リポート

【ピックアップ/吉川市近隣大会より】「静」と「動」。対極の監督が手にしたもの

【ピックアップ/吉川市近隣大会より】「静」...

2023.03.28

 目の前の結果でいちいち怒鳴ったりしない。一方の指揮官はあえてベンチを動かず、また一方の指揮官は意図的に前面からナインをリードした。共通していたのは、選手たちのトライする姿勢と子供らしいハツラツとした表情だった。吉川市近隣大会で奇しくも、準決勝で敗退した2チームをピックアップする。 ※試合内容は→こちら 三郷ブレイブナイン  敵捕手の肩や、走者の足の速い遅いはさして問題ではない。とるべきリードから、しかるべきタイミングでスタートすれば、二盗は成功するのだ。スタメンの6人が盗塁を決めた三郷ブレイブナインが、それを証明していた。けん制死も3つあったが、次塁への意欲が萎えることはなかった。 三郷ブレイブの佐藤監督は指導歴20年以上。前身の三郷ブルーエンジェルス時代から、一貫して選手主体の野球を追求する  たとえローカル大会でも、勝つに越したことはない。優勝すれば協賛社からの賞品もグレードが上がる。しかし、彼らはもっと高い志で具体的なテーマをもって大会に臨んでいた。だから、指揮官は手痛いミスにも声を荒げず、苦境でもじっと静観していたのだという。象徴的なのが0対0で迎えた準決勝の4回表だった。  先発の後田蓮が突如として乱れ、この回に大量5点を失って敗れることに。だが、佐藤真次監督がベンチを出てきたのは投手交代を告げるための1度きり。あとは腕組みをしたまま、成り行きを黙って見ていた。 「基本的に監督からはタイムをとらないよ、というのは去年から選手に宣言しています。『権利はキャプテンにあるので、タイムをとって自分らで話し合ってやってください』と」(同監督) 二番手の新5年生・井上は制球難で一人相撲となってしまったが、力強いボールに将来性を感じさせた  昨年は所属する三郷市の公式大会を総なめ。この吉川市近隣大会も4強まで進出した。それらを経験してきた6人が最上級生となった今年は「前年を上回る」という目標を全員で掲げている。だが、4回表の再三のピンチにナインは沈黙。制球に苦しむ新5年生・井上裕太に一息入れてやることもできず、5回にも重い追加点を献上してしまった。  戸惑いや遠慮もあったのかもしれない。戸ヶ崎ビーバーズと三郷ブルーエンジェルスが合同の「三郷ブレイブナイン」となり、活動を始めてまだ2年目。試合後に泣き出した岡崎逞斗主将らに、指揮官は短いミーティングの中で穏やかに言った。 「監督に頼ってばかりでは意味がない。自分たちでやれるようになっていかないと、目標にも届かないよ」  シーズンはまだこれから。試金石の舞台で前年を上回ることはできなかったが、実体験から「教訓」という代償を得たブレイブナインが、いよいよ大きな目標へと向かう。 打者一巡で大量5失点の4回表、佐藤監督は腕組みしたまま、ひと声も発しなかった   吉川ストーム  体も肩も打球の強さも、中学生のような一番・捕手が準決勝の相手にいた。対する吉川ストームは新6年生が4人だけで、スタメンのうち2人は新4年生だった。 吉川ストームは12年前に吉川市近隣大会で優勝。篠田監督の息子も当時はプレーしていたという  それでも一様に萎縮していなかったのは、昨秋の新人戦で吉川市大会を制し、県大会まで経験したからだろうか。就任6年目の篠田充宏監督はこの日限定で、あえて自らのアクションを増したという。 「照準を合わせている春の大会が近いですし、ウチの子たちは元気がないものですから、今日は監督というよりキャプテンという腹づもりで声掛けをしました。『相手のバッテリーは素晴らしい選手だけど、何かあったら次の塁を狙おう!』という話も試合前に」  結果、盗塁企図は0でも、バッテリーミスに乗じて次塁を2つ奪った。全員にそういう果敢な姿勢が見られ、打席では好球必打に徹していた。それが、逆転また逆転の好ゲームを展開した要因だろう。 自らの頭脳的なプレーで若いチームを引っ張った一番・投手兼遊撃の及川楓(左)  実際にやるのは選手たち。ベンチの大人がどんなに旗を振っても、相応の知識と能力が選手になければ、なびくことはない。「ストームが掲げているのは『考える野球』なんです。打者はいかに次につなげて、走者はいかに次の塁を奪うか。そのために細かいことも練習しています。あとは野球ノートを全員が書いていて、学校生活や勉学でも自分たちから考えてやろうよ、と。今日はそれも見えましたので、指導者としてうれしい限りです」(篠田監督)  最後に1点差まで詰め寄るも、再々逆転はならずに敗北。しかし、うつむく選手も激昂する指導者もいるはずがなかった。   「静」と「動」。2人の指揮官が準決勝でとった態度は対極にありながら、未来の明るい扉をそれぞれに開いたような気がする。あるいは、優勝や賞品より重くて尊い何かを手にしたのかもしれない。...

