスタンドが一斉に静まる。鳴り物も手拍子も声も、ストップする応援席があった。 「ウチが攻撃のときは選手が打席に入るまでは急いで一生懸命に応援して、あとはプレーに集中してもらおう、ということです」  意図を説明してくれたのは長崎から6年ぶりに出場してきた波佐見鴻ノ巣少年野球クラブの父母会、宮﨑正和会長だ。今年は千葉県予選でもそういう取り組みが徹底されたが、九州の長崎県でも同様の応援マナーが推奨され、広まっているという。  今夏の全国大会はどうだったか。応援に関する規制や注意は、特に見聞きしなかった。そうした中で、攻撃の応援というよりは守る相手チームの小学生を威嚇するかのように、大の男たちがダミ声やドラ声を次々と発する応援席も散見された。だからといって、波佐見の父母会はやり返したり、応援スタイルを変えることはなかった。 自軍の攻撃中も打者がバットを構えるあたりから、一切の音を発しなかった波佐見の応援席。「プレーに集中してもらおう、と」(宮﨑父母会長) 「結局はマナーとかモラルの問題ですよね。県大会だからやらない、全国大会は禁止されてないからやる、とかそういうことではなくて。賛否もあると思いますけど、ウチはとにかく、ピッチャーとバッターに目の前の勝負に集中してほしい、ということです」  私見をクールに語ったのは、波佐見の村川和法監督だ。現在の応援スタイルはこの初夏からで、試合中に審判団から「投手がモーションに入ったら、もう少し静かにしてください」と注意されたのがきっかけだという。 「練習をがんばってきた子どもたちが懸命に戦っているのに、そんなこと(応援)で注意されたり、試合が止まるなんてイヤですもんね。応援マナーについては、父母会のみなさんに厳しく言っています」 焼き物と野球の町から...

【インサイド・ルポ❷壮絶バトル】マンガも超えた!?大逆転劇と必然

【インサイド・ルポ❷壮絶バトル】マンガも超...

2023.09.15

 真夏の6日間で消化する、51チームによる巨大トーナメント。序盤戦は例年、激しいつぶし合いとなる。心身がフレッシュな分だけ、互いに一歩も譲らぬ好勝負も生まれやすい。今夏はさらに、マンガでも描き切れないような大逆転劇、筋書きのないドラマがあった。主人公は1年前、チーム内のコロナ感染で無念の棄権を経験している6年生たちだった。 (写真&文=大久保克哉) ―From 2022 Best8 ― 12点取られて13点取る! 空前の同点劇にサヨナラ [福井]2年連続2回目 えちぜん 越前ニューヒーローズ 【戦いの軌跡】 1回戦〇13対12伊勢田(京都) 2回戦〇2対1中条(石川) 3回戦●2対8波佐見(長崎) 越前の全国初陣は1年前の2回戦(神宮)。12対11で勝利している  10点取られたら、11点取り返す――。言うのは簡単。そうした野球を理想に掲げるチームは、カテゴリーや地域を問わず、あちこちにある。またそういうチームにあっては「積極的にいけよ!」といった怒声もよく聞かれる。  一方、そうした野球を限りなく体現した学童チームがあった。福井県から2年連続で全日本学童大会に出場してきた越前ニューヒーローズだ。彼らは何かにつけて特異だった。 「好球必打」の極致  超アグレッシブな「好球必打」が真骨頂。昨夏は初球ストライクをフルスイングしての3連続二塁打もあった。あっけなく数球で終わる攻撃もあったが、2人目3人目の打者に「状況を考えて、少しは見たり粘れよ!」といった、指導陣の本末転倒な声掛けは皆無。当時、5年生で六番を打っていた日比野虎徹はこう話していた。 「甘いボールが来たら、(0ストライク)3ボールからでも打っていいと監督に言われています」  そうして2勝を挙げてベスト8まで進んだ1年前だが、人類を蝕んだ新型コロナウイルスと感染防止のルールには抗えなかった。準々決勝の朝に一部選手のウイルス感染が判明し、不戦敗に(※関連記事→こちら)。 「感染は誰のせいでもない。でも、最後の勝ち負けまで、子どもらに味わわせてやれんかったのが悔しいです」(田中智行監督) 三番・中橋は1年前(写真上右)の3回戦で決勝の逆転3ラン(写真左は今夏)。四番・米澤は1年前の2回戦で満塁アーチ(写真下左)を放っていた(写真右は今夏)  当時の6年生2人は卒団したものの、残るメンバーは1年の間にまた著しく成長し、夏の神宮(開会式)に戻ってきた。2年生2人を入れて総勢16人。スタメンの4人は下級生で、うち1人は3年生と、戦力の構成も前年に近い。それでも主将の山本颯真捕手に、中橋開地と米澤翔夢の左右大砲コンビは、6年生世代を代表するようなタレントとなっていた。  その彼らのすさまじい打撃力を、どこよりも知っていたのが昨夏の王者、中条ブルーインパルス(石川)だった。隣県のチーム同士で元から交流があり、新チームになってからも何度か手合わせをしてきた。直近の戦いは結果としてノーガードの打ち合いの末に、越前が勝利。...