【最終日リポート/吉川市近隣少年野球大会】南川崎が初V、36チームの頂点に

【最終日リポート/吉川市近隣少年野球大会】...

2023.03.28

 埼玉県吉川市と近隣6市1町の36チーム参加による第37回吉川市近隣少年野球大会は3月21日、旭公園球場で準決勝と決勝を行い、南川崎ゴールデンアロー(八潮市)が初優勝した。この大会は全国2度出場の吉川ウイングス、竹内昭彦理事長(大会会長)の提唱で1987年に16チームで始まり、近年は指名打者制を採用。出場チームの選定は各市町で異なるが、春の公式大会を前に切磋琢磨する舞台となっている。 ※関連記事「ピッアップ」は→こちら   ■決勝 南川崎 100224=9 美谷本 010000=1 【南】小川、中泉、佐久間-髙橋 【美】松嶋、相良、赤羽-鶴ヶ崎 本塁打:髙橋(南)   ⇧南川崎の先発・小川紘世は5回途中1失点(自責0)と好投。しなやかでバランスのとれたフォームも際立った ⇧2回裏、一死二、三塁からの遊ゴロで、守る南川崎が6-3-2とつないで2人目の走者をタッチアウトに。捕手・髙橋怜は攻守で優勝に貢献  2つの敵失絡みで開始早々に1点が入ったファイナル。流れを大きく左右したのは2回裏だった。  美谷本ファイターズ(戸田市)が、連続四球と重盗で一死二、三塁と一打逆転のチャンスを迎える。ここで七番・福士雄輔の遊ゴロでまず1点。だが、続いて三塁を蹴った二走を、南川崎ゴールデンアローの守備陣は見逃さなかった。6-3-2の転送による併殺で逆転を阻むと、4回以降に9本の長短打で8得点と打線が爆発。投げては先発の左腕・小川紘世が5回途中1失点の好投、2番手の佐久間幸希も1安打無失点と続いた。   ⇧4回表、南川崎は一死一、二塁から九番・粟島丈助が左へ勝ち越し2点打を放つ ⇧美谷本の相良碧人は3回途中から救援してクリーンアップ3人をシャットアウト。準決勝では抜群のフィールディングやけん制技術も披露   ■準決勝1 美谷本 000520=7 三郷ブ 000210=3 【美】相良、松嶋-鶴ヶ崎 【三】後田蓮、井上、島根-岡崎  両先発がゲームをつくった。三郷ブレイブナイン(三郷市)の後田蓮は打者8人までパーフェクト。9人目に与四球も、けん制死で切り抜ける。美谷本の相良碧人は毎回走者を出しながらも、2回には自らの本塁送球でスクイズを阻むなど3回まで無失点と粘投した。  試合は後半戦で動く。4回表、美谷本は一番・松嶋泰賀主将のバント安打を皮切りに打者一巡で5得点。その裏に失策とバッテリーミスで2点を失うも、5回表には三番・鶴ヶ崎力の2打席連続となる適時打などでダメを押した。 三郷ブの先発・後田蓮は4回にバント安打から崩れたが、打者8人目まで圧巻のパーフェクトピッチ...

【特別リポート】関東北部の激戦区に残る大人たちの“良心”。リーグ戦&レクで親交

【特別リポート】関東北部の激戦区に残る大人...

2023.03.23

 このような地域が広がり、こういう大人やチームが増えてくれば、野球界の未来は明るい。そう確信するようなローカル大会が栃木県の宇都宮市にあった。2月23日と3月4日に開かれた「令和5年春季南部地区学童親善野球大会」(以降、南部大会)。近隣同士の小規模なリーグ戦とあってか、地名さえ冠されない大会ながら、その始まりは18年前の参加選手でも「不明」と言うほど歴史がある。見ている保護者や部外者にも笑顔や共感を呼ぶような風習や仕掛けも、伝統の中で築かれてきたのだろう。 今大会は9チームが3グループに分かれ、2日間で各4試合を消化。初日の結果から2日目はグループを改編し、最終順位を決した  学童野球にオフシーズンなし。春の訪れを待たずとも、全国津々浦々でローカル大会が行われている。都道府県や市区町村の連盟が主催する大小の公式大会から、名門チームや複数の友好チームが主催する親睦大会まで。その目的は、時期や参加チームによってさまざまだ。ともあれ、地域の絆や互いのリスペクトをここまで尊重している大会は、そう多くないだろう。 基本は学区制だが…  往時は60チーム以上、現在でも44チームが割拠する県庁所在地。宇都宮市は関東北部の有数の激戦区だ。南部大会は、市の南部にある10チームが持ち回りで当番校(幹事)となり、春と秋にそれぞれリーグ戦を行っている。  幹事のチームを「当番校」と呼ぶのは、大半のチームが小学校単位で構成されているからで、校名がそのままチーム名に使われていて「城東小」や「簗瀬(やなせ)小」など、チームを校名で呼び合う風習も残る。一方、学区を持たないクラブチーム「宇都宮ドリーム」も参加しているあたりが、堅固な地盤と仲間意識を物語る。 審判を含む運営は当番校に任せきりではなく、異なるユニフォームの大人たちが裏方も率先  一般的に、全国予選で顔を合わせる可能性がある近隣チームとは、公式戦以外ではあまり手合わせをしないのが、学童を含む学生野球の通例だろう。戦力や手の内を知られたくないからだ。しかし、南部大会では、近隣チームを敵視する向きがゼロに近い。それでいて、1981年に全国スポーツ少年団交流大会を制した横川東学童や2021年の全日本学童16強の宝木ファイターズのほか、東ビクトリーズに横川中央学童と全国経験組が4チームもある。前出の宇都宮ドリームは全国出場こそないが、2020年秋に県準Vなど強豪として名が通っている。  それゆえ、競技レベルは総じて高く、全国舞台で見るような逸材もゴロゴロいた。でもそれ以上に際立ったのは、模範たる指導者の多さだった。 全国をうかがう一方で  相手守備のファインプレーに、その場で「ナイスプレー!」と声を挙げたのは簗瀬スポーツの松本裕功監督だった。 「相手を尊重するという文言は大会規定にもありますし、敵も味方もなく、良いプレーは良いプレーなので」  こう語る指揮官の称賛の声と同時に、ベンチ内から拍手も自然に起こっていた。簗瀬は昨秋に市準優勝で県大会も経験しており、「今年は全国大会に行けるように頑張っています」(松本監督)。