【インサイド・ルポ❶】初出場組、それぞれの「最後の夏」

【インサイド・ルポ❶】初出場組、それぞれの...

2023.09.12

 学童野球では、息子や娘とともにチームを卒業する父親監督が圧倒的に多い。一方、この夏を自ら最後の全国采配と決めていた名将がいて、20年以上続いてきた組織の消滅を前に夢舞台で1勝を挙げたチームもある。奇しくも初出場組の、それぞれの「最後の夏」を追った。 (写真&文=大久保克哉) ―The Last Summer❶ ― 恩師に白星は贈れずも、 心に響いた8人の想い [石川]初出場 たちの 館野学童野球クラブ 【戦いの軌跡】 1回戦●2対8新家(大阪) 全国1回戦を戦い終えたナインは指揮官と一人ひとりハイタッチしてダグアウトへ  学童女子の全国大会、NPBガールズトーナメントは今夏、石川県が舞台となった。同県では2月から女子選抜チーム「輝プリンセス」のメンバーを公募。野々市市の館野学童野球クラブには、昨秋の県新人戦準Vにも貢献したマドンナ左腕の山本愛葉がいたが、3月の時点で「館野のみんなと全国(全日本学童大会)に出ることしか考えていません」と、選抜入りをきっぱりと否定した。 切なる想いを共有  その山本ら6年生8人は、新人戦の県決勝で敗れた中条ブルーインパルス(前年度優勝枠で全日本学童出場)へのリベンジの想いを募らせていた。「夏の全国大会に出て、中条に勝って優勝したい!」と語ったのは、高田慶吾主将だけではなかった。 「監督に全国でも勝利をプレゼントしたい」。チーム初安打に2回まで好投した山本だが想い叶わず、涙に暮れた  そして6月半ば、全日本学童の石川大会を制して全国切符を手中に。チームは2016年の全国スポーツ少年団軟式野球交流大会で準優勝という実績があるが、全日本学童出場は今夏が初。意気上がる選手たちだったがその後、指揮官からの突然の告白で静まり返ってしまう。  すでにスタッフ間では決定事項となっており、一部の保護者らも知るところとなっていたが、約20年のコーチを経て2016年からチームを率いてきた山本義明監督が「今年度限りの退任」を選手に発表したのだ。 「ピックリしました。良いところは褒めてくれて、悪かったらそこを教えてくださる。優しい監督です」(中村颯真捕手) 「悲しかった! これまでいろいろお世話になってきた山本監督に、みんなで全国でも勝利をプレゼントしたいと思います」(山本) さらなる発奮材料  さらなる発奮材料を得た6年生たちは、夏休みに入ると平日は20時近くまで、合同で自主練習をするように。7月末に県内で開催された、NPBガールズトーナメント(輝プリンセスはベスト8)には誰も足を運ばなかったという。  迎えた8月初旬の東京、伝統の全国大会1回戦。相手は優勝候補の新家スターズ(大阪)だったが、1回表に二番・山本が100㎞を中前打するなど、誰も気後れしていなかった。 「相手がどこだろうと、絶対に気持ちで負けずに絶対に勝とう! とみんなで話していました」(高田主将)...