三番・捕手の半田蒼真主将を筆頭に、攻守ともハイレベル。投手陣は出色の左腕・郡司啓ら5枚が常時、スタンバイする。打者一巡の猛攻やサヨナラ劇も見せた南部大会は3位に終わるも、春の公式大会直前とあって勝敗より優先した課題があり、貴重な経験を積めたという。 昨秋に市準Vの簗瀬スポーツは、今夏の全国をうかがう。潜在能力と打力の高さに加え、指導陣が模範となるフェアプレー精神も出色だ(写真提供/簗瀬スポーツ)  昨秋の市王者・宇都宮ドリームも2勝2敗で中位に終わるも、就任18年目の菊地政紀監督は収穫ありの様子だった。 「新年度は6年生が7人で全員がピッチャーをやります。みんな去年から試合に出ていて、ある程度できあがったチームなので、南部大会は冬場の成果の確認と、選手主体を試しました。監督が強制するだけの野球では、宇都宮や県を獲れません。選手が自分たちだけで得点したり、ピンチをしのげるようにならないと」  選手の居住地がバラバラのため、チーム練習は土日祝日のみ。平日は各家庭から自主練の動画が監督へ送られ、監督からはコメントが返ってくる。こういう取り組みもすべて、今夏に勝つためであることをチームの全員が理解しているという。 粘りや成長を促す監督  瑞穂野ベースボールクラブは、瑞穂野南小と瑞穂台小でそれぞれ活動していたチームが合併して6年前に誕生。今大会は堅守と粘り強さに、それを引き出す指揮官のアプローチが光っていた。  例えば、二塁手のトンネルから一死二塁のピンチを招くも、続く犠打で一気に生還を狙った二走を1-3-2の転送でタッチアウトに。そして無失点で切り抜けると、指揮官はミスした二塁手を含む選手全員にベンチ前で捕球姿勢をとらせて、ゴロへの対処をレクチャー。就任5年目になる吉田祥明監督は、意図して主将のような立ち位置にいるようだった。 「自分自身も1年目より2年目、2年目より3年目と、向上心を持ってやってきています。中でも選手への伝え方は一番気をつけています。もちろん、厳しく言うときもありますけど、必ずフォローします。子供にとっても親にとっても良いチームになりたいですね」(同監督)  今大会で初めてライトゴロを決めたり、苦しい場面で飛球をランニングキャッチした右翼手はその都度、指揮官からグータッチで出迎えられて満面の笑み。その後、意欲と自信をさらに増しているという。 豊岡Jスターズに吸収される形の合併からまだ2週間の南原鬼怒川(ともに日光市)。渡辺監督は「自分をアピールできている子から使っていく」と選手に明言して臨んだ(写真提供/豊岡Jスターズ)  南部大会の参加1枠は、地域外から招く伝統もあり、今春は日光市の強豪・南部鬼怒川が招かれた。実は部員不足から同市の強豪・豊岡Jスターズに吸収される形となり、始動からまだ2週間弱。それでも2勝1敗1分の4位に食い込み、渡辺修一監督はこう総括した。 「まだ試行錯誤ですが、良い経験ができました。合併して試合に出られなくなる選手も出てきて、危機感が相乗効果を生んでいると思います。宇都宮の強豪校と対等にやれましたし、市内では絶対に負けないと思うので、県で勝ちたいですね」 ただ戦うのみならず...

【特別リポート】軟式JKの情熱が企業をその気に。~FF社にて新商品プレゼン~

【特別リポート】軟式JKの情熱が企業をその...

2023.03.14

 2019年に全国準優勝、「オンライン甲子園」で受賞歴もある中京大中京高(愛知)の女子軟式野球部の2人が3月2日、千葉・柏市のフィールドフォース本社(FF社)で新商品「更衣テント(仮)」のプレゼンテーションを行った。FF社の担当とは1年ほど前から打ち合わせを重ね、サンプルも完成した上での商品提案会。その内容と行方は、いかに。そもそも、野球部員の彼女たちはなぜ、このような取り組みをしているのだろうか――。   ■中京大学附属中京高等学校 女子軟式野球部 【創部】2015年(学校創立1923年、共学化85年) 【実績】2016年全国大会初出場、17年同3位、19年同準優勝/オンライン甲子園2021年夏・全国優勝、22年夏・希望大賞 【監督】土井和也(男子硬式野球部顧問兼) 【2022年度の部員】3年(卒業)7人/2年2人/1年10人 【プレゼン登壇】佐藤茜(3年)、長江莉佳(同)   前日に中京大中京高を卒業したばかりの長江莉佳さん(左)と佐藤茜さん(右)    高校野球の聖地「甲子園」で、女子の全国大会決勝が開催されるようになったのは2021年のこと。だが、同じ年にそういう晴舞台もなく、競技を終えた女子高生もいたことをご存知だろうか。 「軟式」の女子野球部員として活動する高校生たちだ。国内にほんの数校とはいえ、無念は察するに余りある。中京大中京高はその数校の中の1校だった。 「中京大中京」と言えば、男子の硬式野球部は春夏で60回も甲子園に出場しており、春4回、夏7回の全国制覇を誇る名門中の名門として知られる。一方、女子軟式野球部は創部8年目。かつて、男子の軟式野球部でプレーしていた女子選手から「女子部創設」の要望が高まり、顧問の土井和也先生(現監督)を巻き込んで2015年、女子軟式野球部が誕生した。しかし、それは同時に、苦難の始まりであったのかもしれない。 レアな部活動ゆえに  ほとんど前例のない高校の女子軟式野球部ゆえ、甲子園のような大会や予選はおろか、練習試合すら思うように組めぬ状況。全日本女子軟式野球選手権大会に「中高生の部」ができて2016年に初出場、19年には準優勝を遂げたが「高校生だから勝って当たり前」との声も聞かれたという。また、コロナ禍の緊急事態宣言が明けた2021年には硬式の全国大会が男女とも再開されたが、女子軟式の全国大会は2年連続の中止で地区大会(東海大会は8チーム)まで、という憂き目に。  それらがまた、野球ファンが多い日本でもほとんど知られていないという哀し過ぎる現実。部員たちはしかし、歪んだり投げ出したりせずに「女子野球の発展」を一大テーマに掲げて世に訴えるようになった。その最たる活動が、ZOOMで開催されている高校野球プレゼンテーション大会(通称「オンライン甲子園」)への出場、そして今回につながる産学連携の商品開発である。 FF社の会長、社長、企画開発室のメンバーらを前にプレゼンが始まった    3月1日、愛知・名古屋市にある学校の体育館で卒業式を済ませたその夜、佐藤茜さんと長江莉佳さんは長距離バスに乗り込み、明くる日に千葉県の柏市へやってきた。また正午過ぎには、新幹線に乗ってきた土井先生もFF社に到着。そして午後1時、同社3階の企画開発フロアで、モニターをPCで操作しながらのプレゼンが始まった。目の前のテーブル席には同社の大貫高志会長、吉村尚記社長のほか、企画開発室のメンバーら。土井先生は全体を遠巻きに見守っている。 悲哀すらも知られず  佐藤さんと長江さんは冒頭、前述したような高校女子軟式野球の窮状や自分たちが経験した悲哀を訴えた。 「私たちは高校生になって初めて女子野球で活動してみて、チームと大会の少なさに驚きました。そして知名度の低さとメディア露出の少なさに、すごく苦しめられた2年半でした…」  2人の1学年上の先輩たちは2021年の東海大会で優勝も、全国舞台(コロナ禍で中止)を踏めずに引退。だが、オンライン甲子園で「女子野球に注いだ情熱と発展への思い」を訴えて優勝した。そして昨年、佐藤さん長江さんら3年生は東海大会4位で全国出場はならずも、女子野球発展を期しての商品開発に乗り出すことをオンライン甲子園(希望大賞)で宣言した。  これに手を差し伸べたのが、FF社の企画開発部・小林夏希課長だ。中高はむろん、短大、クラブチームまで硬式でプレーした筋金入りの野球女子で、現在も公私にわたって女子野球の現場へ足を運ぶ。...

【決勝戦リポート/ジュニアスマイルカップ】新4年生も未就学児もあっぱれ!カバラV

【決勝戦リポート/ジュニアスマイルカップ】...

2023.03.10

 新4年生以下29チーム参加による東京・足立区の第22回ジュニアスマイルカップは3月5日、千住新橋野球場で決勝を行い閉幕。この2023年に低学年の新指揮官に就いた斎藤圭佑監督率いるカバラホークスが、3回コールドで優勝した。実戦機会をより多く!との主旨で始まったこの大会は、体験生や未就学児(新1年生)も参加できるのが特長で、準優勝のレッドファイヤーズにはスタメンで堂々とプレーする未就学児の姿もあった。 ■決勝 カバラ 640=10 レッド 000=0 【カ】小澤-野崎 【茎】古谷、安里-安里、古谷   バットでは3打数2安打、マスクを被れば好リードにご覧のストッピング。カバラの四番・捕手、野崎は末恐ろしい新4年生だ    決勝まで勝ち進んだ両軍は、地域リーグでもしのぎを削る間柄。カバラホークスは夏の全日本学童にも2度出場している強豪で、打のチームとして認知されている。対するレッドファイヤーズは、都の学童新人戦や23区大会を制した実績もあり、首都圏では知られた存在だ。互いに手の内も知り尽くしているが、この新4年生の世代となってからは初めての対峙だった。   1回表にカバラは三番・山田の先制打(写真上)から6点。続く2回は七番・赤坂の中越え2点二塁打(同下)などでリードを10点に    試合は開始直後から大きく動く。先攻のカバラが、一番・金山海洋の四球と二盗、続く石井心結主将の内野安打と二盗で無死二、三塁とすると、山田慶太と野崎太幹が連続タイムリー。バッテリーミスも重なって3点を失ったレッドは、三塁ゴロでようやく1アウトを奪って落ち着くかに見えたが、火がついたカバラ打線は下位に回っても止まらなかった。赤坂聡大と田中新の右前打に振り逃げや敵失も絡むなどして、1回表を終わってみれば打者11人で6点を先取していた。    機先を制したカバラは、先発右腕の小澤蒼大が絶好調。ストライク先行で最初のアウトを空振り三振で奪うと、与四球から二死三塁のピンチを招くが、レッドの四番を捕邪飛に打ち取る。2回表も、カバラが赤坂の中越え2点二塁打など4得点でスコアは10対0に。  3回を投げ切ったカバラの先発・小澤は、打者20人と対して被安打1、与四球3で無失点。「みんなが声で盛り上げてくれたのでどんどんストライクが入りました。良いピッチングだったと思います」   「基本は野球を楽しむことで、引かずにトライしたのであればミスしてもOK」というのが、レッドの低学年を率いる茅野修史監督の方針。2回裏、最初に打席に向かう五番・金沢瑛太にはこう声を掛けた。 「三振したって、いいんだからな!」  すると金沢は、左打席から右へクリーンヒット。さらに敵失で三塁まで進んだ。結局、本塁は踏めず、この一打がチーム唯一の安打となったが、野球歴1年という新4年生の金沢には特別な日になったようだ。「ちょっと最初は緊張したけど、絶対に当てるぞ!と思って振ったらパーンとボールが飛んでいくのが見えて、メチャクチャうれしかった。公式戦でヒットを打ったのは初めてです」。 レッドは2回裏、先頭の五番・金沢が右前へクリーンヒット。自身初の公式戦安打に、ベンチも盛り上がった    3回表はマウンドに立ったレッドの2番手・安里那月(新3年)が、手本のようなきれいなフォームから速球を投げ込む。そして一番から始まるカバラ打線を無安打の0点に封じてみせた。これで流れが変われば、レッドには準々決勝のように逆転勝利の芽も生まれたのかもしれない。しかし、カバラの先発・小澤の制球とバックの守りはどこまでも安定していた。   「細かいことの中でも守備のカバーリングは徹底して教えています。高学年になっても、その先もずっとやることなので今のうちから当たり前にできるように」...